由良須勢理がデジモンに遭遇したのは6歳の時だった。 須勢理毘売命のこの島における姿である由良比女、その再来となった彼女。 しかしそれは不完全なもので、父神である素戔嗚尊がわずかに混ざっていた。 自身のかつての力を取り戻し、完全な由良比女あるいは須勢理毘売命になることを望んでいるのは明白だった。 そんな状態であってもその神通力は非常に強力で、苛烈な性格と相まって周囲は大変な目に遭っていた。 そんな絶大な力を持つ彼女の封印制御の相談を受けていた最中の出来事だった。 イカを引き寄せる特性が、イカのような姿をしたデジモンにまで有効なのは誤算だった。 浜辺にいた須勢理に、上陸したゲソモンが襲いかかったらしい。 しかし彼女が突き出した手にゲソモンが噛みついた瞬間、異変が起こった。 成熟期であるゲソモンは、いきなり何もかもを飛び越して究極体のデジモン、それもバーストモードへと進化していた。 そのデジモンの名はスセリモン。 その姿と名前から推測するに、須勢理が自身の力を取り戻すためのテストとして自身の似姿に作り変えて進化させたのだろう。 だがスセリモンの力は須勢理毘売命の劣化版というものになっている。 本来なら生命力を全て奪う「生太刀」と死者を蘇らせる「生弓矢」はそれぞれ相手の体力を吸収し分け与えるものになっている。 相手を自身の言いなりにさせる「天詔琴」はせいぜい相手の精神を汚染し誘導する程度におさまっている。 いきなり究極体のバーストモードに進化した影響でスセリモンはリアライズの維持が困難になった。 そこで須勢理はスセリモンを一旦完全体まで退化。 ゲソモンの記憶領域を掌握して検索し、カルマーラモンを認知。 ゲソモンの記憶にあるカルマーラモンの姿と能力を再現して完全体に仕立て上げた。 この状況はすぐさま彼女の実家と我々に感知された。 多大な被害を被りながらもかろうじて死者を出さずに拘束に成功。 まず須勢理の感情を大きく抑制する封印呪法を施した。 次に記憶に対する認識阻害を施して由良比女としての記憶を大幅に制限。 回文化した名前を与えることによって由良比女としての自意識を抑えつつ名前のループによって封印効果を強化。 さらに島の外から送ってもらったデジヴァイスicでカルマーラモンを制御。 これら一連の処置によって須勢理はかなり通常の人間に近い状態まで抑制された。 最初から究極体のバーストモードになったためか、デジヴァイスicは渡した直後にデジヴァイスバーストに変化。 これだけはどうにもできず、特に問題はないと判断されたため放置。 由良須勢理改め億岐鴇緒は島後にある我々の神社の養女となった。 (億岐鴇緒の養父の手記より抜粋)