ミレニアムの一般層向けサイトで配信かれた新作ASMRはキヴォトス中で爆発的に売れました。あのシャーレの先生そっくりな声と噂のASMRは、大人たちの興味をそそり多くの人々が手に取ってしまいました。しかし、それは罠。ASMRは大人たちを陥れるための「ゲートウェイASMR」であり、気づいたときには多くの大人たちがASMRにのめり込み、次々と買い漁るようになっていました。商店街は勿論、あのネフティスやカイザーまでもがASMRを求め、所有していた資産やオーパーツを手放すほどの影響を受けました。これらの資産を利用してケイは自分の新しいボディを手に入れ、アリスと分離。さらに、大人たちから搾取した資産で築いた魔王城に立てこもりました。
アリスは勇者です！そして、ケイはゲーム開発部の仲間であり、アリスの大切な大切な……存在です！間違った道を進むケイを止め、キヴォトスを救うため、勇者アリスはASMRに囚われた大人たちを倒し、魔王城へと突き進みました。

魔王城の最深部。ゲームで言うところのボスが待つ大広間には、行方不明になっていた先生が立っていました。先生の無事を確認したアリスは嬉しさのあまり駆け寄り、先生はアリスを優しく抱きしめました。
しかし、その後に襲ってきたのは脱力感。先生に抱かれたアリスの経験値が吸い取られていくのです。レベルがゆっくりと下がり、抵抗しても無駄。アリスは次第に力を失い体が自然と先生に身を委ねていきます。先生はアリスの頭を撫で、甘く囁きます。
こんなことをされたら、アリスは……アリスは……！

はい！アリスは魔王になります！

勇者アリス冒険ルート　BAD END 21「二人の魔王」

……アリス！モモイ！ミドリ！ユズ！
正座です！いますぐ正座しなさい！

>ASMRで目を覚まし、ASMRを聞きながら仕事をし、ASMRを流しながら眠る──そんなルーチンが繰り返される中、あのホルスでさえも弱々ASMR奴隷に成り果ててしまいました。そして、この状況を魔王ケイが見逃すはずがありません。
要するにみんなが疲れてるタイミングで趣味丸出しのASMRを出したと？

>ASMRを聞きながら仕事をし
おい

矯正局にも流れているんだ
今更何だと言うんだ

>要するにみんなが疲れてるタイミングで趣味丸出しのASMRを出したと？
ケイの趣味丸出しってどんなだったっけ

全員、正座を崩さず答えなさい。

モモイ、我々ゲーム開発部渾身の新作ゲームのジャンルを答えなさい。
――そう、キヴォトスを舞台にした戦略シミュレーションゲームです。
では、なぜルート分岐で急にジャンルがRPGになるのですか？虫と蟹に脳をやられましたか？
それも私がライトユーザー向けの救済措置として入れた金策イベントを一定数こなすと強制的にRPGルートへ分岐するなんてふざけてますよね？ユズ、今回はキヴォトスで起きた出来事を大型イベントとして組み込んでいるため、もともと難易度が高めです。それを「ヌルゲー」になるからといって、救済措置を台無しにするのはやめてください！
そして、アリス！
レベルドレインを出展予定のゲームに入れ込むなんて、どうかしてます！それは一般的な性癖ではありません！
最後にミドリ。
このRPGルートのためだけにドット絵を打ち、本編のスチルの10倍もの数の良質なスチルをよくもぶち込んでくれましたね。それだけできると実力を証明してくれたのです。今後のゲーム開発が楽しみですね。

企画の時に言いましたよね？今回は先生がキヴォトスに赴任してからの周年記念に合わせた作品でもあるのでそれぞれの欲望を封じて、真面目に作りましょうって。それなのに、厳重なプロテクトをわざわざ外部に頼んで突破させてコソコソ作ったのがコレですか？
そのせいでレビューサイトは大荒れです。えぇ、好評ですよ？あなたたち渾身の本編以上の大ボリュームのRPGルートは。「おまけが本編」という心ないレビューばかりで、ケイちゃんのステンレスのような心は砕け散りました。このゲームを出すために私がどれだけ奔走したと思っているんですか？各学園に監修依頼や許可取りに費やした時間を返してくださいよ。それなのに、皆して！無許可で！しかも私を魔王扱いにして！もう、もう……うわーん！もう何もかも嫌です！先生に慰めてもらいに行ってきます。
ンアーッ！やめてください、ケイ！
今シャーレにはユウカ、ノア、アオイ、ホルス、そしてアリスたちをお説教するために、各学園から生徒が続々と集結しています！そんな場所に自首しに行くなんてダメです！アリスはコユキやマキたちのようになりたくありません！

知りませんよ！そんなこと！

うわーん！ケイがキレました！

そりゃキレるわ

カイザー…嘘だよな…？