『愛媛編序章ですわ!』 聞いて下さいませ、ギュウキモン 空を見上げたらなんと愛媛県がこちらに向かって降って来ていますの。 果たして私達の呪いは土地にも有効なのかしら? もしも有効でしたら、あれを壊せば超巨大なギュウキモンが誕生するのではなくて?……考えただけでもワクワクが止まりませんわね。 さぁ来なさい愛媛県!私が相手になって差し上げますわ! 『愛媛編その①ですわ!』 ジャイアントギュウキモン、この辺りで降ろして下さるかしら? 私はこれから宇和島鯛飯というのを食べて参りますわ。 それではジャイアントギュウキモンも、レッツエンジョイエヒメライフ!! 『愛媛編その②ですわ!』 食った食ったですわ。宇和島鯛めし、松山の鯛めしよりも個人的には好みかもしれませんわね。 ただいまジャイアントギュウキモン…あら?そちらのお坊様が遊び相手になって下さっているの?それはよかったですわね! もうお友達が出来ているなんて感心ですわ! では私はこれから温泉に入って参りますので、もう少しだけお友達と仲良く遊んでいて下さいませ。それでは 『愛媛御当地グルメ編ですわ!』 ジャコが一番ですわ!練り物といえばコレですわ!種類いっぱいありますけどもジャコですわ!これだけあれば勝ちですわ! 待望のB級グルメ!今回は焼豚玉子飯ですわ! 肉厚の焼豚と半熟の目玉焼きを白飯にぶっ込むなんて何をどうしても美味いに決まってますわ!美味すぎて箸が止まりませんわ!パクパクですわ! 毎夜コレですわ!そのまま掴んでまるかじりできる太刀魚巻!ほんのり甘辛いタレがいい感じ♪ これ食べて紅茶しばいて永久コンボですわ!永久機関の完成ですわ! 『愛媛完結編ですわ!』 パラレルモンが倒された事で降り注いだ愛媛は次々と元の次元に戻されて行く。 それは愛媛が姿を変え生まれたジャイアントギュウキモンも決して例外ではなかった。 「もう行ってしまわれるのですね…」 ジャイアントギュウキモンの姿が次第にぼやけ始める。 「短い間でしたけど、楽しかったですわ。」 ジャイアントギュウキモンとの思い出がクティーラモンの脳内を走馬灯の様に駆け巡った。 道後駅のカラクリ時計の前で並んで写真を撮るクティーラモンとジャイアントギュウキモン。 二人で仲良く伊予柑ジェラートを食べるクティーラモンとジャイアントギュウキモン。 二人並んで温泉に浸かるクティーラモンとジャイアントギュウキモン。 何故か存在しない筈の記憶が次々と捏造される。 「あちらの世界に戻ってもどうかお元気で」 クティーラモンの言葉にジャイアントギュウキモンは静かに頷き、そして消えた。 「…………さよなら」 クティーラモンの頬を一筋の涙が伝う。 「いつの日かまた………クティーラモンこと千本桜 冥梨栖(せんぼんざくら くらりす)より」 番外編①『香川編ですわ!』 聞いて下さいませ、ギュウキモン 先日愛媛を訪れたついでにうどんを食べようと香川まで行ったらインダラモンが襲いかかって来ましたの。いつもの様に向かって来る敵は返り討ちにして仲間に加えて差し上げようと思ったら、私…少し失敗してしまいまして、中途半端な状態でしか呪いをかけられませんでしたの… そうしたらそのインダラモン…めっさ変な馬になってしまいましたわ。お手上げですわ。 『バーベキュー大会MAKUHIKIですわ!』 「見つけましたわよ、チャラ男さん!さぁお覚悟を!」 浜辺を歩いていたチャラ男の前に突然現れ、不意打ちとばかりにその顔面にレモン汁をぶっかけるクティーラモン。 「ヴェ!?」 レモン汁をもろに食らってしまったチャラ男は目を抑えて悶える。 「さぁギュウキモンのカードを返して下さいまし!」 