二次元裏@ふたば

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29080 B21/05/03(月)00:32:20No.798736236そうだねx2 01:40頃消えます
「運動学習、というものを知っているかな?モルモットくん」
物々しい字画の言葉が彼女の口から出るのは、自分たちにとって一種の合図である。
「まあ、学生の頃に聞き齧った覚えはあるけどね…座る?」
「ああ、すまないね…では神経生理学の復習といこうじゃないか」
棚の奥からクッキーを出して紅茶を注ぐ。
本日の実験の講義は図の講釈から始まるようだ。彼女は近くにあった紙を取って絵を描き始めた。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
121/05/03(月)00:33:03No.798736487そうだねx2
「スポーツに携わる者なら覚えがあるだろうけれど、そうでなくても日常生活で繰り返してきた動作は、それを行うときに一々頭を使いはしない。暫くその動作をしていなくても、ある程度繰り返せば感覚が蘇る。習いたての頃は手本を見ながら書き順を意識して書いていた漢字が、慣れれば考えなくても目を瞑りながら書けるようになる。
所謂身体が覚えている、という経験は誰にでもあることだよ。それがスポーツの分野でなくとも」
競技の初心者は、基本の動作を逐一意識し、次に何をするかを考えながら練習をする。しかし、それを積み重ねるうちに考えなくても一連の動作をスムーズに行うことができる。
練習の完成形だ。トレーナーはそれを目指して選手をコーチングする。
彼女がペンを離すと、紙には脳と脊髄の図が描かれていた。
221/05/03(月)00:33:24No.798736600そうだねx2
「人間の記憶は大脳皮質と海馬によって形成される。しかし、海馬が作る記憶は陳述記憶といって、内容を言葉にして説明できる類のものだ。
今きみに話している脳科学の知識や、今朝食べた食事のメニューが思い出せるかどうか、などといったことがこれにあたる」
「わかるよ。ちなみに今日の朝はどうだった?」
「イングリッシュ・ブレックファストはすっかりものにしたようだね、あとはサラダの量を少し増やしてくれたまえ…むぅ、講義の途中だよ?からかうのは感心しないな。
しかし先程述べたような運動の手順の記憶はこれらとは異なる」
321/05/03(月)00:33:50No.798736737そうだねx3
脳の下側を指していたペンが、後側に付いている塊にスライドした。
「運動学習に大きく寄与しているのは、大脳ではなく小脳なのさ。ここにダメージを受けた患者は、物を触ろうとしてもそれにうまく手を伸ばせなくなるし、目を瞑ると真っ直ぐ歩けなくなる。
小脳のプルキンエ細胞の樹状突起を見たことがあるかい?あれは見事なものだよ、全身の神経細胞の中でももっとも高度に発達したネットワークを持っているのだからね」
421/05/03(月)00:34:03No.798736819そうだねx2
「なら、今回はあの装置で小脳を刺激する実験?」
指差した先には、数日前からトレーナー室に置かれていた見慣れない器具がある。正確に言えば、2つのうち1つが見慣れない器具だが。
1つはよく見るものだった。彼女が時折使うVRヘッドギアとそのゴーグルである。しかし、その下に畳まれている黒い布のようなものは初めて見る代物だった。
「察しがいいねぇ。ただ、これは直接小脳に電流を流したりするようなものではない」
席を立った彼女は、畳んでいたものを広げてみせた。出てきたのは、ダイバーが着るぴっちりとした潜水服のような見た目のボディスーツだった。
「このスーツは、皮膚に微弱な電流を流すことで全身の感覚を脳に直接入力する装置だよ。例えば、脚の感覚神経の伝導路を刺激すれば、実際には走っていないのに地面を踏みしめる感覚や筋肉の張りが味わえる」
521/05/03(月)00:34:31No.798736968そうだねx2
「それをどう使うんだ?」
