あの男がボクを性的に見ているのは明らかだった。その癖ボクに触れようとさえしなかった。 下劣な目線に対して清々しい程に紳士的な振る舞いだった……理解出来ないものは恐ろしい。ボクはあの男が恐ろしくてならなかった。 だからある時聞いたんだ。ボクの身体が目当てじゃないのかと。 するとあの男は何恥じる事はないとばかりにこう答えた。 「貴方の身体に欲情しておりますが、貴方の血筋も地位も重たいので、身体だけ使えたら良いのになと思っておりました」 呆れた話だ、下劣に過ぎる。しかし当時のボクはそう言われて、喜んでいたんだ。 高貴な血を内包するだけの肉袋にすぎないボクの、肉の部分が欲しいと言われて、愚かにも歓喜していたんだ。 ボクは衝動に身を任せ、今夜の事は誓って他言しないから、ボクを使ってほしいと迫った。 どうにもあの頃から、ボクはあの男に相当参っていたらしい…… 床の上で見上げる男は、普段とは全く違う怖さがあった。 自分から迫っておきながら、ボクは怖くなって身体を縮こませてしまった。あの男の目に宿る欲情は、普段どれだけ辛抱してたかを伺うには十分すぎたんだ。 あの男の手がボクへ向けて伸ばされ、肩や耳に触れる。その度ボクは小さな悲鳴を上げて、みっともなく逃れようとしてしまった。 ボクがそんな態度なのに、あの男は慎重にボクを扱った。優しい手付きで寝巻きの上から撫でられる度、ボクの中の怯えが少しずつ小さくなっていった。 次第に落ち着いてボクが閉じていた目を開くと、あの男の指が涙を掬い取ってくれた。これでもうボクは陥落した訳だ。 ガードを解いたボクの身体を、男らしい太い手が滑っていく。最初の獲物は発育に乏しい胸だった。 一向に発育を見せない、ボクの幼さの象徴みたいな部位を、あの男は優しく優しく擦り続けた。そんな所を触るなと言おうが、もう良いだろうと言おうが、お構いなしだった。 時間の感覚はなかったけれど、随分長い事撫でられてたように思う。ボクの息はすっかり上がり、胸をほんの僅かに揉まれるだけで感じてしまっていた。 ボクが気付いていないだけで、幼いと思っていた部位はとっくに女性の機能を果たせるようになっていた。あの男がボクに教えてくれたんだ。 胸の先を爪先で軽く弾かれるだけで、ボクは自分でも信じられないくらい淫らな声を上げて仰け反った。ボクの身体なのに、あの男の方がボクを上手く操っていた。 胸だけでボクの支度は整っていた。男を受け入れる場所は雫を零していたんだ。なのにあの男は容赦を知らなかった。 夢見心地に浸るボクの無防備な唇を奪うと、同時にボクの膣を指で弄り始めた。ボクの内側に初めて誰かが入ってきた瞬間だった。 ボクはされるがまま、差し込まれる舌に自分の舌を絡め取られ、膣の浅い部分を指で撫で回され、口を塞がれてるのも忘れて甘ったるい鳴き声を漏らした。 膣から指が抜けるのは早かったけれど、逆に唇は念入りに奪われた。ボクの初めての口付けは、口内全てをあの男に味わわれ、同時にあの男の唾液の味を覚えさせられる、とびきり濃厚なものだった。 ボクはあの男に惹かれていたから、そんな目に遭えば何も考えられはしない。もう一度口付けをしたい、もっとすごい事をされたい。そんな気持ちでいっぱいだった。 勿論初めからそのつもりの男は、ボクの下穿きを全て脱がすと男の象徴を突きつけた。準備が整った陰茎というものを、ボクはその時初めて見た。 何を思ったかと言えば、逞しくて格好いい、だ。これから王族にあるまじき行為を図ろうというのに、誇らしくさえ感じた。 実際どうかしていたんだろう。しかし撃ったハイドロポンプは戻らない。ボクは服従するように、全身の力を抜いた。 ボクという価値のない存在を、雄々しい陰茎が貫いてくれるなら、こんなに幸せな事はない。ボクはあの時本気でそう思っていた。 ボクの両脚を割り開くと、あの男の陰茎が膣に押し当てられた。ボクはもう完全に身を委ねると決めたから、自然と脱力出来ていた。 だからだろうか、あまり痛みというのは感じなかった。ボクの中にあの男が入ってくる時、ボクは膣内を掻き分ける陰茎がもたらす快楽で、みっともなく鳴いていたんだ。 あまりの衝撃にボクの呼吸が激しくなりすぎているのを見て、あの男が頭を撫でてくれる。それがたまらなく幸福感を与えてくれて、ボクは一層昂ぶってしまう。逆効果だった。 それどころかボクは無意識に腰を使い、格好いい陰茎に奉仕していた。あの男が切なげな声を漏らすのを見て、何やらボクで感じている事は分かったが、その時ボクはあの男が腰を振っているからだと思っていたんだ。 腟内を陰茎に押され引かれる回数が増えると、ボクはもう流れ込んでくる快楽の虜になっていた。あの男に支度を整えられた身体は、犯される悦びを余す所なく受け入れてくれたんだ。 強すぎる快楽の余り身体が弾けてしまうんじゃないかと錯覚したボクは、その快楽の源である男に両手両足でしがみついた。 楽になるどころか密着度の増した腰使いは、ボクの中で果てて子種を注ぎ込もうと奥を執拗に突く動きへ変わった。 完全に子を成すための動作だったけれど、それだけあの男も夢中だったのかもしれない。ボクはただ快楽の果てに行きたかっただけだけれど。 ボクの唇に荒々しく唇が押し付けられると、口付けをしたままあの男の子種が放たれた。ボクは最後の一突きと口付けで絶頂に飛ばされ、熱く重たい子種が奥を満たしていく感触で更に絶頂したんだ。 それまでは性交というものを侮っていた所はあったボクだけれど、経験すれば改ざるを得ない。どこを抜き出して振り返ってもひどく甘美で、ボクにそんな行為を働いてくれた男に一層魅了されるのもやむなしだった。 さて、とんでもない姦淫せしめたボクとあの男がどうなったかと言えば……ボクの言葉より、後世の歴史に編まれるのを待った方が良いだろう。 当事者から語られる言葉が、必ずしも面白いとは限らないのだからね。 こんな話を明け透けに出来る事が答えだという者もいるだろうけれど……果たしてその見当が正しいかどうか、答え合わせの時を待つのもまた楽しみじゃないのか?