東京の夜空は、今夜もネオンで彩られていた。人々の歓喜の声と笑い声が響いていたはずのこの街は、いつもなら彼女の心を満たし、安らぎを与えてくれるはずだった。  しかし今の彼女にとって、ネオンの光はあまりにも眩しすぎて目を開けてはいられない。 「うう……」  路地裏に倒れ込んだ女は、震える体を抱きしめた。服はぼろぼろに裂け、そこから滲む血が月の光に赤黒く輝く。  手足には無数の傷が刻まれ、その痛みと疲労で体力は限界だった。こぼれ落ちる涙を拭う気力すら失せている。 「どうして……なぜ私がこんな目に……」  デジモン。あの奇妙で不気味なモンスターたち。  彼らは度々東京に現れ、街中で暴れ回る。まるで怪獣映画のような光景だ。  そのたびに人々はパニックに陥り、逃げ惑う。ヒーローのような戦士たちが立ち向かうが、その戦いに巻き込まれる人々も少なくない。  彼女も必死に逃げた。ただ、静かに生きたいと思いながら。しかし、無情にも逃げ切れなかった。  その荒波は彼女を飲み込んだ。 「なぜ……なぜ私が……」  思い出せば思い出すほど、怒りと虚しさがこみ上げてくる。振り返るたびに、胸が引き裂かれるようだった。 「誰か……助けて……」  弱々しい声で助けを求めるが、誰も来ない。街の人々は皆自分のことで精一杯だ。誰も助けようとはしてくれない。 「どうして……」  絶望が胸を締め付ける。なんで私は、こんな目に遭っているの? 普通の毎日を送り、静かに生きたかった。それだけなのに。 「神様、なぜ……」  ただ東京の夜空を安らぎと共に見上げていたかった。この賑やかな街で、穏やかに生きていきたかっただけなのに……。  もう、体は動かない。意識が遠のいていく……。 「なぜ、こうなってしまったの……」 デジモンイモゲンチャードゥフトモン外伝第3章『めもり』  グランドラクモンが開いたダークエリアから人間界へと繋がるデジタルゲート。  それはかつて、七大魔王の一体であるグランドラクモンが人間界へと降り立つために開いたゲートのデータを再利用したものだった。  そのゲートから、一体のデジモンが密かに人間界へと送り込まれる。夜の街を音もなく駆けるプロットモン。  人々は愛らしいその姿を見て、ただの小型犬や子猫だろうと気に留めない。だが、その正体は、強力なロイヤルナイツであるドゥフトモンなのだ。  ロイヤルナイツクラスの強大なデータを持つデジモンが人間界で活動する場合、一般的には2つの方法が取られる。  1つ目は、自らのデータを削り、省エネ状態で常時本来の姿を保つ方法。  これにより、デジタルワールドでの本来のステータスからは落ちるが、常時強力な状態を維持し続けられ、また削られた分、無駄な被害を抑えることができるという利点もある。  2つ目の方法は、進化段階を落として人間界へと降り立つこと。  必要に応じてデータをダウンロードし、進化することで、本来の力に近い実力を一時的に発揮できるようにするのだ。  また、傷ついた状態で人間界に来た場合などは、こちらの手段を取るほうが回復が早い。  今回のドゥフトモンは、完全な回復を遂げていない事情もあり、やむなく2つ目の方法を選択した。  かつて、ロイヤルナイツが人間界を訪れる際には幼年期までデータを落とさなければならなかったが、技術の発達した現在では成長期程度であれば問題なく行動できるようになっている。  先の事件で人間界へとやってきたリヴァイアモンやエグザモンも、成長期にまでデータを落として存在していた。  リヴァイアモンは、リヴァイアモン(成長期)となり、爬虫類専門店『嫉妬』で斉藤彩乃に飼われることで身を潜めていた。  一方のエグザモンは、ドラコモンへと姿を変え、滝谷陽奈美と共に戦っていた。  ドゥフトモンが彼らと同じ境遇にあることを知るのは、もう少し後の話である。 「かつて盟友ロードナイトモンは言っていた。人間界に降り立ったならば美しき女性に憑依し、行動するのがロイヤルナイツの伝統であり、礼儀であると」  ドゥフトモンは過去の自分であれば、人間などという不確定要素の塊と共になるなどあり得ないと考えていた。  今は違う。醜い人間から目を背けず、もっと知らねばならない。それがデジタルワールドの未来には必要なのだ。  しかし、その時一つの疑問にぶつかった。 「……美しき女性とは何だ? どこにそのような人間がいる? 定義は人間の基準で良いのか……?」  ロイヤルナイツの中でも、ロードナイトモンと並ぶ人間嫌いとして知られたドゥフトモンは、人間や人間界に対する知識に乏しかった。  そういう部分は他のロイヤルナイツ、人間に慣れているオメガモンやデュークモンなどに対応を任せればよかったし、幸か不幸か人間からドゥフトモンに関わってくることもなかった。 「仕方ない、人間のことは人間に聞くとするか」  ちょうど、公園のベンチで一人休んでいる人間がいたので、ドゥフトモンは彼に話しかけることにした。 「おい、人間。少々尋ねたいことがある。私の質問に答えよ」 「んぁ~? 犬が偉そうに喋ってるぞ。飲みすぎたか~? まぁいいか、なんでも答えてやるよぉ」  その人間は酔っているようだ。通常、人間界に精通しているデジモンであれば、酔っ払いに真剣な問いかけなどしないだろう。  しかし、ドゥフトモンは気にしなかった。愚かで未熟な人間など、全てこのようなものだろうと見下していたからだ。 「人間よ。女性の魅力とは何だ?」 「へへへっ、犬っころが女の魅力だってぇ? 良いことを聞くねぇ~。もちろん、おっぱいだよ、おっぱい! デカけりゃデカいほどいいの」 「そうか。おっぱい、か。女性型デジモンにある胸部、その膨らみのことだな。つまり、女性の魅力とは、おっぱいの大きさか。興味深い。でかおっぱい……いや、巨乳な女性に心当たりはあるか?」 「そりゃもう、峰子ちゃんに決まってるじゃないの!」 「峰子ちゃんとは?」 「あらら、峰子ちゃんを知らないの? 駄目だよぉ~、そんなんじゃぁ~。峰子ちゃんといったら、高円寺さんのところの峰子ちゃんに決まってるじゃなぁい」 「ほう、誰もが知るような有名な人物なのか。どこで会える?」 「ちょっと待っててねぇ、お犬チャン。すぅぐ峰子チャンに迎えに来てもらうから。フヘヘ、あれスマホどこいったん。あっ、こっちのポケットだわ」  その人間は電話をかけると、すぐに迎えに来てくれるとのことだった。おそらく、彼と峰子の間ではよくあることなのだろう。ドゥフトモンは、この峰子という女性について思いを巡らせる。  人間に憑依するのは、ドゥフトモンにとって初めての経験となる。  ロイヤルナイツが人間界で活動する場合、基本的には人間に憑依しなければならないとされる。  その理由は2つある。  1つは、デジタルワールドの守護者であるロイヤルナイツが人間界へ自ら赴くというのは、かなり特殊な事例であるため、両世界への影響を最小限に抑えるために、秘密裏に行動する必要があること。  もう1つの理由は、憑依した人間から知識を得ることである。しかし、それによって自らのデータが変質してしまうというリスクもあるのだが……。  (すでにグランドラクモンの『アイオブザゴーゴン』を受け、闇に身を委ねている私が、さらに変質するなどありえない)  ドゥフトモンは自らのデータの状態を固定する目的も兼ねて、『アイオブザゴーゴン』を受けたのだった。 〈ふーん、そういうことまで考えてたんだね〉 (……その声は、グランドラクモンか) 〈僕の『アイオブザゴーゴン』を受けたものには、その心の闇を通じて語りかけることができるのさ。少し集中が必要だけどね〉 (人間へ憑依することに対する僅かな不安が、通信のトリガーとなったか。ダークエリアからの干渉を阻害するワクチンを作らねばならなくなったな……) 〈そんな厳しいこと言わないでよ。僕たちはもう共犯者だろう? 実はね、君を通すために作ったゲート、誰かがまた開けたみたいなんだ〉 (ダークエリアに住むデジモン、それもデジタルゲートを開けるほどの存在が人間界へやって来るということか。だが、お前が私に伝えたいのは、そのような単純なことではないだろう) 〈ああ、僕が伝えたいのは、是非とも君にもその脅威と、戦う人間たちの輝きを、しっかり見てほしいってことさ。あ~、今日の彼らの戦いも楽しみだなぁ〉 (そうか。まぁ……人間たちの実力を見る機会と考えても良いか……)  ドゥフトモンは、この世界で起きる戦いに興味を抱き始める。グランドラクモンが期待する「人間たちの輝き」を、この目で確かめたかった。  その中に自身が求める運命を変えるほどの力を見つけるために。 ・・・・・・ 「変な服を着ているのね」  夜の東京、暗く静かな路地裏で防護服を身に纏った男に、その女は近づいてくる。 「これ? 防護服だよ。花粉症予防。お前もこんな時間に何してんだ?」 「散歩……。で、あなたは?」 「俺か? ちょっと前までテロリストだったんだが、今はこうして大人しくしてる。なんて言ったら信じるのか?」 「あたしもテロリストよ」 「ふぅん……。似合わねェな」 「そうかしら? 生まれつきだからどうしようもないのよ」  女の目が細められる。彼女の顔立ちは整っていた。髪は長く、金色で艶やかだ。美人だが、その表情から何を考えているかは読み取れない。  彼女は年上に見えるし、きっと自分をからかってるんだろうなと防護服の男は考えていた。  だから暇つぶしに付き合うことにした。 「世界をぶっ壊したいのか?」 「そうよ」  一瞬、女の目が鋭さを増す。 「どうやって?」 「色々と考えてる最中。あなたはどうだったの?」 「色々と考え終わって実行したが、あの先生とガキのお陰で失敗しちまった。まぁ、それで良かったけどな」  男は、かつての出来事に思いを馳せる。  頑張って積み上げてきたことは全部台無しになってしまったが、そのお蔭で昔からの相棒を失わずに済んだ。 「あの先生?」 「俺の知る限り最高の医者だよ。今度会わせてやろうか? あの先生ならきっとどんな病でも治療できるぜ」 「何言ってるの? あなたみたいな怪しげな奴の言葉、信じるわけないでしょ」 「ま、そりゃそうか」 「でも面白い提案ね。あなたのこと、気に入ったわ」  そう言うと、女は振り返り立ち去った。顔を上げ星空を眺めてるうちに、足音は遠くへ消えていった。  きっと、彼女とはもう二度と会うこともないだろう。  かつてデジタルワールドで様々なデジモンたちと出会い別れた旅を思えば、一夜限りの出会いというのも悪くない。 「……お前も十分変な服だったけどな」 ・・・・・・  夜の街灯に照らされた街の上を、黒い影が飛び回っていた。  その影は、夜空を支配するかのような不気味な光を放ち、建物を貫いていく。  無差別に振るわれる攻撃は、破壊と恐怖をもたらし続けていた。  デジタルゲートを通りリアライズすると、そのデジモンはすぐさま破壊活動を始めたのである。 「DEATHデス。デスモンデス。これからみ~んなデストロイデス!」  デスモン。かつては高位の天使型デジモンであったがデーモンと共にダークエリアへと落とされた魔王型デジモン。  その瞳に宿る邪悪な光は、今や人類への明確な敵意を示している。  だが、人間界にはその一方的な破壊行為に対して立ち向かう者達もいた。 「『ブレッザ・ペタロ』!」 「『ウィンドオブペイン』!」 「『ファイアダーツ』!」  強風に巻き上げられ勢いを増した炎の手裏剣と矢の雨がデスモンを包み込むが、その表皮を焦がすことは出来ても決定打には至らない。 「ヒトノクズメ、オマエたちは何者デス?」 「お前みたいなやつらから人々を守る正義のヒーローってところかな」  大気を操る美しき妖精、フェアリモン、赤き炎を纏う大男アグニモン、風に舞う鳥人シューツモン。  この街をデジモンの脅威から長らく守る正体不明のヒーローたちである。  彼らの戦いはフェアリモン負けるモンchにて謎の配信者ハムお姉さんによって実況中継されており、デジモンの存在とそれに抗う者たちの知名度を大きくあげている。  そして、ドゥフトモンもまた酔っ払いが持つタブレットにて、この配信を見ていたのである。 「まさかデスモンとはな……デーモンと共に堕天したという魔王型デジモン。単独でゲートを開く力があるか」  人間界へのデジタルゲートを開くのは七大魔王であれば造作もない。  その七大魔王の一角であるデーモンと並び称されるデスモンほどの実力者であるならば可能だろう。 「あらお犬チャンったら詳しいのねぇ~? 賢いでちゅねぇ~。でも三傑が現れたからにはもう安心だからねぇ~」 「彼らがこの世界を守る仕事をしている者なのか?」 「仕事ですって。お犬チャンはわかってねぇ! わかってねぇよ! 仕事なんかじゃあねぇんだ! 正体を明かさない三傑を悪く言う奴らも中には居るけどねぇ、なにか起きればどこからともなく現れ無償で戦う正体不明の彼らこそ真のヒーロー! 警察だのデジ対だの政府はね、駄目よぉ駄目すぎってもんよ。