「小脳が記憶するのは何も運動の手順だけではないよ。何度も行った手続きの内容は、全て小脳の働きによって記憶される。
プロの棋士が指し手を導くときに使うのも小脳だと言われている。きっと、ウマ娘たちが無意識に行っているレースのペース配分もね」
なんとなく想像がついた。これを使えば、精巧なレースのシミュレーションができるということだろうか。
「これを使って、コンピューターで計算した理想の走り方をウマ娘に繰り返し体験させ、その感覚情報を小脳にフィードバックする。
何度か繰り返せば、実際に走ったときの走法も先ほどの原理で改善されていくはずさ。
イメージをつかむというのが重要なのは私もよく承知している。君たちが言葉を尽くして説明していたことを、文字通り頭と体に直接叩き込めるというわけだね」
621/05/03(月)00:34:50No.798737068そうだねx2
主旨はわかった。では早速試そうとスーツに手を伸ばしたところ、彼女に遮られた。
「ああ、すまないね。ここまで説明しておいてなんだが、今回の被験者は君ではないよ。
さっきも言ったように、これは普段からレースを走る選手が実際の感覚と一致させてこそ意味がある実験なんだ」
そう聞かされて手を下ろしたが、少しだけ落胆していた。ウマ娘の走っている感覚を体験できれば、タキオンとのトレーニングにも活かせると思ったのだが。
「くく、そうがっかりすることはないよ。そのうち君にも被ってもらうことになるだろうからね。
ただ、今回はひとり志願者がいるんだ」
721/05/03(月)00:35:36No.798737306そうだねx2
驚愕を隠せなかった。今や学園中にその名が知れ渡っている実験狂いの彼女に、自分の他に自ら志願して協力する者がいるなんて。
誰かと聞くと、聞き覚えのある名前が出てきた。最近たまにアドバイスをしている、新入生のウマ娘だった。
「大丈夫?安全性とか…ちゃんと実験の内容は説明した?」
「安心したまえ、危ない実験とサプライズは君にしかやらないと決めているんだ…流石に新入生の身に何かあったら言い訳がつかないからね、安全性の担保されたものを使っているよ」
それならいいが、万が一のことは考えておこうと心に決めた。それにしても、どうして彼女とそんな話の流れになったのだろう。
821/05/03(月)00:36:09No.798737490そうだねx2
ああ、そんなことか。そもそも彼女は、君が私の担当だったから声をかけたと言っていたよ。ならば、私が直接手助けをするのもそう不自然なことではないだろう?」
「それもそうだけど…いつものタキオンなら、研究の時間が削られるとか言って相談とかは受けないと思ってたから」
「その研究に役立つなら話は別だよ。協力者が増えるなら、私も多少の手間は惜しまないさ…ああ、もういい時間だね」
時計を見た彼女は、背伸びをして部屋から出ようとしていた。両手に例のヘッドギアとスーツを持って。
「出掛けるの?」
「ああ、そろそろ件の彼女と約束していた時間なんだ。
夕方には戻るよ。夕食はいつも通り用意しておいてくれたまえ」
扉の前の彼女に、最後に1つだけ質問をした。
「自分でこれ、使ってみた?」
「…ああ、いつも走っている感覚と殆ど変わらなかったよ」
921/05/03(月)00:36:19No.798737547そうだねx2
独り残された部屋で、改めて彼女の素質に舌を巻く。普段の走りとシミュレーションの走りが殆ど変わらないということは、彼女の走り方は理想のそれに極めて近いということに他ならない。
惚れ直した、と言っては大袈裟だが、やはり彼女は凄い。それがわかっただけでも、今日は実りのある日だった。
1021/05/03(月)00:36:47No.798737699そうだねx2
彼に言っていないことが2つほどある。
1つは、この装置は設定を少しいじれば予め用意した視覚映像を直接脳に流し込むこともできるということ。
今、ベッドに横たわっている彼女には、私が予め計算したフォームで走ったときの景色の変化を見せている。これは彼に説明した通りのものだ。
但し、それだけではないが。

