偽伝・最期の杯   Ⅰ  ……新帝国歴4年7月15日、皇帝《カイザー》ラインハルト・フォン・ローエングラムがその壮大にして遠大なる夢を見果てる10日前のことである。午後を迎え僅かに陰りを見せた空のなか、ヴェルゼーデ仮皇宮の元に銀河帝国軍務尚書の「」元帥が訪れた。事前の通達がなかった為に門兵並びに皇帝を公私に渡り支え続けたヒルデガルド・フォン・マリーンドルフは当惑し、日を改めるように通達しようとしたが同じように皇帝の終生の友にして忠臣であったキルヒアイス元帥は「」の来訪を良しとして、皇帝の病室に招き入れた。 「卿はいつも唐突に事を為そうとするな」  侍従のエミールに助けられながらベッドの上で身体を起こしたラインハルトが僅かな笑みを浮かべながら「」を見る。「」はその顔に呆れとも似た表情を浮かべ答えた。 「時を選んで居られるとは思えませんが」 「……それはそうだ」  静かな応酬である。これが皇帝ラインハルトと「」元帥の公におけるやりとりの主であった。 「皇帝、申し訳ありませんがお人払いを」  「」の申し出を受け、その場に臨席していたラインハルトとキルヒアイスを除いた全ての人物が驚愕した。キルヒアイスがその答えをラインハルトに問うように目線を向けると、ラインハルトは小さく頷いた。それを受けてキルヒアイス以外の全ての者が病室を離れた。 「……キルヒアイスは、同席させても構わんな?」 「ええ、今更キルヒアイス元帥に隠すこともありませんからな」  そう言うと「」は椅子を皇帝のベッド側に引き寄せ、それに腰掛けた。 「しかし全く以て疲れるものだ、人に仕えるというのは……そうは思わないかキルヒアイス元帥」  「」が苦笑しながら呟いた。 「貴方は少なくとも公には皇帝ラインハルト陛下にお仕えする元帥なのですから、それに応えるのは当然のことかと」 「それは分かっている。だからこうして人払いを願い出たんじゃないか」 「全く……、キルヒアイスを困らせてくれるな。後の銀河帝国皇帝の父となる男だぞ」 「知るか。俺はいい加減退役させてもらうぞ。お前の夢とやらに付き合うのも飽きた」  本来、銀河帝国に仕える身であるならばあり得ない言動である。然し皇帝ラインハルトはそれを許した。それが「」と皇帝ラインハルトの生い立ちが類するものであるが故か、あるいは長きに渡り共に戦った戦友の一人であるが故なのかについて、後世の歴史家は判断を保留している。獅子の泉の十五帥のうちにあって、四天の主席と呼ばれたうちの3人、ジークフリード・キルヒアイス元帥、ウォルフガング・ミッターマイヤー元帥並びにオスカー・フォン・ロイエンタール元帥も、「」のように皇帝に対して傍若無人とした発言をした記録が伝わっていない為であった。 「それで、卿は何をしに来たのだ。まさか今更、余に対して何かを願い出に来たのではあるまい」 「ああ、それならひとつある。退役させろいい加減に」  皇帝の言葉に、「」は至って真面目に答えながら3つのグラスに持参した上等な赤ワインを注いだ。キルヒアイスがそれを止めようとしたが、ラインハルトは首を振り彼を制した。 「断る。貴様にはこれからも働いてもらうつもりだ。先ほどキルヒアイスに後の摂政名にて貴様を終身元帥に叙するよう命じた所だ」  少なくとも公的な記録にそのような遺志は記載されていない。然し、後にその言葉の通り、第2代皇帝即位5周年の記念に於いて、終身元帥に叙されたのは帝国の公文書が記録に伝える所である。 「まだ俺を働かせるつもりか」 「勿論だ。有能な人材はその才覚を生かす義務がある」 「皇帝様の我儘《わがまま》には付き合っておれんぞ」 「許せ。余もたまには我儘を為したい時もある」 「うるせえ」  注がれたワインを「」は一息に飲み干したが、ラインハルトは口をつけなかった。