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鉄華はゲーセン帰り、ただすぐ家に帰る様子も無くばつが悪そうにしていた
パートナーのポリアグモンと野菜嫌いのことで口げんかになり、家を飛び出した後だった

「あいつそんなに野菜推さなくてもいいじゃん、足りないのはサプリでいいしさ？」

帰ったらパートナーにそんな屁理屈をこねてやろう、鉄華は納得の行く言い訳を
探して目的もなく街をふらついて、商業通りを抜けて居住区へ入った

人気がまばらになり、やがて鉄華一人になると辺りを霧が包みこむ
日の光が遮られ太陽が薄明かりを灯すほどになったが鉄華は
言い訳を考えなければならないこともあって、それほど違和感を覚えなかった

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同刻
ポリアグモンもまた悩んでいた、鉄華の思考論理的でないにしても
歩み寄りをするべきだった、と反省していた

『それにしても鉄華あれから3時間も居たなんて、お腹空いてないかな』

お昼前に飛び出してからの足取りは追っていたが、食事をとった様子はない
不摂生とピザとエナドリで作り上げられた身体は、人より電池切れが早いのだ

そんな心配を煽るかのように鉄華の足取りは居住区へ入ってしばらくして途絶えた
『！！僕の探知から消えた…周囲のカメラの映像は…霧？』
霧に包まれるとほぼ同時に反応が消えた、ポリアグモンは状況の把握を始める

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鉄華は危機にまだ気づいていない、空腹で思考が落ちていたし漠然と
「ポリアグモンもそろそろ心配してるだろうし、かえってあげよ」
と、霧の向こうにぼんやりと見える自宅マンションを目印に街の中を歩いていた
「あいつと居ないのいつ振りだろ、どうせカメラから追ってるだろうな」
そんなことをぽつりと呟くと、空腹にお腹が鳴くのが分かった
家に戻る頃にピザが届くようにネットオーダーをしようとスマホを取り出すが

『圏外』の表示

「あれスマホの電波悪い？またどこかでデジモンが悪さしてたり？」
「…ここ、こんな道あったっけ……ってあれ？まだこんな距離あるっけ？」
スマホから顔を上げると目線の先のマンションは変わらず遠くに見える
目印に歩いて5分は経過していたはずだ、鉄華は周囲の霧にようやく違和感を持った

4.
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「あらポリアグモン様からですわ」
「えっ鉄華さんじゃなくって、アグモンさんからなんて珍しいですね」
堀鉄華の友人、岩家イチカと真見無目モモは霊能探偵事務所を出た所だった、いつもと様子の違う連絡にすぐに応える
「イチカですわ！堀様じゃなくて貴方からなんて…何かありましたわね？」
「ふええっ！！鉄華さんになにかあったんですか！？」
『そうなんだ、鉄華がどこかに消えちゃった！』

アグモンの声を模した合成音声で聞こえてきた言葉に二人は目を合わせ頷く
「シュリモン、先に現場に向かって偵察をお願いしますわ」
「了解いたした」
「ウチはイチカさんと一緒に行こうねレオくん、いざという時はお願いね」
「が、がんばる！」
少し頼りない返事をしたのはレオ君ことレオルモン、友達の危機に爪で大地を掴み気合いを入れる

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イチカとモモたちがポリアグモンと合流し、捜索に向かった頃
「ねぇどういうコトー！？ちっとも家に近づかないんだけど…」
「ボクなんか悪いことした？したなぁ…でもアレはポリアグモンが悪いし…」
連絡手段もなく霧の中で誰とも出会えず、ひたすら歩き続けて疲労も限界だった
縁石に腰を下ろしうなだれる、体力も気力もすっかり尽きた
もし、このまま誰にも会えなかったら…不安の影に不意に過去が顔をのぞかせる

「…やだ、やだよぉ…なんでまた、こんな気持ちになんなきゃなんないんだよぉ」

お世話になった施設に居た頃も、ポリアグモンと居た時も忘れていた、本当に一人だけの時間
両親を突然失い孤独と不安に押しつぶされそうになりながら、ベッドで縮こまる自分の姿
その時の記憶と感情がフラッシュバックし、自分の意思とは無関係に涙が溢れる
「こんな気持ちになる位なら、野菜くらい素直に食べときゃよかったぁぁぁ…

