オープニング1 映塚黒白 「うーん…困った」 幸せそうな空気が蔓延しているここロードナイトモン村で俺、映塚黒白は困っていた ロードナイトモン村で村おこしのブライダルイベントを開催するという そして別に好き合ってない男女であってもカップル割が受けられるという なら、妹でもいいかと有無を連れてきたわけだが…村に来るまではおとなしくついて来たのだが 村に着いてから突然組まないよと伝えられたからだ 何故?と問うにも妹はとっくにどっかに行ってしまった。一応今日は趣味はやらないとは言っていたが… カップル割を当て込んでいた俺は手持ちが少ない。さて…どうしたものか 「ねぇ君?」 と悩んでいる俺の後ろから声をかけられる ん?と思い振り返るとそこにはローポニーの女性とちょっと太めのシンドゥーラモンが居た。 この人は…ああ思い出した 「あ、あの水着大会で」 「ごめんなさいその事は忘れて…」 顔を赤くして制止する。どうやら本人には黒歴史らしい。面白かったんだけどなぁ 「あっはい心中お察しします」 とりあえず彼女が落ち着くのを待ってから自己紹介することにした 「どうも改めまして、映塚黒白と言います。こっちは相棒のソーラーモン」 「ヨロシクー」 「烏藤すみれよ。よろしくね黒白くん」 「かぁーこの子は挨拶も固いわほんまー。あボク、飴ちゃんいる?」 「ちょっとシンドゥーラモン!」 近所にこんなおばちゃん居たなあ…と思いつつ折角なので頂くことにした。結構おいしい このまま軽く会釈して終わり…でもいいんだけど渡りに船かもしれない。ダメ元で聞いてみるか 「あ、もし良かったら一緒に観こ「んまーナンパ!?最近の子はマセてるわぁ~!」 「すいません違うんですちょっと待って話をさせてください」 そういう話は自分には縁遠い…と言うか俎上にあげる意識がなかったからミスったが たしかに端から見たらそう見えるな、と今更ながらに思い至る と言うわけで妹のこと、カップル割当て込んだこと、その当てが外れたことを説明した 「で、手持ちも少ないんでこれも何かの縁と誘ってみたわけです…」 断ってもいいんですよ、と言おうとすると 「そうねぇ…」 と割とちゃんと考えてくれている。いい人なんだな、一蹴されても仕方ないのに それはそれとして聞くべき所は聞いておかないといけないよな 「あの彼氏とか居たら断ってもら」 「あー、それはだいじょぶやで」 「シンドゥーラモン!…まあその通りだけど。いいわ、よろしくね黒白くん」 さて…どうしようかな。あんまり固く呼びすぎるのも良くないか この人、俺みたいな子供にもちゃんと考えてくれる苦労人気質みたいだし 「よろしく、すみれさん」 まあ俺みたいな17の子供と多分20代半ば…くらいの彼女だと釣り合わなすぎて そういう目で見られることはないと思うんだけど 「もしなんか変な誤解されたらちゃんと責任はとりますんで」 「責任って」 彼女は冗談と思ったんだろう、軽く微笑んでいた 「まあご安心ください、きっちりやりますんで」 配信ブースあたりで公衆の面前でフラレマンになれば誤解なんて霧散するはず…だろう、多分 さて、とりあえず彼女…すみれさんは真面目で苦労人気質なんだろうと言うことはわかった 得てしてこういうタイプは休み方が下手…酒の発散の仕方も溜まってるタイプ特有だったし となると俺がエンジョイするのに付き合ってもらう形が一番本人に意識させずに リフレッシュさせられるか…?まあ様子見ながら動くか 「じゃあ、俺から誘ったんでまずすみれさんが興味あるとこからにしましょか。どこ行きたいです?」 「…ほんまマセた子やなぁ」 「考えすぎなだけだぞ」 シンドゥーラモンに見透かされたような気もするけど、まあ…いいか オープニング2 烏藤すみれ 「思ったよりずっと賑やかねえ」 ロードナイト村に着いて早々、シンドゥーラモンが口を開く。 「うん、メインは披露宴だけど村を挙げてのお祭りに近いみたい」 物珍しそうに周りを見渡すシンドゥーラモンから少し遅れて、烏藤すみれも歩みを進める。 