キルヒアイスは一口だけ口をつけ、「」を複雑な心持ちで眺めるに至った。先ほどキルヒアイス本人の口から述べられた通り、『公』においては「」も皇帝に仕える元帥の一人である。然し一度『公』を外れ『私』となれば、最早皇帝の臣下ではなく間違いなくラインハルトの友の一人であり、悪友であった。それは皇帝ラインハルトに対して忠誠を誓ったキルヒアイスには辿り着けなかった関係であると言えなくもない。その想いが僅かに胸に陰りをよぎらせた。 「然しこうして共に酒を酌み交わすのはいつ振りだろうか……」 「さあ……元帥府を開いた時以来かもな」 「随分昔の事のように思います」 「ああ……本当に、ずっと昔の事のように思える」  皇帝ラインハルトは、これまでの歩みを思い返り、微笑みを浮かべた。人はそれを長く苦しい道程であったと伝えるであろうが、自分自身にとっては良い旅路だったと。 「ああ、そういえば……」  皇帝の想起を遮ったのは、「」の声であった。彼の言う所によれば、此処に来る前に帝国立図書館を訪れ、その館長と面会してきたという。その館長とは、かつての自由惑星同盟の英雄ヤン・ウェンリーであった。「」はヤンに対して、児童向けの絵本の体裁を取った銀河帝国並びに自由惑星同盟に関する歴史書を編纂するように私的に依頼しており、その作製がまもなく終わり出版できる、ということだった。これは皇帝ラインハルトやキルヒアイス元帥の知る所ではなく、「」の独断による行いである。 「ほう、で絵は誰に依頼したのだ?」 「メックリンガーに押しつけた。奴のことだから華美な絵本となるだろうよ。一見美術書に見えるかもしれん」 「ははは、面白い。内容はどうした?」 「無論、一切の脚色なしだ。歴史は時代の勝者が作るというが、後の世になればどちらが勝者かを決めるのは我々ではない。故に正しくその歴史を残すべきだ、と俺とヤンの間で一致している」 「それは良い、必要があれば財務尚書に対して適切な予算をつけるよう要請するがよい」 「いらん、これは自費出版だ。帝国がその名を冠して出版したとなれば、歴史の改竄《かいざん》を疑われる可能性もある。あくまで俺の自費でやる。そもそもこれは俺の子の為に描かせてるようなもんだからな」 「ほう、言うではないか。ならばせいぜいメックリンガーとヤンに高い報酬を請求されぬよう気をつけることだ」  この絵本は当時僅か100部程度のみが出版され「」と交友があった者に配られるのみであったが、出版後100年を経た後に幾度か帝国立図書館の名義によって再版された。後にヤン・ウェンリー並びに帝国立図書館の歴史家によって編纂された「銀河帝国史」「自由惑星同盟の歴史」「ローエングラム朝前史」といった主要な歴史書と共に、それまでの歴史を伝える重要な資料として現存している。 「さて……せっかく来てもらったのだ。もう一つ余の我儘《わがまま》を押しつけたいと思うのだが」  絵本の話に端を発した穏やかな雑談の後、皇帝ラインハルトは「」を見据えて言った。 「姉上とキルヒアイスの子の、後見を頼みたい」  その言葉に「」は答えなかった。キルヒアイスも同様に口を閉ざし、ラインハルトの言葉を待った。 「後のことはキルヒアイスとフロイライン・マリーンドルフに任せてある。その結果としてローエングラム朝を廃するならばそれも良いと思っている。然し、政変にあたって無用の混乱を引き起こすのは余の本意ではない。……故に、卿に後見を願いたい」 「俺より適任がいるだろう。それこそミッターマイヤーやロイエンタールのような」  ラインハルトは首を振った。 「彼らは余に忠誠を誓っている。だが、卿はそうではないだろう? だから願うのだ」  「」はその言葉の真意を理解した。