世界を入れた壺 懐かしいな、まさかこの壺が残っていたなんて。 もう800年は前かな。 ある王様が言ったんだ、世界の全てが入る壺を作れってね。 まず、国で一番大きな工房が手をあげた。 彼らの作った壺は本当に大きかったよ。 私の人生でもあんな大きな壺は見たことない。 あそこに見える塔があるだろ? あれぐらいの高さだった。 そして、工房の連中は首をはねられた。 これのどこに世界が入るのだと。 次に、国で一番豪華な工房がひきうけるはめになったよ。 彼らの作った壺は本当に見事だった。 そうそう知ってるかい? この世界はひとつの球なんだって。 いや、私も信じてはないんだけどさ。 壺をひとつの世界と見立てて宝石をちりばめたんだ。 そして、工房の連中は首をはねられた。 これでは中に入らんではないかと。 そこで引退していた老職人が手をあげた。 「それで作られたのがこの壺?」 そう、この壺。 「その職人も首をはねられてしまったのかい?」 職人は壺を作って言ったのさ。 陛下、この壺の価値はその中に入ります。 どうか中をお確かめくださいって。 そして王様が中に入ったら封をした。 自分のわがままで首をはねていた王様のことを助ける人は誰もいなかった。 「まだ封がされているんだけど」 さて、案外封をあけたら願いでも叶えてくれるんじゃないか?