幾つの嘘を重ねただろうか。もはや己をも騙すことのできぬ嘘を。 むしろ彼女は、自ずとこぼれるその声を、快楽を強める材料にしていたのではなかったか? 違う、やめて、もう――と、男を拒絶する言葉は、その悲痛さに反比例して甘ったるい。 息継ぎ一つ一つも、胎をほじくり返されて喘ぎ散らす雌臭さに彩られて、 一層、“彼”を興奮させるのである――そしてまた、腰を振ることをやめもしない。 そもそも、彼女の両手は空いている。押し倒された格好とはいえ寝台に四つん這いになり、 暴れ回る乳房のぶら下がる上半身と、腰を打ち付けられて尻肉をたわませる下半身の重みを、 自ら受け止める格好だ。そして黄金色に輝く竜の尾の力は、彼女の体重を支えるに余りある。 その気になれば、尻尾を軽く振るだけで背後の男の半身は吹き飛んだであろうし、 あるいはそこまでを望まぬとも、手をどんとつけば体勢を整えることはたやすい。 声と声の合間の生々しい水音、肉と肉のぶつかる音とが、彼女を縛りつけているのだった。 男の名を彼女は知らない。にも関わらず、肌を重ねるまでに大した時間を要さなかった。 雄の形に悦び震える膣肉は、己にないものへの嫉妬に悶えているかのように、 ぴったりと彼のものに吸い付いて、一向に離れようとはしないのである。 そのことを男に指摘されるたびに――やはり否定の言葉が、また甘やかな響きを持ってこぼれる。 絶世の美女が――それでも自分のものを咥え込んで放さないという事実は、 ますます興奮を強くする。腰の動きも、止まるどころか速くなっていく―― これで旅の女騎士というのだから、男の自尊心はなおさら慰められるのであった。 彼の生活圏において、爵位はおろか騎士位を受けた人間と話す機会などありはしない。 ほとんど雲の上の相手――それが、ただ一時の疼きのために、雄に身体を明け渡している。 騎士様も所詮は女か、と男は隠しもせずに嗤うのであった。 だがその言葉にも、彼女は抗えない。いや、そうして罵られれば罵られるほどに、 身は火照り、濡れて、奥の奥へと彼を誘う。その本心がどうであれ。 凛としたその声色は、今や雌臭い響きにすっかり置き換わっている。 こみ上げる快楽を噛み潰そうとする息継ぎさえ、雄を酷く煽り立てる音色を奏でる。 彼女にはそれが、まるきり他人の声のようにも聞こえるのであった―― そしてそれが耳に届くたび、“彼”はいきり立つ。興奮がさらに、上の次元へ向かっていく。 取るに足らないような男の口車に乗せられて、まんまと身体を貪られる―― そんな、どうあっても恥としかならないような現状に溺れてしまっている。 今日のお宿をお探しですか。荷物をお持ちしましょうか。こちらの部屋はいかがですか。 身体の凝りをほぐして差し上げましょうか――ありきたりの、下心しかない言葉の数々。 いくら世間擦れしていない生娘とはいえ、この女の騙されやすさは常軌を逸していた。 まるで自分から、わざと罠に掛かりにいっているようなものではないか。 その割に――こちらに手を掛けるでも、脅しをしてくるでもないのである。 易々とその白い柔肌に触れることができたとき、男の側が却って驚くぐらいだった。 彼女の顔は、薄っすらとした不審と考えのない人の良い微笑みの裏に、 本人すら自覚していないような、破滅願望に近い感情さえ纏っているようでもあった。 声の上ずりはもう止まらず、彼女の両手はもう上半身を支えるだけの力を持たない。 自ら乳房を枕か何かのように胴の下に敷いて押し潰して、体重をそこに預けているのである。 胸元の開いた服、そこに見えていた深い谷間――男は当然、鼻の下を伸ばしていた。 その視線に彼女は気付いておらぬわけもなかったのに――みすみすと、彼の前に、 隠されていた下半球ごと、柔らかく重みのある全体をさらけ出してしまっている。 男は背後から、ぐっ、と身を乗り出してその白い直肌を握りしめた。 ただ体重を乗せているだけだった乳房へと、強引に後ろから掴み掛かられて、 女は反射的にやめろ、と言った――言おうとした。だが当然、その言葉は輪郭を保てない。 男の指が閉じたり開いたりを繰り返しながら、上下の反転した大きな丘を、突端へ降りていく。 指の跡が女の柔肌を蚯蚓のように伸びていき――直に、乳輪の縁に到達した。 間髪入れず、親指と人差し指、中指からなる三角形の中心にぷっくりした乳頭が吸い込まれ、 男の握力によって、ぎゅううっと、強く絞り上げられるのであった。 女の尻尾――竜の尻尾は、ぴん、と真っ直ぐに伸びたままで無抵抗に成り果てている。 ようやくたどり着いた乳頭に、男は左右で不均一に、不規則な刺激を繰り返し与えていく。 右を強く潰したかと思えば左を指先でころころと弾くように転がし、 予兆なく力具合が反転したかと思えば、また薄っすらと予期させるような規則性を持ち―― その間も、密着させた腰をぐりぐりと押しつけながら、奥へ、奥へと鈴口をねじ込んでいく。 