彼女達の目的は、デジタル庁デジモン対応特務室──通称“デジ対”に出向した同僚、芦原 倫太郎とドウモンの結婚披露宴に出席すること。 すみれ達とは直接の交流こそ減ったものの、今でもデジモン関連の事件に対しては機関の垣根を越えて協力する間柄であった。 最初に「人とデジモンがお付き合いしている」と聞いた時は随分と驚いたものだが、京ちゃんの目指す“人類とデジモンの共存”に近づいてる証と思うとなんだかこちらまで誇らしい気持ちになってくる。 「受付まで少し時間があるし、少し歩いて回ろっか」 「ええ、良いわよ……あら?」 「どうしたのシンドゥーラモン?」気付いて立ち止まる。 すみれの申し出に二つ返事で応じていたシンドゥーラモンが、何かに 「あの道の真ん中で唸ってる子、どこかで見た気がするのよね…」 「確かに…?うーん、困ってるみたいだし声かけてみよっか」 休日でも困っている人を見過ごせないのが警察官としての職業病でもあり、すみれの性分でもあった。 「ねえ、君――」 … 「どこ行きたいです?」 「うーん、私もこれと言って行きたいところはないんだけど…」 観光案内を眺めながら、どこかいいお店はないものかと考えを巡らせる。 レース場・プロレスリング・スナック……何だこの取り合わせは。 デジタルワールドにリアルの常識が通用しないのは知っているが、久々に来るとやはり面食らってしまう。 「そうだ、ご近所さんにお土産買っていかないと!手ぶらで帰るのも失礼だものね。お茶菓子とかあるかしら?」 私があれこれ考えている内に、移り気なシンドゥーラモンはズカズカと先行して行ってしまう。 「あ、ちょっと!…ごめんね黒白くん、少しだけ付き合ってくれる?」 「はい。シンドゥーラモンもああ言ってますし……」 黒白くんの答えを聞きつつ、彼女に置いて行かれないように後を追った。 シーン1 お土産コーナー 「へー、同僚の方が…」 「ええ、ここで結婚式あげるのよね。その、パートナーデジモンと…」 「ああ、俺の友人もパートナーじゃないけどデジモンの子と結婚式あげるって」 最初に話を聞いたときはええ…となったものだけど本気の顔をしていたし本気なら応援したい 新婚生活とか戸籍とかどうなるんだろう…?とは思うが協力できるところは協力したい 夫婦は幸せなままで居て欲しいしな…色々あるにしても 「何にせよ、祝福したいですよね。人の幸せな顔見るのはいいもんですし」 「クロシロー、自分のは?」 「はいはい、そのうちそのうち」 いつものやりとりをしているとすみれさんが心配そうに声をかけてくる 「大丈夫?何か相談に乗ろうか?」 親切なのはありがたいけど、誘った方が苦労をかけるのは良くない 「いやいや、そこまで深刻な話でもないんで大丈夫です。そんな事よりお土産を…」 と話しつつ、お土産のラインナップを確認する 「ご近所に配るとして…ブライダルグッズはまあ論外として消え物が一番ですよねえ…」 「そうねぇ…そうなのだけれど」 シンドゥーラモンが言いよどむ。言いよどむのもわかる 「母恵夢、坊ちゃん団子、いよかんタルト…なんなのこの愛媛尽し…」 「ほんとなんでかしら…?でもご近所さんにDWの事言えないしいっそいいのかもしれないわね」 と言いながら、すみれさんはいくつかのお菓子をかごに入れていく 「確かにそうですね、俺も今日来てない仲間の分とか買っておこう」 と俺も自分の買い物を進めることにした …買い物中視線を感じた気がするが振り向いても誰も居なかったし気のせいだろう……多分 何も悪いことしてないから見られて困ることないしね お互いの買い物を済ませ、合流すると次に向かう場所を提案することにした 「じゃあ次はとりあえずフードエリアにでも行きましょうか。ちゃんとした服装にする前に軽く食べておきたいですし」 「そうね、じゃあそうしましょうか」 「おばちゃんもお腹と背中がくっつきそうだしいきましょいきましょ」 「油がたっぷりのやつがいいぞ」 と、同意を得られたのでフードエリアに向かうこととなった 「あ、そうだすみれさん」 「ん?