ミッターマイヤーやロイエンタールといった主要な人物が後の皇帝に対して忠誠を誓うのは言うなれば当然のことたり得る。だが、そうではない者達が拠り所にするとすれば自分のような人物である可能性が高い。そういった者達によって奉り挙げられ、政変の道具となれば人民に被害も出るだろうし、また同時に「」の本意では無い。だからこそラインハルトは後見を依頼しているのだろう、と。故に「」は答えに窮した。 「……言葉で答えずとも良い。後の行動で示せ。卿は百万の言葉より、一つの行いにて応える男であろう」  この後、ラインハルトは疲れを覚えた為にキルヒアイスが「」に退席を促し、それに従ったことでその日の面会は終了した。これが、「」が皇帝ラインハルトと最後に言葉を交わし、また最後に杯を酌み交わした日でもあった。   Ⅱ  新帝国歴4年7月25日、冷たい雨が降りしきるその日、それまで小康状態にあったラインハルトの容体が急激に悪化した。体温は四十度を下らず、しばしば意識を失った。更に翌26日、11時50分に呼吸が停止した。ただ、これは20秒後に回復し、13時には意識も戻った。16時50分、それまで軍務に従事していた将帥達が招集された。看護に従事していたキルヒアイスを除く、ミッターマイヤー、ロイエンタール、「」元帥を始め、ケンプ、ビッテンフェルト、メックリンガー、ケスラー、ワーレン、ルッツ、ミュラー、シュタインメッツ、アイゼナッハ、シューマッハ、オーベルシュタインといった11名の上級大将が待機所に当てられた談話室に招じ入れられた。5分後、オーベルシュタインのみが所用と称じて退室、その10分後に「」元帥もまた、一部諸将の反感を招いたものの、風に当たってくるといった理由で退室している。  この時、意識を回復したラインハルトがキルヒアイス元帥並びにヒルデガルドに対していくつかの遺言を残していることは、記録に伝わる通りである。自身の死後に11名の上級大将を全て元帥へ叙すること、それは摂政となるジークフリード・キルヒアイス及び皇帝主席秘書官であるヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ両名の名において行われること、と言った内容であった。  18時30分、ミッターマイヤー元帥並びにロイエンタール元帥のみが呼び出され諸将は不吉な予感に緊張を強いられたが、その場に「」元帥は同席していなかった。同時刻、帝国立図書館や帝国幼年学校といったかつて自由惑星同盟の諸将であった者が在籍する場にも、使者が訪れていた。 「皇帝が卿らを仮皇宮へお呼びするようにと仰せになりました。悪天候の中恐縮ですがお越し下さい」  それを受けたヤン・ウェンリーは一度息を深く吐き、頷いた。同様に各地で使者の言葉を聞いたアレクサンドル・ビュコック、ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ、ワルター・フォン・シェーンコップらも同じく、仮皇宮へと向かった。  19時、風雨の中で急報がもたらされた。市街の液体水素タンクが自爆テロで爆破され犯人の遺体から地球教徒であることが判明したというのである。ケスラー上級大将が憲兵並びに軍警察を動員し仮皇宮の警備と捜査の陣頭指揮を執る為に席を外した後、19時30分に所用にて軍務省に戻っていたオーベルシュタイン上級大将が再び仮皇宮へ戻ってきた。 「地球教最後の残党が、皇帝の命を絶つべくまもなく此処へ侵入してくるだろう」  そして続く言葉に驚愕した諸将は、強い怒りを覚えながらオーベルシュタインを睨んだ。何故なら、オーベルシュタインは皇帝ラインハルトの命を囮に、地球教を招き寄せたという内容であった為である。 「皇帝はご逝去を免れぬ。