二次元裏@ふたば

画像ファイル名:1737987748794.png-(232807 B)
232807 B25/01/27(月)23:22:28No.1277249930そうだねx5 00:50頃消えます
好奇心に負けて、ついハヤヒデの髪を触ってしまった。
うららかな陽が差しているトレーナー室。ソファでビワハヤヒデが眠り込んでいる。
波状毛と捻転毛の合わせ技でできた後ろ髪が、扇のように広がり自然のカーペットを作り出している。
おそるおそるカールされた毛先に触れる。羽毛のような軽さと柔らかさが伝わってくる。
毛先でこれならば、本体はどれほどのふわふわなのだろう――。
いくばくかの罪悪感と、ほんの少しのスリルに後押しされて、俺は夢中で手を突っ込んだ。
気が付いたときには、肘の先まですっぽりハヤヒデの髪に埋まってしまっていた。
ぐっと力を籠めるが、どうしても抜くことができない。それどころか逆に、ずぶずぶと体が吸い込まれていく。
「あっ、あああーー!!」
底なし沼にはまった人のように、音もなく気配もなく、存在そのものが飲み込まれた。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
125/01/27(月)23:22:49No.1277250066+
「おや、起きたようだな」
気が付くと、俺は"作戦会議室"にいた。
目の前のビワハヤヒデは、なんだか派手になったように思える。
それに、サバゲーの帰りだろうか。迷彩服などを着込んで、なにやら雰囲気が厳めしい。
「混乱している、か。無理もない。だがもっと君を混乱させることを言おう。ここは二十年後の日本だ」
二十年後? 俺はハヤヒデの髪を触っていたはず――。
「単刀直入に言おう。我々人類は滅亡の危機に瀕している」
人類? 滅亡?
「それも、ほかならぬ私の責任によって――だ」
派手に見えた理由がやっとわかった。口紅とアイシャドウだ。
二十年の時を経て、ビワハヤヒデは化粧することを覚えていた。
225/01/27(月)23:23:16No.1277250250+
「トゥインクルシリーズを終えた後も、私たちは理論を追求し続けた。勝利の方程式を求めて研究に邁進した。その結果……」
どどん、とどこか遠くで砲弾が着弾する音が聞こえた。ぱらぱらと埃が落ちる。
「図らずも我々は、シンギュラリティに到達してしまったのだよ」
シンギュラリティ。つまりAIが自我を持つようになった。勝利の方程式は、分野を超えてAIたちに自我を与えた。
「人類に反旗を翻したAIが第三次世界大戦を引き起こすまで、そう長い時間はかからなかった」
無尽蔵の火力を持つ機械軍を前に、人類軍は後退を余儀なくされたのだという。
「いまや人類軍はわずかな勢力を残すのみとなった。各地で最後の抵抗を繰り広げているところだよ」
理論の提唱者であるハヤヒデは、戦争を引き起こした当事者として、深い責任を感じている。
機械軍との戦争。多くの犠牲者が出た。人類は滅亡に向かっている。
俺はあまりの情報量に困惑することしかできなかった。
「俺は……二十年後の俺はいったいどうなってる?」
ようやく発したその問いにも。
「トレーナー君は……十年前、敵ドローンの凶弾に倒れて……」
重苦しい沈黙が作戦会議室を包み込んだ。
325/01/27(月)23:23:37No.1277250394+
世界は崩壊している。そして俺もこの世には存在していない。
このふわふわした感情をどのように解釈すればいいのだろうか。
「だが、安心してくれ、トレーナー君。言うなればこれは、人類版ターミネーターなんだ」
俺は顔を上げた。人類版ターミネーター? どういうことだろう。
「簡単なことだ。トレーナー君が人類軍の刺客として過去に戻り、未来を変えてくれればいいんだ」
ターミネーターの役割を、俺にやれということか。しかし、ハヤヒデを抹殺するなんてことはしたくない。
「なにも私を消す必要はない。理論への執着を無くさせればいい。私を理論から解き放ってくれ」
そう言うと、ハヤヒデはずいっと顔を近づけてきた。