なにかしら」 「付き合ってくれてるお礼にどうぞ」 とついでに買ったシードラモンのストラップを渡そうとする 本人の趣味かどうかもわからないただの思いつきだし 断られたら消え物の方渡してストラップは妹にあげればよし すこし遠くでガタンと何かがぶつかる物音がした ↓ 「私に?」 「はい。よかったらですが…」 そういって黒白くんが差し出してきたのは、シードラモンのストラップ。 誰かのハンドメイド…かな?なんだか味があって可愛いかも。 「ふふ、ありがと。大事にするね」 シーン2 フードエリア お土産コーナーとフードエリアはそう遠くなく、少し歩くだけで到着した。 まだ時間が早いからか村全体の混雑具合に対して人はまばらなようだ。 私達は列に並んでメニュー表を眺める。 「また愛媛…?」 様々なフードやドリンクの中に、やけに主張の強い愛媛みかん。 愛媛フェアでもやってるのかな…?あとでスタッフさんに聞いてみよう。 「でも美味しそう、私はみかんジュースにしようかな」 支払いのためにあらかじめ財布を取り出しておく。 「えっ」 黒白くんが少し驚いた様子を見せる。 その視線は、先ほど財布につけたばかりのストラップに向けられている。 「…?どうしたの?」 「アンタねえ…もういい歳なんだからもうちょっと目立たない所につけなさいよ」 「そうかな?でもせっかく貰ったものだし…」 「物持ちが良いのはイイコトだけどねえ、いつもの髪留めだって子供がつけるやつでしょうに」 「べ、別にいいでしょ?だから今日は落ち着いた色のやつつけてきたし……」 「列進んでるぞ」 竹を割ったようなソーラーモンの一言で我に帰る。 シンドゥーラモンと話しているとつい長話になってしまうのが困りものだ。 「あっホントだ…ごめんね」 「いえ、大丈夫です。」 「黒白くんはどうする?私が払ってあげるから好きなもの食べていいよ」 贈ったものを使ってくれるのは嬉しいものだなぁ。それはそれとして… こういう時、下手に割り勘にしようと提案しようものなら大人のプライドを傷つけてしまうのは理解している 普段の俺なら、特に何も言わず素直に奢られていたと思う。しかし、今回は… 「いや、カップル割使いましょう。折角無料になるわけですし」 「いや、それはどうかと…ちゃんと払うわよ。ほらカップルではないじゃない?」 と、困った顔をしながら言う。そこは正論ではあるんだけど 「いや、一応確認したんですけど男女2名なら別に恋人である必要ないみたいなんですよね、カップル割」 「へ、そうなの?」 「ええ、最初に言いましたけど妹と使うつもりでしたからね。普通家族に恋愛感情は…」 と、そこで家族に恋愛感情を抱いている友人のことを思い出した。危ない、愛の形はそれぞれだもんな… 「もとい、家族に恋愛感情を持つ人もいるでしょうけど家はそうではないんで」 「最近の子は多様性とかで大変よねぇ」 シンドゥーラモンがこくこくと頷く 「そもそも村の振興でやってるんですから積極的に活用したほうがいいと思うんですよね。別に犯罪でもずるでもないんですし」 「それは…そうなんだけど…」 まだすみれさんは納得はできないらしい。説明に問題は無いと思うんだけど…俺がわからないだけかも 「まだ何か俺が気がついてない問題とかあるんですかね?」 「ほら、こう人が多いところだと知合いに見られたりとかしたらその…ね?」 「ふっ」 思わず少し笑ってしまった。その懸念はもうちょっと前に言っておくべきだったと思う。まあそもそも… 「いやあ、そもそも俺はまあ見た目こうだし。俺が釣り合わなくてそういう目で見られることはないでしょ」 「そうかしら…?」 「まあ、もし万が一そういう誤解が起きたら最初に言いましたけどちゃんと責任とりますから」 と説得し、なんとか納得してもらった。ただで済むもの払わせるのはさすがに良心が痛む その後俺はカルピスソーダを、ソーラーモンには大盛りの唐揚げを注文した 「若いんだからもっとがっつり食べた方がいいんじゃないかしら?」 とシンドゥーラモンが心配そうに言ってくれる。すみれさんも心配げな目でこちらを見ている 「いや胃腸が弱くって…。