─前回までのあらすじ 海辺のバーベキュー会に同じアグモン系デジモンとして招待された私「アグモン博士」は、振る舞われた「巨大ニク」に皆で舌鼓をうっていた。 なんとこの後ビーチバレー大会を始めるらしい。 フフフ…私の「ニセハカセボー」投擲で鍛えられたテクニックを見せる時が来たようだ。 …おっと、私は誰が何と言おうと、「アグモン博士」だ。 誰が、何と、言おうと、「アグモン博士」なのだ。 ─ 「待てや!」 海辺でバーベキューを楽しんでいた(悔しいが認めよう、途中からは普通に楽しんでいた)俺は、ある『人影』を追いかけて駆け出した。 その人影とは『俺』だ。 …俺のはずだ、今のアバターの姿ではない、現実での自分「■■■■」の姿。 「クソッ!」 まただ、さっきも感じたこの感覚、ずっと気が付かないふりをしていた違和感。 自分の名前が思い出せない。 今の俺の姿と名前「ジョン・ドゥ」はリベレイター内で使っているアバターだ。 当然現実世界での容姿と名前が別に存在するのだが、今はっきりと確信した。 俺は自分の名前を忘れている。 思い出そうとしても記憶の一定の部分、特に名前のところでノイズがかかったように思考が中断されてしまう。 アバターデータが破損しているとシステムが表示するのもこれが原因だろうか。 まぁいい、一体誰が俺の体を勝手に使っているのか知らないが、追いついてみれば解るだろう。 そうやって海辺の森へと逃げた『俺自身』を追いかけ回してしばらく経った頃 ふいに開けた場所に出た。 この周辺だけ木々の密度が低い、人工的に切り開かれた一角だろうか。 そんなことはどうだって良い、目的はその中に立っている人物だ 「ハァ…ハァ…やっと追いついた…!」 さっきまで逃げ回っていた『俺』は中央でぽつんと突っ立っている まるで「待っていた」とでも言うように。 ─ハァ…ハァ…クソッ… 違うわこれ、単に向こうも走り疲れただけだ。 「お前は一体誰だ!なんで俺の体を勝手に使ってる!」 『俺』はゆっくりと振り返って言う。 ─それはこっちのセリフだ、お前こそなんて人のアバター勝手に使ってんだ 「あぁ!?」 何を言ってるんだコイツは 「その体は俺のだろうが」 ─その体は俺のだろうが 俺と『俺』が完全に同じタイミングで同じ言葉を発する。 嫌な予感がするぞ…? 少しコイツを試してみようか 「俺が元々使ってたデッキは」 ─俺が元々使ってたデッキは 向こうの『俺』も同じことを考えたらしく、全く同じ質問をしてくる。 「オグドモンデッキ」 ─オグドモンデッキ 当然答えるのも同じ言葉、同じタイミングだ。 「フッ!」 ─フッ! 多分カードゲームを遊んだことのある人間なら一度はやったことがあるはずだ 全く無意味にポーズを付けてデッキからカードを引く動作 これも同じタイミングで同じ動き、鏡でも見てる気分だ。 「嘘だろオイ」 ─嘘だろオイ まさか本当にコイツは俺自身とでも言うのか 「最後に聞くぜ、お前の名前は」 ─最後に聞くぜ、お前の名前は 「ジョン・ドゥだ」 ─「■■■■だ」 「…今なんて言った?」 ─…今なんて言った? どうやら向こうの俺が名乗った「自分の名前」が俺に聞こえないように、俺の名乗った「プレイヤー名」も向こうには聞こえていないようだ。 「っは…ハッハッハッハッハ!」 ─っは…ハッハッハッハッハ! そろそろ認めよう、目の前のコイツはどうも本当に『俺自身』らしい。 要するにこういうことか? 「俺がアバター側のデータで」 ─俺が現実世界での体のデータ 「一人の人間から分断されたから」 ─お互いの記憶に欠けている部分がある 「…」 ─… いつから「こうなっていた」のかは知らない。 もしかするとこの世界に飛ばされた時からだったかもしれない。 「んで、なんでさっきはいきなり逃げ出したんだよ」 ─近くで騒いでるヤツラがいるなって見に行ったらふいに『自分』と目があったんだぜ?逃げるだろ 「そりゃそうだな…」 よく考えたら聞くまでもない、コイツは俺なんだから自分ならどうするかってだけの話だ。 「それで、今までどうしてたんだお前」 ─それを聞きたいのはこっちだ、おまえと一緒に居た連中誰だよ。 「アイツラは…その…?ゲーム内のフレンド?的な?」 ─フレンドぉう…?ハッ… めちゃくちゃ怪訝そうな顔をされた上鼻で笑われた。 当たり前だ、元々リベレイター内での俺のフレンドリストは堂々の0人だったのだから ─冗談だろ? 