「さて、これで集まってくれるだろうか?」  源浩一郎がぱパソコンを睨めながら唸りを上げていた、画面にはワードアプリが開かれていて少しばかりの装飾が施された文面が記されている。 【高額報酬、アルバイトしませんか?デジタルワールドでバッカスモンと呼ばれるデジモンと接触し酒を入手するお仕事です、失敗しても問題ありません、その場合多少の手当ては払います。成功報酬は日本円にして1000万ほど支払う準備をしております、どうぞお手伝いいただければありがたいです、詳細説明はバイトを受けて頂いてからになります、よろしくお願いいたします。条件・成人以上】 「胡散臭いぞ浩一郎、これ受ける奴いるのか?」  パートナーのクンビラモンが浩一郎に言う。だよね、と浩一郎も同意した、詳細を隠してる当たりが特に怪しさを出してるなと自分で書きつつ思っていた。  しかし実際ちゃんと書くわけには少しばかりためらわれる、依頼内容はバッカスモンと呼ばれる究極体デジモンを捜索しそのバッカスモンから酒を分けてもらうと言う単純な物だ。バッカスモンの基本的なデータとしては陽気で面倒見がよく酒好きでよく宴会を開いているのだという、しかしそこは究極体酔えば間違って相手のデータをつまみに変換する、怒らせれば睡眠やマヒを誘発する毒の酒を生成して見舞ってきたり、怒ってなくても酔っぱらいすぎると破壊光線をぶちまけるというそれ相応に危険なデジモンだ、しり込みしても仕方がない。  その上さらに厄介なのが本来陽気でよく宴会を開くバッカスモンなら簡単に接触できると思っていたがどうもその個体は相手を選り好みする気質のある個体らしい、浩一郎が噂を追いかけて接触しようとしてもうまくいかない、あまり自分は好かれていないらしい。だがその特異な個体こそが目的そのものであるからこそ諦めきれない、そのバッカスモン特異個体は世界に存在する数多の酒のレシピデータを収集しあるいはどのような理屈かはわからないが逸失したとされる酒のレシピまでも収集してあらゆる酒好きを唸らせる『幻の酒』と呼ばれる酒を生成できるのだという、さらに聞いた話によればそれ以上の『神の酒』と呼ばれる逸品すらも作れると噂されている、神の酒、伝説上あるいは神話上に存在するインドはソーマ、北欧神話には黄金の蜂蜜酒、日本神話に置いてはヤマタノオロチを酔わせた酒などなど、多くの神話の酒のデータすらも取り込みそれを至高の酒として生み出せるのだというほどだ。これにはウィスキー派の浩一郎も日本酒派のクンビラモンも味が気になって仕方ない、何故会うことができないのかはわからない、だが飲みたい、その伝説の酒を、だからこその危険に見合う報酬を用意したのだ。 「あーあ、幻の酒、どんな味がするんだろうなァ」 「いやまったく気になるな……一口でいい、何とか飲みたい……飲めないものか」  浩一郎とクンビラモンが溜息を吐く。今だ飲めぬ幻の味に思わず喉を鳴らした。