その日は、いつも通りの日であった。昼間は学校へ行き、夜はバウンティハンターとして依頼をこなす。 だから帰りがけに来たその電話にも、気軽に答えたのだ。 スマホの画面に浮かんだ名前は、末堂有無。関係性としては友人が近いだろうか。 特に拒否する理由もなく、何かあったのかと応答を押した。ディノビーモンに周囲の警戒を任せ、耳に当てる。 聞こえてきたのは、彼女の珍しい焦った声。落ち着くように語り掛け、その声色の理由を聞き…ぐらりと、地面が揺れた気がした。 そこからのことはハッキリと覚えていない。無事に家に帰れていたことからして、ディノビーモンが頑張ってくれたのだと思う。 私は随分とひどい顔をしていたようで、家族も大層心配していた気がする。何を話したのかもよく覚えていないのだが。 意識が戻ってきたのは追加の連絡が来た後。黒白は精神データが分離しただけであって、死んだわけではないということを聞いてからだった。 状況が好転したわけではないが、それでも安心した。椅子へと深く腰掛け、深くため息をつく。 珍しくこちらを心配するようなディノビーモンの視線。大丈夫だと手を振り、あまりにも情けない自身の姿にまたため息をついた。 ああ、もう。こんな姿まったくカッコよくない。私の理想は、もっとクールなのに。 くしゃりと髪をかき上げる。こんな感傷、捨ててしまわなければ。こんな、こんな――私は何で、こんなに心を乱されているんだ? そこまで考えてやっと気づいた。 どうやら私はあの男に、心底惚れたいたらしい。