あればたまに友人が作ってくれるヨーグルトにヘビーいちご乗ってるやつが良かったんですけど。 結構美味しいし楽にカロリーとれていいですよ。女性にはあんまお勧めできませんが…」 「それは…遠慮したいわね」 ヘビーいちごは女性の天敵だからな… そこにピロン♪とメールの着信音が聞こえる 失礼、と一声かけてメールを確認するとそこにはツーショット写真の数々だ くだんの料理を作ってくれる友人、先原マイトさんの緩んだ顔と水着大会でみたおっぱいのでかい女性達との… 「クロシローこの写真おっp」 「ソーラーモン、俺の分まで沢山食えよ」 と何事もなかったかのようにソーラーモンに唐揚げを詰め込む マイトさんは善意半分自慢半分で送ってきてくれたのはわかる。そこはありがたく保存させてもらうとして 今このタイミングで…いやばれて困ることはないはずなんだけど 「黒白くん、何かあった?」 「いえ、特には。そんな事より…そうだ、ご趣味は?」 なにがご趣味はだお見合いじゃないんだぞ。案外と動揺していたらしい 「ふっ、うーんそうね。ウィンタースポーツとかドラマ鑑賞とか」 「最近サウナにもハマってるわよねぇ」 すごいOLみたいなラインナップだ…いやOLみたいなものではあるのか 「ドラマか…どんなジャンルが好きなんです?」 「基本的には面白そうならなんでも見るわね。ベタな恋愛ものとか、時代劇なんかも」 「へー、俺はミステリー系しか見ないんですよね」 「クロシロー、もっとメカ物見よう」 「ドラマでメカ物ってジャンルはあるのか…?」 とソーラーモンに疑問を呈すると 「あら、ケータイ捜査官7とか良かったわよ?」 「セブンちゃん可愛かったわねぇ」 「どんな話なんです?」 その後、お勧めのドラマの話を聞いたり、逆にこちらのお勧めのドラマの話などをしばらく続けた 年代が違うせいか性格の違いか、お互いに知らないお勧めが出てきて勉強になった。今度見てみよう しかしラインナップが本当に雑食だったな…なんとなく疲れて家に帰った後なんとなくサブスクで 適当にドラマ検索かけているすみれさんの姿が思い浮かんだが、なんか失礼な気もするしやめておこう 「さて、そろそろ行きましょうか」 もう少し話をしたい気もしたが、いつまでもそうしているわけにもいかない というか観光と言いつつほぼ何もやってないな… すみれさんは会話しててもわかるが基本的にこちらに気を大分遣ってくれている 生来の人の良さなのか、何かしらのバックボーンがあるのかわからないが、それに甘えすぎるのは良くないと思う。多分 「そうね、まだ少し時間あるけれど…」 「とりあえず先に結婚式の受付の方済ませてしまいましょう」 飽きてたらちゃんとその場で解散できるように… 「そうね、受付だけ先に済ませてしまった方が安心よね」 と言うわけで結婚式会場の受付へ向かうこととなった 「あ、そうだ。またドラマの話とか聞きたいんで連絡先交換したいけどいいですかね?」 「いいわよ。あら、ずいぶん古い携帯ね」 「中身はデジヴァイスなんで大丈夫ですよ」 まあ、偶にメールするくらいだと思うけど何が助けになるかわからないからな…愛媛とか… シーン3 試着撮影会場 「さっき運ばれていったシスターさん大丈夫かしら」 「ドクターKの医務室なら安心だと思いますけど…」 と会話しながら受付へと向かう途中、撮影会場の前で知合いを見つけた…最近物理肉体が蘇った安里結愛ちゃんだ ショーケースをじっと見つめたと思えば撮影会場を見て困り顔をしてまたショーケースに貼付くのループだ これ声かけて大丈夫なやつか…?いやでも困ってるみたいだし放って置くわけにもいかないよな… 「結愛ちゃん、大丈夫?」 「うひゃい!?黒白くん!?」 変な声を出させてしまった。姿が見える位置で声を変えたつもりだったんけどよほど視野が狭まっていたんだろう 「あ、ごめんごめん。驚かせるつもりはなくって…どうかした?特殊な動きをしてたけど」 「えっとその…なんでもなくってぇ…」 嘘だな。というか誰が見てもあれがなんでもないは信じるわけない。