二次元裏@ふたば

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133747 B24/09/15(日)20:37:43No.1233085443+ 21:38頃消えます
「薔薇の花言葉は本数で意味が変わるって、知ってた?」
ソファーに座った彼女──ミスターシービーが唐突にそう切り出したのは、少し肌寒い秋の夜のことだった。
「聞いたことはあるけど」
こういう話をするときの彼女はまるで幼い少女のようで、楽しそうに手招きをする表情から目が離せなくなる。だからついつい、毎回隣に腰を下ろして付き合ってしまうのだ。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
124/09/15(日)20:37:53No.1233085543+
彼女と一緒に、薔薇の花言葉をなぞる。大抵は愛を告げる言葉だったが、その中のいくつかが目に留まった。
「多分、日本だけの風習だよな。4本の意味とか」
「ほんとだ。6本とかもそうかな」
言った後で、少しだけ後悔した。仮にそうだったとしても、愛の言葉にけちをつけることはあるまい。
だが、彼女の微笑みは変わらなかった。
「でも、素敵だよね。
好きって伝えるための言葉が、こんなにいっぱいあるなんてさ」
224/09/15(日)20:38:05No.1233085647+
「うん。
あげたことも、もらったこともないけどさ。きっと綺麗なんだろうな。好きな人からもらったなら、なおさら」
薔薇の花束を抱えて愛を告げるなんて、やったこともないけれど。
愛の言葉は、あればあるほどいいものだ。

しばらくそうやって、映画の中でしか見たことのない光景に年甲斐もなく想いを馳せていた。そのせいで大切なことを見落としているとも知らずに。
「目を閉じて」
いたずらを思いついた彼女の、さっきとは打って変わって妖艶な色香を湛えた微笑みが、すぐそこまで来ていた。
324/09/15(日)20:38:17No.1233085767+
「…!」
抱きしめられたとわかると、心臓が急に早鐘を打ちはじめる。もう何度もしてきたことなのに、彼女と愛し合うときは心が落ち着かない。
彼女がこうして触れてくるときに、明確な理由があることは少ない。だが、今日はあまりにも唐突に過ぎる。
そしてそんな彼女からは、薔薇の芳しい香りが匂い立っていた。
「だめだよ。
閉じてて」
思わず目を開いてしまいそうになるのを、彼女は目敏く察して制止する。その言葉で必要以上にぎゅっと目を瞑るこちらを見たのか、彼女は可笑しそうに微笑んだ。
そのくすくすと笑う声と一緒に、薔薇の香りが頭の中をゆっくりと染め上げていった。
424/09/15(日)20:38:27No.1233085845+
「今、ここには赤い薔薇の花があります。
何本あるでしょう」
静かな彼女の声が、唐突に問を投げる。けれど薔薇の香りと彼女の温度ですっかり融けてしまった頭は、その意味を理解するだけで精一杯だ。
「きみは、何本ほしい?」
そう言われて思い出すのは、さっきの薔薇の花言葉。だが、答えの選択肢を提示されても、やはり選ぶことはできなかった。
彼女に愛を捧げることはあっても、愛を乞うことはしてこなかった。それが、何にも縛られたくない彼女と愛し合うときに、決めたことだったから。

もし、自分が赤い薔薇を求めることがあったなら。
それはきっと、彼女に贈るためだけだろう。
524/09/15(日)20:38:43No.1233085996+
「…999本」
漸く出したその答を聞いて、彼女は少しだけ沈黙した。
再び聞こえた彼女の声は、どこか照れたような、少し小さな音色をしていた。
「…ほしいの?」
「ううん。
もしあるなら、そのくらいシービーにあげたい」

また、彼女は何も言わない。その代わりに彼女の頭がすりすりと胸板に押し付けられて、少しこそばゆかった。
「…いいよ。目を開けて」
やはり少し照れくさそうな声に導かれるままに、両の瞳を開く。眼の前には頬をほんのりと赤らめた彼女が、優しく微笑んでいた。
624/09/15(日)20:38:58No.1233086115+
そんな彼女を愛おしいと思うのと同時に、あるはずのものがないことに違和感を覚える。芳しい匂いははっきりとするのに、どこにも薔薇の花がない。
「ごめんね。さっき思いついたばっかりだから、そんなに数は揃えられなかったんだ」
それでも、彼女は実に楽しそうに、あるはずのない薔薇の話をしている。ずっと聞いていたくなるような、爽やかで甘い声音で。
「でも、一本だけは用意できたよ。
今、きみの手の中にあるから。きみにあげる」
その言葉とともに、彼女の身体がゆっくりと胸板に預けられるのを感じる。
テーブルの上に置かれた薔薇の香水と、その彼女の言葉で、全てがわかった。
彼女こそが、今咲いたばかりの一輪の薔薇だったのだと。
724/09/15(日)20:39:18No.1233086283+
「だから、正解は一本」
そう告げたときに応えるように強く抱きしめてくれるきみを見ると、アタシのしたかったことが伝わったのだと実感して嬉しくなる。
今日の悪戯は大成功だ。思わぬ反撃をもらって少し戸惑ってしまったけれど、ほしかったものは無事に手に入った。
きみの心。好きなだけ薔薇の花をあげると言ったのに、それをアタシに贈りたいと言ってくれる、きみの優しい心。
何度生まれ変わっても、アタシのことを好きになると言ってくれる、
そんなきみの心がほしい。こんなにも好きになってしまったのだから。
824/09/15(日)20:39:31No.1233086435+
「いつか、本物をあげる。
だから、アタシもほしいな。999本の薔薇」
そう呟いて、また彼を強く抱きしめた。
アタシがつけた、甘い薔薇の香り。
きみにもそれが移ってしまえばいいなと、心の底から願いながら。
924/09/15(日)20:39:55No.1233086679そうだねx1
おわり
シービーにちょっとおしゃれに口説かれたいだけの人生だった
1024/09/15(日)20:41:38No.1233087745+
口説くまでもなく付き合ってる距離感に見えるが…
1124/09/15(日)20:44:35No.1233089465+
>薔薇の花言葉(本数別)
>1本:「ひとめぼれ」「あなたしかいない」
>999本:「何度生まれ変わってもあなたを愛す」
1224/09/15(日)20:49:39No.1233091999+
好きになったなら何回口説いたっていいものだからね…
1324/09/15(日)20:51:44No.1233093037+
ふたりで千本の薔薇を買ってシービーがトレーナーの胸に一本挿してあげるんだ…
1424/09/15(日)20:58:08No.1233096192+
次の日同じ匂いさせてざわつかれるやつ
CBはわざと
1524/09/15(日)21:08:07No.1233101179+
赤いドレスがあったら完璧だったのになぁとか思ってるシービー
1624/09/15(日)21:09:41No.1233102040+
シービーにおしゃれに口説かれて照れたいしたどたどしく口説き返して笑われたい
1724/09/15(日)21:13:53No.1233104081+
勝負服に薔薇とか似合いそうでいいよね
1824/09/15(日)21:15:23No.1233104881+
間接的にアタシをあげるって言われてませんか
1924/09/15(日)21:30:03No.1233112139+
風の香りと薔薇の匂いのする女いいよね…


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