さて、面倒な前置きは無しだ。本題から話そう。 インデックス614。この作戦は、次の三段階からなる物だ。 まず、ネオデスモンと戦う為に図書館へ向かう楽音ちゃんを足止めしてもらいたい。 ただし、ここで彼女に本気を出させてはならない。 もしまた危険な変異を起こすようなことがあれば、彼女はもう人間に戻れない可能性が高い。 少なくとも、僕が現状持っている技術では不可能だ。そもそも、厳密にいえば今も完全に人間に戻せているわけではない。 というのも、彼女の体内に存在するデジコアは通常の物ではない。 おそらくはネオデスモンの持つスピリットの力が混ぜられている。 つまり、スピリットエボリューションしたデジモンを、バングルで無理やり外部から5年前の彼女の姿に上書きしているといった方が近い。 おっと…話が脱線してしまったね。ともかく、彼女を暴走させずに足止めして欲しい。 次に、彼女に鎮静剤を投与する。 鎮静させない状態でのバングルの交換は危険が伴うからね。 それに…構造的な都合で脱着にはかなりの痛みが伴うんだ… それで…だ。鎮静剤投与に使うのがこれ…デジインジェクターだ。 司君たちは知っているだろう…これは楽音ちゃんにとってトラウマと言って良い物だ。 デジモンのデータを人間に注入することを目的に作った失敗作…彼女はネオデスモンが作ったデータをこれで注入し…アルケニモンになった。 だから…かなり嫌がるだろう。 だが、今の彼女に人間用の薬物は効かないと考えて良い。つまり沈静化プログラムをこれで投与するのが最適解だ。 これは最近開発したマスプロダクトモデルだから、作戦に参加する全員に渡せる。誰か一人が注射できればそれで良い。 最後に、彼女のデジヴァイスバングルをこの新しい物に交換する。 さっきも言った通り、これはかなり痛い。いくら鎮静しているとはいえ… もうひと暴れぐらいはしてもおかしくないね。それに腕輪を外した瞬間、抑制が中断される。 それもまた懸案点ではある。 その対策に、インジェクターには抑制プログラムも追加してある。手間取らない限りは問題ない。 …この作戦に協力してくれる皆には頭が下がる。本当にありがとう。 彼女がああなってしまった責任は僕にもある。…かなりね。 ネオデスモンとは僕も色々と因縁がある…殴れるものなら殴りにいきたい…が、今は彼女を優先しないわけにいかない。 それでは、インデックス614を開始しよう。