二次元裏@ふたば

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133747 B24/07/14(日)00:31:44No.1210759849+ 02:16頃消えます
毛の一本一本までわかるように、布団の上にゆったりと横たえて、広げる。いつもハンモックで眠るアタシが珍しくベッドの上に横になっているのは、偏に手入れがしやすいからだった。
待ち遠しくてゆらゆらと揺らしていると、窘めるように彼がその毛を掬い上げてくれる。そのまま軽く手で纏められて彼の膝の上に乗せられるのが、楽しい時間の始まりの合図だ。
「じゃあ、始めるよ」
「うん。お願いね」
寝転ぶアタシも櫛を持つ彼も、同じように微笑んでいた。
アタシにあって彼にはない、髪と同じ色の毛。それを彼に委ねる時間が、アタシは好きだった。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
124/07/14(日)00:32:08No.1210759994+
いつだったか、彼にお風呂上がりの髪を乾かしてもらったことがあった。もちろん、彼は女の髪の手入れなんてしたことがないからと随分と慌てていたけれど、そんな狼狽えように反して髪を扱う手つきはひどく丁寧で心地よかった。
意外な才能を見せた彼を面白がったアタシが次のお願いをするのに、そう時間はかからなかった。
『今度は尻尾もやってみてよ』
やはり彼は少し困惑していたけれど、その表情は初めのときより、ずっと楽しそうだったと思う。

期待通り、彼の手入れの腕は初めてとは思えないほど素晴らしかった。トリートメントを塗り込む加減や櫛を通す手捌きが絶妙なのはもちろんだが、アタシが初めに教えたそのふたつ以外にも、枝毛の手入れやマッサージのことまで、彼はいつの間にか覚えてきていた。
随分無茶な頼み事をしたというのに、それに応えようとしてくれたことがひどく嬉しかった。信頼して任せる度に、彼は腕を上げていったのだった。
今ではもう、アタシよりも彼のほうがずっと尻尾のケアに詳しい。そして、彼に尻尾を預ける時間は、アタシの好きな世界の1ページになっていた。
224/07/14(日)00:32:25No.1210760087+
一緒に選んだトリートメントを、ゆったりと尻尾にまぶされる感触。一房ずつ摘んだ毛束に、ゆっくりと櫛を通す手つき。
初めのときからどれだけ上手くなったかも、初めのときから変わらずに、めいっぱいの愛情を込めてくれているのも、全部わかる。
「上手になったよね。本当に」
「シービーが任せてくれたんだ。上手くならなきゃ嘘だよ」
昔とは打って変わって楽しそうに、自信ありげに呟く彼に、限りない安らぎとほんの少しの寂しさを覚える。初々しい反応を見せてくれた以前の彼も好きだったけれど、今の彼と過ごす時間だって素敵だから、その寂しさは甘んじて受け入れることにした。