えっとどういう事だろうか… 「あら黒白くんお友達?」 結愛ちゃんに声かけるために少し先に行ったので後からすみれさん達が追いついてきた 「あ、はい友達の安里結愛ちゃんです」 友達…だよな?これで俺しか思ってなかったらちょっと悲しい… 「黒白くん、こっちのお姉さんは誰?」 とまあ当然結愛ちゃんにも聞かれる。正直に答えると… まともに会話するのは今日初めてのカップル割使うためにお誘いした警察のお姉さんです …………信じて貰える気がしない。ええと…乗ってくれるかわからないけど 「えっと、いとこのお姉さん」 通せそうな嘘をついてみた 「!?…ええ、そうなのよ」 ありがたい、乗ってくれたか… 「昔はよくお姉ちゃんお姉ちゃんってベソかきながらついてきたもんね」 と肩をポンポンと叩きながら言ってくる 「いやちょ…うん、まぁ昔の話じゃないですか。ええはい」 こっちから振った以上否定するわけにいかない…。あ、ちょっと舌出してる。茶目っ気だすなあ… 「と言うわけで烏藤すみれです。よろしくね結愛ちゃん」 「はい、よろしくです」 とお互いに握手を交わす。よし…とりあえず自己紹介の問題はクリアした さて、状況を整理しよう。結愛ちゃんの行動から察するに…ウェディングドレスに興味がある。これは確実だろう 撮影会場の方も見てたよな…ここから考えるとウェディングドレスを着て撮影がしたいが何か問題があると言うことだろう 気持ちの問題だろうか?物理肉体が戻ったのが最近だし、何かすることに引っ込み思案になっているのかもしれない…か? うーん、下手にそこらへん聞くと遠慮しちゃうかもしれないか…とすると 「そういえばすみれさん。ドレス着て撮影したいって言ってませんでしたっけ?」 ノリの良さに賭けてみるか。賭けに失敗しても失う物は俺の心証くらいなもんだし… 「えっちょっ」 そのつもりはないがちょっと意趣返しみたいになったなと思いつつ、何か言い出す前に話を続ける 「結愛ちゃんも一緒にどう?ほらすみれさんも一人より参加しやすくなるだろうし」 「えっと…」 「俺も二人のドレス姿見てみたいなぁ」 最終的に俺の我が儘という方向性に持って行けばどうか…どうだ? 「そうね、じゃあ結愛ちゃん一緒に行きましょうか」 「あ、はい。お願いします。すみれさん」 こっちの意図読んでくれたかはわからないが、上手くいった…か?後で怒られたら土下座しよう と言う経緯で着替えに行った二人を待っている ちなみに俺もスーツを借りてきている。元々ここで蓮也くんのとこの結婚式に参加する服を調達するつもりだったからだ 男の準備なんてそんな時間のかかる物でもないからこうやって待つ形にになったわけである 貸し出しがドレスだけだったら詰むところだったな… 「あ、黒白君?」 とぼーっとしてるところに声をかけられる。この人は…桐梁七海さん。ジャッジメンターこと樫戸さんの仲間だ 樫戸さんと桐梁さんも少し複雑な関係なんだけど…今回は割愛しておこう 「あ、桐梁さん。どうしました?何か用事でも…?」 「いやちょうど見かけたので。はいこれ。マサキからです」 と少し小さめの箱を渡してきた。これはなんだろうか 「なんです、これ?」 「まあ自分で確認してください。では私は診療所に戻りますのでなにかあれば」 とこちらの疑問に答えることもなく早足に行ってしまった。診療所も忙しいのかもしれない。後で顔出してみるか? 「まあ、いいか」と箱の中身を確認しようとして… お待たせ、と二人の声が聞こえたので振り返ると 「ひゅっ」 思わず息をのんでしまった すみれさんは落ち着いた白色のすらっとしたドレスを着ている。腰の高い部分から広がっていく スカートのシルエットが全体的にスレンダーなスタイルの良さをピシッと強調している。とても似合っている シンドゥーラモンは…ネックレスや羽に宝石をあしらっている。少し派手目な感じだ… 結愛ちゃんは輝くような白色で全体的にボリューミーなドレスだ。肩に巻き付けているあれは…漫画の結婚式でよく見るやつだ こっちは頭につけているティアラもあいまってお姫様のような印象を与える。