だがローエングラム王朝は続くのだ、そのために陛下にご協力頂いただけのこと」  冷血にして鉄面皮とまで称されたオーベルシュタインの言に対して諸将は怒りを隠す事が出来なかった。そして、今この場にいない軍務尚書でありオーベルシュタインの上司でもある「」元帥に対しても、同様に怒りを覚えた。怒りに燃え、直情に任せ殴りかかろうとするビッテンフェルトを制しながら、ミュラーが言った。 「まずは「」元帥をお捜ししこの事をお伝えするのだ。ルッツ、その任に当たってくれ。他の者はケスラー総監の指示をうけて、行動しましょう。ここで指揮系統を分散させては狂信者共の術中に陥ることになる。よろしいなオーベルシュタイン上級大将」  オーベルシュタインは頷いて応え、こうして20時から22時にかけて、仮皇宮の内外では無言のうちに死闘が繰り広げられた。 「やれやれ……今日は酷い嵐になりそうだ」  待機所として客間に通されていた元自由惑星同盟の将、ヤン・ウェンリーは銃声を聞いてそう呟いた。 「なんということじゃ……こんな日に」 「いや……こんな日だからこそ、ではないですかね。最後の怨みを晴らすなら、今日しかないということでしょうな」  同じく自由惑星同盟の元将兵であったビュコック、シェーンコップも呟くように答えた。 「さぁて、我々もひとつ皇帝陛下殿の為に一働きしますか」  シェーンコップが立ち、指を鳴らした。 「そうするほかないか……。このままでは我々の命も危ないと言わざるを得ない。ではビュコック提督、メルカッツ提督は此処に残ってください。指揮はシェーンコップ教官が」  ビュコック、メルカッツ両名はヤンの言葉に答え頷いた。彼らはマル・アデッタ星域会戦にて降伏した後、軍事裁判を経た後にキルヒアイス夫妻の間に子が生まれた事による恩赦を受け、現在は軍務尚書である「」の十数度に渡る『一生の頼み』によって、帝国幼年学校にて特別講師を務めていた。シェーンコップ、ポプランもまた、それぞれに白兵戦と航空隊の講師を務めている。 「よし、ユリアン、ポプラン、アッテンボローは俺と来い。キャゼルヌとカリンはヤン提督を守ってくれ。帝国を助ける義理はないかもしれんが、今の俺達の給料を払っているのは他ならぬ皇帝殿だからな」  同19時45分、仮皇宮の2階南側客間にオーベルシュタインは訪れた。本来ならばそこに一人居座るはずであったが、既に先客が居た。 「……何故貴方が此処に居られるのですか、「」閣下」 「何ってそりゃあ仮眠だよ、陛下がご崩御あそばされるまでにはまだ時間がかかりそうだからな」  オーベルシュタインは後にこの時の事を「驚きを禁じ得なかった」と語っている。自ら敷いた策の本丸に、一切その話を聞いて居ないであろう「」がベッドに転がり居座っていたからである。 「此処は危険です、どうか陛下のお側に」 「ほう、何故危険なんだ」 「……まもなく、地球教の残党が仮皇宮を襲撃し陛下の命を狙うからです」 「なら何処に居たって危険だろうが。だったら俺は此処で暇を潰すことにする」 「然し此処は特に危険となります。中庭の入り口から近く、潜入されれば直ぐに襲撃されるでしょう」 「奴らが中庭から入ってくるとも限らんだろう。それとも卿は此処が『極めて危険である』なんて得心でもあるのか?」  オーベルシュタインは言いよどんだ。自らが流した情報において、この客間こそが皇帝ラインハルトの病室であり、地球教徒の残党が真っ先に襲撃するであろう場所だった。そうして、両将の間には暫くの沈黙が流れた。 「……あのなあ、どれだけお前の悪事に付き合ってきたと思ってるんだ。流石の俺でもお前の考えくらいそれなりに読めるようになったわ」  沈黙を破ったのは「」の言であった。 「この仮皇宮の見取り図が頭に入っていればある程度想定できる。ここは陛下のご病室の丁度対角線上にあり、同時にご病室と同様に陛下がお休みになられていてもおかしくない規模。