尻尾に櫛がひとつ入る度に、彼との時間が好きになる。けれど、少しだけ不満もあった。
「シービーだって、綺麗になったよ。ずっと手入れしてきたからわかる」
彼がどんなに愛を示しても、アタシは彼に触れられない。もう彼の手は、アタシの尻尾で塞がっているから。
切なさが募るたびに、少し可笑しくてくすくすと笑ってしまう。
自分の尻尾に嫉妬することになるなんて、思ってなかったから。
324/07/14(日)00:32:46No.1210760209+
彼が最後に手で尻尾を梳いてくれるのが、アタシはいちばん好きだった。彼の優しさと愛情を、いちばん近くに感じられるから。
それに蕩かされるように、アタシの口もよく回るようになる。
「尻尾って、面白いんだよね」
微笑んだまま楽しそうに首を傾げて、続きを促す彼の仕草が愛おしい。彼と語らう時間は、いつもアタシの心を温かいもので満たしてくれる。
「真っ直ぐだったり、ちょっとカールしてたり。先がきっちり切り揃えられてたり、尖ってたり。
みんな違ってみんならしくて、いいなって見る度に思うんだ」
そんな彼が慈しむように扱う尻尾に、アタシはいつも自分の影を見る。アタシたちにしかないそれは、皆が歩いてきた物語の道筋のように思えた。
「いっつも自分の後ろにあるものだからさ。
アタシたちが走った軌跡を、尻尾は全部覚えてるんだろうな」
424/07/14(日)00:32:58No.1210760295+
だから、彼に尻尾を大切にしてもらうと嬉しいのかもしれない。アタシの物語ごと、愛してくれてるってことだから。
「そうだな。
この尻尾も、シービーとおんなじだ」
野山を歩いて飛び出た毛束をゆっくりと指先で梳きながら、彼はしみじみと呟いた。
アタシはアタシの歩いてきた道が好きだ。誰も行かない裏道には、誰も知らない美しいものがある。アタシの心は、ずっとその輝きに惹かれていた。
「でしょ。あっちこっち跳ねてて。
寄り道ばっかりのアタシみたい」
そんな裏道を一緒に歩いてくれる誰かが、こんなに大切になるなんて思っていなかったけれど。
524/07/14(日)00:33:12No.1210760394+
でも、アタシの道にどこまでもついてくる彼も、やはり一筋縄ではいかないひとなのかもしれない。
「そんなことない」
優しい微笑みを浮かべたままで、思いもよらないことを言う。心がざわつくのと同じくらい、なんて言ってくれるのか楽しみにしている自分がいる。
彼がそんな表情をするのは、一緒に大切なことに向き合ってくれるときだと知っているから。
「この尻尾、跳ねてる毛はいっぱいあるんだけどさ。曲がってたり、傷んでたりするのは一本もないんだ。
みんな手触りもよくて、手入れしてる方が気持ちいい」
アタシが思いもしなかったことなのに、それがいちばん心の隙間を埋めてくれるのが、本当に不思議で、それ以上に嬉しい。
アタシがアタシでいるための、最後の一滴。
「真っすぐだよ。自由だけど真っすぐで、綺麗だ。
前にも言っただろ?シービーはずっと、心のままに真っすぐ走ってきたんだなって、わかる。
だから、俺は好きだよ。この尻尾」
624/07/14(日)00:33:22No.1210760476+
尻尾がアタシの辿った物語だというなら、きみの思う形にしてもらうのもいいかもしれない。
「じゃあ、きみの好きなように整えてよ。
きみの夢見るアタシでい続けるって、約束したでしょう?」
きみが見つけてくれたアタシなら、きっとアタシも好きになれるから。
724/07/14(日)00:33:35No.1210760550+
「はい、おしまい」
ぽんぽん、と優しく尻尾を叩かれる感触で、微睡みの中からゆっくりと意識が浮かび上がる。ちらりとそちらの方を見やれば、艶を増しながらも整えられすぎていない、アタシ好みに跳ねた尻尾があった。
ああ、やっぱりきみは優しい。髪を撫でてもらうのが心地よくて、ずっとこうしてもらうのもいいかなと思ってしまう。
このまま寝ていてもいいよと言ってくれているような、その手つきに身を委ねたい誘惑に駆られる。
でも、ここで眠ってしまったら、きっとすごく後悔する。だって、ずっと我慢してたんだもん。
アタシだって、きみを愛したい。

「おしまいでいいの?」
彼の手にゆっくりと、手入れされたばかりの尻尾を絡める。さっきまであんなに余裕のあった手つきが明らかに動揺しているのがわかって、少し楽しい。
ずるいよ、きみばっかり。アタシの心にあんなに触れられて。
アタシも、きみの心の中にいたい。今は全部、アタシで埋め尽くしてしまいたい。
「アタシはもっときみを感じたい。
尻尾だけじゃ、全然足りない」
824/07/14(日)00:33:48No.1210760644+
ずっと手入れしてきたんだもん。知らないわけないよね。
髪と尻尾を触らせるのは、裸を見せるよりも親しい証だって。
きみに愛してもらうと、胸の奥から熱いものが溢れてきて、苦しい。その熱を少しでも逃がしたくて、伝えたくて仕方ない。
だから、きみの唇がほしい。きみのいちばん柔らかなところで、アタシの熱を受け止めてほしい。
924/07/14(日)00:34:02No.1210760760+
「ん…んっ…
…ふふ」
唇を重ねながらお返しのように彼の髪を梳いてあげると、甘えるようにこちらの手に頭を寄せてくれるのが愛おしい。ただ腕で抱き合うだけでは足りなくて、今度は尻尾を彼の腰に回した。
唇を離して、耳をぴたりと胸に当てる。どくどく、どくどくと早鐘を打つ音が、どれだけきみがときめいてくれたのかを教えてくれる。
それを感じる度に、きみの中にアタシがいるんだってわかって、どうしようもなく嬉しくなる。