「冗談だったら良かったな…」 なんやかんや俺もあの二人の実力は信頼している 思い出したくもない「あの」戦いでは一応助けに来てもらったし? 「で結局おまえの方はどうしてたんだよ」 ─D-STRAGEは何処かに行っちまったし、残ったカードかき集めて上手いことやってたさ。 「あぁ…」 そりゃそうだ、D-STRAGEは俺が持っているんだから、しかしD-STRAGEまで分裂してるわけじゃないのか。 ─やっぱお前が持ってたのか 「俺のだからな」 ─… 向こうの俺の目つきが変わる ─まさかとは思うが、D-STRAGEを持ってるからお前のほうが『本体』だとか思ってないだろうな? 「は?」 思っても見ないことを言われる ─お前…もしかしてこのまま俺達が分離したままでいいとか思ってるのか 「考えてもなかったぜそんなこと」 ─ハッ、始めに自分で言っただろ『その体は俺のものだ』って。 そのままジリジリと一歩づつ俺が俺に向かって来る。 ─返せよ、そのD-STRAGEも。 『俺』が懐からデッキを取り出す 「ッ!?セキュリティ展開!(エクステンド)」 応戦するためにこちらも慌ててD-STRAGEを起動させる ─戦闘(デジタルゲート) 「開始!(オープン) ─開始!(オープン) こうして俺と『俺』の戦いが突如始まった… プレイヤー1VSプレイヤー1     BattleStart 「なんだこりゃ?」 あり得ない表記がウインドウに表れる。 ─さぁな、システム上同一プレイヤーだからバグってんだろ ─まぁどうでもいいさ、先行はくれてやるよ 「そうかよ、なら遠慮なく貰ってやる」 俺の記憶が確かなら、俺がこちらの世界くる直前に持っていたのは先ほども話題なった「オグドモンデッキ」だ このデッキはできる限り素早くオグドモンの登場条件、大罪の門の下に7種類の七大魔王を持つカードを置くという条件を満たすかがカギとなるデッキ。 なら当然先行が欲しいはずだが、何を考えているのか… まぁいい、まだ1ターン目が始まってすらいないのだから。 先行 プレイヤー1 メモリー0 さて、初手に出来ることは限られている、とりあえずはテイマーカードをバトルエリアに出して終わりだ。 「3コスト!俺のテイマーカードをバトルエリアに出す!」 テイマー 登場コスト3 紫 ジョン・ドゥ 特徴:リベレイター 自分のターン開始時 自分のトラッシュが5枚以下なら自分のデッキの一番上を1枚破棄する 5枚以上なら代わりにメモリー+1できる お互いのターン 自分のバトルエリアの名称に「アグモン」「グレイモン」を含むデジモンが消滅する時このテイマーをレストさせることで、メモリー+1 ─相変わらず名前の部分は読み取れねぇし聞こえねぇ 「お前もテイマーカード出したら俺には聞こえない訳だ」 ─そもそも効果も前と別物じゃねぇか、お前そんなにアグモン好きだったのか? 「別に…」 アンデッド型デジモンは好きだがアグモン系が自分のテイマー効果にしたいくらい好きかと言われると微妙だ。 いかにも主人公系デジモン、光属性って感じはあまり性に合わない。 だからこそVi版のグレイモンやスカルグレイモンに…うん? そうなるとアイツ、ニセアグモン博士もウイルス種のアグモンだぞ? …あまりこの件を考えるのはやめよう。 プレイヤー1 メモリー-3 TurnChange プレイヤー1 メモリー3 「クククッ…めちゃくちゃだな」 ─全くだ。 ─育成フェイズ、育成孵化。 Lv2 ヤーモン 幼年期 レッサー型 (紫) 特徴:リベレイター 進化元効果:アタック時 ターンに一回 自分の手札が4枚以下なら、このデジモンをトラッシュの特徴に「魔竜型」/「邪竜型」を持つデジモンカードに進化できる。 「はぁ!?」 デジタマが大罪の門じゃない!? オグドモンデッキで大罪の門以外のデジタマカードを採用する理由は存在しない。 ということは コイツのデッキはオグドモンデッキじゃない! ─何驚いてるんだよ、『オグドモン』はお前が持ってんだろ? 「は?持ってないぞ?」 ─… 「…」 ─てめぇ…オグドモン無くしやがったな? 「無くしたのはおめーだろ!お前オグドモン一枚いくらすると思ってるんだよ!」 ─そっくりそのまま返すぜクソが、これでようやく取り戻せると思ったのに。 ─チッ…メインフェイズ、3コストで俺のテイマーカード「■■■■」を出す。 テイマー 登場コスト3 紫 ■■■■ リベレイター  自分のターン開始時 自分の手札が4枚以下ならメモリー+1 自分のターン ターンに一回 このテイマーをレストさせることで自分のバトルエリアの紫のデジモン一体を消滅させることが出来る。 そうした場合メモリー+1 予想通り、読み上げられたテイマーカードの名前は俺には聞こえない。 それよりも効果だ、間違いなくコイツのデッキは『オグドモン』ではない。 プレイヤー1 メモリー0 ─コスト4でギルモンをバトルエリアに出す。 Lv3 ギルモン 成長期 ウイルス種 爬虫類型 (紫/赤) DP3000 消滅時 DP3000以下の相手のデジモン1体を消滅させる。この効果で相手のデジモンが消滅しなかったとき、お互いのデッキを上から2枚破棄する。 プレイヤー1 メモリー-4 TurnChange プレイヤー1 メモリー4 俺のターンが来た。 …まだ向こうのデッキの構成が把握できない 俺の知らない効果のデジタマカード、ヤーモン そして登場させたのはギルモン テイマーズテーマのデッキ? ギルモンはグラウモン以降が魔竜型だとして、魔竜型/邪竜型への進化効果を持つヤーモン? メギドラモンルートのギルモンデッキってことか? 「テイマーカードのターン開始効果で俺はデッキの一番上を破棄する」 「育成フェイズ、育成孵化」 Lv2 コロモン 幼年期 レッサー型 (紫) 特徴:リベレイター 進化元効果:自分のターン ターンに1回 バトルエリアの他のデジモンが消滅した時 1ドロー 「メインフェイズ、コスト3でニセアグモンを登場」 プレイヤー1 メモリー1 Lv3 ニセアグモン博士 成長期 ウイルス種 恐竜型 (紫)DP1000 このカードが名称に「アグモン」または「グレイモン」を含むデジモンに進化するとき色条件を無視して進化できる 進化元効果 このカードが名称に「アグモン」または「グレイモン」を含むデジモンに進化するとき支払う進化コスト-1 ─やっぱアグモン系デッキじゃねぇか 「うるせぇな…」 残りのメモリーは進化にでも使おう 「コスト2でニセアグモン博士をグレイモンに進化!」 プレイヤー1 メモリー-1 Lv4 グレイモン 成熟期 ウイルス種 恐竜型 (紫/赤) DP5000 登場時 進化時 自分のデッキを2枚破棄する お互いのターン 自分のトラッシュ5枚ごとにこのデジモンのDP+1000 進化元効果   自分のトラッシュ5枚ごとにこのデジモンのDP+1000 相手のデッキ構成が何であれ、俺のデッキはとにかくトラッシュのカードプールを増やさないと始まらない。 このままメモリーを1で返してやりたいが、向こうのテイマーカードの効果で2に増やされる。 そこまでうまくは行かない。 TurnChange プレイヤー1 メモリー1 ─テイマーカードのターン開始時効果発動、メモリー+1だ メモリー2 ─育成フェイズ…ヤーモンを0コストでガンマモンに進化。 Lv3 ガンマモン 成長期 ウイルス種 角竜型 (紫) DP1000 お互いのターン ターンに一回 他のデジモンが効果で消滅した時、このデジモンをトラッシュの「ガンマモン」の記述があるデジモンカードにコストを支払わずに進化できる。 紫のガンマモン!? テイマーズ関係ないぞ。 なんだコイツ、一体どういう構成のデッキだ ─育成エリアのガンマモンをバトルエリアに出す。 ─メインフェイズ、俺は俺のテイマーカードをレストさせる、消滅させる対象はギルモンだ。 ─ギルモンの消滅時効果発動、まぁお前の場にDP3000以下のデジモンはいねぇな? 代わりに俺と向こうの俺、双方のデッキが上から2枚破棄される。 「んなっ…」 ─どうやら今日の俺は引きが良いらしいな 今相手のトラッシュへ破棄されたデジモン、レグルスモン …ある、特徴に「邪竜型」が。 プレイヤー1 メモリー3 ─ガンマモンの効果発動、ガンマモンをトラッシュのグルスガンマモンへコストを支払わずに進化。 ガンマモンがグルスガンマモンへと進化する、だが今はコイツの効果はどうでもいい。 ─グルスガンマモンでプレイヤーにアタック! 本命は俺へのアタックじゃない、ヤーモンの進化元効果だ。 …コイツの手札は今、ちょうど4枚。 ─ヤーモンの進化元効果発動! ─グルスガンマモンをトラッシュのレグルスモンへコストを支払わずに進化! 調子づいてきたのか向こうの声が上がってきている。 Lv5 レグルスモン 完全体 ウイルス種 邪竜型 (紫) DP9000 登場時 進化時 自分の手札を2枚破棄することで、自分のトラッシュから名称に「ガンマモン」を含むか、特徴に魔竜型/邪竜型を持つLV4以下のデジモンカード一枚を支払う登場コスト-2で登場出来る。 進化元効果  お互いのターン このデジモンは、このデジモンの進化元にある名称に「ガンマモン」を含むカード効果すべてを得る。 ─手札二枚を破棄、トラッシュからブラックグラウモンを登場コスト-2で登場! プレイヤー1 メモリー0 LV4 ブラックグラウモン 成熟期 ウイルス種 魔竜型 (紫/赤)DP5000 登場時 進化時 お互いのデッキの上から2枚破棄する。その後、自分のトラッシュから、「ギルモン」か名称に「グラウモン」か「デュークモン」を含むカード1枚を手札に戻せる。 進化元効果 消滅時 自分のトラッシュから、「ギルモン」か名称に「グラウモン」か「デュークモン」を含むカード1枚を手札に戻せる。 ─デッキから2枚破棄、そして… 選ばれたのはギルモンの効果でトラッシュに送られたもう一枚のデジモン。 ─メギドラモンACEを手札に戻す。 メギドラモンACEはルール上「カオスデュークモン」としても扱われる、この効果の対象だ。 おい冗談じゃないぞ、一気に相手の場に完全体と成熟期が出てきた上、俺のターンでアタックしたらメギドラモンまで出てくる可能性がある。 …そうか、思い出した、このデッキは。 「…レグルスモン主軸の邪竜/魔竜デッキか!」 ─そうさ、前に構築途中でブン投げてたヤツだ ─それと忘れてないか、今はレグルスモンのアタック中だ しまった、今はアタック時効果の解決中だった 『ゲニアス!』 レグルスモンの左腕の盾、そこに付いた3つの銃口からレーザーが放たれ、俺のセキュリティが1枚破られる。 めくられたセキュリティの中身は… スカルグレイモン DP7000 駄目だ、レグルスモンにDPで負けている ─まずは一枚貰った。 ─コスト3 インプモンを登場してターン終了だ。 プレイヤー1 メモリー-3 LV3 インプモン 成長期 ウイルス種 小悪魔型 (紫/赤)DP1000 自分のターン このデジモンが特徴に「魔竜型」/「邪竜型」を持つデジモンカードに進化するとき、支払う進化コスト-1。 進化元効果 自分のターン このデジモンをDP+2000。 プレイヤー1 メモリー3 セキュリティ 残り4 「テイマーカードのターン開始時効果発動、」 向こうのデッキ破棄効果のお陰でトラッシュは5枚を超えた、ここはメモリーを増やす方を使おう 「メモリー+1」        メモリー4 「育成フェイズ…コロモンをコスト0でニセアグモン博士に進化、そのままバトルエリアに出す」 とりあえず二枚目のニセアグモン博士を展開しておく。 …さてと、少し考えようか。 今相手のバトルエリアには3体。 レスト状態のレグルスモン アクティブ状態のブラックグラウモン、インプモン この内、俺のグレイモンを進化させてレグルスモンへアタックはあり得ない。 そんなことをしたら間違いなくメギドラモンACEが出て来る。 しかもメギドラモンACEを除去できたとしても、進化元効果で下に重なっているグルスガンマモンと、メギドラモンACEの効果を使いガンマモンとギルモンがトラッシュから登場してくる。 倒しても数が増える、なんて盤面維持力だ。 残るインプモンは…全く読めない、ここから何を重ねてくるんだ、グラウモン系列か? さて、一体どうやってこの盤面を乗り切ろうか…? ……… よし、まずはレグルスモンの排除だ、メギドラモンへの進化を阻止してとりあえずの時間稼ぎとしよう。 そのために必要なカードは今ちょうど手札にある。 「メインフェイズ、ニセアグモン博士を1コストでグレイモンに進化!」 このターンの育成フェイズで出したニセアグモン博士をグレイモンへ進化させる、 プレイヤー1 メモリー3 LV4 グレイモン (紫)DP5000 ブロッカー しかしこっちのグレイモンの効果は今は重要じゃない、単に進化コストをできるだけ安く進化させたかっただけだ 本命は今から進化させる「ライズグレイモン」だ。 「コスト3を支払い!