二次元裏@ふたば

画像ファイル名:1716692304795.png-(147550 B)
147550 B24/05/26(日)11:58:24No.1193354442+ 13:29頃消えます
深夜、ふと目が覚めた。
身体が熱い。節々が痛む。38度か39度はありそうな苦しさで、全身にふつふつと汗が浮かぶ。
風邪だろうか? 常備している風邪薬を棚から取り出そうと、起き上がるためにシーツに手をついて──激痛が、走った。

「が……っ!?」

まるで、骨折と筋断裂が同時に発生したかのような痛み。どうしようもなくひっくり返って、ベッドに突っ伏す。
腕を押さえようとして、再び身体が跳ねた。また激痛。腕だけじゃない。身体の至るところで。
顔が、歯が、骨格が軋む。お腹の中がぐるぐると蠢き、まるで身体全体が縮んでいるかのように圧迫されている。
全身が汗に塗れる。毛穴の一つ一つが痛みを訴えている。
のたうち回りながら涙と汗と涎と鼻水を垂らして──気絶を迎えるよりも前に、変化が起きた。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
124/05/26(日)11:58:51No.1193354576+
「が、あ、ぁあ……!? きもち、いい……ぁあ……っ!?」

痛みは止まらないが、それを打ち消すかのように、全身が心地よさを訴えている。野太い悲鳴が徐々に甲高くなっていく。矛盾する二つの感覚に体温が更に上昇する。
寝巻きの薄手のスウェットですら暑苦しい。脱ぐのすらまだるっこしい。衝動のままに襟の辺りに手をかける。力任せに左右に引っ張ると、スウェットは容易く引き裂けた。

「……ぁ……」

最後に、大きな快楽と痛みを同時に感じて、腰をのけ反らせて。
ズルりと、頭と腰の辺りから何かが引き出されるような感覚を覚えて、曝け出された胸がぷるんと揺れたような気がして。
俺は、意識を失った。
224/05/26(日)11:59:14No.1193354684+
「かつて私は君に二つのプランを説明したねぇ、トレーナー君。もはや説明も不要だろうが、敢えて再び言葉にしようか」

場所は変わり、アグネスタキオンの研究室。
タキオンは椅子に腰掛けたまま白衣の袖から右手を出すと二つの指を立て、実に楽しそうに唇を歪めて俺に語りかける。

「まず一つはプランA。私自身が速度のその先を確かめる為のプラン。君と私で今なお進化の余地を見せているプランだ。
 そしてもう一つがプランB。これは私が他者にその先を託すプラン。君の熱意でこのプランは破棄されたわけだが、当初の予定通りならカフェかポッケ君が適任者となっただろうねぇ」

そこまでは俺も知っている。だが、タキオンは三本目の指を立てた。
空いている、もう片方の手で、人差し指を立てて。

「だが、さらにもう一つ考えていたのがプランC──最も、これはあまりに現実味が無いため浮かんだ瞬間に却下したがね。C、即ちcopyのCさ」
324/05/26(日)11:59:33No.1193354787+
まさか、それは──詰め寄ろうとした俺をタキオンが平手で制止する。説明の途中だ、と。

「コピー、要するにもう一人の私を生み出すプラン……しかし、あまりにも現実味が無い。電脳空間に作り出すAIではただのシミュレーションと変わりはない。クローンも現代の技術、倫理では到底不可能。ならばプランBを転化し他者を私のコピーと呼べるレベルまで調整するか──しかし、実現できたとしてそれは私と言えるのだろうか?」

タキオンはピョンと跳ねて椅子から起き上がると、俺の両肩に手を置いて目を合わせる。じっと見つめ合ったかと思うと、今度はそのまま俺の背中へと回り込む。
よいしょ、よいしょと掛け声と共に俺の背中を押して、部屋の隅の大きな姿見の前へと押し出してきた。

「つまり、だ。今の君の姿は私の意図したものではないということさ」

その鏡には、二人の『アグネスタキオン』が写っていた。
424/05/26(日)11:59:59No.1193354901+
ブカブカの白衣を制服の上に纏ったアグネスタキオン。彼女は実に興味深そうな眼差しを、もう一人のアグネスタキオンに向けている。
そして、もう一人のアグネスタキオン。ブカブカのジャージを着て、何とかズリ落ちないように腰に手を当てている彼女──それこそが、今の俺の姿だった。
朝起きたらウマ耳と尻尾が生えていて、胸が膨らんでいて、鏡を見たらタキオンになっていて──真っ先に彼女の仕業を疑って、研究室へと雪崩れ込んだ。
そして、身体検査と称してタキオンに全身を調べられて──思い返すと、全身がまた熱くなる。

「考えてみたまえよ。私が脚の脆さを克服するのにどれだけ時間をかけたのかを。君自身の働きを。そう容易く『私』になれる薬なんて作れる筈が無いだろう?」
「それは……そう、なんだけど……」

だとするなら、今の俺はどうやってこうなったのか? いや、理屈は置いておくにしても。

「ふむ、君の考えていることが手に取るようにわかるよ。だが、時には残酷な真実を伝えねばならない。現状では不可能だ。最早カフェの領分かもしれないねぇ」

足元が揺れて、タキオンに支えられた。
524/05/26(日)12:00:23No.1193355010+
書き込みをした人によって削除されました
624/05/26(日)12:01:10No.1193355229+
「……なるほど。それで、タキオンさんが二人いるのですか」

