界隈への風評被害が渦巻く中、俺は義憤に駆られて、楠〇桜への自宅凸を遂行し、そして、失敗した。 縛り上げられ身動きが取れなくなった俺はなぜか、電気按摩で股間を苛めぬかれていた。 「やめろ、もう、家に返せよっ……」 股間への強い刺激を耐えながら、スマホを眺めつつ配信を続ける彼女にそう言った。 怠そうにこちらに目を向ける彼女。リスナーに向けていたにこやかで可憐な少女の面影は消え、軽蔑と嘲笑の入り混じった顔をしている。こんな顔ができてしまう子だったなんて。 彼女は配信の音声をミュートにして俺を睨む。そしてかかとの位置を金玉の辺りまでずらし、ぐりっと踏み込んだ。快楽に変わりつつある痛みに絶頂し、俺は下着を汚す。それを見て満足した彼女は視線をパソコンに戻し、にこやかに配信を続けたのだった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 数日前、彼女の書き込みと思われるものから情報を精査し、ファンから反転してしまった熱意が原動力となって、彼女の家にたどり着いた。 最初に顔を合わせた時、彼女は少し驚いた様子だったが、すぐに状況を理解したようで、しちめんどくさそうに頭をかいた。 俺はネット越しにしか見れなかった彼女を間近に見て、こんな状況でありながらも少し感動した。けれどもすぐに当初の目的を思い出し、言いたいことを言ってやろうと思い直ったのだった。しかし、背後から来ていた何者かの気配に気づかず、どしんと、首に強い衝撃を受ける。落ちていく意識の中で、彼女はつまらなさそうに、スマホをいじっていた。 目が覚めると、俺は手足を縛られ、簀巻きにされていた。周りを見て、女の子向けの家具、配信用のパソコンなどがあることから、彼女の部屋に転がされているのがわかった。 「し、〇桜ちゃんこれは……」 「ちょっと声なんか出さないでよ」 彼女はヘッドセットを頭に装着していた。時計を見て見ると、今は19時。ちょうど彼女の配信予定の時間だった。 「人気商売なんだから、予定に穴開けるわけにもいかないでしょ……次声出したら殺すから」 そうすごまれて、寝転がる俺の後ろに先ほど襲われた男の気配を感じた。今度は本気で殺されるかもしれないと、冷や汗が流れる。 俺の緊張をよそに、彼女の放送はつつがなく始まった。 「みなさんこんばんは〜楠〇桜です…あっ、〇〇さんメンバー入り、ありがとうございます」 いつもの彼女の配信だ。アンチに反転した今になってそれを裏側から見ることが初めてできたのは、なんとも皮肉だった。 今日の彼女のゲームは、麻雀、それも、雀卓四面打だった。これは彼女を初めて知った配信内容だった。彼女は得意のマルチタスクで、全卓を把握しつつもチャットに反応していた。 「そうですねー、左上の配牌、悪くないけど……川みると不穏なんで……流します。あ、右下ツモですね、裏ドラは……乗った!嬉し〜い!……ちょっと!誰がマシーンですか!もー!」 楽しそうに実況をする彼女の後ろで、俺は縛られているのも忘れてそれに魅入ってしまう。やはり、何かの間違いだったのだろうか、あの話は。 しかしふと、彼女がスマホを手に取り、何かを眺めた後、眉を潜めた。そして彼女はタスクの一つを割いて、スマホにスワイプを重ねた。そしてPC画面に顔を向け笑顔を見せながらも、視線はちらちらとスマホの方にやっていた。とん、とんとタップし続けて、彼女は何かを更新しているようだった。 「……やっぱりマジだったんだ」 彼女が見ているのは、おそらくネット掲示板だった。悪い噂が立ち、真実は定かではなかったのだが、今、はっきりとこの目で確認してしまった。 放送中にも関わらず、彼女は自分のアンチ・スレッドを覗いて書き込んでいたのだ。 言い争いはヒートアップしているようで、彼女がスマホを触るペースは上がっていった。そのうち何かミスをしたようで、彼女は小さく舌打ちをし、スマホを遠ざける。 彼女は音声をミュートに切り替えて、重々しく呪詛を吐いた。 