グレイモンをライズグレイモンに進化!」 こっちは前のターンからいる、コロモンがいない方のグレイモンを指定する。        メモリー0 Lv5 ライズグレイモン 完全体 ウイルス種 サイボーグ型 (紫/黒) DP7000 進化時 登場時 バトルエリアのデジモン2体までを選び退化1。 この効果で自分のデジモンを退化させた時、1体につき次の自分のターンまでこのデジモンのDP+2000 お互いのターン このデジモンのDPが10000以上の時、このデジモンは衝突を得る 進化元効果 お互いのターン ターンに一回 自分のバトルエリアのデジモンが消滅した時、ドロー1 このライズグレイモンは俺のカードではない、いやもちろん俺のD-STRAGEに入っているのだから所有者は俺なんだが、普段はアイツ、「ニセアグモン博士」のデッキに入っているカードだ。 それがいつの間にか紛れ込んだらしい、まったく、こんなところでアイツに助けられるとは。 「退化」の対象はもちろんレグルスモンを指定、もう一体は今進化させたブロッカー持ちのグレイモン、この二体を指定する。 『トライデントリボルバー!』 ライズグレイモンのトライデントリボルバーがレグルスモンを撃ち抜く、すかさずその銃口は隣に立つグレイモンに向けられ、もう一発の銃弾が放たれる。 ─…味方を撃ち抜くって結構な絵面だな。 「お前だってさっき自分の効果でギルモン消滅させただろうが!」 これでレグルスモンは退化してグルスガンマモンに、グレイモンはニセアグモン博士に戻った。 そして自身の効果でライズグレイモンのDPは+2000、さらに進化元効果で+1000、合計10000に達して衝突の効果が付与される。 さて、「衝突」のおかげで向こうのバトルエリアの3体どれでも「取れる」状態になった。 …どれだ? 元からレスト状態のグルスガンマモンか、「衝突」を使ってブラックグラウモン、インプモンを取るか。 まぁいい、とりあえずこのターンでのメギドラモンACEの登場は防いだ。 じっくり考えるとしよう… ・ ・ ・ ・ ─コスト3!ラウドモンをヘヴィーメタルドラモンに進化ぁ! 「ぐっ…!」 パンクモン、ラウドモン。 知らないデジモンが出てきた、なんて思っていたら一瞬で大ピンチだ。 ヘヴィーメタルドラモンの下、ラウドモンの進化元効果で向こうの魔竜/邪竜型デジモン全てにセキュリティアタック+1…つまりヘヴィーメタルドラモン自身と、今後出てくる魔竜/邪竜全員「二枚抜き」できる状態だ。 しかもこれから進化時効果が来る。 ─進化時効果発動!手札を二枚破棄してこのデジモンのDP…合計15000以下の相手のデジモン1体を消滅させる! 対象にするのはもちろん、俺の「スカルウォーグレイモン」だ。 ─まるごと消えな! 『ブラックサバス!!』 ヘヴィーメタルドラモンの4枚の羽根から轟音が鳴り響く。 「ぐおおぉぉぉぉ!うるせぇぇ!」 思わず耳をふさぐ、俺はまだマシで、音の集中している場所に立つスカルウォーグレイモンはきっともっと酷いだろう。 そうして轟音を向けられたスカルウォーグレイモンの全身が、一瞬で砕け散る。 あぁクソ、砕け散るスカルウォーグレイモンでまた嫌なこと思い出した。 なんて下らないこと考えてる場合じゃない、今のでスカルウォーグレイモンと効果で呼び出したデジモン全て持っていかれた。 こっちのバトルエリアには後は効果を発揮し終わったスカルグレイモンしか居ない。 ─ヘヴィーメタルドラモンでプレイヤーアタック! 『ブルーマーダーフレイム!』 ヘヴィーメタルドラモンの口から青い炎が吹き出す。 そして俺に残されたセキュリティ、2枚全てを破壊していく。 1枚目、 ニセアグモン博士 DP1000 特に発揮できる効果はない、そのままトラッシュへと消える。 …… この状況下で勝つ方法が、一つだけある。 スカルウォーグレイモンごとバトルエリアを吹き飛ばしてくれた「お陰」でトラッシュの枚数がまた20枚を超えた。 これと育成エリアに居たおかげで無傷のグレイモン 手札にある、もう一種類の「ニセアグモン博士」 そしてデッキに入っていながらも一度も出てきていないカード 「スカルウォーグレイモンACE」 もしも、もしもコイツがセキュリティに要るんだったら 次のターンで勝てる! そして 2枚目の、最後のセキュリティがめくられていく。 EP2 END