「ここがかぁ〜…」 私は部屋の中を見渡す。 「実際はこんな感じなんだな…」 「ツカサも初めてなのか?」 「当たり前だろメルヴァモン…来たことあるわけないじゃんラブホなんて」 よかった。私は僅かな安堵を覚える。 私とツカサの二人は、ラブホテルの一室に来ていた。 なぜかというと、私がそうしてみたいと彼に言ったためだ。 人間はセックスをするときにこの建物を使うということを知ったから、その真似をしてみたかった。 「じゃあ…俺はシャワー浴びてくる。」 ツカサはそう言って、シャワールームへと歩いて行った。 一人残された私は、部屋の中を色々と見てみることにした。 「………人間は変なもの作るな…」 引き出しの中には、主にピンクで構成された何かが入っている。 「う…動いた…」 スイッチを入れてみると、それは振動を始めた。ってことは…多分これは大人のおもちゃってやつだろう。ネットの動画で見たことあるぞ。 枕元に目を向けてみると、何か小さな袋に入ったものが置いてある。 「なんだ…これ?」 「どうしたメルヴァモン?」 いつの間にか戻ってきていたツカサが、体を拭きながら私に声をかけてきた。 「あーツカサ、これなんだ?」 それを見せると、彼は少し気まずそうな顔をする。 「それはコンドーム…だな…要するに、避妊具だ。」 その名前は私も知っていた。人間同士が交わるとき、子供が産まれないようにするため使うもの。 …つまり、私たち二人の関係には…必要のないものだった。 「…なあツカサ。これ…使ってみないか…?」 「なんで?…まあ…別にいいけど」 「な…なんでもいいだろ!」 実際のところ、どうしてそんなことを言ったのか、私にもよくわからなかった。 たぶん…人間と同じようにしてみたかっただけなのだと思う。 もしも、私がツカサと同じ人間だったのならば使っていたのだろうそれを、使ってみたかった。 ───────── 「じゃ、今日はアタシからだ♡」 私はツカサの太くて硬いものに舌を這わせる。 「─────ッ!やっぱ…メルヴァモンの舌…ヤバいっ!」 ツカサは私の長い舌が好きらしい。キスする時も、今みたいにしゃぶりつく時も、巻きつけるようにしたりして上手く使うと気持ちよさそうにしてくれる。 じゅるじゅると音を立てて吸い付いてみたり、胸で挟んで上下に動かしながら先っぽだけを舌先で弄ってみたり。 「マジで…上手くなったな…!もうっ…射精そう…!」 ツカサの弱点はもう手に取るようにわかる。 「まだ射精しちゃダメだぞツカサ♡」 だからこうして、焦らすこともできる。 「ダメっつっても…俺もう…限界…!」 限界なのは私もそうで、早くツカサと一つになりたくて仕方がなかった。 「わかった。でも射精すのは…アタシの膣内でだ♡」 私はさっきのコンドームを手に取り、封を切る。 見た目はただの薄いゴム。本当に、人間は変なものを作る。 確か…ネットで見かけたデータでは、こうやってつけてたはず… 「メルヴァモンお前…こんなのどこで覚えてっ…!」 それを口に咥えて装着させると、ツカサは妙に驚いたような声を上げる。 「こうやってつけるんじゃないのかツカサ?」 「間違っちゃいるんだけど…あってるといえばあってる…かな」 「あってるならいいだろ?それより早くシよう、ツカサ♡」 私は彼の体に覆い被さった。 「はぁぁ…♡ん…はいって…きた♡♡」 私の体の中に、彼が入ってくる。 脳を焦がすような快楽のデータが流れ込んできて、思わず声を上げてしまう。 「ん…♡…あ…♡はぁ…♡」 腰を動かし始めるともっと激しい快楽を感じ、思考が真っ白になっていくような感覚を覚える。 この快楽もだけど、何よりも大切な人と一つになれているという充足感で満たされるのが好きだ。 「メルヴァモンッ…今日は…最初から…激しいな…!」 「気持ちいいかツカサ?♡射精してもいいぞ♡」 「ああ…!もう射精っ…る…!」 彼の体が震えて、射精したのがわかった。けれど、精液が私に届くことはない。 たった10μmの隔たりに阻まれてしまった。なんなんだろう、この満たされない感覚は。 ぬちゃりと音を立て引き抜かれたそれには彼の精液がたまり、水風船のようになっていた。 私は使用済みになったコンドームを外してみる。 「普通はこれ、どうするんだ?」 「そりゃ捨てるだろ。」 「…ツカサの…もったいない」 私はそれに口をつけ、先端を噛みちぎって中身を吸い出す。 ごくり。 飲み干すと、ツカサのデータが直接私のコアに届くのを感じた。 ああ…だからあんなに満たされなかったんだ。 「…ツカサ」 「なんだ?」 「やっぱり…直接欲しい」 私と彼の間には、とても大きな、大きすぎる隔たりがあった。 「ツカサぁ♡…!好きだ♡大好き♡!」 種族の違い。その隔たりを埋められることが決してないとしても、私は彼と一つでありたかった。 「ん゛お゛っ♡なかに♡こんどはちゃんとっ♡なかにだして♡」 決して子供ができることがないとしても、私は彼が欲しかった。