「……うっざぁ……」 画面には『投げキッスたすかる』と鮮やかな色のついたチャットが並んでいる。運がいいのか悪いのか、ちょうどその時卓の一つが裏目に出たようで、かなりの点数を振り込んでいた。リスナーはてっきりそちらについてのことだと勘違いしたようだった。 それに気付かずむくれていた彼女は、急に何か思いついた様子で笑顔になり、配信に戻った。そしてすぱっと全ての卓を終わらせて、お手洗いと称して配信を中断したのだった。 彼女はヘッドセットを取り外し、椅子をくるりと反転させて俺の方に向き直った。きっと睨む俺だったが、怯むことなく彼女は見下ろしてくる。そして後ろの男に目配せをし、男はそれに頷いたようだった。 突然、男に体中をまさぐられる。 「さ、触るな!」 俺は身をよじり逃れようとするが、手足の自由が効かずされるがままだ。男はポケットからスマホを見つけて、〇桜に渡した。彼女は満足そうにそれを手にとる。画面を開くが、ロックに阻まれたようだった。 「ねぇ、パス何?」 「言うわけないだろ、返せよ!」 問答をしている間に男が手際よく俺から財布を抜き取り、身分証も彼女に渡していった。彼女はそれを見て生年月日等を打ち込んでいくが、それでもロックは解けないままだった。 舌打ちした彼女は唇に手を当てて考える。俺の額を冷や汗が流れた。暗証番号というのは本来持ち主しか知り得ないものだ。しかし、今回は唯一彼女には例外だった。 彼女が人差し指を動かす。タップされていくその位置が見覚えのあるもので、俺は思わず叫んだ。 「やめろ!」 無情にもタップが終わると、スマホのロックは解除されて画面が開かれた。彼女は口角を上げ、そして俺を見て鼻で笑った。 パスは0401、彼女の誕生日だったのだ。ファン時代の残滓に俺は顔を真っ赤にして、消沈した。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 彼女は配信に戻り、横目での掲示板への書き込みも再開した。俺は自分のスマホに入っている数々のSNSの存在を思い肝を冷やしたが、彼女は匿名掲示板にのみ張り付いているようで、そこだけは安心した。しかし、何も配信中にやることではないのではないか。配信画面上で適当に流されていくスーパーチャットというものに身に覚えがあるのが、どうにも悲しかった。 「……」 そしてまた、彼女の顔にはまた苛立ちが募ってしまっていた。レスバトルの雲行きが怪しくなってきたようだ。次第に限界が来たようで、彼女は今日何度か目の配信の中断をし、スマホを振りかぶり俺に投げつけてきた。それがちょうど鳩尾に当たり、もんどりうつ。 「むっかつくバカアンチども……。私、私こんなに頑張ってるのに……!」 彼女は悲劇のヒロインのように涙ぐんだ。その姿を見て、内心俺は呆れた。 「その頑張りをファンだけに向けたらこうはならなかったんじゃない……」 「……は?」 ついうっかり、言葉を漏らしてしまう。しまった、と気づいた頃にはもう遅く、彼女は俺を見下し、睨みつけていた。 「あんた今の状況わかってんの?」 わかっている。俺はそもそもお気持ちを表明しようとして凸を失敗し、こうして縛り上げられている。しかも、彼女にとっては普段手を出せない、憎いはずのアンチ。今、俺はまな板の上の鯉なのだ。 彼女は立ち上がり、俺の脇腹をかかとで踏んづけ、ぐりぐりと押し潰しながらなじった。 「警察に突き出されても文句言えないんだからね?」 「うぐぅっ」 それはお前だって同じだ、そう言ってやりたかったが、踏む力がだんだんと強くなり、息が肺から漏れるだけだった。しかも、女の子の部屋で、元は憧れの子になじられ、弄ばれているうちに……体中の血が一点に集まっているのがわかった。俺はなんとかしてバレないようにうつ伏せになっていたが、彼女に蹴り上げられ、仰向けになってしまう。 「…………きっしょ」 股間が隆起しているのを見て、彼女は本気の侮蔑の目を向けた。 負けずに俺も強がり、睨み返して見せる。