実験を終えて、彼女は随分といいインスピレーションを得たようだ。
それは何より。フォームの映像をそれだけ良く体験できたということは、もう1つの映像もしっかり頭に入っていることだろう。
1121/05/03(月)00:37:11No.798737838そうだねx2
君がモルモットくんに声をかけたのは、最近頓に結果を出している選手の担当だったから、というだけではないだろう?
少々おいたが過ぎるね。
君が彼に会うときだけアクセサリーと香水を変えていたり、制服を着崩して胸元を強調したりしているのに、私が気づかないとでも思っていたのかい?
まあ、あれをきちんと見たなら、今後はそのようなこともなくなるだろう。
洗脳だって?人聞きの悪い。
まあ、教育というものは大なり小なり洗脳の要素を含むものではあるけれど。


「いや、礼を言うのはこちらの方だよ。君の協力で私も貴重なデータが取れた。
それはそうと、私とモルモットくんの間柄についてはどう思う?」
「ハイ…タキオンサントトレーナーサンハアイショウピッタリダトオモイマス…ウレシイナア…」
サブリミナル映像はよく効いているようだ。フォルダの中に数多ある彼との写真から厳選したものを見せたのだから、当然のことだが。
「わかってくれて嬉しいよ、引き続き実験への協力もよろしく」
1221/05/03(月)00:37:41No.798738015そうだねx2
この装置の開発はほぼ成功したと言っていいだろう。これがあれば、走る回数を抑えても感覚を鈍らせずに済む。脚への負担も軽減できるだろう。
彼に言っていないもう1つのことだ。言う必要もないが。
今は、少しでも長く走っていたいからね。君が思うよりきっと、私には君が必要なんだから。
だから、ちゃんとそばにいてね。
私のモルモットくん。
1321/05/03(月)00:37:47No.798738067+
コワ〜…
1421/05/03(月)00:38:54No.798738490そうだねx1
エンドレスワルツ見てたら上げるの遅くなっちゃったけど昨日の夜上げたやつの続きっぽいものです
su4820308.txt
1521/05/03(月)00:39:28No.798738695+
独占力のヒントレベルが上がった
1621/05/03(月)00:39:45No.798738789+
エンドレスワルツなら仕方ない
1721/05/03(月)00:40:14No.798738948+
少しマッドすぎない…?
1821/05/03(月)00:41:36No.798739431+
う〜〜ん…まあ代償は与えてるからセーフ!
1921/05/03(月)00:43:57No.798740204そうだねx1
ちなみにこのマシンの効果は推しカプの少し強めの布教くらいのものです
かわいい嫉妬心と思ってやってください
2021/05/03(月)00:45:11No.798740613+
>ちなみにこのマシンの効果は推しカプの少し強めの布教くらいのものです
>かわいい嫉妬心と思ってやってください
そうかな…そうかな…?
2121/05/03(月)00:50:01No.798742281+
>かわいい嫉妬心
タキオンでなければ怖いになってた
2221/05/03(月)00:53:03No.798743294+
>>かわいい嫉妬心
>タキオンでなければ怖いになってた
なんですか
タキオンならこれくらいやりかねないって言うんですか
2321/05/03(月)00:55:31No.798744062そうだねx7
>>>かわいい嫉妬心
>>タキオンでなければ怖いになってた
>なんですか
>タキオンならこれくらいやりかねないって言うんですか
はい…
2421/05/03(月)00:56:04No.798744254+
>今は、少しでも長く走っていたいからね。君が思うよりきっと、私には君が必要なんだから。
怖いし重い…
2521/05/03(月)00:59:41No.798745438そうだねx4
でもさ
>君が彼に会うときだけアクセサリーと香水を変えていたり、制服を着崩して胸元を強調したりしている
流石に人のトレーナーにこんなことしてたら怒られても仕方ないよね
2621/05/03(月)01:01:39No.798746009そうだねx4
>でもさ
>>君が彼に会うときだけアクセサリーと香水を変えていたり、制服を着崩して胸元を強調したりしている
>流石に人のトレーナーにこんなことしてたら怒られても仕方ないよね
テイオーもそうだと言っています
2721/05/03(月)01:01:52No.798746058+
>でもさ
>>君が彼に会うときだけアクセサリーと香水を変えていたり、制服を着崩して胸元を強調したりしている
>流石に人のトレーナーにこんなことしてたら怒られても仕方ないよね
気に障ったなら謝ります
でも…「彼女」じゃないですよね?
2821/05/03(月)01:02:26No.798746168+
その威勢が戻ることはなかった
2921/05/03(月)01:10:43No.798748403+
>>でもさ
>>>君が彼に会うときだけアクセサリーと香水を変えていたり、制服を着崩して胸元を強調したりしている
>>流石に人のトレーナーにこんなことしてたら怒られても仕方ないよね
>気に障ったなら謝ります
>でも…「彼女」じゃないですよね?
この日以降
彼女は変わった
3021/05/03(月)01:11:46No.798748690+
>この日以降
>彼女は変わった

>ハイ…タキオンサントトレーナーサンハアイショウピッタリダトオモイマス…ウレシイナア…
3121/05/03(月)01:15:39No.798749740+
>>この日以降
>>彼女は変わった
>>ハイ…タキオンサントトレーナーサンハアイショウピッタリダトオモイマス…ウレシイナア…
いたいけなポニーちゃんに対して大人げないが過ぎる…
3221/05/03(月)01:30:10No.798753449+
これモルモット君に刷り込みとかしないよね…?


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