「一人の女性として、つつましやかな人生を送るように仕向けるんだ。そうすればAIそのものが発生しなくなる」
ハヤヒデは、バードキスと呼ばれるキスをして、ふふっと軽く微笑んだ。
「頼むぞ、トレーナー君。人類を救ってくれ」
このハヤヒデは、大人なのだな。と、妙なことを考えた。
425/01/27(月)23:23:58No.1277250515+
一瞬、視界が真っ黒に切り替わった。そして次の瞬間には、トレーナー室に戻っていた。
とっぷりと日が暮れていて、ソファに寝ていたハヤヒデもいつの間にかいなくなっている。
俺は電灯のスイッチを入れて、考えた。さっきまでの出来事は、夢なのだろうか。
ふと、隅に目をやると、大きめの段ボール箱が三箱置いてあるのが見えた。
中にはこれまでの理論の集大成である、ビワハヤヒデの研究ノートが詰め込まれている。
まだどこにも報告していない、秘伝のレシピとでも言うべき理論体系。二人三脚で歩んできた、最高機密。
もしそれを、内緒で投棄してしまえば――。
俺はPCを起動して、この辺りのゴミ収集カレンダーを表示させた。
明日、12月23日は火曜日。燃えるゴミの日だ。
525/01/27(月)23:24:21No.1277250679+
「無い、無い、ないないない! とととトレーナー君! 研究ノートが、研究ノートが!!」
翌日のハヤヒデの狼狽えようは筆舌に尽くしがたいものがあった。
トレーナー室のすべてをひっくり返し、引き出しという引き出しを開け、はてには俺のパンツや靴下まで裏返して覗き込んだ。
「デジタルデータには残していないのか?」
「私はアナログ派なんだ! あれを失ったら、また一から理論を組み立てなおさないといけなくなる! 途方もない時間がかかるぞ!」
結局、その日はトレーニングを中止にして、学園中を巻き込んでの大捜索を行った。
生徒会にも協力を仰いで、寮生が総出で探してくれたが、どこを見直しても研究ノートは見つからなかった。
意気消沈したハヤヒデは、ソファに倒れこむと小さな寝息を立てて眠ってしまった。
俺は、その傍らに立っている。
「……」
ハヤヒデのふわふわの髪の毛に、意を決して手を差し入れる。
全身に触手のように髪が絡みつき、再び、存在そのものが飲み込まれた。
625/01/27(月)23:24:44No.1277250850+
「歓迎するよ、トレーナー君。ご飯ができている。部屋もきれいに掃除した。それにお風呂も……おや?」
どこかのマンションの一室。ハヤヒデがエプロン姿で俺を出迎えてくれている。
「そうか、今日は二十年前の君がやってくる日だったな。つい忘れていたよ」
案内された部屋は一人で住むにはやや広すぎるような気がした。1LDKで、全体が少し暗い。
「朗報だぞ、ブライアン。今日はなんとトレーナー君が来てくれているんだ。ふふ、珍しいだろう?」
ナリタブライアンも来ているのか? リビングダイニングから続きの間を見るが、人の気配はない。
おかしいな、と思いながらも食卓につく。すかさずハヤヒデがカレーをよそって置いてくれる。
芳醇なスパイスが鼻腔をくすぐる、が、俺の興味関心はすでにそこにはない。
「前のめりになっているぞ、そう焦るな。結論から言おう、この世界は順調で、私も幸せだ」
725/01/27(月)23:25:40No.1277251229+
カレーを食べながら、四方山話でもするようにハヤヒデは近況報告してくれた。
「タイシンを知っているだろう。あれはもう二児の母になっている。つい最近七五三のお祝いをしたよ」
「チケットは驚くほど選手生命が長くてな。下部リーグに移ってからも優秀な成績を残し続けている」
世界は平和に動いていて、俺も現役。たまにハヤヒデのところに顔を出したりするようだ。
その様子におかしなところはない。だが、どこか名状しがたい違和感があった。
ちらりとハヤヒデの左手を盗み見る。指輪の類などは一切ついていない。ということは――。
「ふふ、おかしいか? この年にもなって独身で、一人寂しく暮らしているということが」
「あ、いや……」
俺は違和感の正体を探す。なんだ、何がおかしい?
