「SPYRAL-ボルテックスで、直接攻撃(ダイレクトアタック)!」 「う、美しい……!!」 「どう、満足した?柚子ちゃん傷付けた分はこれでチャラにしといてやる」 「ぐっ……グフッ、グフフフフッ……!あぁ、やはりお前は最高だ!お前こそ俺に至上の痛みと快 感を与えてくれる!」 「うっわ……」 「俺はこれ程までに生きてて良かったと思った事はない……!榊遊矢とキングと言う相手とも殺り 合えたしな。あぁ、なんて素晴らしい人生だ……!」 「や、もっとマシな生きた実感味わいなよ……」 「もう俺に悔いはない。さぁ、殺れ」 「はぁ〜……何回も言ってんじゃん、やんないって。私は殺すためじゃなくて誰かを笑顔にするた めに決闘してるから!曲げるつもりはないっつーの」 『───殺せ、千束』 「楠木さん……」 『10年前にこいつを始末しておかなかったお前にも責任の一端がある。その尻拭いをする絶好の 機会だ。やれ』 「いや、だからぁ……!」 「ならわたしが代わりに遂行します。楠木司令」 「たきな!?」 「コイツを生かしておけば新たな被害者が必ず生まれます。そんな危険な男を野放しにしておけ ません。それに、わたしは柚子さんを傷付けたコイツを許せない……!」 「たきな……」 「ふざけるな……!」 「セルゲイ!?」 「俺を殺していいのは錦木千束だけだ!それ以外の人間が俺の結末を決めるなど、美しくない! そうなるくらいならば……俺自らの手で幕を下ろす!」 「ちょちょっ!アンタ、何言って……!?」 「見ていろ、錦木千束!俺が最期に魅せる芸術を!」 「変形した!?」 『ヤツめ、まだこんな力を……!逃がすな!』 最後の力を振り絞り、ビルから外のコースへと飛び出したセルゲイ。 そのセルゲイを追い掛ける千束とたきな。 この逃走劇の果てになんとか二人は追いつき、千束は宙へと浮くセルゲイへと必死に手を伸ば そうとするが─── 「あばよ、最強のリコリス」 ────愉しかったぜ セルゲイがそう呟いた刹那、千束の視界一色が真っ白に染まり、それと共に激しい音が耳全体 へと響き渡る。 千束はこの数秒間、何が起きたのか理解出来ずにいた。 ただ呆然とする彼女の目の前には、空を切る自分の手だけがそこにあった───