少し遅れて部屋を訪れたマンハッタンカフェが、俺たちを交互に見つめて眉根を寄せた。

「確かに……今のあなたは揺らいでいる。だけれど、下手に触れば割れてしまう。たまごにはなりたくないでしょう?」

唯一の希望であるカフェですら、お手上げとのこと。こうなるともう……受け入れるしか、ないのかもしれない。

「はぁ……わかったよ……」
「おや? 随分と物分かりがいいじゃぁないか」

タキオンとカフェというトレセンきっての胡散臭い二人組と長く絡んでいたせいか、この異常事態もすんなりと受け入れることができた。
或いは、現実逃避で頭脳が麻痺しているのかもしれないが──喚いても仕方ないのは、確かなことだ。
724/05/26(日)12:01:53No.1193355452+
「……私に何かできることがあれば、ご遠慮なく」
「ありがとう、カフェ」
「ふぅン? 何やらトレーナー君に対して甘くないかい?……まぁイイ、一先ずティータイムにしようじゃないか。糖分補給をしながら今後の方針について話し合おう」

タキオンが珍しくテキパキと紅茶を用意して俺に振る舞った。一滴の薬も入れることなく。彼女なりに気を遣っているのかもしれない。有り難く受け取ることにした。

「む?……トレーナー君、その砂糖の量は?」
「え?……あれ?」

タキオンの指摘で気付く。無意識のうちに、大量の角砂糖をカップにぶち込んでいたことに。砂糖と紅茶が1:1の配分で──タキオンのお気に入りの飲み方と同じことをしていた。

「……なるほど! 実に興味深い! 嗜好まで私と同じになっていたとしても、それは体験によって気付くべきものだ! だが君は私と同じ身体となって、初めて紅茶を飲む前から無意識にその配分を口にしようとしたわけだ!」
「あ……えっと、つまり、無意識のうちに……中身まで、タキオンに近付いて……?」
「その可能性は高い! いやはや、まさか妄想に過ぎぬ筈のプランCがここで実現しようとしているとは!」
824/05/26(日)12:02:15No.1193355556+
タキオンは興奮している。カップを手に取ったまま震えているものだから、ビチャビチャと紅茶を床に溢している。
一方の俺はイマイチ実感が無い。本当に内面までタキオンに近付いているのだろうか。今のところは俺は俺のままだが──そのうち、頭の中までタキオンになってしまうのだろうか?
興奮するタキオンと、首を傾げるタキオン(俺)。そんな俺たちを見て、カフェが控えめに口を開いた。

「……トレーナーさんがタキオンさんになったら、誰がタキオンさんのお世話を?」

その一言で、タキオンが固まった。

「……トレーナー君。君を元に戻す方法を探そう。早急に!」

変わり身の速さに、カフェが眉根を寄せて口をへの字にした。
多分、俺も同じ顔をしていると思った。
924/05/26(日)12:02:49No.1193355711そうだねx9
タキオンにされてタキカフェに食われたいと思ったら方向性がズレた
1024/05/26(日)12:05:53No.1193356789そうだねx3
身体をバキバキにされて変身するのいいよね…
1124/05/26(日)12:07:42No.1193357481+
変形痛って痛み凄そう
1224/05/26(日)12:13:26No.1193359605+
モルモットくんが私になったら誰がお弁当を作ってくれるんだい!?
1324/05/26(日)12:20:16No.1193362108そうだねx2
でもいつ自分も本当に作れなくなっても大丈夫なようにレシピだけでも残しておこうとして
レシピが完成した次の日からタキオンに詰められても「何で俺が作るんだ…?」と返す元モルモット君は良いと思うし
それに気づかずずっと作ってもらえると思ってたタキオンは良いと思う
1424/05/26(日)12:23:07No.1193363058+
次のモルモットを探す元モルモット君を必死に正気に戻そうとするタキオンの姿はきっと美しい
1524/05/26(日)12:23:07No.1193363059+
>でもいつ自分も本当に作れなくなっても大丈夫なようにレシピだけでも残しておこうとして
>レシピが完成した次の日からタキオンに詰められても「何で俺が作るんだ…?」と返す元モルモット君は良いと思うし
>それに気づかずずっと作ってもらえると思ってたタキオンは良いと思う
えー!?
1624/05/26(日)12:24:27No.1193363485+
モルモットくんも自我を失うのは怖いから今まで以上にタキオンに尽くすようになって共依存みたいになってほしい
1724/05/26(日)12:29:25No.1193365007+
コピーだから走っても同じケガをしそう
1824/05/26(日)12:37:23No.1193367543+
>コピーだから走っても同じケガをしそう
つまりタキオンはどう走ったら壊れないかの実験を自分の体で行える!
1924/05/26(日)12:47:11No.1193370894そうだねx2
同一化モノ好き
最近また増えてきて嬉しいよ
2024/05/26(日)13:02:07No.1193375963そうだねx2
目が覚めたらTSも良いけどこういう痛い過程を伴ったTSも良いもんだな…えっちだな…
2124/05/26(日)13:04:24No.1193376722+
じっくりじっくり変化を自分で認識しながら日毎に変わっていったりするのも好き
2224/05/26(日)13:10:39No.1193378693+
ウマ娘として過ごす内にいつの間にかウマ娘としての自分の方が主で男やトレーナーだった頃の方が異物やおかしなものとして認識するのも良いよね…


1716692304795.png