普段いばってるくせに遅いったらありゃしないのよ対応がぁ」 「即応性の欠如か……耳が痛いな」  ロイヤルナイツも基本的にはなにかが起こってから、事件に対応するためにデジタルワールドのホストコンピューターであるイグドラシルの指令によって行動を開始する。  そのために時に敵の動きに遅れることもあった。デジモンイレイザーへの対応もその一例であった。  しかし、平時から強大な力を持つロイヤルナイツがみだりに動いては、かえって世を乱すことにもなりかねない。  ドゥフトモンもまたそれを理解し納得していたが、一部のロイヤルナイツはその理屈を無視して独自にデジタルワールドに降り立ち行動する者もいた。  イグドラシルがそれを咎めることがない以上、それもまたイグドラシルの意思であると解釈し傍観していたが、 手痛い敗北を経験した今ではドゥフトモンもまた彼らのように独自に動くべきだったのではないかと考えるようになっていた。  画面の中ではデスモンと三傑たちの激闘の火花が散っている。  夜空には無数の光が飛び交い、風切り音が唸る。そんな中、人々は悲鳴を上げながら逃げ惑っていた。 ン 「ガンコちゃん! 私のことはいいから早く逃げて!」  (ガンコちゃんさえ逃がせれば、私は変身してこの場はどうにか切り抜けられる! ) 「馬鹿言わないで! ニョロのこと、置いていけるわけないよ!」  (ぬぅ……! 本来の姿に戻ればあんな奴は一撃で成層圏までちゃぶ台返ししてやるというのに! だが、俺がデジモンであることはニョロにだけは知られるわけにはいかん! )  ふとドゥフトモンは、なぜか仲間であるガンクゥモンが近くにいる匂いを嗅ぎ取ったが、彼が人間界にいるわけがないとすぐに否定する。  ガンクゥモンはロイヤルナイツの中でも最も頑固で厳しいが、お節介でその力をいつも人助けに走っている奇特なデジモンだ。  デジタルワールドでは彼に助けられ、その背に憧れを抱くデジモンたちも多い。  こんな事態が起きればきっと自ら戦いに向かうだろう。それがドゥフトモンの知るロイヤルナイツの鬼軍曹だ。  それ故に、人間界でガンクゥモンがガンコという少女に擬態としているなど想像もつかない。  ましてや互いに正体を知らずとはいえ、かの七大将軍の一角であるニョイハゴロモンの化けたニョロと友情を結んでいる奇妙な事情など察することが出来るわけがない。 「それにしても……君は逃げなくていいのか? 巻き込まれるかもしれないぞ」 「峰子ちゃんが迎えにくるからいいのいいの! それに三傑が戦ってるんだからすぐに勝っちゃうわよ~」 「それはどうだろうな。相手も強いぞ。デスモンの異名は――――『三つ目の破壊神』。」  その異名通り、両手にある目から、鏃状の怪光線『デスアロー』が放たれる。  視認と攻撃を同時に行えることによる命中率の高さは百発百中。  そして何よりも連射性能が驚異的なデスモンの必殺技だ。  一発一発の威力もまた究極体としての破壊力と貫通力を持っている。  直撃すれば成熟期相当でしかないハイブリット体の彼らは一発であっても致命的なダメージを負うだろう。  それほどまでに究極体と成熟期の差は大きい。だがそれも、直撃すれば……である。  歴戦の戦士である彼らは、その弾幕をフェアリモンとシューツモンが作り出した風のカーテンで巻き上げた所をアグニモンが炎で焼き尽くす。  そこから防ぎ切ったかと思えば、それはそのまま炎をまとった風の刃となってデスモンを襲う。  さらに火炎は敵の視界を覆いやすい。それを利用してフェアリモンたちは炎の中から飛び出し打撃や蹴りをデスモンに見舞う。  何より驚くべきはこれほどまでに息のあった連携をアイコンタクトだけでやってみせているのだ。 「レベル6としても厄介なデスモンを相手に、レベル4が3体だけでこうまで戦えるとはな。それも街への被害を最小限に食い止めながら……」 「そらそうよ、もう数カ月は彼らは強敵と戦い続けてきてるんだからねぇ~」 「ダークエリアに住むとは言え大半の時間を傍観者に徹していたデスモンとは戦闘の経験値が違うようだな。だが……」  グランドラクモンが見せたがった光とは彼らのことで間違いはないだろう。  ハイブリット体は基本的には人間と古代の十闘士の力が封じ込められたスピリットによって誕生する特殊な存在だ。  人にデジモンの力が融合しているという点では今後参考にするべき部分も出てくるだろうが……。 「違う」  ドゥフトモンが求める力ではない。  ただ強いだけならば自身とロイヤルナイツでこなせる。何かを守りながら戦うぐらいのこともこなせて当然。  それでは駄目なのだ。どうなるか予測がついてしまう。必要なのは秩序を護る存在ではない。平和を守る英雄ではない。  その真逆の力、むしろデスモンのような破壊のための存在のほうが、ドゥフトモンにとっては魅力的に見えた。  さて、三傑とデスモンは互角の戦いを繰り広げているが、デスモンが徐々に押されていっている。  本来であれば究極体として純粋な力の差が、もっと圧倒的であるはずだ。  人間界へ迅速にリアライズするためにだいぶデータを削ってきたのだとドゥフトモンは分析した。  現在はアグニモンよりも少し大きい2~3メートル程度だが、本来の実力はもっと巨大でパワーもスピードも上だったのだろうとその動きからは判別することができた。  しかし、配信を見ているうちにドゥフトモンの中にある疑問が浮かんできた。 「ところで……なぜ"フェアリモン負けろ"と書きこまれているのだ? このハムお姉さんという女性も何故それを煽っているのだ? この人間、どこかで見たことある気もするが」 「さぁ知らね。見始めたときにはもう言われてたんだよねぇ。やっぱりお犬チャンも気になるよねぇ」 (……人間はやはり愚かだな。自らを守ってくれる者たちの敗北を望むとは……しかしその愚かさこそが必要なのだ……) ・・・・・・  攻めきれないことに業を煮やしたデスモンは空中へと舞い上がりその中央の大きな目から、デスモンが持つ最大火力である『エクスプロージョンアイ』を放とうとする。  ほんの少しの貯め時間が必要なものの、その破壊力は絶大な必殺技であったのだが、その隙を待っていたとばかりに三傑はその力を合わせる。  シューツモンとアグニモンによる合体技『クロスファイアー』。  これはシューツモンが起こした竜巻に乗ったアグニモンが突進し炎の拳をお見舞いする強力な合体必殺技だ。  そこに更にフェアリモンの風の力も加わったことで二段階ロケットのように超加速したアグニモンがデスモンを殴りつける。 『エクスプロージョンアイ』を放つために貯めていたエネルギーが暴発し爆発、デスモンはこの戦いで初めて大きなダメージを受けその表皮(テクスチャー)にヒビが入る。  形成は一気に三傑に傾いた。  このままフェアリモンたちが押し切り勝利すると"フェアリモン負けるモンch"及び類似の配信を見ている人間たちは思っていただろう。  しかし、そうはならなかった。  その時、誰も予期していなかったことが起こった。  先ほどデスモンから天空に向かって放たれた強大なエネルギーが、次元の裂け目を生み出しており、そこからフェアリモンたち目掛けて光の帯が差し込んできたのだ。 「この光は……! みんなあいつが来たぞ、避けろ!」 「『リファレンスストリーム』!」  光の中を小さなエネルギー波の弾幕が飛び交い、デスモンへの追撃を行おうとするフェアリモンたちを阻止したのだ。  エネルギーが撃ち込まれた方向を見ると、体中に様々な定規を装着したようなデジモンとそのパートナーである女性がスマホで自撮りしながら名乗りを上げていた。 「こんめも~! 今日もめもりチャンネル配信していきたいと思いまーす。ちょうどゲートが開いたからフェアリモン負かすチャレンジやっていくよ~」 「また、現れたな四季めもり……!」 「何でいつも邪魔をするんだよ!?」 「えー? だってフェアリモン負けろってみんな言ってんじゃん? 負かしたらうちの動画の登録者数めっちゃ増えるんじゃね? そういうわけでみんなチャンネル登録と高評価よろ~」  何がそういうわけなのか。毎度のことながらも困惑を隠せない三傑たち。  突然現れた女性の名は四季めもり。普段はデジタルワールドから動画配信を行っているのだが、三傑と強敵の戦いの余波で度々開くゲートから現れては邪魔をし始める有名迷惑配信者である。  そしてそのパートナーデジモンであるスケイルモンは、少し申し訳無さそうな顔をしながらもファイティングポーズは崩さない。 「スケイルモン! いい感じにやっちゃってー!」 「めもりを止めるのは無理なんよ。それに、俺も今日こそは勝ちたいからな……『ルーラーオブトライアングル』!」  ビルを蹴り素早く接近するスケイルモン。そして、その両腕に装着された三角定規のようなもので、アグニモンの炎の拳を反らしながら、フェアリモン目掛け、腕を突き刺す。  シューツモンが風を操りフェアリモンを運んでいなければ、その身体が貫かれていただろう。 「スケイルモン、また強くなってるな……!」 「デス? そこの人間とデジモンはデスモンに味方してくれるデス? オマエもデスモンと一緒に建物壊したいんデス?」 「解体動画か~。【東京タワー壊してみた】とかバズるかも。いいじゃん! そのネタ貰うね」 「マジかこいつ」 「でも後でネタパクったとか騒がれたら嫌だしぃ~スケイルモンこいつもやっちゃってー」 「あいよー!」 「デス!?」  スケイルモンはその指示にターゲットを変え急転換すると『ルーラーオブトライアングル』による突きを繰り出す。  デスモンはその爪を用いた得意技である『ブラッククロー』にてなんとか対抗するが、フェアリモンによる空中からの踏みつけ、『アスタート・ヴェスパ』を受け体勢を崩す。  そこへアグニモンが拳による連撃、『ガトリングバースト』で攻め立てるが、スケイルモンの蹴りを受け吹き飛んだ所をシューツモンが抱きとめる。  このように戦いは三傑、デスモン、四季めもりの三つ巴の様相となり、混迷を極めていった。 ・・・・・・  配信を見ながらドゥフトモンは一体何が起きているのか、理解に苦しんでいた。  ゲートから現れたあの人間は、この混乱に乗じて何かをなそうという悪人なのだろうか?  彼女が善良な人間であるはずがない。そう思わせるには十分すぎるほどの異質なオーラが、彼女の全身から滲み出ていたからだ。  そして、初めて見るデジモンに対しても、また好奇心を刺激されていた。 「あのスケイルモンというデジモン……まだ進化の余地を残しているレベル4のはずだが……そうとは思えない強さを持っているな」  その在り方が人であっても獣であっても見たものを分析することは止めることができない。それがドゥフトモンのサガであった。 「あっ、お犬チャンもフェアリモン負けるモンchよりめもりチャンネル見たい? かぁ~! やっぱりそうだよねぇ~おっぱいだよねぇ」  酔っ払いはそういい出すと配信を切り替えた。  フェアリモン負けるモンchでは、カメラが遠くあまり大きく写っては居なかったためにわからなかったが、確かにデカい。 「そうか。これが美しい女性というものか……」 「お犬チャンもわかってきたねぇ! でも峰子チャ~ンはもっとでっかいよぉ~。ありゃぁねぇまだまだ育ち盛りに違いないよぉ~! 会うたびに大きくなってるねぇ!」 「なんと。これよりも大きいのか。人間の個体差は凄いのだな……」  デジモンも体重などで個体差はでるが胸部はどうだっただろうか。  該当部分のコードを書き換えれば増強は可能だろうが。 「この女性は一体なんなんだ?」 「うへへそれ聞いちゃう!? なんかねぇ。良くわかんないショート動画上げたり、運営の規制ギリギリに挑戦したり、 時々こうやって三傑に挑む配信してる良くわかんないけどおもしれぇ女の子だよめもりチャンはよぉ!」 「そうか……そうか?」  結局なにもわからなかったが、ドゥフトモンは七大魔王やグランドラクモンなどに匹敵する存在なのだろうと感じ取っていた。  配信では画面に大きく映るめもりの後ろで、スケイルモンが苦戦し始めていた。  これまでにも何度も三傑の邪魔をした結果、その技も動きの癖も見切られ始めているのだ。  更に今回は今まで邪魔しに来た時よりも強力なデジモンであるデスモンの攻撃までもある。  皮肉なことにこれまでの三傑との戦いでスケイルモン自体の戦闘経験値も上がっていなければ、すでに『デスアロー』に貫かれ死んでいただろう。  最もそれも時間の問題と言ったところであるが、彼にはまだ手があった。 「このままだと不味いんよめもり!」 「うちらのチャンネルの視聴者も増えてきたし更新しよっか! 『スキャニングメジャー』よろ~!」  一旦後方に下がったスケイルモンの巻き尺型の長い舌がめもりの身体とスマホを覆う。  すると、背中の定規型のパーツが光り輝き、その表皮(テクスチャー)に負った傷が見る見ると癒えていくではないか。  そして、定規の光量が更に増しながら、その光を転換するように口から『リファレンスストリーム』を放出する。  