あなたがメールを見てアリーナに訪れると、見覚えのある薄青色のジャージを着た女性……三尋木早織が、がいつも通りにへらりと笑って待っていた。  ……いつもとほんの少し雰囲気が違うのは、きっと酒が入っていないからだろう。 「はいみんな、来てくれてありがとう。いつもヘルメット集めとか依頼でお世話になってます三尋木早織です。あんな雑な救援要請に応じて来てくれて、ほんとありがとう。助かります。  ええと……まずは事情の説明がいるよね。アタシの上司……うん、ヘルメット集めの依頼を出した人……デジモンのことだけど。彼女はデジタルワールドの観測者、みたいなことをしててね。いろーんな情報を集めた、スプシ図書館ってところの管理者をやってる。  ああ、察しのいい人がいるね。そう、情報が集まる場所には情報を狙いにくる人も、当然いる。  そういうわけで、今回図書館を……どうも、忍者。うん、忍者が襲撃しにくるらしい。忍者なんて本当にいるのかって、アタシも知らん……。  とにかく、その襲撃者にもし何かの間違いでアタシの上司が倒されちゃったら色々と困るんだ。だから、よかったら……上司を、一緒に守りに来て欲しいんだ。  ……ありがとう。ホント、今のアタシじゃ戦力になりそうにないから助かるよ。えっと……じゃあ、準備の時間が要るよね。2時間後にもう一度ここに来て欲しい。そしたら、図書館への道を開くから。アタシの後輩が」  2時間後、準備を整えたあなたは再び三尋木早織の元へと赴く。彼女の隣には見知らぬ(あるいは、どこかで見たことがあるかもしれない)どこか陰気な男と、小柄な白髪の少女が立っていた。 「みんな準備できた? よし……じゃあ、行こうか。海里くん、ゲートよろしく」  促されるまま、海里と呼ばれた陰気な男が右手に持ったクロスローダーを宙に翳す。 「……任されました。じゃあ、全員通れる分開けるんで、ちょっと下がってもらって。……タイムシフト」  その言葉と共に男がクロスローダーを振り下ろした瞬間、何もない空間に黒い穴のような大きなゲートが開いた。  ゲートを通ると、眩い光があなたの目に差して── 「──はい、みんなようこそ。ここが『スプシ図書館』。アタシたちの上司、裏十闘士が一人、『エンシェントモニタモン』様の叡智の結晶だよ」  白い壁中を這うデジ文字、ガラスと大理石の中間のような硬い床、無数に立ち並ぶ塔のようなサーバー、そこら中をちょこまかと駆け回る小柄なデジモン達。異様な光景であった。  黒一色のアリーナから急に移動して来たあなたには、視界のほとんどが白で構成された図書館は眩しく映るかもしれない。 「……まず、こっちにいるドキュメモンにいくつか説明をしてもらう段取りになってるんだけど……」  三尋木早織がそう呟き、きょろきょろと辺りを見回す。次の瞬間、視界の端から青い影が飛び出して来た。三頭身程度の、頭にヘルメットを被った小さなデジモンだ。 「どうも、みなさんこんにちは! エンシェントモニタモン様の眷属、ドキュメモン、でーす☆みなさん気軽にキュメちゃんとお呼びくださいね!」  ぺこりと軽く一礼すると、ドキュメモンと名乗ったぺらぺらと、滔々と語り始めた。 「エンシェントモニタモン様から説明をよろしく、という命を賜ったのですが……正直言って、説明することはそんなにないのです。図書館の道筋は一本道ですので、みなさん相談なりして、好きな配置についていただいて問題ありません。あ、一応みなさんの端末に図書館の内部地図を送信しておきますね☆」  ピピ、とあなたの端末が音を立てる。 「それと、先んじて協力者から提供された情報に基き、襲撃者の方々の戦力情報の閲覧を許可させていただきます。みなさんの端末に図書館の情報への部分的なアクセス権限を付与しておきましたので、是非ともご活用くださーい!」  ピピ、とあなたの端末が再び音を立てる。 「因みに図書館は非破壊オブジェクトで構築された建物ですから、皆さんお好きに暴れていただいて結構です☆というところで、みなさんへのお知らせは以上になります!襲撃予定時刻まで、まだ少し時間がありますので……気になることがあれば、なんでも聞いてくださいね!」  三頭身の青いそれ──ドキュメモンは、ヘルメットのモニターを表示をにっこり笑顔に差し替えて、再びぺこりと一礼した。