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『シュリモンの情報から、街中のカメラで霧の出現ポイントを割り出したよ』
映像には霧への入り口と見える"もや"が映っていたが、それは複数か所に渡って現れていた
「闇雲に探してもキリがありませんわね、アグモンさまこういう時、堀様ならどうなさいます？」
『おそらく連絡手段がなければ不用意に動かない…でも、今日の鉄華は…』

「まって！レオ君なんかみつけたっぽい！」
二人の会話を遮るようにモモが声を上げる
「うん、多分これデジモンの痕跡だよ！まだ新しい、霧の原因がデジモンなら」
「そっか、霧じゃなくってデジモンの痕跡をたどれば本体に行きつくかも！レオ君お手柄！」

「もしもしシュリモン？相手はデジモンの可能性が出てきましたわ」
『今レオルモンが特定したデータを送るから、追跡をお願いするよシュリモン』
イチカたちは霧を生み出しているであろうデジモンを追って動き始める

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あれからどれくらい経っただろうか、不安は一向に解消されないままだった
むしろ時間が経つ程に、この霧の町から出られない事と、些細なことで
ポリアグモンと喧嘩した自分への悔悟が、涙となって流れ続けていた

「ホントにもうやだぁ…ボクをひとりにしないでよぉ…だれか、だれか…」
「野菜なんて食べないとか言ってたけど、本当はちょっとは食べれるし…ぐずっ
ポリアグモンに素直に食べるって言えなくて、カッコつけてただけなのにぃ…」

素直に従いたくない、反抗心で言い訳をした結果がこれだ
野菜を食べないことに拘り、大切なパートナーの言葉を聞かなかった事を後悔した
「ごめん…ごめんね…ポリアグモン」
涙を拭うことも忘れ、自分の肩を抱きながらやっとのことで鉄華はその言葉を口にした

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静かな霧の町に微かに風が通り抜ける、風にのせて「ペタペタ、ペタペタ」と
特徴的な足音が鉄華の耳に入る、焦燥しきっていてもその音は聞き違えなかった
『鉄華！！』
霧の奥に見慣れたホログラムのメッセージウィンドウが輝く

「ポリ…あぐ…あぐっ…うええぇぇん…」
立ち上がろうとして膝から崩れる鉄華を、ポリアグモンが受け止めその平たい腕で抱きとめる
『一人にしてごめん、キミのパートナー失格だ』
「ううん、ボクの方が悪いの…ひぐっ、ポリアグモ…うわああぁぁん」
不安から解き放たれた感情が溢れる、居なくなって、いつも隣にいてくれた君の大切さに気付けた
何度も抱き返しながら、もう離さないとばかりにパートナーの名前を呼んだ

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後からやってきた2人とレオルモンとシュリモンはその光景にホッと胸をなでおろす
先ほどまで主の居るであろう霧に遭遇したものの、中へ入る手段が無かったからだ
それが鉄華謝ると不思議と霧は中への入り口を作り、ポリアグモンが真っ先に飛び込んだので
慌てて後を追ってきてみると、そこには…

「あらあら、いつもドヤ顔でカッコつけてる堀様にもこんな一面が…」
「イチカさんダメですよ、ウチもレオくんや皆と離ればなれになったらこうなりますから」
こちらへ近づく二人に気づくと伏し目がちに顔を赤らめ

「あ…っ！二人とも…今のは忘れて…っこんなのボクじゃないから…」
「いーえ！忘れませんわ、だって」
「鉄華さんとポリアグモンさんの、仲直りの証ですからね」
泣き腫らした目元を覆い、恥ずかしそうな鉄華をモモとイチカも抱き合い慰める

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シュリモンがハッとして視線を霧の奥へ向ける、大きな影が次第に近づいてくる
その正体は緑の巨躯、大樹のような腕をもつモリシェルモンだ
「あれはモリシェルモン…なるほど、それで霧か…」
「モモ、気を付けて！モリシェルモンは本来とっても好戦的なんだ」
「ふえぇ！？そうなの！？」
「堀様、ここは私たちが…堀様？」