最初に放った時よりも、光の中を飛び交うエネルギー弾の密度と数が目に見えて増えている。  三傑たちは協力して風と炎による二重の守護壁を繰り出すが完全には防ぎきれず、デスモンも両手から『デスアロー』の正確無比な連射を行なうがあまりの数に相殺しきれず羽を負傷する。  スケイルモンが持つ特殊技『スキャニングメジャー』は舌でスキャンしたデータを元に一時的だが自身の能力を大きく書き換える力を持つ。  これまでの配信活動によってめもりチャンネルの登録者数が10万人を超えた今、成熟期でありながら完全体を凌駕するほどの力を発揮することが出来るのだ。   「そうか。あのデジモンが持つのはアルフォースに連なる力か?」  アルフォース。それはロイヤルナイツのアルフォースブイドラモンが持つ謎めいた力である。  一説には古代種デジモンだけが持つオーバーライト(書き換え)という力が元となっているという。  オーバーライトの力を持つデジモンは感情の力によって進化せずに自身のステータスを大きく書き換えることができる。  それによって成熟期でありながら完全体や究極体に匹敵する力を発揮する事例もあったという。  だが、世の記録媒体がそうであるように書き換え可能回数には限界があり、デジモンの寿命を縮めるという諸刃の剣であり、それ故に古代種は見かけることが少ないのだ。  それに対して、アルフォースは喜びや楽しみそして大切なものを守ろうとすることで生まれる聖なるオーバーライトであり、強力な治癒の力を持ち進化を促すと古文書(ログ)に書かれている。  事実、アルフォースブイドラモンはX進化によってアルフォースの力をより引き出した結果、驚異的な自己再生能力を得ることになった。  スケイルモンもあの舌で何らかのデータを読み取り、それに付随する感情の変化によってオーバーライトを行い状況に応じて再生能力や攻撃力を得ているのだろうとドゥフトモンは分析した。 (しかし……アルフォースブイドラモンは無事だろうか? 彼の速さとX抗体プログラムをもってしてまでカードにされるとは信じがたい) 「いやぁスケチャン強い! 強すぎる! 今世紀最大のスケチャンだねぇこりゃぁ!」  強化された『リファレンスストリーム』によって優勢となったスケイルモンはフェアリモンにトドメを刺すべく両腕の『ルーラーオブトライアングル』を構えながら突進する。  危うしフェアリモン……と言ったところであるが、それで倒せるほど甘くはないと視聴者の誰もが知っていた。  スライディングでスケイルモンの股をすり抜け紙一重で避けたと同時に後頭部に『トルネード・ガンバ』によるカウンターを食らわせ、相手の勢いを乗せたまま吹き飛ばすフェアリモン。  歴戦の戦士であるフェアリモンにとってこの程度の窮地は、何度もくぐり抜けてきた日常の一部に過ぎないというのだろうか。  しかし、三傑たちもここに来てデスモンよりもスケイルモンを先にどうにかすべきと認識したようだ。 「いい加減にしやがれ四季めもり……!! 今日こそ捕まえて警察に突き出す!」 「ま、そろそろあの小娘にもお灸を据えてやらなきゃならない時が来たのかもね。そろそろデジ対も来る頃でしょ」 「ちょっとまてフェアリモン、シューツモン! デスモンの様子がおかしいぞ!」 「羽が痛いデス! でもおかげでデスモンはこんなことも出来たの思い出したデス。『デスウェーブ』!」  デスモンから、周囲に怪電波が放たれる。すると、まともにそれを浴びてしまった三傑たちの様子がおかしくなった。  彼らは、互いに争い始めた。アグニモンの拳がフェアリモンを狙うが、シューツモンの蹴りがアグニモンを吹き飛ばし、フェアリモンもまたシューツモンを蹴る。  これはいったいどうしたことだろうか?  それだけではない。周辺には『デスウェーブ』の影響を受けたのだろう暴徒まで発生し始めたのである。 「あ~何もかもぶっ壊してぇ~~~~!!」 「ヒャッハー!! 新鮮な女だぁー!!」 「このぉ! ニョロちゃんに近づくなぁぁぁぁ!!」 (デスモンめ、こんな力まで持っていたか……! ニョロだけでもこの俺が守らねば!) 「ガンコちゃん!!」 (野良のデジモンが人間界に混乱を齎すこと事態は喜ばしいが……ガンコちゃんとのデート中にやるでないわ……。それにしてもガンコちゃんが格好良すぎる♥)  一帯は瞬く間にしてカオスが支配する戦場となった。 「あれれ!? どうしちゃったのよこれ! みんなおかしくなってら」 「不味いな……これは……」  デスモンが"三つ目の破壊神"と呼ばれる理由は直接の戦闘力だけではない。  かつて、どこかのデジタルワールドにはサウンドバードモンがデジモンを操り騒動を起こした事件があった。  その騒動の最終局面ではサウンドバードモンたちが集まりデスモンへと集合進化したという。  完全に同じというわけではないが、このデスモンもまた周囲のデジモンに影響を与えることで世界に破壊と混乱を招くことができるのである。  高い空中戦闘能力、両腕の目による死角の無さと『デスアロー』を主体とした射撃性能、次元への干渉力の高さ、そしてあらゆる者に破壊の意思を齎す神としての権能。  本来の力には程遠いとはいえ、これが七大魔王の一角であるデーモンと並び称される魔王型デジモンの恐ろしさなのだ。  だが、『デスウェーブ』をまともに浴びたはずであるのに普段通りの人間がたった一人だけ居た。 「おー、フェアリモンたちの仲間割れ配信のがバズりそうじゃね? スケイルモン手伝いよろ~。あれー聞いてるー? おーい、スケイルモンってばー!」  そのスケイルモンもまた影響を受けており、近くにいたデスモンを攻撃している。それが普通なのだ。  ドゥフトモンもこれには驚きを隠せない。 「待て、なんでこの女は配信を続けている……?」 「ありゃ!? 本当だねぇ、お犬チャン。やっぱりおっぱい大きいからかねぇ」 「……『デスウェーブ』は、私が分析する限り認識を混乱させた後に自身が持つ破壊衝動を増幅し見境なく暴れさせる技だ。だとするならば、それが効かないということは……。 何かを壊したいとかそういう欲求がそもそも存在していないということか!? それなのにあんな真似ができてたということか!?」 「なるほどねぇ~。それはきっと明鏡止水の境地ってやつだわ。やっぱおっぱい大きいと違うんだわ」 「明鏡止水?」 「明鏡とは一点の曇りもない鏡。止水とは字の如く鏡にも使えるほどの留まった水、転じて波のない穏やかな心を示す。併せて何の邪念もない澄み切って落ち着いた心のことだよお犬チャン」 「……」  確かに結果から考えるとそういうことになるのだろうが……ドゥフトモンはどこか納得がいかない。  しかし、その理解したくない部分こそが人間の真の強さなのかもしれない。そう考えるならばあのめもりという人間こそ求める相手なのではないか。  さて、デスモンは正気を失っているスケイルモンを『ブラッククロー』から至近距離での『デスアロー』でなんなくやり過ごすと、争いあう三傑を余所に本来の目的に戻ろうとしていた。  迂闊に攻撃すれば注目をこちらに向けることになるかもしれなかったし、衝撃で正気に戻ってしまうかもしれない。  そもそもデスモンは、満足するまで破壊を楽しんだ後は再びゲートからダークエリアに帰るつもりであった。  邪魔する相手も無くなった今、周囲の建造物に対して『デスアロー』を浴びせ、お楽しみを再開した。  スケイルモンが言うことを聴かなくなったため、めもりは仕方なく自分で撮影器具を操作し三傑とデスモンの破壊行為を映す。  三傑たちの争いは互いの手の内も動きもわかっているためか、凄まじい攻防でありながら決定的な一打を受ける者はなく、それが逆に彼らが正気に戻る機会を妨げていた。  更には何やら普段の些細な不満からの口論にまで発展しているらしい。  配信では何を言っているのか聞き取れないが、だんだんエスカレートしているらしいことが見て分かった。  一方、デスモンはどうやら人間には興味がないらしく、無人となった建物や放置された車ばかりを攻撃している。  熱探知のような能力でもあるのだろう。人間が居る場所を避け、警察による避難誘導が完了している地区のほうへと進んでいる。  その時、酔っ払いはめもりチャンネルの配信映像のすみに見慣れた人物の見慣れない姿があることを発見する。  そこにはめもりと同じかそれ以上の胸囲を持つ女性、高円寺峰子が市民たちと殴り合う姿が写っていたのだ。  彼女たちも『デスウェーブ』でおかしくなってしまったらしい。 「ありゃお犬チャンこれ見て! 峰子ちゃんすっごいよ~! ファイトクラブだねぇ~!!」 「これが峰子か。たしかに胸が大きい。一目でわかる」 「あっまずい! パンチパーマのオバちゃんの良いのが一発腹に入ったぁ!」 「畳み掛けるようにジャブジャブストレート、ガードが空いたボディに膝……見事な連携だな……。おお、背後から襲いかかろうとしたトゲモンまで裏拳で殴り飛ばしたぞ…」 「何だこのババァ!? やばいよお犬チャン! こんなところで寝てられないよ早く助けに行かないとぉ!」 「まだ完全ではないが仕方あるまい! プロットモン、ワープ進化ッ!! ドゥフトモン:レオパルドモード!!」  プロットモンの姿から直接レオパルドモードへのワープ進化を果たすドゥフトモン。 「さぁ私の背に乗れ! 道はわかるか? 案内を頼む」 「ありゃまあ。お犬ちゃんじゃなくでっかいお猫ちゃんだったんだねぇ。見知った場所だから大丈夫だってばよぉ」 「私は犬でも猫でもない! ロイヤルナイツのドゥフトモンだ!」 「あらぁ~ドゥフちゃんっていうんだぁ。自分のお名前言えて賢いねぇドゥフたぁん」 「……まぁいい、急ぐぞ!」  高速で飛び立つレオパルドモードの背中に酔っ払いが乗りこみ、彼らは脇目も振らず現場へと向かう。  警察のバリケードを飛び越えるといいよ、もともと場所が近かったこともあり一瞬でたどり着く。  だが、すでにそこには正気に戻ったものの疲弊し倒れ伏す市民やデジモンたちの山と、まだ敵を求め暴れるオバちゃんがいたのである。 「貴様、新手かぁぁぁぁぁぁぁぁ! デジモンごときが、主婦に勝てるとおもうなぁぁぁぁぁぁ!!」  見た目に似合わない俊敏なフットワークでオバちゃんはドゥフトモンたちへ襲いかかる。 「いくらなんでもおかしくないか!?」 「長く生きてりゃそう思える人間も見かけるもんよぉ。そういうおかしな相手は気にしちゃいけないのよ。……なんだこのババァ!?」 「初対面の相手をババァだなんていけない子だねぇ!! 抉りこむように撃つべしぃ!!」  一瞬で間合いを詰めたオバちゃんは、その拳で酔っぱらいとドゥフトモン:レオパルドモードを吹き飛ばす。  憐れ、細身であった酔っ払いはその衝撃でダウンし起き上がることはなかった。  ドゥフトモンはこの世界に来て初めて出会い、様々な問いかけに答えてくれた賢者の生命活動を確認すると、オバちゃんへと向き直る。  オキグルモンとの完全敗北から病み上がりで不完全のため、人型になる体力すらない状態で、この人間とまともにやり合うのは危険すぎる。  本気で戦えばどちらかが死ぬのではないだろうか。それが真実かどうかはともかくとして、ドゥフトモンにそう思わせるほどの気迫であった。  星が輝いていた夜空には暗雲が立ち込め、地には稲妻が落ちる。嵐が来る。 「連れはヘナチョコだったようだが、まだ立ち上がってくるとはいい度胸だねぇ! いいよ掛かってきなぁ! あんたが倒れるまで殴ってやるから!」  そう言いながら見事な飛び蹴りを見せるオバちゃん。配信でフェアリモンたちが見せていた動きに勝るとも劣らないだろう。  重量がある分こちらのほうが威力は上かもしれない。  それに対し、レオパルドモードの力を最大限活かし、跳躍し頭を飛び越える。 「おっと、小粋な真似しやがって!」  予想外の行動に面食らったオバちゃんだったが、即座に振り向き足刀を放つ。しかし、鋭利な一撃は空を切るだけだ。避けられたことに対する不機嫌さが顔に出る。  体制を整えたドゥフトモンはその前腕を一振りし、オバちゃんの首元へと切り払う。しかし、それは空振り、感触はない。  気づけば目の前にドゥフトモンを迎え撃つべく拳を構えたオバちゃんの姿があった。  圧倒的戦闘能力と戦術を兼ね備えた自身に対し、年老いた人間が正面から立ち向かっている。その事実がドゥフトモンの心を激しく揺さぶる。 (やはり、強い。侮れない相手だ)  勝負はここからだろう。今度は猫パンチを連続で放つが、その全てをオバちゃんはパンチ一発で迎え撃つ。  徐々に消耗していくドゥフトモン。反対に息を上げる様子も見せず、まるで若返ったかのような動きでオバちゃんは攻撃を続ける。 「あたしに歯向かうとは躾のなってない猫だねぇ!! うちの庭を荒らしたのあんたなんじゃないかい!! そうなんだろう!? あたしが徹底的に教育してやるよぉぉぉぉぉぉ!!」  高速のアッパーカットを顎へと打ち込むと、ガクリと首が垂れ下がる。よろめくドゥフトモンへ追い打ちをかけるべく、オバちゃんは飛び跳ねながら拳を振るっていく。  