「いいのですっ。あの人は一度思い知るべきなんです!」 酒気帯びの息を吐き、赤くなった顔で怒気を吐くのは、頭に被ったベールを含め尼僧服を思わせたデザインの白い衣装の女性だ。 ツェリーヌ・セルボルト。 『無色の派閥』の大幹部セルボルト家の令嬢である。 それが何故、『忘れられた島』のカイル一家の海賊船内、レックスに与えられた一室でヤケ酒を飲んでいるのかというと、家出であった。 夫であるオルドレイクが、『赤き手袋』から派遣された女暗殺者とベタベタしているのが気に入らないという理由で。 あまりの理由にカイル一家も島民も毒気を抜かれた。 「夫婦喧嘩はよそでやってほしい」とはヤードの弁だが、家出のきっかけがウィゼルに諭されてともなれば無碍にもできないのもヤードだ。 「オルドレイクの弟子だったあなたも、海賊の下に家出したようなものでしょう」とはツェリーヌ。 「大分違うと思うのですが…」とヤード。 家出先で島のどこかに潜伏などせず、野宿という考え一切なしに、生活圏が既に形成されている敵陣にやってきたツェリーヌ。 名家の令嬢というふてぶてしさか、あるいは少し抜けた世間知らずか、あまりにも堂々とした態度で「家出したので匿いなさい」ときた。 過去にイスラの裏切りもあり警戒すべき到来なのだが、現状レックスの監視付きという名目で家出人妻はカイル一家の保護下に置かれている。 もしこれが『無色の派閥』の作戦であれば、魔剣の契約者であるレックスこそが狙いなのではという危惧も考慮はされた。 それでも『無色の派閥』内でも指折りの召喚術士、霊界サプレスの召喚術に長けた『死霊の女王』の異名を持つツェリーヌが相手だ。 対抗手段を持ち監視に適役なのも魔剣の契約者で、レックス本人が筋道だった主張とお人よしを発揮し監視役を買って出ては、皆は納得せざるを得ない。 今後の処遇はどうするかさておき、今晩はツェリーヌの愚痴と八つ当たり混じりの酒につき合うことにしたレックスだった。 いつもののほほんとした態度で、「まあまあ」「そうですね」「ははは…」と、時になだめ、時に頷き、時に躱し…。 そして今、酔ったツェリーヌは夫でもない男、レックスと一緒にベッドの上にいる。 「本当にいいんですね?」 「ひくっ! い、いいのれすぅ…っ、私という妻がありながら、泥棒猫を臥所に連れ込んで…!」 船室とはいえ男の部屋に夜更けに人妻が一人で来る。 そのことをツェリーヌの酔った頭はまともに考えることができていなかった。 就寝時間になっても食堂を占拠していては迷惑になるとレックスに言われ、場所を変えた程度の甘い認識。 普段のツェリーヌならば決してしない判断も、今宵この時この場所では致命的な過ちになる。 最初は酔いやオルドレイクへの怒りの勢いがあったツェリーヌも、家族や夫以外の男の腕に抱きよせられ、初めて「あら?」と思うのだった。 「…? なぁにぃ…をして…いるのれひゅか…?」 はっきりと疑問を口にしたつもりが呂律が回らない。 酒精がツェリーヌのあらゆる能力を鈍化させており、言葉だけでもなく思考も鈍っていることをあからさまにする。 平素であれば突き放すか、無礼への報いに召喚術の呪いが相手を即座に蝕んでいてもおかしくない事態。 疑問ですませる時点で人妻は既にレックスの手の内に収まっていた。 そして文字通り、レックスの左手がツェリーヌの左手を彼女の左胸まで軽く引く形で、手首と手の甲を軽く包んで握る。 抱き寄せられもたれかかることになった人妻の尻が斜めに浮いたところを、男の手が撫でまわす。 「マッサージですよ」 そういうものかとぼんやり頭でツェリーヌが尻肉をもみほぐされていく間に、指はどんどん大胆に振る舞いだす。 谷間の割って入り、唯一の窪みを弄り始めたのだ。 「ひゃぃっ!?」 流石にこれは看過できない行為だった。 不浄、肛門を赤の他人に触られた…例えそれが下着越しとはいえ見過ごせない無礼。 そこで改めて酩酊したツェリーヌの脳裏に新たな疑問が浮かぶ。 (下着…?) ツェリーヌの服装は長袖のワンピーススカート。 スカートはウェスト幅もヒップ幅も体が隠れる程度の幅しかなく、丈は踝まで長い。 肌を晒すことがほとんどないのは勿論のこと、スカート内に手を入れるのは難しい…はずなのだ。 「ふえっ? え…ぇ…っ!?」 いつの間にか服を脱がされて…あるいは酔った勢いで服を脱でしまったのか。 下着姿という事実だけを残し、ツェリーヌは大いに混乱した。 成人してからは着替えを手伝わせる従者か、夫のオルドレイクしか見たことのない姿。 それをあろうことか下賤な海賊船の一室で、敵の男に晒している。 今度こそ召喚術師の名門としての誇り、それと一人の女としての羞恥が、『死霊の女王』に術を行使させる。 