1月1日、新年早々、自分は地上にはいなかった。 ジャンプして地球にいませんでしたじゃない、僕は連れ去られ空の上にいた。 「トレーナー、寒くないか?」 「あったかいですね、電熱服」 「ならよかった、もう少し飛ぶからな」 担当のニシキフクセンに元旦零時に連れ去られ、飛行場についたと思ったら彼女の縮小レプリカ二式複戦に乗せられ空の旅。 これが新年早々出なければ、喜べたのに。 「足元にお餅とだし入りの水筒あるから口の中でお雑煮にして食べて」 「地上で食べたかったなぁ」 飛行機の免許を取り縮小レプリカとはいえ海外に発注して日本で組み立てる程の知識と技能を持っていながら、彼女は時々ハジケた思想をする。 足元を探れば確かに餅と水筒があった、開けてみればだしのいい香りがする、だが餅をこの中に入れたら救出できないだろうし、箸がなかった。 「ニシキ、お箸持ってない?」 「ないぞ、運が良ければ足元に落ちてるかもな」 一途の望みをかけ足元を探る、未開封の箸が出てきた、今年の運終了のお知らせ。 どうにか空の上で雑煮にありつけたが、このフライトの目的を聞いていなかった。 「ニシキ、僕たちはどうして空を飛んでるんだ?」 「もうすぐわかる」 「?」 少しして、それが明るくなり始める、水平線の向こうから朝日が顔を出す。 「初日の出ですか」 「ここなら曇りも何も関係ないしな」 彼女の言う通り、ここなら雲にさえぎられることもない、エンジンが響く中で初日の出が見れる。 これを見せるためだけに、準備していたのか。 地上に降りたら何か御馳走しないとと思いながら、雑煮をお代わりする。 「あっ、雑煮は食べきっておいてくれよ」 「何でですか?」 「帰ったら新年早々の祝賀飛行でアクロバットするから」 「…僕が下りるという選択肢は?」 「あると思うか?」 僕は無言でだしを飲んだ。