『どこまでも一緒に』 「ロロっ!!」 「メガシードラモンー!」 一瞬の隙だった、ヴァンデモンのしもべたちに応戦し注意が逸れたその瞬間を突いて 背に乗せていたメガシードラモンのテイマー、ロロはヴァンデモンたちに空へと連れ去られてしまう 即座に狙いを定めサンダージャベリンを放とうとするも、テイマーを盾にし さらに高度を上げる狡猾なヴァンデモン、メガシードラモンは口元を歪める 「クソっ!」 「さようなら井の中の蛙、いえ大海の海蛇、あなたの大切なテイマーは頂いていきます」 「はなして!わたしを放してよぉ」 「残念ですがそれはできません、困るんですよ怪しい事件に積極的に介入してくる 貴方たちのような正義の味方気取りは、見せしめのために処刑もあるかも知れませんねぇ」 恐怖をあおるように手の中に握られたロロに向けてポツリと独り言を零す メガシードラモンも必死にヴァンデモンとロロの影を追って 海上を割くように疾走り続けるも、次第にその姿は雲の合間に霞んでいってしまう 「こんな時俺様が空を飛べたら…いや、何諦めてんだオレは!」 「いつでもそばに居てやるから自信を持てって言ったのにこんなことで、 アイツのそばに居られなくなっちまうのかよ…!」 ―――来日前、グリニッジ天文台にて――― 「ねえゴマモン、聞いてくれる?わたしの夢、笑わないで聞いてね」 「おう!ロロの夢なんだ笑うわけないだろ?」 「わたしね、将来は宇宙の警察になりたいんだ」 「宇宙?なんでまた宇宙なんだ?」 「いつか人が宇宙へ冒険に出た時に安心して旅をできるようにね、そのために わたしが宇宙で皆を守るの、ゴマモンがデジタルワールドでわたしを助けてくれたみたいに」 「できるさ」 「ホント?こどもっぽいって思ったりしなかった?」 「なワケないだろ、ロロがやりたい行きたいところ、俺様はどこへだって着いてってやるさ」 「やったー!やっぱりゴマモン大好き」 「ハイハイ、俺様も俺様も」 ―――――― …あれからロロは日本へ出向して、日々夢へと歩き続けてた 俺様はどうだ、ロロに着いてやってはいたけれど、なるべく俺様が行きやすい海や湖を そうで無い所へ行く時も、モモの所のレオルモンに乗せてもらうように気を配ってくれたり 果たして、ロロの行きたい所へ着いて行ってやれてただろうか 「イヤだ…絶対にイヤだ!」 「ロロに置いてかれるのも、このまま何もできず終いになるのも!」 「お願いだ俺様に進化を!アイツに追いつくだけじゃない、たとえこの身が滅んでも アイツを導く星明りになってやれる!……そんな進化を!」 メガシードラモンの叫びに呼応するようにヴァンデモンの手中にいたロロのD-3が眩い光を放つ 「ロロはきっと進化できるって信じてくれてる」 「……!うん、できる、ゴマモンならきっと、だって」 「あなたは」 「おまえは」 「「パートナーだから!!」」 「何です今の光は…ッッグォォォ!?」 遥か遠くから強大なエネルギーを持つ閃光がヴァンデモン目掛けて突き進む、すんでの所で身を 躱したその背後から白い翼をもつデジモンが体当たりを仕掛け、ロロを掴む手を振りほどいた 僅かな間の出来事にロロも状況の整理がつかない、ただ誰かがヴァンデモンから自分を解放 してくれたのは確かだった、自分を抱きかかえる白いデジモンの顔を見上げる、3本の角 金色の髪、そしてその奥で揺れる三つ編み、いつも編んであげていたゴマモンの後ろ姿が重なる 「ゴマモン……!進化、できたんだね」 「シリウスモンだ、ロロ」 「シリウスモン…そうだ、ヴァンデモンは!?」 ロロが視線を向けると周囲が闇に包まれていく、闇に溶け込んでいったヴァンデモンは凶悪な姿へと 変貌を遂げヴェノムヴァンデモンとして二人の前に立ちふさがった 「計画変更だ…手加減をしてやるつもりは無いぞシリウスモン」 「俺様も同意見だ、覚悟しな」 ロロを抱きかかえるために左腕のみに装着された複合砲剣「シルヴィア」を掲げ ヴェノムヴァンデモンに啖呵を切るシリウスモン、今戦いの火蓋が切って落とされた