楽音達は口を開けている洞穴に足を踏み入れた。 ネオデスモンから送られてきた情報が正しければ、ここはまだ入り口のはず。ここから先へはどういけばいいのか。 彼女らにはわからないことだらけだった。 「えっと…ここからどうすればいいんだろう…」 「っていっても一本道だし…道なりに進むしかないんじゃない?」 「そうだよねオオカミくん…」 しばらく歩くと、洞穴は唐突に行き止まりを迎えた。 そこにあるのは、石でできた扉。それが本体へと繋がっているであろうことは、誰の目にも明らかだった。 「ふむ…どうやって開けたものか…」 無量塔はそれを前に、何か考えているような様子だった。 「ボクにはお手上げかな〜なんとかできない愛狼?」 「えっオレ?…斬ったらなんとかできるかなシャドウ?」 『おそらくそれでは解決にならないと思うぞアロー…』 愛狼に無茶振りをする有無。 「気をつけて…何かくる。」 楽音は扉にかかりきりな面々と違い、一人何かの気配を感じていた。 「ふーむ…随分お友達が増えましたねぇ楽音。何よりです。」 影に瞳が開き、立ち上がる。楽音にとってはもはや見慣れた光景であった。 「今度こそ…いくぞシャドウ!」 「フフ…シャドウヴォルフモン…いやはや懐かしい…!」 進化し斬りかかった愛狼の一閃をかわしながらネオデスモンは続ける。 「ですが…登場人物が増えるほどシナリオの制御は難しい…全く困った子ですね楽音…」 『気をつけろアロー!前に対峙した時とは何かが違う!』 「これなら!シャッテン・シュライ!」 シャドウヴォルフモンの作り出す影から刀が撃ち出される。 それは影であるはずのネオデスモンの体に突き刺さり、ダメージを与えたかのように見えた。 「ぬぅ…さすが影のスピリット。しかし、こんな攻撃で私は倒せませんよ。ゴグマモン!」 ネオデスモンが作り出している影からも、黒いゴグマモンが撃ち出される。 鉱石で出来た体を活かした体当たり。不意を突いた一撃は、シャドウヴォルフモンにしっかりとダメージを与え、衝撃で天井を崩落させた。 「オオカミくん!」 洞穴全体を埋めるほどではないにせよ、楽音達と愛狼を分断するには十分な量の岩。 「ははは…この前はこの類の攻撃に悩まされましたのでね…少し真似をしてみました。」 そのままゴグマモンに押さえつけられているシャドウヴォルフモンに、ネオデスモンは近づいていく。 「放せっ!」 もがくシャドウヴォルフモンに向かってネオデスモンは手を伸ばす。すると二者の間に黒い稲妻が走った。 そのエネルギーによって、ゴグマモンは弾き飛ばされる。 「拒絶…いや、相互反応が起きているか…」 「相互…反応…?」 人間の姿に戻った愛狼は、彼が何を言っているのかわからないと言った様子だった。 「まあ…わからずともいいですよ…それよりも、君たちは埋蔵金を探しにきたのではないですか?」 「違う!私たちはネオデスモン!あなたを倒しにきたの!」 そう叫んだのは楽音だった。無量塔のサンドリモンが崩落した岩を吹き飛ばしたのだ。 「私も有名になりすぎてしまったようだ…私は物語を手のひらの上で転がしたかったのであって物語の主役になりたいわけではない…まあ、楽しく埋蔵金をお探しになってください…」 ネオデスモンはそう言うと扉の前へと転移し、今度はハイコマンドラモンを呼び出した。 「……了解。」 ハイコマンドラモンは扉に爆弾を取り付けると、即座に起爆した。 爆風が晴れると、破壊された扉とその先に広がるデジタルゲートに似た何かが見える。 「これこそ埋蔵金の秘められし場所に繋がるゲート…先で待っていますよ。」 そう言い残し、ネオデスモンはその先へ進んで行った。 「やっぱり斬ったらなんとかなったんじゃん…」 『……そうだな。』 ───────── 一行はゲートを抜けた。 その先にあったのは、石畳の敷き詰められた、一種の大広間のような空間だった。 「早くアイツを追いかけよう!」 そう言い愛狼は、幾つもの分岐がある中でも一番太い道の方へと走り出した。 しかし、ここはそんな甘い空間ではない。彼が踏んでいた石畳が光ると、次の瞬間そこに彼の姿はなかった。 「何…今の…」 「イマのはテレポートトラップさ!」 困惑する3人に話しかけたのは、サングラスをかけたプヨモンだった。 「ネオデスモンサマからのデンゴンだ!このダンジョンにはオオくのトラップがある!ジュウブンちゅういするんだナ!」 一方的にそう言い放ち、ツノモンは影へと沈んでいった。 「どうやら迂闊な行動は禁物のようだね」 「ボク流石にこう言うのはわかんないな…」 有無はそう呟きながら半歩ほど足を動かした。すると石畳が急に開き、彼女はそのまま落ちていった。 「そんなぁぁぁーーー!!???」 「ウムちゃーん!!!」 すぐに石畳は閉じ、動くとは思えないような形に戻った。 「…まあ、ツカイモンがなんとかしてくれるだろう」 無量塔は冷静であった。