身体が熱い。息が苦しい デュナスモンとの融合が解けて戻った人としての体には途方もない疲労感が蓄積されていた。この銃型デジヴァイスの機能による副作用 だがまだ終わりじゃない。眼前に佇む月明かりの闇に埋もれてしまいそうな"最後の人影"へと重い銃口を振りかざす ───FE社は許さない。例えこの命に換えても兄の仇を討つまで戦い抜いて見せる。そのためならたとえ誰が相手だろうと、たとえその命を奪うこととなっても。 突発的に始まったFE社との戦闘にいつの間にかそんな覚悟と言葉を、背を預けることとなった『彼』の手前で口走っていた ……そして今、目の前にはデュナスモンで薙ぎ払ったデジモンを使役していたFE社の武装エージェントを瞬く間に、人命の無益な損耗を出さぬまま打ち伏せた『彼』───最後の人影に銃を突きつけて尚、感情が収まらない まさかそれが今朝に『表の顔』を突き合わせたお客さんとの再会だとは露ほどにも思わなかった…それもただのテイマーではない、実践を積み上げ戦い慣れた凄まじい辣腕。 はじめて戦いの場で感じた"安堵"と同時に抱えつづけた"恐怖" きっと出会った最初からその気迫を感じ圧されていたのかもしれないと思う 怖い。そんな彼がもしも敵ならば… さまざまな感情が行き場を求めている。この指先に、トリガーに だというのに彼は―――この永遠に思えた数分の共闘を経て、戦いを見て、言葉を交わし……ついにアンノウンとして相対する彼は黙って話を聞いたままこちらに敵意を向ける事なく、左手に携えた黒金の剣すらも再びデジモンへと姿を変えてこちらを見つめて……私が吐き捨てたいくつもの意思の中から、たったひとつの問いをくれた 「君は……お兄さんを"尊敬"していたのか」 「へっ…?」 ……当たり前だ。だからこんな真似をしている こんなにも涙が止まらない、銃を構える腕も必死に押さえつけてるのに狙いが定まらない そんな私を前に、彼は寂し気に伏せていた目を上げて重く口を開く 「―――そのデジヴァイスで聞いているなデュナスモン。おそらく貴様が行方不明のロイヤルナイツの1人か」 『なっ…!?』 デュナスモンが動じたのを悟った彼が手元に一枚のカードが投げて寄越す 「ドゥフトモンを訪ねろ、僕らは彼女によって結成された組織:BV───"Bootleg vaccin(ブートレグワクチン)"。デジモンイレイザーを討つための足掛かりに遠くない未来にFE社に攻め込む」 「……」 「単刀直入に言う、君の"復讐"を僕らは手伝える……終わらせるために協力してほしい。龍咲凛」 「戻りました司令」 「ご苦労だ影太郎、FE社攻略戦での現地協力者は見つけられそうか」 「はい、おそらく司令も既知の存在です」 「何?…ん、メールだと。差出人は───!?」 「影さん一体誰を引っ掛けたんだよ」 「あんまり半端なメンツ雇ってもなぁ…」 「……生きて、いたのか」 「えっ?」 「───ロイヤルナイツ・デュナスモンとそのテイマー、龍咲凛。彼女らが現地協力者です」 「「はぁぁっ!?」」