「だが……そうだな。ブライアンのこともあったし、この心境は複雑すぎて、君には理解してもらえないかもしれないな」
言うと、ハヤヒデは視線を俺の背後に移して、どこか虚ろに焦点をさまよわせた。
そこには小さなローテーブルと、写真立てが置いてあり、ブライアンの写真が飾ってあった。
まさか、ブライアンは、この世界では、もう――。
825/01/27(月)23:26:04No.1277251371+
「生きてるよ」
ハヤヒデの言葉に、俺は脱力した。
「海外のリーグで走っているんだ。写真を飾ったらいつの間にか話しかけるようになってしまってな。誤解させたのなら謝ろう」
ブライアンは健在。俺はほっと息をついた。ではいったい何が問題だというのだろう?
「そうだな……強いて言うならば、姉妹仲が良すぎる、ということかな」
「姉妹仲が良すぎる?」
「知っているか、トレーナー君。ブライアンはもう野菜を苦手としていないんだ」
ブライアンの野菜嫌いは有名だ。ハヤヒデからも耳が痛くなるほど聞かされている。
「それに、マメに連絡をよこしてくれるようになったんだ。トレーナーとのなれそめも何度も聞かされているよ」
"あの"ブライアンが?
「なんでも話してくれるよ。なにせ今のブライアンにとっては、私は"ただの姉"だからね」
カレーの横には色とりどりの生野菜が盛り付けてあって、みずみずしい輝きを放っていた。
「"ただの姉"?」
「ああ、私はもう、ブライアンの"自慢の姉"ではないんだ」
925/01/27(月)23:28:02No.1277252118そうだねx1
「理論を捨てることを選んだあの日から、ブライアンの私への興味は目に見えて薄れていった」
おそらく研究ノートが失われた日のことを指しているのだろう。
「もはや私をライバルだとはみなさなくなったんだ。一人の姉として、"ただの姉"として接するようになった」
カレーをよそうスプーンが、カタカタと震えていることに気が付いた。
「冷たくなったわけではない。むしろブライアンは優しくなった。野菜も食べるようになった。できた妹だと思うよ、本当に自慢の妹だ」
俯くハヤヒデの頬を涙が伝った。そこでようやく、違和感の正体に気が付いた。
このハヤヒデは圧倒的に"幼い"のだ。崩壊する世界線のハヤヒデとは、比べるべくもないほどに幼い。
「もし……もし私が理論を捨てなければ、私はいまでもブライアンの"自慢の姉"でいられただろうか」
ぐすぐすとハヤヒデは少女のように泣く。
「すまない。私はわがままだな。私はこんなにも満たされているというのに。なぜ、どうして、涙が止まらないんだろうな……」
俺はカトラリーボックスからフォークを引き抜くと、自分の手の甲に突き刺した。
1025/01/27(月)23:28:24No.1277252244+
目が覚める。トレーナー室のソファにいて、ハヤヒデが心配そうにのぞき込んでいる。
「大丈夫か? トレーナー君、ひどくうなされていたようだが……」
飛び起きるやいなや、ハヤヒデの鼻先に金庫の鍵を突き付けた。
「これは……?」
「学園の大金庫の鍵だ。そこにハヤヒデに必要なものが入っている」
「必要なもの……? 研究ノートか! でも、どうして……トレーナー君が隠していたのか?」
俺は何も答えなかった。手振りだけで早く行ってあげるようにと伝える。
ハヤヒデは怪訝な顔をしながらも、はやる気持ちを抑えられないのか駆け足で部屋を出ていった。
俺はソファに座りなおして自問自答する。世界かハヤヒデか、そのどちらを選ぶのか。
かたや人類の存亡をかけた一大事で、かたや一人の少女の未練の問題。
その軽重は自明で、トロッコ問題よりもはるかに簡単なはずだ。しかし――。
思考がぐるぐる回る。世界かハヤヒデか、世界かハヤヒデか、世界かハヤヒデか。
決意を固めて、立ち上がる。
1125/01/27(月)23:28:33No.1277252301+
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「歓迎するよ、トレーナー君。ご飯ができている。部屋もきれいに掃除した。それにお風呂も……おや?」
どこかのマンションの一室。ハヤヒデがエプロン姿で俺を出迎えてくれている。
「そうか、今日は二十年前の君がやってくる日だったな。つい忘れていたよ」
案内された部屋は一人で住むにはやや広すぎるような気がした。1LDKで、全体が少し暗い。