しかし、どくどくと脈打つ陰茎がその迫力を著しく弱めた。 しかし、少しして〇桜はそこに足を乗せたかと思えば、ガシガシと陰茎を擦り始めた。 突然の行動に驚き、腰を引いたが、逃れられない。彼女は顔色一つ変えずに俺を罵った。 「結局強がろうと女性経験ゼロのキモいオタク君だもんね。凸までしてきたアンチのくせに」 そういう彼女の足は止まらない。同室していた男も慣れた様子で、身動き一つ取らなかった。 衣服と外圧に擦られ、我慢汁が垂れ流しになる。 「お前みたいなクソ女にこんなことされて、喜ぶわけ、ないだろ…!」 「あ、そういうのいいから」 興味もなさそうにスマホをいじりながら、言葉を遮られる。彼女が見ているのは俺のTwitterのようで、そこには推しへの配信の感想や、拙い自作のファンアートが並んでいた。 「は?△△?……まぁ馬鹿でマウント取りやすそうだしね、オタク受け良さそうなガワだし」 マウント?そんなこと考えたこともなかった。突然の推しへのディスに、頭がカッとなる。 「そんな気持ちで推してる訳ないだろ!お前そこまで嫌な奴だったのかよ!この……クソ女!」 そう言われて苛立ったのか、乱雑な彼女の足コキが勢いを増す。 次第に陰茎が限界を迎え、とうとうパンツの中で暴発した。 彼女はすっと身を引き、体をくの字に反らして痙攣する俺を眺める。その時初めて、彼女は俺に敵意のない笑みをこぼしていた。 吐精し尽くした俺は男に下着まで脱がされ、下半身を露出させられた。〇桜はスマホを手にとり、情けなく腹回りに精液をぶち撒けた俺を写真に収めると、続いて俺のスマホを手にとった。 「このスマホは預かります。それと、今日のこと他言したら画像をそこら中にばら撒くから」 彼女の言葉に戦慄した。大事な情報をネットの海に流出させる力は、残念ながら俺が一番知っていたからだ。やると宣言したらやるという凄みがあった。 「明日の配信一時間前にまたここに来るように。遅れてもばら撒くからね」 そう告げられて俺は外に放り出され、逃げるようにして帰ったのだった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 翌日、誰にも言えないまま、俺は泣く泣く彼女の家に向かった。道中配信枠の待機場を覗くと、こんなことになっても彼女を応援するファンたちが自治を続けていた。俺も前まではあちら側だったというのに、変わってしまうものだ。 家にたどり着いた矢先、俺はまた手足を縛り上げられ、今度は猿轡まで咥えさせられて、彼女の足元に設置された。 今日の彼女は素足だった。指の腹で体を撫でられ、時折爪を食い込ませたりしてくる。 彼女の麻雀配信が始まった。今回は雑談枠も兼ねているようで、さほど画面に集中する必要もなく、エゴサーチが捗っているようだった。よせばいいのにまたレスバトルが始まったようで、例に漏れずミスを犯し、何かしくじった様子だ。しかし彼女は、配信を中断することなく、足元を強く踏みにじる。ちょうどそこは俺の股間部分で、彼女の怒りのボルテージが上がるほど、足癖は悪く、そして激しくなっていった。 どうにも俺はストレス解消用の目に見えるアンチとしてここに置かれているらしかった。 こんな相手に好き放題されまいと理性を強く保ったが、執拗な彼女の電気按摩に耐えきれず、俺は情けない呻き声を上げてしまう。絶頂を迎えようとしたその瞬間に、彼女の苛立ちも最高潮に昇ったらしい。俺の金玉を思いっきりその脚で蹴り上げたのだった。俺は声にならない悲鳴をあげてびゅくびゅくと精液を垂れ流しながら失神する。〇桜は初めて机の下に目をやり、白目を向いて気を失っている俺を見てにまりと笑い、気を良くしたようだった。ようやくスマホから目を離し、配信に目を向ける。 「……はい、戻りました〜……悲鳴?……やだなぁ〜違いますよ。私猫、猫飼い始めたんです。ずっと飼いたいな〜って思ってて……。うるさくしたらごめんなさい。……〇〇さんスーパーチャット『餌代』、ありがとう〜……」