「言って」
「…ん」
「もっと言ってよ。アタシの好きなところ。
アタシも、きみの好きなところ言うから」
でも、それじゃ足りない。ありったけの愛で蕩けているきみも好きだけれど、きみにはちゃんと自分の言葉で、アタシに伝えてほしい。
「アタシはね。
きみの言葉が好き」
アタシの好きなきみは、アタシを好きって言ってくれるきみなんだもん。
1024/07/14(日)00:34:26No.1210760884+
「アタシの思いもしてなかった言葉で、アタシの心の隙間を埋めてくれる。
そんなきみが、大好き」
だから、アタシも埋めてしまいたい。ありったけの想いを言葉に込めて、もう他の何も入らないくらい、きみの心をいっぱいにしてしまいたい。
そのくらい、きみのことが好きだ。

肩口にきみの重みを感じて、また嬉しさが募る。アタシの気持ちの分も足されて、その感触はほんの少しだけ重たく、温かくなったような気がした。
「ごめんね。これは予想外じゃないかも」
少し申し訳無さそうに笑う声を聞くと、はにかむきみの顔を思い浮かべるのがやめられなくなる。きみは恥ずかしがって隠してしまうだろうけど、それでもいい。
きみの言葉が、ぜんぶ教えてくれるから。
「…俺も、好きだよ。大好き」
1124/07/14(日)00:34:37No.1210760960+
ありきたりであたりまえな言葉が、どこまでも甘くて心地いい。不意打ちのように心に刺さるのも、真正面から伝えてもらうのも、ぜんぶアタシを満たしてくれる。
「ふふふっ」
きみの言葉は魔法だ。アタシの尻尾と同じように、きみのぜんぶが詰まってる。
だからアタシは、一言だって聞き洩らしたくない。そのぜんぶを受け止めて、心にしまっておきたい。
「それはね、いくら言ってもいいんだよ。
だって、絶対に飽きたりしないから」
何度繰り返してもまた欲しい。
本当にいいものって、そういうものでしょう?
1224/07/14(日)00:35:28No.1210761281+
きみの言葉が好きだ。だけどきみの唇は、言葉を紡がなくたって素敵だって、アタシは知ってる。
「ん」
ああ、やっぱりいいものだ。
ずっと味わっていたくなるような、どこまでも愛おしい味がする。

告白だって、キスだって、何度でもしてほしい。
きみに大切にされてるって、すごく幸せになれるから。
1324/07/14(日)00:36:29No.1210761693そうだねx1
おわり
シービーの尻尾は癖があるけどすごく綺麗だと思う
1424/07/14(日)00:38:07No.1210762263そうだねx1
前に髪を梳かしてもらったときのやつ
fu3725663.txt
1524/07/14(日)00:40:00No.1210762965+
いい…
1624/07/14(日)00:41:25No.1210763525+
好きな人に尻尾いじらせたり絡めたりするのいいよね
1724/07/14(日)00:42:34No.1210763928+
でもエースは野菜つくってるよ?
1824/07/14(日)00:46:21No.1210765233+
お尻を向けて尻尾の付け根を起こしてお手入れお願いするのってそこはかとなくえっちじゃないですか
1924/07/14(日)00:52:41No.1210767589+
そのうちどうせ我慢できなくなって後からするんだからって言ってキスしながら尻尾マッサージするときがあるとよい
2024/07/14(日)00:57:13No.1210769256そうだねx1
尻尾を大事にしてくれて嬉しいけど尻尾ばっかりに構ってると拗ねるめんどくささもよい
2124/07/14(日)01:04:17No.1210771077+
彼氏に尻尾を梳いてもらうのはウマ娘の憧れの定番シチュだけど実際には慣れてないひとには触らせられなくてできないみたいな文化があるといいよね
だからこそ自分のために尻尾の手入れを覚えてくれるのが嬉しくなるんだよね
2224/07/14(日)01:06:32No.1210771649+
拙者はこういう異種族との恋愛特有のシチュエーション好き侍
2324/07/14(日)01:11:14No.1210772758+
事あるごとに好き好き言い合いやがってよお…
2424/07/14(日)01:15:31No.1210773840+
お互いがお互いにとって嬉しい予想外な関係いいよね
2524/07/14(日)01:19:42No.1210774858+
シービーはきっと好きって躊躇わずに言うよね


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