喪失前騎士君の仕込み 「そういや俺達ナイトって呼び合うのも何かおかしな感覚だよな」 「まぁ確かにそうですね…」 「いっそのこと俺のことは戦場先輩でもいいぜ?」 「うーんいやでもそのままでいいんじゃないですか?」  稽古をつけてもらっているのかナイトモンに飛び掛かるズバモンを眺めながら騎士と為人はズッとお茶を飲む。共闘後久しぶりに出会った2人は同じ名前を持っていたからかはたまた同じディーアーク使いだったからか意気投合し旅の途中で出会ってはこうして茶を飲んだりしていた 「そうだ、ちょっとお前に預かって欲しいものがあってさ」 「預かって欲しいもの?なんか変なもの押し付けないでくださいよ」 「変なものじゃねーよカードだカード」  為人に渡されたのは一枚のカードだった。少し掠れているが問題なく使える様に見える。 「これ騎士先輩も使ってるやつですよね?どうして…」 「ん、まぁ虫の知らせというか…とりあえずお前が持っててくれ。その時が来たら返してくれたらいいからさ」  騎士は説明が欲しそうな為人から目を逸らし誤魔化す様に立ち上がりズバモンへと声をかけ移動する準備を進めていく 「ズバモン!そろそろ行くぞ!」 「えー!もっと時間あるだろー!」 「ない!今なくなった!ナイトモンもありがとな!」 「いえ、良い鍛錬になりました」 「そう言ってくれると助かるぜじゃあな為人、あんま無茶せず元気でな」 「えぇ先輩もお元気で」  本当はカードについても急ぐ様な態度についても説明が欲しかったが為人はグッと飲み込み旅立つ騎士を見送る。そこまで長い時を一緒に過ごしてきたわけでもないが一時は共闘した仲だ、カードを渡してきた時の顔が酷く真剣なのが分かり預かるしかなくなった。別に何ともないただの普通のカードだ、次に会った時に笑いながら突き返してやればいい。  為人はカードを仕舞い自身も移動するためにナイトモンへと駆け寄るのだった。    ━━戦場騎士がデジモンに襲われ行方知らずになったのはその数日後の事だった