余分な肉のついたはずの身体からは想像もできないほどに鋭いストレートが飛び出す。  その一撃は見事にヒットし、ドゥフトモンの身体は大きく後方へと吹き飛ばされビルの壁に激突する。壁はひび割れ、粉塵が舞い上がった。 「勝負あったねぇ!」  勝利を確信したオバちゃんが叫ぶ。油断と慢心が混じり合った表情で足元に倒れた相手を見下ろしていた。  ドゥフトモンはこの窮地に落ち着きを取り戻し、この状況を冷静に分析し始める。  今の攻防でどれだけダメージを受けたか。自分に残された力はどれほどか。  この人間は強い。デジモンとは明らかに違う生命力と気迫。普通の人間とも思えない強さだ。  デジモンの感情がデータに影響を及ぼすならば、この眼の前の戦士のように感情に満ちた人間は、デジモンに対して大きな影響を及ぼしダメージを与えられるということなのではないか。  確かそういう力をデジソウルといったはずだ。  しかし、そもそもなぜこんなところでこんな強い人間と戦わねばならないのか。まともに戦う必要があるのか。ないだろう。  オバちゃんの闘気に飲まれ、騎士として相手をしてしまっていたことに、ついに気づいたドゥフトモン。 「あまり消耗はしたくなかったのだがここまできては仕方ない。『ヴォルケンクラッツァー』! 大地よ、隆起せよ!!」  オバちゃんの周囲の大地がせり上がり、コンクリートを突き破り彼女を天高く導く。  この高さを人間が無事に降りるのは不可能だろう。 「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ! なんだいこれはぁぁぁぁぁぁ! あたしゃ高所恐怖症なんだよぉぉぉぉぉぉぉ!!」 「恐るべき戦士よ。助けてほしければ聴きたいことがある。胸の大きな女性が見当たらないがどこへいった?」 「あぁ! メガネを掛けた無駄な脂肪だらけの女かい? なら戦意を失ってそこの路地裏に逃げたよ! さぁ教えただろう、あたしを助けておくれよぉ!!」 「そうか。情報提供感謝する。では救助が来るまで、そこでゆっくりと敗者たちでも眺めて、掴んだ勝利を味わっているといい」 「ま、待ちなぁ! あたしを置いていくなぁぁぁぁぁぁ!! デジモンごときがこのあたしをコケにするのかぁぁぁぁ!!」  周囲に倒れる人々やデジモンたちと、摩天楼の上で雄叫びを上げる孤独なチャンピオンを余所に、獣は己の目的を果たさんと背を向け去っていく。 ・・・・・・  さて、時を少し戻そう。 『デスウェーブ』による破壊意思の伝搬は、思いもよらぬ人物にも影響を与えていた。 「ようやく貴方もやる気になってくれたのね。アプリアライズ……ウェザドラモン。全て壊しなさい」  彼女の名はジョンードゥ。デジタルワールドと人間界、双方で破壊活動を行なうとある組織に所属するテロリストだ。 「ウェザァァァァァァァ!!」  ウェザドラモン。天候アプリのアプモンであるが故に、天候を操る能力を持ち、いつでも大災害を起こすことができるとされる。  破壊衝動に駆られたウェザドラモンは天へと登り、『ディヴァインブレス』で暗雲を作り出す。辺り一帯はたちまち暴風雨に襲われた。  とはいえ、その影響範囲事態は、ウェザドラモンが作り出した雲の範囲内だけであり、現実世界の広大さにおいてはかなり狭い範囲だといえる。  ではなぜ、ウェザドラモンは大災害を起こせるとされているのか?  アプモンの恐ろしさは、現実世界に対しての直接的な干渉そのものだけではない。  気象予報アプリの概念が化身となったウェザドラモンの行動は、ありとあらゆるアプリケーションの気象情報に影響を与えられるのである。  普段、ジョンの命令で破壊活動をするときでもウェザドラモン自身が自制していたこの能力が、今回ばかりは遺憾なく発揮された。 「緊急ニュースです。現在、気象観測システムに大規模な異常が発生しており各地で混乱が起きています」 「は? 大雪警報……!?」 「いや、もうすぐここに台風が直撃するってよ!」  特に、東京に存在する空港への被害は甚大であろう。  観測データ上では暴風雨や豪雨となっているが実際には晴れている、といった状況が起きた場合、空港の運用責任者はデータの誤りを疑うかもしれないが、 安全を最優先に考え、離陸を見合わせる判断をする可能性が高い。  なぜなら、万が一、データが正しくて実際に危険な気象条件が発生していた場合、飛行機の離陸を許可することで大事故につながる可能性があるからだ。  また電力会社も気象条件に応じて電力供給量を調整することがある。例えば、気温が急上昇するとエアコンの使用が増え、電力需要が高まる。  気象観測システムの誤作動により、実際には気温がそれほど上昇していないにもかかわらず、電力需要が高まると予測して発電量を増やすなど、無駄な対応を取ってしまう可能性がある。  当然、天気予報などは使い物にならない。ありとあらゆるアプリケーションが誤情報を流すためである。  そして影響範囲が狭いとはいえ、天候操作というのは絶大な力を持つものである。  気象観測が不可能となった状態で、大都市のごく一部とはいえ突然大雪を降らせることができる。交通量が多い場所でならば都市機能は停止しかねない。  更に恐ろしいことに、そこから天気をいつでも変えられるのである。日照りから大雪、そこから台風。そして雷雨。 『デスウェーブ』の影響下にある結果、そのような手段を取れず、ただただ破壊を齎そうとするのは、東京に住む人間にとっては幸いであったかもしれない。  しかし、それでも雲から集めた雷をウェザドラモンの下半身の雲から増幅しつつ放射する『パニックサンダー』の効果は絶大で、小規模ながら周囲一帯に停電をもたらした。  デスモンに対抗すべく準備と作戦を進めていたデジ対と警察は、ここに来て新たな脅威に対処しなくてはいけなくなったのである。 ・・・・・・ 「なぜ、こうなってしまったの……」  もはや息も絶え絶えな峰子の意識は限界であった。 「お前はもうすぐ死んでしまうだろう」  声に意識を呼び戻され、顔を上げると、まるで天使のような羽を持った麗しい騎士がいた。迎えが来たのだろう。 「助かりたいか?」  騎士は甘く囁く。 「私は……まだ死にたくない」  ほとんど反射的に峰子は頷いた。今際の際に現れた希望に心が動かされたのだ。 「ならば一つ条件がある」  天使は優しい表情で告げる。 「その身体と精神を私に捧げることが出来るか?」 「どういうこと?」 「要は私と一体化することになる。私は君になる。その間、君の意識は深い眠りにつくだろう。そして私が世界に平和を取り戻したその時、君に全てを返すことになる」  死ぬことへの恐怖が消え去り、安堵が峰子を支配する。せめて何か形あるものが残ればと思った。  そして自分を迎えにきてくれた相手を信じようと決めた。 「分かったわ。私は貴方に全てを捧げる」 「そうか。ならばこの手を取るが良い」  その手に触れると、意識が混沌とし始めた。身体の中心部から何かが侵食し、峰子の意志を蝕んでいく。 「ああ、何かが入ってくる……」 「安心しろ、痛みは与えない」  ドゥフトモンの声が頭の中に直接響いた。身体に起こる変化を感じながら、峰子は朦朧とする意識の中で憑依が完了するのを待つ中で最後に尋ねたいことがあった。 「最後に、貴方の名前は?」 「私はドゥフトモン。ロイヤルナイツのドゥフトモンだ」  そして契約は成った。 ・・・・・・ 「ふむ、上手くいったようだな……。前後での私の意識データのログを見比べたが、何も変化はない」  実はドゥフトモンは、倒れていた高円寺峰子の肉体の状態を瞬時に分析していた。  ただ仕事での過労と乱闘での疲労が合わさり眠りそうなだけで、彼女が死ぬほどの状態ではないと知っていたが、嘘をついた。  憑依を成功させるためには、自ら意識を手放させる必要があったためである。  いや、ドゥフトモンからすれば"死ぬだろう"という曖昧な表現でしかなく、何で死ぬかわからないから嘘ではないとなるのだが……。  ともかく、現実世界で暗躍するための肉体を得たドゥフトモンは、体の動きを確かめていた。 「いかん、やはりまだ感覚が馴染まないな。これが、人間の体か。ずいぶんと重心バランスが悪く感じる。それに尻尾がないのも違和感がある」  元の姿に比べると人間の身体は不便な点が多い。しかし、逆に言えば、この身体を十全に使いこなせば新たな可能性が開けるかもしれない。 「ん、人間の記憶を得るには時間がかかるのか? なにぶん初めてだからな……自己の経過観察もしていかねばならないか……」  ロイヤルナイツの流儀に則り、人間の肉体を得た今、これからのことを考える。 「うむ、私の力を最大限発揮するにはどうすれば良いか……。まずは、この世界での地位を確立させなければならないな……」  ドゥフトモンは考える。如何にして、人間社会に溶け込み、こっそりと活動しつつ、デジタルワールドを脅かす者たちに対抗できる力を手に入れるか。  人間の中にも、恐るべき力を持つ者たちが居る。だが、その力の使い方を間違っている者も多い。  あのデスモンの『デスウェーブ』に影響されず三傑とも渡り合うパートナーを持つ四季めもりや、先程戦った人間の修羅のような者たちを、正しく使いこなす。  そのために、まずはデスモンを倒し、人間たちから信頼を得るべきだろう。  人間に憑依したことによって破損したデータを補ったことで、ドゥフトモンの姿に戻れば本来に近い力を発揮できるようになったはずだ。  あのフェアリモンたちが行っているはずのスピリットエボリューションに近い仕組みである。  しかし、脆弱な人間の肉体に負担をかけるため、まともに戦闘可能な限界時間はせいぜい3分と言ったところか。  一秒に一兆の突きを繰り出せるロイヤルナイツにとっては十分すぎるほどの時間だ。 「さて、最初の一手を考えるとしようか……人間の姿に慣れるのはまたあとでいいだろう」  遠くでは、デスモンによる破壊活動が、まだ続いているらしいのが判別できる。それだけではない。  ドゥフトモンが住むデジタルワールドとはまた別の領域、サーフェスウェブに生息するアプリモンスターの姿まで確認できる。非常に厄介な存在だ。  デジモンとアプモンは近しい存在ではあるが、デジモンはネットワーク上の様々なデータが混じり合い構築されている。そのため、強くとも特殊な能力を持たないデジモンも多い。  が、アプモンは元となるアプリケーションの概念から生まれたことが明確であるがために、どんな強さであろうとそれらアプリに直接影響を及ぼせる。  どのアプモンでも人間界に対しては混乱をもたらせるだろう。その中でもどうやら天候を司るアプリから生まれた存在のようだ。  最も、そのデータ容量事態はデジモンで言えば成熟期から完全体の間ぐらいと言ったところか。  その他にも『デスウェーブ』の影響を受けた人間やデジモンが起こした騒ぎが起きているだろう。 「人間たちはおそらくあのアプモンを優先するだろう。放っておけば想定される被害が大きすぎる。 ならば、やはり私はまずはデスモンをどうにかしたほうがいいだろうな。『デスウェーブ』をまた使われてはより被害が出る。では行くか」  変身の際になにか掛け声でもあったほうが良いかもしれないと考えながら、瞬時に元のドゥフトモンの姿へと戻る。  だが、そこで思いも寄らない事態に陥る。 (なんだ……!? 動けない……!?)  微動だにしないドゥフトモン。  変身までは出来た。しかし、自らの意思で身体を動かす事ができない。意識と身体が遮断されているのか。 「ふぁ~、おはようございまーす。あれ? なんだか身体が軽いですね~。それに足元が見える……ってなんですかこの身体!?」 (……高円寺峰子か!? まさか……) 「あぇ……!? ドゥフトモンさんの声が頭の中に……? あっ、もう世界に平和を取り戻したんですか?」 (い……いや……)  本来、デジモンによる人間への憑依は、対象が精神データを失った状態でなくてはいけないというのもあるが、ドゥフトモンの特異性も大きかった。  ヒューマンとビースト、2つの形態と相反する思考回路を持つデジモン。  オキグルモンとの戦いの後遺症でヒューマン形態のデータ損傷が大きかったこと。  グランドラクモンの手助けによって精神性をビーストに近づけていたこと。  直前にオバちゃんとの戦いで消耗していたことなどいくつもの要因があわさり、このような結果となってしまっただろう。  そして、こうなってしまっては、デスモンを倒すのは難しい。  いきなり想定していたプランが崩壊したことだけはわかったドゥフトモン。 (し、仕方ない。峰子、本来であれば君の意識は眠りについていたはずだが、想定外のバグが起きた。今は君が私の体を動かす必要があるようだ……) 「えぇ!? 私がですか!?」 (はい) 「はいじゃありませんよ!」 (何も君に戦ってもらおうというわけではない。私の身体を使って、あの破壊行為に勤しむデスモンを止めてもらうだけだ) 「と、止めるって言われても、私ひとりじゃ何もできませんよ!」 (心配するな。今の君の体はロイヤルナイツのドゥフトモン。そして私はロイヤルナイツ随一の戦略家であったドゥフトモンだ。こちらも手はある) 「……なにか作戦があるんですね?」 (ああ、それは……) ・・・・・・ 「やったー!! 建物めちゃくちゃに壊れたデスヨ!!」  デスモンは機嫌良さそうに跳び回っていた。自分の手で街を破壊することが何より楽しみなのだろう。 「これこそデスモンの生きがいデス! もっと壊すデス! もっと壊すデス!」  ビルを蹴って屋上から飛び降り、着地する前に別のビルに突進し壁面をぶち抜く。道路に落ちた後は手足を使わず空中を自由自在に舞いながら車を軽々と弾き飛ばした。  今まではダークエリア内部やデジタルワールド限定だったが、人間界で思う存分破壊行為を働けることに喜びを感じているようだ。  どうせなら街丸ごと破壊したいが、さすがにそんな規模の大きい破壊活動は周りのデジモン達に気付かれても困るので控えめにしているのである。  最もそう出来ていると思っているのはデスモン本人だけだが……。  現在デスモンを止めるために動く者がいないのは『デスウェーブ』への対抗策が現状ないためである。  被害を止めるために動いた者が、被害を大きくすることになりかねない。  そのため、政府組織は4メートル級でリアライズしたデスモン本体による損害は容認し、 対抗ワクチンプログラムを完成させるまで一回目の『デスウェーブ』の観測データから得られた範囲外で避難誘導をするしか無かった。  それに、今はデスモンよりもウェザドラモンへの対処のほうが優先度が高かった。  複数回の『ディヴァインブレス』によって雲を増やせば、その効果範囲は広がっていくという試算が出たためである。  一度作り出した雲はウェザドラモンがリアライズしている限り文字通りのクラウドネットワークとして働くということだろう。  雲が広がる前に早急に対処せねば下手をすれば日本中、いや世界中に天候災害と混乱が及ぶ。そうなってはおしまいだ。  そういうわけで、デスモンに立ち向かえるものはいなかったのである。  ただ一人、四季めもりというバグを除いては。 「たのしそーじゃん。うちも混ぜろよ」 「めもり、本当にやるん……?」  当初、三傑たちの争いを撮っていたもの、互いの攻撃をいなしたり避けたり防いだり……一言で言うなら塩試合すぎた上に視聴者数が減ったため撮れ高がないと判断した彼女は、一旦配信を中断。  結果スケイルモンは得ていたパワーもなくなったことに気づかず、今までの文句を言いながらめもりを襲おうとしたところを返り討ちに会い、正気に戻ったというわけである。  実のところ、視聴者が減ったのはウェザドラモンの影響のが大きいのだが、彼女が知る由もない。  そして今、彼らはデスモンの前に立ちふさがった。 「オマエー! またデスモンの邪魔しにきたデス?」  普通はそう考えるだろう。しかし、四季めもりは違った。 「ちげーし。デスモンってばさー。アニメやゲームみたいにポンポン建物壊せるじゃん! これウケると思うんだわ!」  嬉々とする彼女は、なんとデスモンの手伝いを申し出たのだ。  本人曰く、自分の配信で再生回数狙いだが……。 「つまりデスモンを撮ってくれるんデスネ? それなら格好良く撮って欲しいデス!」 「りょー。今日はデスモンちゃんの破壊活動ばっちり映すからねー」  二人は意気投合し、街中を蹂躙した。四季めもりとデスモンの破壊活動は、カオスな雰囲気を生み出していた。 「やったー!! このビル、ボロボロだし笑える。もっとデスモンちゃんのパワーを見せて!」 「しょうがないデスね! デスモン、もっと派手に暴れるデス!」  デスモンは嬉々としてさらに破壊活動を繰り広げ、四季めもりはそんな様子を笑いながら撮影していた。  配信では視聴者数が増加し、様々なコメントが飛び交う。 『お前らよくやるな』 『でっか』 『デスモンくんめもりチャンネルのためにありがとう! でも止めろよ!』 『なんなんだよこいつら……』 『この人いつもこんなヤベーの?』 『通報しました』 「めもり……こんなことしてたら捕まるんよ……」 「デスモンちゃん撮ってるだけだし大丈夫。万が一捕まっても、ワイドショーで有名になれるじゃん。それに次の投稿でネタになるし」  スケイルモンの心配はもっともであったが、四季めもりにはどうでも良かった。  彼女はなんだってする。目的は登録者数なのだから。 「もうその考えがバグってるんよ……」  とはいえ、スケイルモンにとってめもりといっしょに居れば、あの三傑と渡り合うほどに強くなれたのは確かである。  この女は数字を持っている。だから仕方ないのだと自分に言い聞かせる。 「あっちもこっちも吹っ飛ばしてやるんデス!」 「おー? あっちなんかすげぇビガビガ光って音すげぇし。こっち近づいてきてるし。デスモンちゃんより、なんか向こうのが派手で撮れ高ありそうじゃね?」 「ムムム……デスモンが一番格好良くこの街を壊せるんデス!」  めもりの言葉にデスモンは方向を転換し、ウェザドラモンの方へと向かっていく。  彼女にはその意思はなかったのだろうが、結果的に最も目立って暴れる二体を争わせようということに成功しつつあった。 ・・・・・・  ウェザドラモンは今まさに新たなる雲を作り始めていた。  リアルワールドに影響を及ぼす前に止めるべく、政府組織であるデジ対と警視庁電脳犯罪捜査課がすでに動いていた。  まずウェザドラモンに対して『デスウェーブ』の範囲外から狙撃が考えられたが、雲によって巻き起こされる暴風雨に守られているためそれは困難とされた。  普通の嵐であれば荒天下での訓練も積んでいる二尾橋源乃が狙撃するところだが、通常とは違うアプモンによって引き起こされる嵐の領域は風向きの変化も風速も常識の範囲外である。  よって直接近づきウェザドラモンを倒し、そのパートナーを確保というシンプルな作戦を取るしかなかった。  ベルゼブモンのベヒーモスによって一気に近づき最大火力で速攻で鎮圧する。だが、それも未だ対抗プログラムを生成出来ていないため、デスモンの接近によりご破産となる。 《撤退!? ここまで来て!? なぁお前七大魔王なんだからなんとかならない?》 「魔王だからこそあいつの電波はヤベェんだよ。ありゃ災厄の先触れ。黙示録のトランペッター。笛を吹いたら地獄も吹き出すってな」 《つまり?》 「俺があっぱらぱーになってお前の頭を吹き飛ばす。リヴァイアモンがいる店には絶対近寄らせるなよ」 《了解。頭があるうちにさっさと逃げます》  デジ対のアタッカーであるヨリオとそのパートナーである七大魔王の一角、ベルゼブモンはデスモンの接近に対して撤退を余儀なくされる。  ベルゼブモンの言う通り、崩壊、混沌、狂乱……世界の終わりを前に心躍らせるのは魔王と呼ばれるもの一切の宿命。そう定められている。  そして、デスモンという存在はダークエリアの魔王たちにとって特異なデジモンである。  普段は傍観者として中立を保ち穏やかに暮らしているというが、決戦の時が来ればその灰色の身体を黒く染めるというデジモンである。  逆説的に黒いデスモンが現れたということはハルマゲドンの前触れを示す。  それは魔王たちが持つ本性を解き放ち、暴れさせるには十分な理由となるのだ。 (だが……問題はそこなんだよ。なんであいつは黒いんだよ!)  確かに、ウェザドラモンがこのまま雲を広げ続ければ世界は破滅するだろうが……。  黒いデスモンが現れるには、その程度では足りないはずだ。何か他の要因がある。 (デジタルワールドでなにかが起こったってのか? 俺達魔王がワクワクするようなことが……!) ・・・・・・  さて、こうしてデスモンは、妨害もなく稲妻落ちる嵐の中へと突入する事ができたのである。  強風は街中の看板や広告を吹き飛ばし、ビルの壁面に貼られたポスターを剥がし、街の景色を一変させていた。  道路沿いの看板は風圧に耐え切れず、支柱から外れ、強風に飛ばされていく。電柱や街灯も例外ではなく、根元から倒れたり、折れたりしているものも見受けられた。  車は横転し、その残骸が道路を塞いでいた。雨と風によって倒れた信号機や街灯が、危険な障害物となって通行を妨げ、混沌とした雰囲気をさらに強調している。  そしてそれらをデスモンは、なぎ倒しながら進む。 「わーい! 雨だ雨だー! 雨の中での破壊もまた一興デス!」  四季めもりはスケイルモンに背負われデスモンを追いかけている。  どんな悪天候であろうと彼女は配信を止めることはない。逆に格好のネタと考え、危険地帯を楽しむ始末だった。  稲妻が空を裂き、暴風雨が街を襲う中、デスモンと四季めもりのカオスな破壊活動はさらに激しさを増していた。  彼らの行く先々で、ビルは倒れ、車は炎上し、窓ガラスは粉々に砕け散っていた。 「やったー! この通り、めちゃくちゃデスヨ! 最高に面白いデス!」  デスモンは狂喜しながら、雨と風をものともせずに暴れ回り、『ブラッククロー』を振り下ろすたびに建物が崩れ、その衝撃で周囲の車が吹き飛ばされた。 「わー、すごい! まるでハリウッド映画みたいじゃん? これ、絶対にバズるって!」 「なんでこの状況で喜べてるん……」  スケイルモンは、パートナーである四季めもりの振る舞いに驚きを隠せなかった。  彼女が何をしようとしているのか、何を考えているのか、全く理解できなかった。  しかし、めもりはそんなスケイルモンの心中などお構いなしに、さらにエキサイトしていた。 「あー、この雨と風、最高じゃん! まるで世界が終わるみたい! ねえ、スケイルモン、この様子をしっかり撮ってよねー」 「はぁ……」  スケイルモンは、ため息をつきながらも、めもりの指示に従った。彼が持つ能力により、こんな悪天候でもめもりチャンネルは配信ができているのだ。  そして、この状況でも視聴者数は増え続けている。  デスモンは、障害物を次々と撃ち落とし破壊しながら、嵐の中心に向かって進む。  ウェザドラモンの背に乗り、全てを見下ろしながら世界の破壊を望むジョン-ドゥは嵐の中心から東京の混乱ぶりを観察していた。 「ふふふ、ウェザドラモン。いい仕事をしているわね。でも、お客さんが来たみたい。歓迎してあげましょ」 「壊す! 壊す!! 破壊! 破壊!! ウェザァァァァァァァァ!!」 『デスウェーブ』の影響で理性をなくしているウェザドラモンはジョンの指示を聞いているわけではない。  彼女が背中に乗っているということすら気付いていないだろう。  しかし、こちらに向かってくる者、動く者、それらは全て敵であった。近づくデスモンに対して、その下半身の雷雲から『パニックサンダー』を放つ。 「えええ!? デスモンといっしょに破壊を楽しみたい同好の士じゃなかったんデス? 裏切ったんデスカー!」  ウェザドラモンから放たれた雷撃は、デスモンの全身を襲った。しかし、デスモンは容易には倒れなかった。所詮は成熟期から完全体相当の技にすぎない。  電撃のダメージを受けながらも、すぐに体勢を立て直し、逆襲に出る。 「ならば容赦しないデス! 『デスアロー』!」  デスモンは両腕の目から強力な怪光線を乱れ撃つ。ウェザドラモンは天候の加護もあり致命傷は避けるが、空中戦での機動力は嵐の中であろうとデスモンが上回っていた。  雷を避けつづけ、ウェザドラモンより上を取ると、見下ろすように『デスアロー』を撃とうとするが、その時、ウェザドラモンの背を蹴り、飛び立ったジョンがデスモンの羽を殴りつけたのだ。 「私のが強い」  そして、人間によって攻撃されたことでデスモンは、パニックに陥ってしまう。 「うわぁぁぁぁぁぁ! あの伝説は本当だったデスー! 怖いデスー!!」  それは、ダークエリアに住むとある吸血鬼型デジモンから聞いた話だ。  なんでも昔、容赦なくデジモンを殴る恐ろしい人間がいて、彼らの同族複数体をその拳で殴り倒しまくったのだという。  彼らの一族はとてつもない衝撃を受け、その人間の名前を聞くだけで震え上がり、逃げ出そうとするほどのトラウマを植え付けられたそうだ。  三傑とスケイルモンとの戦いで負傷していた羽を狙われたことで、地に落ちていくデスモン。  しがみつきながら殴ることを辞めないジョン。  暴走し続けるウェザドラモンは、地上でデスモンと戦うジョンに当たることも構わず雷撃を撃ち続ける。  そして、その激しい戦いの光景を目を輝かせながら撮影するめもり。 「これならフェアリモン負けるモンchより稼げるよ~! もっと私のために争ってー!」  その時である。突如として空が光り輝いた。閃光が、雲を削り取っていく。 「『あ、アウススターベン』!! 『アウススターベン』!! 『アウススターベン』!! ドゥ、ドゥフトモン様ぁ~! こ、これでいいんですかぁ~!?」 (そうだ! 雲など、なんということはない。雲よりも高みに登り全て、何もかも、このように消し飛ばしてしまえば良いのだッ!)  消滅の剣、アウススターベン。ドゥフトモンの必殺技だ。剣波に触れた全てのデータを跡形も残らず消滅させる。  