「朗報だぞ、ブライアン。今日はなんとトレーナー君が来てくれているんだ。ふふ、珍しいだろう?」
ナリタブライアンも来ているのか? リビングダイニングから続きの間を見るが、人の気配はない。
おかしいな、と思いながらも食卓につく。すかさずハヤヒデがカレーをよそって置いてくれる。
芳醇なスパイスが鼻腔をくすぐる、が、俺の興味関心はすでにそこにはない。
「前のめりになっているぞ、そう焦るな。結論から言おう、この世界は順調で、私も幸せだ」
1225/01/27(月)23:28:50No.1277252403+
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「無い、無い、ないないない! とととトレーナー君! 研究ノートが、研究ノートが!!」
翌日のハヤヒデの狼狽えようは筆舌に尽くしがたいものがあった。
トレーナー室のすべてをひっくり返し、引き出しという引き出しを開け、はてには俺のパンツや靴下まで裏返して覗き込んだ。
「デジタルデータには残していないのか?」
「私はアナログ派なんだ! あれを失ったら、また一から理論を組み立てなおさないといけなくなる! 途方もない時間がかかるぞ!」
結局、その日はトレーニングを中止にして、学園中を巻き込んでの大捜索を行った。
生徒会にも協力を仰いで、寮生が総出で探してくれたが、どこを見直しても研究ノートは見つからなかった。
意気消沈したハヤヒデは、ソファに倒れこむと小さな寝息を立てて眠ってしまった。
俺は、その傍らに立っている。
「……」
ハヤヒデのふわふわの髪の毛に、意を決して手を差し入れる。
全身に触手のように髪が絡みつき、再び、存在そのものが飲み込まれた。
1325/01/27(月)23:28:55No.1277252437+
俺はタイシンとチケットのトレーナーを緊急招集した。車を走らせて銀座へと向かう。
某大手ジュエリーブランドの銀座旗艦店。全面ガラス張りの瀟洒なショールームへと急ぐ。
「お前が仲間内で何て呼ばれているか知っているか? "クソボケ"だよ」
車内でチケットのトレーナーが表情を変えずに言った。
「クソボケ?」
「界隈じゃ有名な話だ。だがその汚名も今日で返上することになりそうだな」
それきり二人は黙って、無言で運転を続けた。
店に着くと、ショーケースをあちこち物色して回った。電子カタログをものすごい勢いでスワイプする。
「プラチナだ」「シンプルなのがいい」「刻印はいらない」「細いやつだ」「指のサイズはいくつだ?」
二人からアドバイスを受け、四苦八苦しながらなんとか一つの指輪を選び出した。
今日は12月24日、ぎりぎりクリスマスプレゼントには間に合う算段だ。
こんなことをしても、未来は何も変わらないという悪魔の声が聞こえてくる。しかし構わなかった。
重要なのは不確定な未来に立ち向かう覚悟だと考えていた。覚悟があれば、運命はいかようにでも変えられる。
ただ、その証をハヤヒデに渡すだけでいい。
1425/01/27(月)23:29:06No.1277252531+
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一瞬、視界が真っ黒に切り替わった。そして次の瞬間には、トレーナー室に戻っていた。
とっぷりと日が暮れていて、ソファに寝ていたハヤヒデもいつの間にかいなくなっている。
俺は電灯のスイッチを入れて、考えた。さっきまでの出来事は、夢なのだろうか。
ふと、隅に目をやると、大きめの段ボール箱が三箱置いてあるのが見えた。
中にはこれまでの理論の集大成である、ビワハヤヒデの研究ノートが詰め込まれている。
まだどこにも報告していない、秘伝のレシピとでも言うべき理論体系。二人三脚で歩んできた、最高機密。
もしそれを、内緒で投棄してしまえば——。
俺はPCを起動して、この辺りのゴミ収集カレンダーを表示させた。
明日、12月23日は火曜日。燃えるゴミの日だ。
1525/01/27(月)23:29:23No.1277252629+
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「生きてるよ」
ハヤヒデの言葉に、俺は脱力した。
「海外のリーグで走っているんだ。写真を飾ったらいつの間にか話しかけるようになってしまってな。誤解させたのなら謝ろう」
ブライアンは健在。俺はほっと息をついた。ではいったい何が問題だというのだろう?
