「佐世保……はぁ!?」 呉基地、基地司令の執務室。私、秋田みゆきは出向の命令を受けた。 行き先は佐世保基地、そこの陸上自衛隊のデジモン部隊と協同訓練をするのだという。 しかも結構な長期間。ふざんけんなますます東京が遠くなるだろ。 愛する夫や息子に会いに行くのがもっと大変になる!あそこ新幹線すら直通してないじゃない! 飛行機代寄越せ!もしくは横田基地まで輸送機に乗せろ! ……でもまあ以前からその予定はあったから仕方ないわね。 予定はDレンジャー解隊で無くなったかと思ったけど一部再編された部隊が佐世保に配属されたんだっけ。 あの子たちも大変ね……あのちびっ子開発主任は何ヶ月か前に寿退役したって聞いたけどまさかこんな事態になるとは思ってなかったでしょうね。 あのちびっ子が退役して身長マウント取れる相手がいなくなった私はそりゃもう残念だったわ。 「秋田みゆき一等海尉、命令を受領します!」敬礼して私はビシッと返答した。 「あっミユキ〜!今度は佐世保だって?」廊下に出るとパートナーのゴマモンが待ち受けていた。 なんでその事を……という疑問は湧かなかった。 一緒にいた人物から聞いたのだろう。どんな命令や情報もだいたいこいつのほうが私より先に知っている。 「Hi、ミユキ?今度はサセボだって?」 「中尉……」私に話しかけてきたのはウィリアム・ウォーターローグ・ウィンタース中尉。 通称ビリーあるいはトリプルダブリュー、米海軍のテイマーで、私が隊長を務めるLEADの客員士官だ。 「今度はこっちのベースに招待することになるな。歓待するぜ?」 訓練内容的にこいつは同行する必要がある……というよりナビゲーターとして必須だ。 なんせ主軸はデジモン混合部隊の再上陸作戦の訓練なのだ。 「今回……わたしはご一緒できません、多分……」おっとりした話し方の若い女性は億岐鴇緒。 上から読んでもオキトキオ、下から読んでもオキトキオ、海上保安庁第八管区から出向中の潜水士だ。 再上陸作戦では潜水士としての彼女もパートナーのゲソモンも出番がない。 「トキオちゃんはどうするの?一度舞鶴に帰る?」彼女が本来所属する第八管区の拠点は舞鶴にある。 「いえ……その前に、お休みを取って、実家に顔を出そうかと……」 彼女の実家は島根県の沖合にある諸島の中で一番大きな島にある。 聞くところによると本来の生まれは諸島内のもう少し小さな島で、諸島屈指の名家に養子として引き取られたらしい。 「そっか。じゃあ羽根を伸ばしてきてね。あとお土産もよろしくゥ!」彼女の実家のある島は海産物がおいしい。 「うん、わかった……」あまり変わらいない表情でトキオちゃんは言う。 「それじゃミユキ、トキオ、今日の訓練のBriefingをはじめよう。ガワッパモンが早く出たがってるんだ。」 そう言いながらビリーは左手首のクロスローダーを掲げる。いけない、もうそんな時間なの? 「それじゃあ各員、ブリーフィングルームに集合よ!」 そう言って私達は廊下を歩き出した。