通常の攻撃では『ディヴァインブレス』によって生み出された雲をより拡散させる結果にしかならないが、この技であれば話は別だ。  体を動かしているのが峰子であるため、その剣に冴えはないし空を飛ぶということもぎこちないが、雲を払うだけならばやたらめったら振り回すだけで十分だ。  雲が消えたことで雨は止み、風は消えさり、雷はもはやその声を響かせることはない。ただ澄み渡る漆黒の夜空に輝く星が、人獣の騎士を彩っている。 「デス!? オ、オマエはロイヤルナイツの……!」 (さぁ高々と名乗りをあげるんだ峰子! 教えたとおりに!) 「わ、我が名はデジタルワールドの守護者たるロイヤルナイツのドゥフトモン!! デジタルワールドと人間界を救うために我が主イグドラシルより命を受け、人間と同盟を結ぶべくやってきた騎士である!!」 「ろ、ロイヤルナイツ! めもりやばいんよ! ロイヤルナイツっていったらデジタルワールドの超強いデジモンたちなんよ!」 「おー? 何かすごいならあいつ映せばバズるんじゃね?」 「何がロイヤルナイツよ。私たちの破壊の邪魔をするなら……ウェザドラモン!!」 「破壊……! 破壊……!! ウェザァァァァァァァ!!」  雲を消されたことで怒り狂うウェザドラモンが空中のドゥフトモンへと襲いかかろうとする。 「あ、あわわ、わ、ドゥフトモン様!! 私、言いましたよね!? 戦うなんて無理ですよ!?」 (心配するな。彼らが居るだろう!) 「『ウィンドオブペイン』!!」 「『バーニングサラマンダー』!!」 「今だ!『トルネードガンバ』!」 「ウェ、ウェザァァァァぁぁぁ……」  風に舞う矢と炎の龍弾に食い止められ、地上に墜落した所を待ち構えていた"旋風の蹴撃手(ストライカー)"、フェアリモンによる回転蹴りの追撃が見事に決まる。  突如現れた三傑たちによる必殺技の連携の威力は絶大で、ウェザドラモンを沈める。  ドゥフトモンの策とは、彼らを正気に戻し味方にすることであった。  これで、ウェザドラモンはもう戦うことはできない。アプモンチップへと戻り、ジョンが持つアプリドライヴに帰っていく。 「でも、まだ強い私が居る」  ジョンはフェアリモンへとその身体能力を活かし襲いかかるが、そこは歴戦の戦士フェアリモン。  同じスピリットエボリューションの使い手やスピリットモドキ、更にテイマーも戦うタイプの相手との戦闘経験も積んできていた彼女は、一切油断していなかった。 「幻……!?」  フェアリモンは大気を操り蜃気楼を見せることを得意とするという。  惑わされ、攻撃を空振り体勢を崩したジョンの隙を見逃す甘さは無かった。 「これで大人しくしやがれ! 『カリーノ・アンカ』!!」  代名詞であるヒップアタックがジョンに炸裂する。魅了の効果を持つこのケツの前にはジョンの飽くなき破壊衝動すら敵わないというのだろうか。 「なんて……柔らかいの……」  後に、二大災厄事件と呼称されるこの事件において、"天候の災厄"はこうして鎮圧されることとなった。  だが、この状況が面白くない者もいた。  ようやくフェアリモン負けるモンchに視聴者数で勝てると思っていたら速攻でそれが覆った四季めもりと、ロイヤルナイツと三傑たちに恐れをなしているデスモンだ。 「うわー! ロイヤルナイツが来た上にめちゃくちゃ強い奴らまで戻ってきたデス!?」 「ねー、やっぱりフェアリモン負かしたほうがウケんじゃね? スケイルモーン、『スキャニングメジャー』よろ!」 「それでも今までで一番数があるんよ!! これならフェアリモンたちにも勝てる気がするんよ!!」 「デスモンたちは負けないデス! 一緒に戦おうデス!」  ジョンによる攻撃で羽を大きく負傷し浮く満足に飛べなくなったデスモンだが、どちらも近接戦も遠距離戦可能なスケイルモンとの組み合わせは脅威であった。  ドゥフトモンは冷静に考える。そしてこの場を対処する作戦が決まった。峰子の口を借りて、三傑へ指示が飛ぶ。  その作戦とは、デスモンにあえて『デスウェーブ』を使わせることであった。  すでにドゥフトモンが作成したワクチンプログラムのデータを元にし、デジ対に所属する陰陽師デジモン、ドウモンが急遽作成したお札プログラムが三傑たちが持つ電子機器に配られている。  このアイテムの発動に寄る結界は短時間ではあるが、タイミングを合わせれば完全に効果の遮断が可能だ。 (デスモンが秘める権能はまさしく破壊神の名にふさわしい。だが、このドゥフトモンが一度見たということが致命的な脆弱性である!)  最も、このプログラムは即席であったがために、人間と融合している者しか守ることが出来ない。 『デスウェーブ』で呼び起こされる破壊プログラムを人とデジモンで分散し、片方を逆位相に変換、その上で再度ぶつけ合わせることで無効化する仕組みであるからだ。  そのためスピリットエボリューションしている三傑と、峰子と融合しているドゥフトモンにしか使えない。  変身する際に取り込んだ峰子のスマホから状況確認を行っているが、周辺地区の住民の避難も完了しているとのことだ。一度目と違い新たな災厄と混沌を呼ぶこともないだろう。  我々だけは『デスウェーブ』を防ぎ、スケイルモンを暴走させる。  そうすればあの四季めもりという女性もスケイルモンを止めるために再び弱体化させるしかなくなるだろう。  あとは残るデスモンを集中攻撃すれば良い。  だが、その考えは甘かった。ドゥフトモンは四季めもりという人間を測り切ることが出来ていなかった。  作戦通りに『デスウェーブ』を使わせ、三傑とドゥフトモンはお札プログラムの発動による結界で守られた、そしてスケイルモンも破壊衝動に飲まれ暴走した。 「どうしてオマエたちにはデスモンの『デスウェーブ』が効かないデス!?」  通用しなかったことに困惑するのは当然だ。  たった一度、それも画面越しに見たというだけで分析を果たし、その場しのぎとは言え対抗プログラムを生成するのはロイヤルナイツの中でもドゥフトモンにしか出来ない芸当である。 「ロイヤルナイツってすげぇな……」  そして、狂ったスケイルモンが振るう『ルーラーオブトライアングル』が、めもりの身体を貫きかけたところを、間一髪でフェアリモンが抱きかかえ救ったのだが……。 「四季めもり! スケイルモンを止めるために、配信やめてくれるよな!?」 「……なんで? このほうが刺激的で視聴者ウケしそうじゃん? 今のもスリルあってよかったよー! もっと派手なバトルよろしく!」  一度目の戦いは三傑同士の戦いの配信を続けても視聴者数の増加はなさそうだった。だから一旦中止し、建築物破壊配信のためにデスモンの方へと向かった。  今回は三傑たちは正気なのでスケイルモンと戦ってくれるし、ロイヤルナイツという珍しいレアキャラがいて、デスモンという大ボスもいる。  パートナーデジモンの頭がおかしくなっていようが、それで自分が死にかけようが、配信を止める理由にはならなかった。  このまま配信を続ければもっと数字が取れる。  フェアリモンは困惑した表情で四季めもりを抱きかかえていた。 「何言ってんだよ!? 殺されかけたんだぞ! 正気じゃない……」  めもりはフェアリモンの問いかけに無邪気な笑顔を浮かべ、配信を止めるつもりはないと断言する。 「視聴者だってきっと楽しみにしているよ。今やめたら、みんなガッカリしちゃうよー? うち今日は登録者数20万人目指してるから」  めもりはそう言うと、自身のスマートフォンをフェアリモンに見せた。そこには、すでに桁違いの視聴者数と、興奮した様々なコメントが表示されている。  フェアリモンは絶望的な思いで、頭を抱えた。  無理やりスマートフォンを奪い取り、配信を辞めさせようとしたその時、デスモンからの流れ弾がフェアリモンと四季めもりに向かい飛んでくる。  しかたなく、『ブレッザ・ペタロ』を放ち、竜巻に巻き込むことで『デスアロー』を逸らすが、その隙をついてフェアリモンからめもりは逃げ出す。 「すいません、ドゥフトモンさん。四季めもりを止めることは出来ませんでした」 「し、仕方ないですよフェアリモンさんのせいじゃないですよ!」  峰子はドゥフトモンの身体で、作戦が失敗したことを伝えに来たフェアリモンを慰める。  ドゥフトモンは四季めもりという人間のことがわからなかった。わかるはずがなかった。しかし、そこに魅力を感じ始めていた。 (人間とは、なんなのだ?)  三つ巴の戦いはめもりが望む通り、壮絶なものとなっていた。  暴走するスケイルモンは、デスモンとも三傑とも単独で渡り合うほどの速さを得ていた。  スケイルモンの動きに慣れている三傑たちでさえ、その動きを捉えるのは難しいほど俊敏な動きを見せる。 「今デス! ロイヤルナイツを倒すデス!」  デスモンは三傑たちがスケイルモンに気を取られているうちに、その大きな目に破壊の力を収束させた赤き閃光『エクスプロージョンアイ』をドゥフトモン目掛け放つ。 (……まずい!! 避けろ峰子!) 「えっ?」  ドゥフトモンであれば、予備動作のあるその攻撃を避けることは造作もなかっただろうが、今は戦闘などしたこともない峰子がその体を動かしている。  反応が遅れた結果、飛び立つことも避けることも敵わず、破壊の本流をまともに叩きつけられる。  ロイヤルナイツとて、破壊神が放つ破壊光線を受けきれるのは、無敵の盾を持つクレニアムモンや、無敵の鎧を持つマグナモンだけだろう。  無論、防御に優れた彼らとて慢心はできない。戦いに絶対というものはない。  それは今この瞬間のことでもある。赤い光が、ドゥフトモンの身体を削っていく。 ・・・・・・  高円寺峰子は、デジタル庁に務める一般職員でしか無かった。その人生の中で、このようなダメージを受けたことはない。  つい先程、ドゥフトモンに命を助けられたというのに、やっぱり死んでしまうのか。  彼女は平穏な生活を好む、控えめで勤勉な女性だった。彼女は幼い頃からテクノロジーに興味があり、常に最新のガジェットやデジタルトレンドに注目していた。  学校では教師たちから模範生として好かれたが、目立つことを好まず、友達も少なかった。  やがて自身が情熱を燃やす事のできるデジタル庁へと就職し、両親と自らが望む通り、真面目に静かな人生を送ってこれていた。  静かに生きるということは、厄介事に近寄らないにする人生だった。自制しつづけ、公務員となった。  しかしそれもここで終わりだ。こんなことならばもっと自分に正直に生きていけばよかった。  そうしてこれから訪れる死を覚悟した時、高円寺峰子は、自らの身体が誰かに動されているのを感じた。その意思は力強く答える。 「……この程度で死ぬだと? 舐めるな! 私はロイヤルナイツのドゥフトモンである!! 『ヴォルケンクラッツァー』!!」  大地がせり上がり、放射され続ける赤熱の光線に対して壁を作ると同時に大地はドゥフトモンを包むように沈みこみ、車線上から逃がす。  デスモンの足元もせり上がり、後ろに倒れ込んでいく。強大な熱線は夜空を破壊していき、東京の空に次元の穴を開けていく。 (あ、あれ? 私、生きてます?) 「そうか。レオパルドモードならば、私に主導権があるのか……! 峰子、もう大丈夫だ。ここからは私が全てを終わらせよう」  峰子の生存本能であろうか。それとも、ドゥフトモンのプライドに寄るものだろうか。  消滅の窮地にレオパルドモードへのトランスフォームを果たしていたのである。 「戦闘可能時間は残り38秒というところか……少し、余裕がないな」  ドゥフトモンは瞬時にこの場を納めるための計算をする。  そして峰子に作戦を囁くと、三傑たちに指示を出し始める。 「フェアリモン、アグニモン、シューツモン! 君たちはスケイルモンから下がり、これから起こることに備えてくれ」  そして、ドゥフトモン:レオパルドモードは、そのスピードだけではないしなやかな動きを持ってしてスケイルモンを巧みに翻弄し、デスモンの前へと誘導する。 「さぁデスモン! お前にこの成熟期を破壊できるか!?」 「なんデス!? デスモンの力を見せてやるデス!!」  スケイルモンとデスモンをぶつけ合わせようというのだ。  見境なく暴れながらも『スキャニングメジャー』をめもりのスマホに使うことで、さらなる力を得るスケイルモン。  最も強くなれることを本能で察したのであろう。その口から特大の光線と、その中を飛び交う無数の弾幕を伴った『リファレンスストリーム』を放射する。  一方、デスモンも今度は足元を崩される警戒からか、空中へとジャンプし、再び『エクスプロージョンアイ』を放つ。  2つの光がぶつかり合う余波だけで、東京中にいくつものデジタルゲートが開いていくほどであった。  三傑たちも、その技を使って自らの身を守ることで精一杯なほどである。四季めもりはすごい映像が配信できて喜んでいる。  だが、さすがは魔王と言うべきか、光の押し合いは拮抗せず、デスモンが優勢である。 「……ここだ!!」  そこで、ドゥフトモンはレオパルドモードから再び人型へと戻る。  