「そうだな……強いて言うならば、姉妹仲が良すぎる、ということかな」
「姉妹仲が良すぎる?」
「知っているか、トレーナー君。ブライアンはもう野菜を苦手としていないんだ」
ブライアンの野菜嫌いは有名だ。ハヤヒデからも耳が痛くなるほど聞かされている。
「それに、マメに連絡をよこしてくれるようになったんだ。トレーナーとのなれそめも何度も聞かされているよ」
"あの"ブライアンが?
「なんでも話してくれるよ。なにせ今のブライアンにとっては、私は"ただの姉"だからね」
カレーの横には色とりどりの生野菜が盛り付けてあって、みずみずしい輝きを放っていた。
「"ただの姉"?」
「ああ、私はもう、ブライアンの"自慢の姉"ではないんだ」
1625/01/27(月)23:29:40No.1277252718+
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「トゥインクルシリーズを終えた後も、私たちは理論を追求し続けた。勝利の方程式を求めて研究に邁進した。その結果……」
どどん、とどこか遠くで砲弾が着弾する音が聞こえた。ぱらぱらと埃が落ちる。
「図らずも我々は、シンギュラリティに到達してしまったのだよ」
シンギュラリティ。つまりAIが自我を持つようになった。勝利の方程式は、分野を超えてAIたちに自我を与えた。
「人類に反旗を翻したAIが第三次世界大戦を引き起こすまで、そう長い時間はかからなかった」
無尽蔵の火力を持つ機械軍を前に、人類軍は後退を余儀なくされたのだという。
「いまや人類軍はわずかな勢力を残すのみとなった。各地で最後の抵抗を繰り広げているところだよ」
理論の提唱者であるハヤヒデは、戦争を引き起こした当事者として、深い責任を感じている。
機械軍との戦争。多くの犠牲者が出た。人類は滅亡に向かっている。
俺はあまりの情報量に困惑することしかできなかった。
「俺は……二十年後の俺はいったいどうなってる?」
ようやく発したその問いにも。
「トレーナー君は……十年前、敵ドローンの凶弾に倒れて……」
重苦しい沈黙が作戦会議室を包み込んだ。
1725/01/27(月)23:29:56No.1277252804+
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一瞬、視界が真っ黒に切り替わった。そして次の瞬間には、トレーナー室に戻っていた。
とっぷりと日が暮れていて、ソファに寝ていたハヤヒデもいつの間にかいなくなっている。
俺は電灯のスイッチを入れて、考えた。さっきまでの出来事は、夢なのだろうか。
ふと、隅に目をやると、大きめの段ボール箱が三箱置いてあるのが見えた。
中にはこれまでの理論の集大成である、ビワハヤヒデの研究ノートが詰め込まれている。
まだどこにも報告していない、秘伝のレシピとでも言うべき理論体系。二人三脚で歩んできた、最高機密。
もしそれを、内緒で投棄してしまえば——。
俺はPCを起動して、この辺りのゴミ収集カレンダーを表示させた。
明日、12月23日は火曜日。燃えるゴミの日だ。
1825/01/27(月)23:30:10No.1277252898+
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世界は崩壊している。そして俺もこの世には存在していない。
このふわふわした感情をどのように解釈すればいいのだろうか。
「だが、安心してくれ、トレーナー君。言うなればこれは、人類版ターミネーターなんだ」
俺は顔を上げた。人類版ターミネーター? どういうことだろう。
「簡単なことだ。トレーナー君が人類軍の刺客として過去に戻り、未来を変えてくれればいいんだ」
ターミネーターの役割を、俺にやれということか。しかし、ハヤヒデを抹殺するなんてことはしたくない。
「なにも私を消す必要はない。理論への執着を無くさせればいい。私を理論から解き放ってくれ」
そう言うと、ハヤヒデはずいっと顔を近づけてきた。
「一人の女性として、つつましやかな人生を送るように仕向けるんだ。そうすればAIそのものが発生しなくなる」
ハヤヒデは、バードキスと呼ばれるキスをして、ふふっと軽く微笑んだ。