とても似合っている ギギモンもティアラのレースをつけて楽しそうだ。性自認女性だったのか…デジモンは人間以上にそこらへんがわからない 化粧や衣装で女性は変わるとは妹もよく言っていたが、正直現物を見るまで舐めていた節はある。本物でなくてもここまでか… この人たちと本当に結婚する人は多分幸せなんだろうなぁ。うちの両親もこんな感じだったんだろうか おっと、余計なことを考える前にまず言わなきゃいけない事があったな 「二人とも、すごく似合ってますよ。本番はもっと綺麗なんでしょうね。相手がうらやましいや」 恥ずかしくないかというとまあそんなわけはないが、思ったことを言ってるだけだし黙ってたら不安にさせるしな… まあ褒めて悪い事はない…いや大丈夫か…?二人ともちょっと照れくさそうだが喜んでくれたようだから良かった… 二人もこちらの格好を褒めてくれたがまぁ…似合ってないのは自覚してるからちょっと申し訳ない気分だ 「さてそれじゃあ…相手が俺で申し訳ないんだけど記念に撮影しときます?」 後から思い返せば、理由はどうあれ脳がちゃんと働いていなかったのだろう ただの記念なんだから普通に一人ずつ撮影すれば済む話だった事を失念していたのは 「「……」」 俺の発言の後に少しだけすみれさんと結愛ちゃんが顔を見合わせる その結愛ちゃんが俺の方に近づいてくる。そして俺の胸元までくると下から見上げるように俺の目をのぞき込む 「…黒白くんはわたし達と一緒に写真撮りたい?」 ……へー綺麗な目してるなー…… じゃない。えーと返事を待たせるのはとても良くない。そういう何か圧?警報?をすさまじく感じる 素早く状況を整理しよう。撮影をしないかと誘った。YESかNOかくらいしか考えていなかったが 『俺』がどうしたいか?と言うことを聞かれている。なんで…?いやそこはいまはいい どうしたい。どうしたい?……結愛ちゃんとすみれさんを見る 「そうだね。うん、撮りたい」 自分がそうしたかったのか、相手をがっかりさせたくなかったのか。自分の中で判断ができていないが 結論が同じならそのまま言おう。かな?と疑問形にするのもダメだ…と思う、多分。ここは断言する して良かったかなあ…? 「と、言うわけですみれさんもいいですかね?」 すみれさんが俺の言葉に対して少し考えるそぶりを見せる ドレス姿で悩んでる姿がなんとなく魅力的に見えた。俺こういうの性癖なのか…? 「そうね、二人がそれでいいなら…」 という訳で今まさに撮影しようとしてるわけだが… カメラの向こう側でシンドゥーラモンはなぜか感慨深げに、ギギモンは楽しそうにしている ソーラーモンは…あいつ表情じゃなんもわかんねぇどういう感情なんだ今 「結愛ちゃんは真ん中がいいのかしら?」 「いや、それだと事実はどうあれ結愛ちゃんが俺たちの子供みたいな画になっちゃうからダメでしょう。花嫁なんですから」 「黒白くんが真ん中がいいと思うな」 「ええ…なんか主役みたいでおこがましい…画的にも花嫁メインにしないとさぁ…」 「じゃあすみれちゃん真ん中にする?」 「いやいやいやいや、それもおかしいと思うわよ。私が両刀みたいになっちゃうわ」 「もう、これじゃ全然決まらないよう」 「はーい、もう撮りますねー」 カメラマンのあきれた声が聞こえる。慌てて配置を整えると ぱしゃり、とシャッターが切られた できあがった写真とデータを受け取りつつ、先ほどもらった樫戸さんの贈り物の中身を確認する APバーXL×5、BPバーXL×5、HPバーXL×5、バイタルドリンクXL×5…… 内容で確信する。100%誤解された。相手は…結愛ちゃんじゃないな。もらったタイミングと合わない という事はすみれさんか、すみれさんだな。よし、わかった ドレスを着替えるために移動しようとするすみれさんに声をかける 「あの、すみれさんちょっといいです?」 「あら、何かしら」 「せっかくなんでちょっと再現したいことがあってぇ…花嫁に逃げられる花婿ってやつを。結愛ちゃん撮影頼める?」 とるか…責任!!