高円寺峰子は、この戦いを終わらせることとなる引き金を自分が引くことになるなどとは思ってもいなかった。  デジモンのことはデジタル庁の職員として知っていたが、ただの一般職員だった自分がこの世界を守る戦いに参加するなど想像できるはずがない。  いままで自分から脅威に立ち向かったことなど、無い。彼女は、誰かに守られる側であった。  それでも、ドゥフトモンが今、自分の助けと力を必要としてくれている。  高円寺峰子は、その持てる勇気を振り絞り、細剣を前に構え狙いをつける。 (撃て! 峰子!) 「『エルンストウェル』!!」  ドゥフトモンが持つレイピアから新たなる光が生まれる。それは破壊の剣。  破壊の力と破壊の力がぶつかりあえば、どちらも破壊されるのみ。 『リファレンスストリーム』、『エクスプロージョンアイ』、『エルンストウェル』。  大火力を持った必殺技同士がぶつかり合い混ざりあった結果、弾け飛ぶ。  その爆発は大地を震わせ、天を切り裂いた。  まともに余波を浴びた結果、力尽き、地に落ちる"三つ目の破壊神"。  この事態を作り出したドゥフトモンもまた限界を迎え、高円寺峰子の姿へと戻ってしまう。  だが、スケイルモンだけは違った。 「こいつは驚きだねぇ……」  シューツモンが驚くのも無理はない。スケイルモンの傷が徐々に修復されていく。  疲弊した状態でまだスケイルモンと戦わなければならないのか。  そう思われたその時、突然スケイルモンが身構えていた三傑たちとは逆方向へと駆け出していく。  逃げるつもりだろうか?  いや違う! 爆発の余波で、四季めもりの服の大事な部分が吹き飛んでいたのである! 「いや~ん♡」  めもりは服が脱げたことを視聴者が増える嬉しいハプニング程度にしか考えていない。  自分で脱いでないのだから、今回はセーフではないのか。セーフだろう。  そんなわけがない。  正気に戻っていたスケイルモンはそれを隠すべく巻き尺の舌を伸ばしたが、間に合わない。  こうして、めもりチャンネルは運営によりBANされ、スケイルモンは得ていた力を失ってしまった。  そうなってしまえば、人間にさえ負けるただの弱小デジモン。もはや三傑とは勝負にもならないだろう。  だが、四季めもりはまたもドゥフトモンの予想外の行動へと出る。スケイルモンを連れ、戦いによって生まれていたデジタルゲートへと迷いなく飛び込んだのだ。 「じゃあねー。フェアリモンたち~、次もコラボ配信よろ~」  めもりとスケイルモンが通り抜けた瞬間、都合よくゲートが閉じていく。 「またあの小娘に逃げられたねぇ」 「はぁ……もう会いたくない……」  深い溜め息をつくアグニモン。こういうことは何度も経験しているのであろう。 ・・・・・・ (これで……終わったんですか?) 「いいや、これからだ」  ドゥフトモンは、倒れたデスモンの下へと向かう。 「うー、人間、何のようデス。デスモンはもう動けないデスデス。……まさかデスモンを殴る気デス!?」 「安心しろ……今はそのつもりはない。それに私はロイヤルナイツのドゥフトモンだ」 「デス? ロイヤルナイツの正体は人間だったデス?」 「いやこの人間に憑依しているだけだ。だが、デリートされたくなければ……私に従うことだ」 「デスモンは負けたデス。好きにするデスデス……」    戦いが終わったことをフェアリモン負けるモンchの配信で察したのか、様々な人々が野次馬に押し寄せてきた。その中にはあの酔っぱらいもいた。  人々は三傑が目当てなのだろうが、シューツモンは意識を失っているジョンを背負うと、こいつを警察に届けると言って群衆たちを尻目に飛び立った。  フェアリモンとアグニモンは仕方がないとして、人々に対応していく。  デスモンに対しては恐れをなして近寄ってこなかったが、酔っ払いは峰子の姿を確認すると、足早に駆け寄ってくる。 「あれは人間の賢者……もう起きたのか」 「心配したのよぉ峰子チャァン! あれぇ~何かいつもと違うんじゃない? ちょっとイメチェンしたぁ?」 (あ、チドリちゃん。ドゥフトモン様も知り合いだったんですか?) 「チドリちゃん……? まさか、この人間も女性なのか?」 「なぁにぃ峰子チャン? そりゃねぇ。あたしゃねぇ。峰子チャンほどおっぱいでっかくないけどねぇ。酷くなぁい? このこのー」  酔っぱらいこと唐橋チドリは峰子をつつく。 「ひゃんっ」 (……ドゥフトモン様?) 「なぁによぉ~。かわいい声あげちゃってぇ~」 「くっ! 私だ。ドゥフトモンだ! この人間を助けるために憑依し操っているのだ!」 「……? あー。そうなのぉ。ドゥフチャンだったのねん。わかるわかるーそういうことねー」  チドリはドゥフトモンの説明にあっさりと納得する。  本当にわかっているかどうかは怪しいと彼女を良く知る峰子は思ったのだが、ドゥフトモンは素直に受取り、チドリの理解力の高さに感心している。  その時、野次馬たちが声を荒げる。 「おい! あの黒くてデカいやつ、まだ動いてやがる!!」 「なんだってぇ! 俺の職場をめちゃくちゃにしやがってぇ……人間の怒りを思い知らせてやらァ!!」 「フェアリモーン! さっさとあの悪魔にトドメを刺しちゃってよ!!」  野次馬たちはそのへんに落ちてた金属バットなど武器になりそうなものを拾い、デスモンを取り囲み始める。  フェアリモンとアグニモンはそれを止めようとするが、数が多すぎる。 「……デスモンやっぱりデリートされるデス?」 「私に任せろ。聴くがいい!! 人間どもよ!」 「おぅおぅ、なんだぁてめぇはよぉ!!」 「俺達の邪魔をするってんならデカパイだろうと容赦はしな……うおっ……でっかっ……」 「私はデジタルワールドの守護者たるロイヤルナイツの騎士、ドゥフトモンである! 巨悪に対抗すべく人間たちと同盟を結ぶため、我等が主たるイグドラシルの特命を受け、人間界に降り立ったのだ!」  無論、これは嘘である。イグドラシルはそんな命令を出しては居ないが、人間たちにそんなことはわからないだろう。 「ろ、ロイヤルナイツってなんだろなぁ~。聞いたことあるニョロちゃん?」 (ドゥ、ドゥフトモン!? なぜ人間界にいるのだ!? それにイグドラシルからの特命だと!? 俺の居ないうちになにが……) 「え、え、えーと確かデジタルワールドのすごく強い人たちだってデジモンに詳しい友だちから聞いたことあるなぁ~」 (ロイヤルナイツは直接戦闘力に優れた七大将軍たちがわざと襲撃させ迎え撃ち、捕縛する計画だったはず。奴らめ失敗しおったのか!?)  野次馬の中に紛れ込んでいたガンコとニョロは動揺を隠せない。 「さっきフェアリモン負けるモンchでもあの羽生えた騎士デジモンが同じこと言ってたな! それがどうして人間になってんだぁ?」 「私がこの女性を発見した時、彼女は倒れ傷ついていた。この人間の命を救うためには、こうするしか無かったのだ」 「あ~なるほどねぇ。ドゥフちゃんは瀕死の峰子ちゃんを救うために自らの命を分け与えたんだねぇ~。 その代償に自分の命を失ってまで彼女を助けてくれたんだねぇ~。人間を愛する高潔な騎士様なんだねぇ~えらい!」  別に死ぬほどではなかったというのが真相だが、それはドゥフトモンにしかわからないことである。  そしてチドリの言うことは当たっていないが、群衆にはそれなりに効果があったようだ。  フェアリモン負けるモンchにて、暴走する三傑たちをワクチンプログラムで助けたところが配信されていたことも大きいだろう。 「あんたがいい奴ってのはわかったよ。そのロイヤルナイツがなんで、暴れまわったそいつを庇うんだ」 「このデジモン、デスモンは自らの意思で暴れまわっていたわけではない……本当は人間と仲良くしたいと思っている。そうだろう!」 「デス? デスモンはビルとかいっぱい壊したくて人間界に来たんデスヨ……?」 「……」 「……」 「いや違うぞデスモン!! 君の本心は人間と仲良くなりたかったんだ!! 私は全て分かっているのだ!」 (押し通したー!?) 「デスモンは……本当は人間と仲良くなりたかったデス……?」 「おぅなんでぇ。そうだったんかいミツメチャンは恥ずかしがり屋さんなんだねぇ~! 実はそうじゃないかなぁ~と思ってたんだよぉ」 「これも全ては我々が住むデジタルワールドと人間界を脅かす巨悪、デジモンイレイザーの仕業に違いない!」 「デス? デジモンイレイザーって誰デス?」 「……」 「……」 「その答えこそデジモンイレイザーによる洗脳の紛れもない証拠なのである! そうであろうデスモン!!」 (また押し通したー!?) 「デスモンは……デジモンイレイザーに洗脳されてたデス……?」 「そりゃ悪いやつだねぇ~! デジモンイレイザーってやつぁ! ミツメチャンは本当は良い子なのにねぇ~」 「そもそも、彼は一貫して無人の建造物だけを攻撃し、人間を狙わなかった。 デスモンは心の奥底で洗脳に抵抗していたのだ! そうでなければなぜ人間を避けたというのだろうか!」 「デス? 人間って究極体だろうが殴って殺す野蛮人ってダークエリア友だちが言ってたデス。 デスモンも羽を片方やられたデス! 今も殺されそうデス! 人間恐ろしすぎるデスヨ! 攻撃なんかしたら絶対殺されてたデス!」 「……」 「……」 「そうか。そういうことなら理解できる」 (納得したー!? デジモンに人間ってどう思われてるんですか!?) 「デスモンは……やっぱり正しかったデス……?」 「一番怖いのは人間ってオチよくあるよねぇ~! あたしもツケ払え借金返せって言ってくる人間が恐ろしくてたまらんのよ」 「ともかく、デスモンは元来邪悪な存在というわけではない。  その証拠に邪悪なる者のせいで漆黒に染まったその体が変わる所を見れば、お前達も納得するだろう」 「デス?」 「……」 「……」 「さっさと体色を灰色に戻せ! デリートされたいのか!?」 (小声でめちゃくちゃ脅してるー!?) 「デスモンの身体は……灰色デス……」 「ミツメチャンの色が漂白されていくねぇ~。心が綺麗になっていくのが目に見えてわかるねぇ~。 こんな子をいじめようだなんて人間の心のほうが真っ黒なんじゃないかい! てめぇらの血は何色なんだい!」 「これで皆さんもお分かりいただけただろう。今回のことは不幸な事故のようなものであったと。全てはデジモンイレイザーこそが元凶なのだと」  ドゥフトモンの言う通り、デスモンの体が白っぽくなっていったのは確かで、その浄化と見間違うような演出に騙される者もいた。  この場に集まった者たちはデジモンに詳しくないものが大半であるため、こうだと断定的な強い口調で言い切られると反論しにくいというのもあった。  何より、この茶番劇の最中に、確保のためにデジ対や警察も駆けつけていたため、群衆たちも大人しくなっていたのである。 「デスモンのことはロイヤルナイツである私に任せてもらおう」 「わ、わかったよ……」 「デスモンが犯した罪は、人間のために働かせることで償わせるつもりだ。人間の組織と協力して作られる新たなる部隊でな。……誰にだってやり直す機会はある」  なぜだか峰子は、その最後の言葉はデスモンに向けてではなく、ドゥフトモン自身のために言っているように聞こえた。 「……デスモンは負けたのに助かるデス?」 「これからは私の部下として働いてもらうぞ。お前の持つ力は色々と便利だからな……」 「わかったデス! ドゥフトモン様デスデス!」 「ミツメチャン良かったね~!」 「チドリといったな。人間の賢者よ。お前にも私のもとで働いてもらう。その知恵を貸してもらうぞ。峰子も喜ぶだろう」 「わぁヘッドハンティングってやつだねぇ。そんなの初めてよ! 就職決まっちゃったぁ!」 (ドゥフトモン様、一体どのような部隊を作るつもりなのですか?) 「ああ、峰子それはだな……」 ・・・・・・  こうして、二大災厄事件は終わりを告げる。この事件の被害は決して小さいものではなかったが、それらの対処はドゥフトモンの役目ではない。  その後、政府組織にデスモン共々捕まり色々なことを話し合った。  ドゥフトモンは当初は正体を隠し裏から操るつもりだったのに大々的にロイヤルナイツと正体を明かしていたことに気づき悶絶したり、 そのおかげで人間たちからの信頼は得たものの、正体を世間に明かしてしまったがために調整などでも色々と苦労することになる。  それらの困難も峰子や協力者たちのおかげで全てを乗り越え、デジタルワールド治外法権という詭弁を用いた超法規的措置による部隊を設立することが出来た。  今後、二大災厄事件のような被害を出さないために新設される部隊では、擬似空間の展開を可能とするデジヴァイスVを基本装備とし配布することが決まる。  その実態は法的に扱いの難しいデジモン犯罪者たちを使ったドゥフトモン直属の私兵。  集められたのは、4人。  秋月影太郎――――執念によって一つの町を燃やしつくし、それでも飽き足らず世界を燃やそうとした男。  赤瀬ミサキ――――人間の望みを叶えるためにスピリットモドキを製造し、世界中に様々な混乱を招いた少女。  