加えて例え此処が爆破なり焼失なりした所で、仮皇宮そのものを大きく損なうことはない。およそそこを理解した上で、お前は地球教の連中を呼んだのだろうが」  オーベルシュタインは答えられなかった。これまでも幾度かこの軍務尚書とはこういったやりとりを繰り返してきたが、この軍務尚書はオーベルシュタインがドライアイスの剣と例えられるなら、溶岩の裁槌と例えられる男であった。その男に策の大凡を看破されてしまえば、最早返す言を持てなかったのである。 「それを理解した上で此処に居られるというのなら、その意味は把握しておられるのですか」 「まあな。あの皇帝陛下は死後も俺を働かせるつもりらしい。この辺りで傷病を理由に退役させて頂くのも良かろうと思ってな」 「愚かな」 「お前に言われたくはないわ。またぞろ勝手に暗躍しやがって。その後始末をさせられる身にもなれ」  二人の間には、交わす言葉そのものは皮肉の応酬であったものの、その実、当事者にしか理解しえない奇妙な感情が流れていた。 「しかしまあ、なんだな。分かっていて敗けてやるというのは厭なもんだ。これでも俺は一応の無敗を誇ってるんだがな」 「戦術的な敗北を喫したとて、戦局的勝利は得られるというものです」 「厭だね用兵家ってのは。人の命を駒にしやがる。……さて、ブランデーとワインどっちが良い?」  ベッドから身体を起こした「」は、二つのグラスを棚から取り出し、背中越しにオーベルシュタインに問いかけた。 「では、白ワインを」 「410年物の白でいいな」  持参したのだろうか、いくつかの酒瓶を物色しながら「」は答えた。そして一本の瓶を取り出すと、二つのグラスに注ぎ入れ、一方をオーベルシュタインに手渡した。 「それじゃあまあ、俺達の友情と陛下の健やかな旅立ちに……乾杯《プロージット》」  オーベルシュタインはまたも答えなかった。   Ⅲ  その後の事は、帝国の公文書並びに後世の創作などに於いて伝えられる通りである。「」元帥、並びにオーベルシュタイン上級大将は20時18分に襲撃した地球教徒の残党による爆破テロによって負傷した。事前に家具を効果的に配置していた事により爆風を抑え込み、二人は決して軽傷とは言えない負傷を負うに留まった。特に「」元帥は、左腕の全損並びに左足の負傷により、それぞれを義肢化するに至ったのである。創作などにおいては、「」元帥は自らトマホークを振るい、襲い来る地球教徒を撃滅したが、一人が自爆した事によって重傷を負ったとも、皇帝崩御にあたり招集された旧同盟軍将兵のシェーンコップ等と共に苛烈な戦いを繰り広げたが、地球教徒の爆弾によって負傷したとも描かれるが、真実については帝国の公的な歴史には伝えられていない。  23時5分、皇帝ラインハルトは穏やかな眠りの内から意識を取り戻し、自宅から舞い戻ったミッターマイヤー元帥及びロイエンタール元帥、そしてロイエンタール元帥の実子にして現在はミッターマイヤー元帥の養子であるフェリックスと、キルヒアイス元帥夫妻の間の子である後の皇帝アレクサンデルが手を取り合う様を、皇帝主席秘書官ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフと共に眺めた。その際に軍務尚書「」元帥並びにオーベルシュタイン上級大将が臨席していないことを問うたが、ヒルデガルドが「特段の事情により」とそれを慰めた。ラインハルトはそれを聞き、深く納得するに至るとまた静かに最後の瞬間を迎える為に、瞳を伏せたという。  新帝国歴4年7月26日23時29分、皇帝ラインハルト・フォン・ローエングラム崩御。  ひとつの歴史がその幕を閉じた。然し、今を生きる者にとっては、新たな歴史の始まりであった。