「頼むぞ、トレーナー君。人類を救ってくれ」
このハヤヒデは、大人なのだな。と、妙なことを考えた。
1925/01/27(月)23:30:26No.1277253007+
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カレーを食べながら、四方山話でもするようにハヤヒデは近況報告してくれた。
「タイシンを知っているだろう。あれはもう二児の母になっている。つい最近七五三のお祝いをしたよ」
「チケットは驚くほど選手生命が長くてな。下部リーグに移ってからも優秀な成績を残し続けている」
世界は平和に動いていて、俺も現役。たまにハヤヒデのところに顔を出したりするようだ。
その様子におかしなところはない。だが、どこか名状しがたい違和感があった。
ちらりとハヤヒデの左手を盗み見る。指輪の類などは一切ついていない。ということは——。
「ふふ、おかしいか? この年にもなって独身で、一人寂しく暮らしているということが」
「あ、いや……」
俺は違和感の正体を探す。なんだ、何がおかしい?
「だが……そうだな。ブライアンのこともあったし、この心境は複雑すぎて、君には理解してもらえないかもしれないな」
言うと、ハヤヒデは視線を俺の背後に移して、どこか虚ろに焦点をさまよわせた。
そこには小さなローテーブルと、写真立てが置いてあり、ブライアンの写真が飾ってあった。
まさか、ブライアンは、この世界では、もう——。
2025/01/27(月)23:31:17No.1277253310+
店員が電卓をはじき、価格を提示してくる。
俺は懐から札束を出し、カウンターに叩きつけた。
「現金、一括で」
1LDKで、寂しげに泣くハヤヒデのイメージを振り払う。
俺はギアを6速に入れて、全力でアクセルを踏み込んだ。
「いいなあ。今、担当に首輪を贈るのが流行っているらしい。タイシンも喜ぶかな」
「いいんじゃないか。俺もチケットにどエロい下着を贈ることに決めたよ」
この日以降、俺は未来を見ていない。
2125/01/27(月)23:33:01No.1277253891+
どういうことなの…
2225/01/27(月)23:33:08No.1277253935+
なんだよこれ
2325/01/27(月)23:34:03No.1277254238そうだねx5
いい話だな
いい話なのか?
2425/01/27(月)23:36:18No.1277254952+
トゥルーエンドはどこ…?
2525/01/27(月)23:36:33No.1277255029そうだねx14
>「いいんじゃないか。俺もチケットにどエロい下着を贈ることに決めたよ」
こいつを捕まえろ
2625/01/27(月)23:41:13No.1277256720+
同僚二人が既に道を踏み外してないか?
2725/01/27(月)23:43:01No.1277257317+
攻略チャートが魔境すぎる
2825/01/27(月)23:46:09No.1277258390+
面白かった
最後のはハヤヒデの髪を触っても何も起きなくなった=触る機会が増えたと解釈してもいいかな
2925/01/27(月)23:57:45No.1277262496+
野菜はあきらめるしかないのか…まあハッピーエンドなら仕方ないか…
いや野菜が残ってるからメリーバッドか
3025/01/27(月)23:58:45No.1277262820+
どっちでもない選択肢を取ればいい…のか?
3125/01/28(火)00:01:30No.1277263775+
>「いいなあ。今、担当に首輪を贈るのが流行っているらしい。タイシンも喜ぶかな」
>「いいんじゃないか。俺もチケットにどエロい下着を贈ることに決めたよ」
>この日以降、俺は未来を見ていない。
クソっ!カタログで警戒して大丈夫かと思ったら…
3225/01/28(火)00:34:35No.1277274839そうだねx2
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つまんね


1737987748794.png