「まって、ここはボクが」と手を広げ鉄華はイチカ達を制し、モリシェルモンの前に立つそして
「ありがとうございました」
深々と頭を下げこう続けた
「もしここで迷ってなかったら、ポリアグモンに、パートナーにひどいこと言ってた」
「考える時間作ってくれたんだよね…おかげで色々気付けた、ボクはポリアグモンのおかげで
ひとりぼっちじゃなかったことも、だからもう大丈夫」

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鉄華の言葉をしっかりと聞き入れるとその姿は霧を連れて次第に遠ざかる、微かに微笑んで
そして姿が消えると強烈な西日が差し込む、逸らすように空を仰ぐと夜空が覗く
『鉄華、僕もこれからはもっと、キミの事考えるよ』
「ありがと、それと、ごめんね」
ポリアグモンの手を取り、頭同士をくっつけるそして確かめ合うと二人の方へ振り向き
「あの、さ…二人が良かったらなんだけど、ファミレスで野菜とか食べてみようかな…なんて」
頬を掻きながら照れくさそうに鉄華が提案するとふたりも快く頷いた

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「急な提案ですわね、もちろんよろしくてよ鉄華さん、サラダバーくらい奢りますわ」
「いいですねサラダバー、ウチも鉄華さんにお勧めの食べ方教えますよ」
「じゃあいこっか！サラダバー！」

「「「サラダバー！！！」」」

拳を突き上げ無邪気に笑いあう3人を見守るように後追うパートナーたち
鉄華たちの頭上には見守るように夏の大三角が燦然と輝いていた

おしまい

よい絵本だった…

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泣鉄華感謝

サキュバス呼ばわりされてる…

絵本の雰囲気に合ってていい話だった

絵巻も文章も書きたいように書いたので読みにくかったらごめんなさぁい！！
いっぱい鉄華ちゃんの泣き顔描けてたのしかったです

可愛くて尊い…
これでサラダバー行ってもポテサラばっかり食べたりしないよね？

泣いてると色気があるな堀鉄華

>泣いてると色気があるな堀鉄華
イモゲンチャー心の俳句

>可愛くて尊い…
>これでサラダバー行ってもポテサラばっかり食べたりしないよね？
食べざるを得ない状況

堀…鉄華ァァァッ！

モモイチ鉄感謝

ｷﾀ━━━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━━━ !!!!!

やさしい話で心温まった

堀鉄華
泣いておやさい
たべてるね

盛りシェルモン（ロリもいいよね…！）ﾆｺｯ
みたいなシーンに見えた私はもう駄目です

>>可愛くて尊い…
>>これでサラダバー行ってもポテサラばっかり食べたりしないよね？
>食べざるを得ない状況

野菜にむきあってえらい

好きキライ直そうと頑張っててえらいぜ！

夏らしい感じにまとまったので読んでいただけてとてもありがたいです
余談ですがモモちゃんが千石撫子っぽく見えたのが今回のお話を作るきっかけでした

あー、まよいマイマイ展開か

迷わせてきたけど本質的には良いやつだったなこの怪異…

>迷わせてきたけど本質的には良いやつだったなこの怪異…
心が荒んだ人を霧の町に誘い入れて落ち着くまで迷ってもらうという心優しいモリシェルモンです
鉄華ちゃんは完全な独りぼっちがトラウマのトリガーだったのでたまたま刺さってしまった訳ですね

素敵な絵本ありがとうございます
勇み顔のレオ君は貴重ですよ！
もろもろ終わったらモモの掘り下げは絵本でやりたいな

サキュバスがあつまってきた！

ニンジンの依頼受けたクロウくんも大きな一歩に喜んでる事でしょう

ところでモモちゃんはお野菜大丈夫？好き嫌いとか無いタイプ？

モモは好き嫌いないですよー

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ありがたい…いつも鉄華がお世話になっております

あーかわいい