「フジャケルナ!!(ふざけるな!)」 無論、チャラ男はクティーラモンの要求を突っぱねる。 「本当によろしくて?あなた、呪われますわよ?」 「ナニヲショウコニズンドコドーン!?(何を証拠にそんな事!)」 「証拠はこの私の体ですわ。何を隠そう、私も元は人間。今のこの姿はギュウキモンの呪いにかかってしまったがゆえ… あなたがギュウキモンのカードを所持し続けるというのなら、あなたもいずれは私と同じ運命を辿る事になる……覚悟しておく事ですわね」 チャラ男に忠告を残して去って行くクティーラモン。 「オデノカラダガリュウキモンニ……(俺の体がギュウキモンに…)」 己の肉体がギュウキモンへと変貌してしまうイメージがチャラ男の脳裏に浮かび上がる。 「ウゾダ…(嘘だ…)ウゾダドンドコドーン!!(嘘だそんな事!!)」 その後、カードはクティーラモンのもとへ返却され、ギュウキモンも無事カードの中から解放された。 番外編②『これが私のユニバースですわ!』 アイズモンによって引き起こされた事件から数日が経ったある日の深夜。人通りの無い用水路の畔で蠢く一匹のデジモンが居た。デジモンの名はディアボロモン。それも通常のものとは違う、数日前の事件で新宿に出現した個体と同様にアイズモンの目を体中そこかしこに生やした特異体だ。 ディアボロモンの中で記憶がフラッシュバックする。どうやらこのディアボロモンはグレイスノヴァモンに倒された個体が消滅寸前に取っていたバックアップとして生み出されたコピーの様だ。今のディアボロモンが考えている事はただ一つ、自身のオリジナルを葬ったグレイスノヴァモンへの復讐。その悲願を成し遂げようと新宿へ向けて跳躍しようとしたその時… 「あら、もうお帰りになられるのですか?」 何処からともなく女性の声がした。突然の声に反応したディアボロモンが周囲を見回すが別段変わったところは無い。再びディアボロモンが新宿を目指そうとしたその瞬間、急に何者かに足を引っ張られる様な感覚に襲われた。何事かとディアボロモンが視線を下に向けると、その足下にはいつの間にか黒い水溜りの様なものが出来ており、中から伸びた白い手がディアボロモンの足首をがっちりと掴んでいる。 ディアボロモンはそれを振りほどこうと試みるも白い手の力は意外にも強く、一向に離れようとしない。 そしてその直後、水溜りから同様の手がいくつも伸びるとディアボロモンの体に掴み掛かり、そのまま水溜りの中へと引き摺り込もうとする。 「せっかく遠路はるばるお越しいただいたんです。もっとゆっくりして行ってくださいな…」 再び女性の声がした。 ディアボロモンも抵抗の意志を見せ、絡みつく白い手を振りほどいては両手の爪で切り裂いていくが、その度に新たな手が生えディアボロモンの体に掴み掛かる。 ほぼ全身が白い手に覆い尽くされまともに身動きが取れなくなったディアボロモンは自身のコピーを生成、目の前に出現させた。だがそこに現れたのはディアボロモンではなかった。耳元まで裂けた口、闘牛を思わせる2本の角、まるで蜘蛛の様な下半身…魔獣型デジモンのギュウキモンだ。そしてそれはディアボロモンが既にディアボロモンではなくなってしまっている事を意味していた。 躍起になったディアボロモンは最後の抵抗とばかりに暴れて拘束から逃れようとするが、掴んだ手がそれを許さない。抵抗虚しく、ついにディアボロモンは水溜りの中へと完全に引き摺り込まれてしまった。 獲物を取り込んだ事に満足でもしたかの様に水面が揺れ、やがて黒い水溜りはギュウキモン共々煙の様に消えて行った。 人通りの無い用水路は再び元の静けさを取り戻し、ただ水の流れる音だけが響き渡る。