「砂棺の王よ! この者に相応しい裁きを!」と気持ちを込め、レックスに向けて回らぬ舌で呪詛を吐く。 魔剣の契約者であろうと、抜剣もしないこの場でならただでは済まぬ一撃。 そのはずが、何も起こらない。 「…なん、ひぇ?」 この部屋に来てから何度目の疑問だろうか。 そんなツェリーヌに対し、レックスは生徒に接するよう優しく答えた。 「お酒のせいですよ」 「そんな…はずにゃ…」 「ない。と言いたいですよねでも違うんです」 ツェリーヌほどの術者ならば、深く酔っていても高位の契約召喚獣を何らかの形で召喚を成功させていた。 それは正しい。 だが酒のせいというのが、酩酊ではなく別の効果を指すのならば話は別だ。 「清酒・龍殺し」 酒好きで知られる商人メイメイと特殊な取引を行う時に用いる幻の酒。 その使い道のひとつが── 「人生やり直し」 ──である。 「…じん…へい…?」 あまりにも荒唐無稽すぎる言葉にツェリーヌは面食らった。 エルゴの王の右腕が創設した組織『無色の派閥』に属する名家として、実在した夢想のような術や研究の知識もある。 それでもこの場で聞くには馬鹿馬鹿しく…。 「はい。今回は奉納という形で、他の人が飲んでも効果を発揮するようにしてあります。効果は簡単に言うとですね」 レックスがにこりと笑った。 「レベルダウンですよ」 ありとあらゆる研鑽がツェリーヌの中から失われたのだと、言った。 男児に恵まれなかったオルドレイクの娘として、家名に恥じぬように術を鍛え、魔力を磨き、知識を蓄えた。 優れた才能と血統に胡坐をかくのではなく、能力有る者の務めとして、エルゴの王から託された世界をより良くしなければならない。 厳しい道を両親は敷き続け、楽ではない人生を歩み続けたが、ツェリーヌにとって勝ち取ってきた力も己の異名も誇りだった。 それがただ、酒を飲んだだけで失われた。 悪い冗談だと何度も召喚を叫び続けるが、ツェリーヌの声にサプレスの悪魔たちは応じない。 一方で、レックスは感心の言葉を漏らした。 「凄いな…呼ぼうとする召喚獣のランクが高過ぎるだけで、この状態でも並以上の召喚獣なら呼べるだけの力があるのか」 その台詞にツェリーヌははっとした。 家出の際に、オルドレイクを心配させようと普段身に着けている召喚石をひとつ、わざと残してきたのだ。 4つの中から何にするかと迷い、攻撃的な召喚獣の中から、一番ランクの低いブラックラックを選んだ。 回復の術を使う召喚獣は外せないとして、1人で島中をうろつくとなればやはり心細く、無意識に残りを高ランクで固めった結果だった。 己の行いを悔やむツェリーヌを、まあまあとレックスが慰める。 「大丈夫ですよ。経験は消え去ったわけではないんです。払い戻し金みたいなものですね」 だからと、再び右手の指でツェリーヌの尻を撫でた。 「ツェリーヌさんにお返ししますよ。じっくりとね」 「にゃあ…! やめな、ひゃ…!!」 暴れるも、男女の力の差だけでなく、レベル差によって身動きを封じられたツェリーヌは、なすすべなく肛門を指でくすぐられる。 嫌がる理由は不浄を触られるというだけではない、くすぐられる…そう妙にむずむずするが、悪くないとも思う…それを彼女は恐怖した。 「偉い人だけあって、いい下着穿いてますよね。ああ、これ嫌味とかではなく、ツェリーヌさんが今思ってる疑問への答えです」 「なにひゃ、です、か…っ!」 「いい下着って肌触りがいいですよね? で、肛門って皮膚なんですよ。だから、肌触りがいいを肛門も感じるんですよ実は。こうやってね…」 尻谷間の奥にあることから、本来はあまり下着に接するはずの場所。 レックスはそこに布地を押し付け、そして下着越しに指でツェリーヌの菊座を撫でる。 「ひゃあああ…っ❤」 「ほらね?」 そう言って何度も指を往復させ、未だ体験したことのない肛門愛撫に戸惑いう人妻の嬌声を途切れさせない。 未開発でも甘受しやすい排泄門への肉摩擦を、指で直接するよりも都合のいい仲介するのは、ツェリーヌ自身が選んだ下着だ。 それも愛する夫のために、少しでも自分を魅力的に見せ、喜んでもらおうとしたはずのもの。 そのはずが、レックスの手でアナル調教の道具として扱われ、尻と肛門の手触りで彼を喜ばせている。 「やめなひゃ、なでるの…やめへっ…っぇ! そこ、なでるのぉ…!!」 「そこってどこですか?」 にっこりと笑いながらも、レックスの表情には相手が正解を言えねば手を止めない意志の固さがある。 生徒をはじめ、彼を知る者なら何度も見てきた顔。 ツェリーヌも徐々に理解をしはじめ、苦渋ながらも答えを口にせねばならぬと意を決した。 