女の口からは、意味のある言葉は出ず――深く長い、絶頂を噛みしめる声だけが吐かれている。 男は穂先に、何やら蠢くもののあることを感触にて知った――それは言うまでもなく、 性交、交尾の本来的な目的である種媚びのための、子宮口のひくつきであった。 雌に、種を欲しがられて――子を産みたい、と全身にてねだられて、悦ばぬ雄はいない。 男は両手にいっそう強く力を込めて女の被虐心を煽ってやるとともに、 腰をぴったりと、その肉厚の尻に押しつけて、最奥目掛けて狙いを付けた。 孕め――その呪詛が吐かれるや否や、“彼”の全身はびくんと強張り、動けなくなった。 精を卵に向けて放つ、雌雄の本能的な結びつきの前には、何も無力であった。 胎の中に満ちる、熱く、重いもの。粘り気を帯びて、子宮口に呑み込まれていくもの。 自分の身体が、一匹の雌として、受精のために全力で雄を受け入れている―― そのことを自覚するたびに、全細胞が震える。脳の回路が、ぶちぶち切れてはつなぎ直される。 名も知らぬような相手に犯され、まんまと純潔を奪われただけでなく―― 生まれ落ちてから、使う想像すらしなかった箇所が、その機能をまさに果たそうとしている。 そしてその刺激に、自分が作り変えられていくことを――恐ろしいと思えない自分がいる。 孕め、と言われるということ。他でもない自分のこの腹が、十月十日掛けて膨らむということ。 そこに生命を宿すという、女にしか、雌にしかできない神秘の御業―― その当事者に、“こちら側”でなってしまう。この身体にて孕み――やがて産むということは、 かつての、いや、今の彼女には、あまりに荒唐無稽な想像であった。 だが今の姿を得て、寄る辺なき世界に迷い込んで、元の自分さえ忘れかけていく最中に、 彼から与えられる役割と役目とは、劇薬に過ぎる。膣内で射精感に震えている槍の感触に、 彼女は自分の腹がすっかり大きくなって――胸から乳を垂れ流す未来さえ想像したのだ。 ゆっくりと、勝ち誇るように抜かれる彼のもの。尻たぶの肉を摘んで、 垂れ落ちる精を拭うように、男は先端をあちらこちらに塗りたくる。 そうされても、彼女は怒るどころか、もっと乱暴にしてほしい、とさえ思った。 ちらりと、琥珀色の瞳を彼に向ける。そこには彼に対する敵意など欠片もない。 むしろ、自分の仕えるべき主に向ける目と評した方が、よほど似ている。 完全に彼女が自分のものになったことを悟った男は――乳首を弄んでいた手を女の腰に回し、 より深く、しっかりと、自分の形を刻み込んでやるための腰使いを始める。 そのねっとりとした動きは――“彼”の脳を、ますます破壊していくのであった。 それで、彼女の旅は終わったのだ。今は、二人して小さなぼろ屋に引きこもっては、 大きな腹と乳を揺らして、男に媚びて虐めてもらうだけの日々を過ごしている。 乳房は彼がかつて弄り始めてからずっと、無理やりに押し潰され伸ばされたりしているうち、 赤子の咥えるにはあまりに大きく、下品な形に育ってしまった――なのに、 色だけは、赤子の目にも見やすくなるよう、黒く濃いものへと変わっている。 そこから、搾られもせず自重と慣性のみにて母乳を垂れ流すその様は、 弱者を護ることを己に課した騎士の姿からは、あまりに遠かった。 そして男は、ぼたぼたと床に垂れ落ちる無数の雫を時に手で受け、彼女の肌に塗りたくる。 何度も引き伸ばされては凹み、だるだるの段のできた腹の皮には、 正中線と妊娠線の跡がくっきり残っていた――それはあまりに雌の色が濃く出過ぎて、 ふと、鏡で己の下腹部を見たとき、彼女はそれが自分の身体であることも見失ってしまう。 丸々と前に突き出した胎には――そろそろ片手の指の数を超える何番目かの子が宿っていて、 既にひり出した何人ものわが子らには、やはり竜の尾と角、琥珀色の瞳と亜麻色の髪がある。 それが、何よりも自分との血の繋がりを証明するものであり――“彼”に、 その事実こそが、すっかり孕み女に成り果てた女騎士の浅ましい現状を突きつける。 だが、それが何だというのだろう。快楽に溺れて、何が悪いというのだろう。 可愛い子供たちと、延々と自分を求めてくれる主とに囲まれて―― 胎を膨らまされ、産み、乳を垂れ流し、ひたすらに、雌で在る。 生まれついた性がそうでなかったからといって、その幸福を得る権利がないわけもない。 せっかく、こんな姿を得たのだから――理想の、魔法少女としての身体になったのだから。 それを正しく使って、一体どこの誰に気兼ねすることがあるというのか。 上げ慣れた媚声で男にねだりながら、女竜騎士はまた彼のものを受け入れていく―― 乳首を強くひねり上げられるごとに、ますます声は甘くなっていくのだった。