「あーあ。戦いならともかく、なんでこんな事しなきゃならねえんだよったく…」 「ネオデスモンサマのめーれーでしょ!モンクいわない!」 ぼやくスカルサタモンに、彼の肩に乗っていたプヨモンが静電気を放った。 「いってえよ!お前はあのお方に妙に気に入られてっからなぁー…お前何したんだよ?」 「なんにもしてないケド?…あっ!ココだよ例の場所!」 水龍軍本拠地跡。 かつて、アイスデビドラモンとホムコールモンが戦った場所だ。 あの大爆発により、本拠地自体は無事だったが移転を余儀なくされたのである。 「本当にあんのかねぇ〜?」 「ネオデスモンサマをうたがわない!」 「あ”っ!だからそれ地味に痛えんだって!」 クレーターの縁に降り立った二人は、あたりを探索し始めた。 ───────── 「あれだけの戦いです。きっと彼女は記録させているはず。そして…あの爆発で防御モードをとった個体もいるでしょう。」 「はぁ…さいですか…」 「依頼を出して回収させているようですが…あそこならばまだ立ち入ろうという者もいないはず。確保してください。」 ───────── 「って言ってたよなぁ…」 今彼らが探しているのは、スプシモンと呼ばれるデジモンのヘルメットだった。 大きな出来事…戦い、告白、進化、そのような出来事は全てスプシモンによって観察、記録されている。 ならばあれほどの戦いであれば必ず記録されているし、爆発に巻き込まれた個体が存在してもおかしくないだろうというのが、ネオデスモンの考えだった。 「にしてもココ…さむいねスカルサタモン…」 「水龍将軍がこのあたりの環境データまでぶっ飛ばして上書きしちまったからな…」 ホムコールモンの能力が最大限に解放された結果、ここはあらゆる物が凍りつくほどの低温と、全てが燃え上がるほどの高温が交互に訪れる気候になっていたのだ。 「ん…これか?」 スカルサタモンが掘り出したのは、焼け焦げた防寒着と一緒に凍りついているスプシモンのメットだった。 「ソレだ!ハヤくかえろう!」 ───────── デジタルワールド某所、廃墟と化した劇場の跡地。 ここを死影軍団は拠点としていた。 「おーい、誰か氷溶かせるやついないか〜」 スカルサタモンの声に、黒いゴグマモンが現れる。 「おいおいおいおいちょっと待てよ!割る気か!?中身も粉々になんだろうがよ!」 「違う。レーザーで溶かす。」 「テーネーにねー!」 威力を弱めた光のエネルギーが当てられ、ゆっくりと氷が溶け始める。 「お前案外繊細なことも出来んだな…」 「何が言いたい。」 ゴグマモンはスカルサタモンを睨みつけた。 数分後。 「ケッコウじかんかかるんだなー」 「丁寧にやれって言うんでな。」 十数分後。 「まだ溶けねえの?」 「まだだ。」 数十分後。 「溶けたぞ。」 「やっとかよ…じゃあ、そいつを俺はあのお方のところに持ってくから…」 「待て。それを溶かしたのは俺だ。手柄を持って行く気か。」 「これを任されたのは俺だ!だから俺が持って行く!」 「先日の戦いで我らオニキスは3体も数を減らしてしまった。ここで功を上げ我々はさらにご支援を賜るのだ。」 「元は俺が探してきたモンだろうが!横取りして何が功だよ!」 「チョット!そこはオレタチでしょ!」 「お前は俺の肩に乗ってただけだろうが!」 にわかに騒がしくなる拠点。 「煩い」 その一言で、辺りは水を打ったように静かになった。 発言の主は、漆黒の鎧に身を包んだタクティモンだった。 「揉めるようなら我が持って行く」 ───────── 「主よ、ご命令の物をお持ちしました。」 ヘルメットを持ち、タクティモンは元々ステージであった場所へと向かった。 「ふむ…では超回復ディスクをそれに使いなさい。ちゃんと捕まえたままでね。」 ━━━━━━━━━ 目が醒め、辺りを見回そうとして、ワタシは拘束されていることに気がついた。 ワタシはスプシモン、図書館で寝っ転がっているアイツに支えている。 「さて…目覚めましたか?」 声のする方向を見ると、黒い円が浮いていた。 「こんな姿で申し訳ない。回復には時間がかかるのですよ。」 いや、それは円ではなかった。球体だ。光が吸い込まれ反射しないため、平面のように見えているだけらしい。 「私は死影将軍、嗜劇のネオデスモン。」 なるほど。此奴があの写真に映らぬというネオデスジェネラルなのか。 「こんな姿で申し訳ありません。何分死にかけだったもので…あなたには私に協力していただきたい。」 「…何があった?」 「ふむ…回復したてで混乱していらっしゃる様子ですね。」 最後の記憶は…そう、氷竜将軍を観察していた時の…爆発だ。 「君は大爆発の跡地から回収されました。覚えていますか?」 「ああ…覚えている。なぜお前はワタシを助けた。」 「知りたいことがあるのです。あなたが持つデータベースへのアクセス能力をお貸しいただきたい。」 「デジモンイレイザーの手下に力を貸すほど…ワタシは愚かではない!」 「まぁまぁ…すぐに力を貸したくなりますよ…お話をしましょう。ゆっっくりとね。」 ━━━━━━━━━ エンシェントモニタモン。あなたもどうせ彼を通じて見ているのでしょう? 彼に協力してもらって色々と調べてみましたが…なぜか不自然な欠落がありました。意図的に隠しているのですか? そのうち…直接お話をさせていただきたい。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ タクティモン:影備え ネオデスモンの持つスピリットの影響を強く受け、特殊な進化を遂げたタクティモン。 甲冑全体が漆黒に染まっており、ネオデスモンの使用する影を通じた移動能力を部分的に使用できる。 スピリットの悪影響により凶暴性が増幅されており、原種のタクティモンにあったような作戦立案能力が失われている。 死のエネルギーをまとい敵を切り裂く「死の太刀」、蛇鉄封神丸の切先を影を通して敵に突き刺す「影の太刀」が必殺技。 ━━━━━━━━━ 死影軍本拠地はICEYの木偶シアターみたいなイメージ