一時の恥、ここで止めなければ頭がおかしくなる…! 「お、おひりで、す…!」 「お尻の?」 「くぅ…っ、おしりぃ、の…あにゃ…!」 「正解。レベルアップです」 レックスの指が肛門を撫でるのを止めた。 最後の一撫でびくんと体を跳ねさせながら、尻穴を口にする恥と引き換えにツェリーヌはなんとか一線を守り切る。 マゾアナルトレーニング、略してMATを順調に伸ばすツェリーヌを、生徒の頑張りを見守る教師の目で慈しむレックス。 Bitch Point略してBPを新たに割り振るのは、次にどこにすべきかを思案していた。 ATがAdulteryやAnalslutを包括し、DFがDildo Fuckingの略称だということは、サモンナイトをプレイした「」諸兄らには御存じのことであろう。 下着を使ったアナル調教は、これらをバランスよく割り振った成果である。 教育者としてのレックスの手腕が大いに試される場面、それはここから先も同じだ。 約束が果たされ、ほっと一息つくツェリーヌの、その弛緩をレックスは見逃さない。 「…はっ、やぁぁぁ…ッ❤」 下着の隙間を潜った指が、ツェリーヌの肛門を抉じ開けたのだ。 「おし、おしりぃ…っ、あなっ、ああっ!? なんでぇ…?」 あまりの衝撃か、先ほど口にしたことで卑語への意識が緩んだのか、尻の穴を言葉にして驚くツェリーヌ。 彼女の肛門は入念なマッサージがほぐされ、緊張の緩みから容易く異物の侵入を許した。 ずぶり、とレックスの中指の先が尻谷間の窄まりに突き刺さる。 「うしょ、うそ、つき…ああ、ああッ❤」 「嘘はついていないですよ。レベルアップって言ったでしょ。撫でるのはやめて、指挿入の授業になっただけですから」 第一関節まで入った指をぐりぐりと動かし、感触の違いを彼女の身をもってツェリーヌに教えるレックス。 まだここからだという意思表示に、当然、これまでにない体験から人妻は不安の置き場を求める。 「怖いならしがみついていいですからね?」 「だ、だれひゃ、こわ…ひっ、いいいい、ひゃあああ…❤」 皮膚、肛門の閉じた穴を摩擦しレックスの雄指がツェリーヌの腸内へと入っていく。 ツェリーヌのアナル調教だが、気持ちよさを教えることも大事だが、意識の改革も大事だとレックスは心得ている。 皮膚である肛門の先、粘膜の直腸部分には知覚神経がなく、通ったという認識できてもど中にどれだけ入ったのかの実感を得にくい。 排泄欲を刺激された時でも、腹の中にどれだけの便が溜まっているのかを把握しづらいと…考えればわかりやすいか。 これに対してレックスの手際は悪辣だった。 不安からしがみついてくるツェリーヌ、その手背に重ねられたレックスの手。 逃げる意思を挫き、伴侶以外の男の体温を感じさせるだけでなく、今肛門をまさぐっている男の指の形状を彼女に伝える役目を持つ。 目で見て肌で触れ、左右で些細な違いはあるも他人の一部が肛門に入っていく確かな情報。 人妻の柔らかな手肌に当たるゴツゴツとした指関節の感触が、目の届かぬ腸内での動きを鮮明に想像させた。 「あ…いや…っ❤」 つぷっ、ぐりぃ…っ、つぷぷっ…ぐりぃっ…。 節で肛門を抉りながら埋没していく中指。菊座を抉られるたび、桃色の肉洞にどれだけの長さが収まっているのかが容易にわかった。 常識的な性交渉から逸脱した行為に晒され混乱する人妻に、レックスは追い打ちをかける。 「ツェリーヌさんのアナル柔らかいから、ほらもう…指が1本挿入っちゃいましたよ」 「ううう…! ゃ…ぁ…ッ❤」 「頑張ったツェリーヌさんを褒めてあげないと。腸壁を今、撫でますね…よしよしって。こういうふうに…」 ツェリーヌの手の甲に乗せた指を腸内の指とシンクロさせ、動かす。 尻に対しての行いに反し、声と手を撫でる動きはあまりにも優しかった。心地良いといってもいいだろう。 覆い被さった男の手が労いで動かされると、ツェリーヌは感じぬはずの腸内にも気持ちの良いくすぐり錯覚する。 「よしよし」 調教は順調だ。性に疎いのか、BPをアナル開発に割り振ったとはいえ、ツェリーヌは水を吸ったスポンジのように能力を開花させている。 勿論、純粋な技術だけでなく召喚術も使われている。例えばこのベッドだ。 霊界召喚術のエキスパートだからこそ、平地2マスに設置する無属性のオブジェクトだとは気付きもしない。 ここから先は、召喚師としての能力よりも、アナル好きのする変態としての能力を次々に開花させていく。 そうなれば別の視点で召喚の奥深さをツェリーヌは知るだろう。 今もレックスから経験値を注がれ、ツェリーヌのレベルがあがり、二次クラスの到達が満たされた。 名門召喚師から卑臀娼姦師、追加スキルの肛蕩娼姦技能が新たな才能の開花を知らせていた。