ポリノーシス――――かつての選ばれし子供でありながら、全世界首脳陣花粉症化計画を実行しかけた環境テロリスト。  ジョンードゥ――――東京を襲った災厄の片割れにして、とある組織の実験体。  そして、彼らの公式記録に残ることのない初任務は、リーダーである四季めもりを迎えに行くことであった。 「本当に彼ら全員を動かす必要があるのか? いくら珍しいデジモンを連れているからと言って過剰戦力では?」  警視庁から出向してきた彼らの監督役であるディンが、当然の疑問を口にする。 「そうだ。そのとおりだ。理性的に考えれば、な。私だってそう思う。だが私の勘はこう言っている。彼らにしか彼女は捕まえられない」  四季めもり――――二大災厄の片割れ。予測不可能の迷惑配信者。現在デジタルワールドで自撮り配信中。  彼女こそが、パンドラの箱。希望の詰まった災厄の箱。  開けばすべてを変えうる。そんな予感。  今のドゥフトモンはそれにすべてを賭けている。  馬鹿げているが、正気では勝てない敵がいる。ならば正気などいくらでも捨ててやろう。 「時間だな。デスモン、ゲートを開け!」 「ミツメチャン! 景気よくやっちゃってぇ~!」 「デスデスー! 次元をぶち壊すデスー!」 『エクスプロージョンアイ』の応用で、ダークエリアを通るデジタルゲートが開かれる。  通常のデジタルワールドと人間界を繋ぐゲートは察知されやすいが、冥界たるダークエリアを経由することでその探知は非常に難しくなると同時にどこへでも行くことが出来る。 「ドゥフトモン司令、ご命令を」  力こそが正義と信じる獣騎士が選んだ新たなる戦いはここから始まっていくのだろう。  人間の力は、未熟で愚かだ。だが、どんな力にも善悪はない。重要なのは、それを使いこなせるかどうかだ。  私ならば、その可能性に満ちた恐るべき力を正しく導ける。そのはずだ。 (ドゥフトモン様なら、きっと出来ますよ) 「……ああ。Bootleg Vacctineの諸君、出動せよ!」  デジモンイモゲンチャードゥフトモン外伝第3章『めもり』完 ドゥフトモン外伝ボーナストラック。  これはデスモンとスケイルモンとドゥフトモンがその持てる力のすべてをぶつけ合ったあとの話だ。  雪のように白い髪を持つ少女が、混乱に乗じてデジタルゲートから人間界へと乗り込んでいた。 「今の時代の町並みはこうなのだな」  黒いデスモンが現れるのは、来たる破滅の前触れに過ぎない。  それが証明されるのはもう少し先の話だが。 「水竜将軍オキグルモン。そして……私の鍛え上げた水竜軍団。人間界をどう凍てつかせようか」  リアルワールドは、新たなる脅威と戦うこととなる。  そして、デジタルワールドでも。 ・・・・・・ 「我が名は偉大なる木竜将軍ドラグーンヤンマモン!! このデジタルワールドを蹂躙する者の名よ!!」  砂埃を上げて走りくる巨体。そしてそれに続く幾多の虫デジモンの群れ。  かつてそこは小さな町だった。竜騎兵が通り過ぎた後には、道となった。建物や人々の残骸、土地は塵と化し、生き残ったものは一匹も居ない。  地面には破片やゴミが散乱し、所々に黒焦げの骸が点在している。  この町に住んでいたデジモン達は必死に戦いを挑んだが、どうしようもないほどの暴力に敗北した。  それらは全てを踏み潰し、なぎ倒し、奴の前にひれ伏せさせた。  勝利の余韻を味わうこともなく、彼らはただ前進し続ける。嵐の如く、すべてを飲み込みながら。 ・・・・・・ 「あー? 俺はネオデスジェネラルの……何だっけ? 忘れちまったがそのうち思い出すだろうよ。俺様はウォーティラノモンだ!! おい、お前らァ! メタルガルルモンの居場所知らねぇかぁ?」 「こちら偵察班! 正体不明のデジモンと遭遇! 指示を乞う!」 「知らねぇのか。じゃあ死ねや」  ゴールドデジゾイドでできたイージスドラモンの装甲を、その両腕の剣にてバターのように斬り捨てる赤き竜人。  ズバッ、ズババッ、と音を立てて切断される金属の塊が落下し、オイルの血飛沫が上がる。 「ハッ、つまんねえなぁ。強い相手じゃなきゃダセぇよな。まだやれんだろ?」   ・・・・・・  ぼろ切れの服装に包まれた一人の男が、息も絶え絶えに上司の元へとたどり着く。  全身傷だらけで、歩くたびに血がポタポタと垂れ落ちている。 「生きて帰ってきてくれたか! 例の物は!?」 「ええ……これが、デジモンイレイザーの情報の詰まったデータです……。必ず仲間の敵を……」  手に持つデータが入ったUSBメモリを差し出し、安堵したのか膝から崩れ落ちるように倒れ込む。 「たしかに受け取った……ガンコちゃんとのデートには遅れないで済みそうだ」 「は? ガンコ……ちゃん? あんたなにをいって……」 「……お前ごときがその名を呼ぶな!! 『グラトニーバイト』!!」  粒子に自身を変化させ、相手の内側から食い破る恐るべき必殺技が、哀れな男を消滅させた。  そして、その場にはもう上司も部下もおらず、意気揚々と愛しい相手との待ち合わせに向かう少女の姿だけがあった。 ・・・・・・  2つの世界を、様々な悪意と脅威が襲うようになるその時期に己の心に悩める乙女がいた。 『ひゃんっ』  チドリに突かれて可愛い声を上げるあの時のドゥフトモン様のことが、忘れられない。  だが、彼は私の命を救ってくれた。そして世界を救おうと頑張っているのを間近で見ている。  純粋な彼に対して、邪な気持ちを抱くなどあってはならない。 〈おやおや、知らないチャンネルが増えていると思えば、人間と繋がっているとはねぇ〉 (……頭の中に声が!? ドゥフトモン様じゃないですよね?) 〈なるほどね、ドゥフトモンが僕の『アイオブザゴーゴン』を受けたまま人間に憑依したことで、君とも個別にチャンネルが繋がったわけだ〉 (さ、さっきから私に話しかける貴方は一体誰なんです?) 〈僕は、グランドラクモン。ドゥフトモンの共犯者さ。そして、君のように悩める子を見るとお節介を焼きたくなる性分でね。君はドゥフトモンを汚したいんだね〉 (な、なんでそれを……) 〈いいんだよ。君は君がしたいことをしてもいいんだ。だって相手は人間じゃない。君が抱く罪悪感は人間に対する常識だ。ドゥフトモンに対しては適用されないよ〉 (で、でも……ドゥフトモン様は、世界を守るために……) 〈君には、チャンスが巡ってきたんだ。それを逃していいのかい? 僕の声じゃない。自分自身の声に従っていいんだ。 君が抱く闇は君の好きなドゥフトモンを飾り立てることになる。それってとっても素敵だと思わないかい?〉 (ええ、そうですね。とっても、綺麗……) 〈君はこれまでずっと欲望を押さえつけて生きてきたようだね。それも全てはこの出会いのためにあったんじゃないかな? これからはそれを解き放って良いんだよ。彼に対してはね〉 (そうなんですね。ふへへへ。なんだか心がスッキリとしてきました……) 〈うん、それはよかった。もう大丈夫みたいだね。君の心がそうやって健康でいてくれないと、彼も大変だろうからね!〉  こうして、高円寺峰子は、この日から抱え込んでいた欲望を抑えることを辞めることになる。  それがドゥフトモンに与えるものは良い影響なのだろうか。悪い影響なのだろうか。  どちらにせよ……大局に影響することはないはずだ。  で、あるならば過酷な業務の中で心を癒やすために、このような楽しみも許されるだろう。 〈さぁみんな、これからも僕を楽しませてくれ〉  ドゥフトモン外伝ボーナストラック完 おまけの解説。 以下の解説で語られてる設定はこの怪文書における設定です。各キャラクター公式による設定ではないのでご注意ください。 ■ドゥフトモン  アニメで初登場の珍しいデジモン。そのセイバーズで「力こそが正義と信じるデジモン」って言われてるんですね。  これが割と公式的に引き継がれてるみたいで策士キャラなのに根本が脳筋です。 「全部避けて一兆回突けば相手は死ぬ」なX抗体は脳筋過ぎます。  だからでしょうね。人間に対してずっと上から目線なんですよね。デジモンのが上だと思ってるんです。  森編でもキャラとしてそういう部分が事後処理に出ていたと思います。  自分が責任取れば良いと思ってる所や、偽妹(ムラタサトミ)への過保護さなんかは、愚かで未熟な人間に対して自分が導く者、上位存在で保護者であるという意識から来るものなのでしょう。  そういう部分がどう今後変わっていくのかが、BVシリーズにおけるドゥフトモンというキャラクターの見どころだと思いますね。  ところで、ドゥフトモンって、ヒューマンとビーストの2つの形態があって、それを切り替えて戦うんですけど、これってスライドエボリューションなんですよ。  X抗体は実質ダブルスピリットエボリューション。  だからスピリットエボリューションする三傑と出会うのは必然なんですよ。  森編からドゥフトモン公式さんの中のドゥフトモンがどんどん弱く可愛い存在になってて大汗を掻く。  ところでなんで俺がこんな話書いてるの? ■高円寺峰子  公務員になれるような人がヤバい奴になるには何らかのギミックが必要だろうということでグランドラクモンを使うことは最初から決めていました。  更に彼女にもただドゥフトモンの憑依者というだけでなく、ヒューマン形態においては自ら戦わねばならないという役割を与えました。  これによっていざという時の彼女の善性や勇気を描けると同時に、ドゥフトモンが自らBVに混じり戦いにいけない理由にもなります。  彼女の体が崩壊するのでだいたい3分しか戦えない(戦わなければ変身可能時間は長い)ためにドゥフトモンが戦うのはBVにとって切り札でありピンチでもあるのです。  人と獣が融合したX抗体版では二人の意思が噛み合いシンクロする必要があるでしょうが、その時はドゥフトモン一人でのX抗体時よりも強いでしょう。  過去描写などを勝手に書いてごめんなさぁい!! ■二大災厄事件  二大災厄事件とはこの怪文書の騒動のことであるが、二大災厄事件と呼ばれるようになるのはめもりちゃんがBVで暴れまわった後年のことである。  ちなみに、二大災厄の内訳は"天候の災厄"たるジョン-ドゥと、"混沌の災厄"たる四季めもりである。 ■デスモン  デスモンデス。  いっぱい建物壊してみたくて人間界に来たデス。  実は人間と友だちになりたかったみたいデス!  でも人間って怖いデスね。友だちのヴェノムヴァンデモンくんの同種がみんな殴られた※とか聞いたデス。  今はドゥフトモン様を御主人として直属のメイドとして働いているデス。 ※クロスウォーズのマサルダイモン客演回(他の主人公もでてる)。ヴェノムもベリアルも殴り倒したことでマサルダイモン伝説に新たな1ページが加わった。 「デスモンは……黒くなってもデータ種だったデス……?」  そもそも初登場時は黒でウィルス種。当然名前に(黒)もつかない。 「デスモンは……灰色になってもウィルス種だったデス……?」  黒に続いて出てきた灰色はデータ種としてカードで初登場したのだが……なぜか後で灰色ウィルス種のカードが出ている。 「デスモン(ウィルス種)は……どうなるんデス……?」  デジモン図鑑では先に登録されていた灰色からコピペされたためかデータ種しか存在しなくなっており、今後ウィルス種のデスモン(黒)の登場が危ぶまれる。  まぁデスモン事態そこまで出番がある方ではないが。 「バルバモンは……デスモンの材料じゃないデス?」  バルバモンの設定ではデスモンを操ると書かれてるがクロスローダーではデビモン⇔バルバモン⇔ファスコモンのデジクロスでのみデスモンを作れた。  出てくる作品で大体全部策謀の果てに乗っ取られたり失敗してる七大魔王のギャグ担当がバルバモンだしそういうことなのかな……。 参考映像:https://www.youtube.com/watch?v=yERlMyMLSbA&pp=ygUM44OH44K544Oi44Oz 「オマエたちのデジモンって醜くないデス?」  デスモンを選んだのはダークエリアに住んでいながらドゥフトモンと同じくフォームチェンジ持ちの二面性があるからです。  あとつぶらなお目々がかわいい。  バルバモンが操れるなら私でもデスモンを制御できる!!がドゥフトモンの考え。  大きさは可変。大きいほどデータを増やしてるので強くなるが、3~4メートル程度が現実世界での限界。  ドゥフトモンのメイドとなった後は、普段は小型サイズに容量落として暮らしてる。  戦術は空を飛びつつ連射効いて命中率も高い『デスアロー』と、DPSは『デスアロー』に劣るが一発の破壊力は上の『エクスプロージョンアイ』による空戦遠距離乱射型。  近づかれたら『グレイクロー』からの『デスアロー』。怪電波『デスウェーブ』で混乱もあるが、基本的に使わない。なぜなら自分で壊すほうが好きだから。  デスモンの基本設定に周りの凸凹を性格設定に取り入れた結果、あんまり自分がない何かすごく流されやすい子になった。  バルバモンに操られるとかはこの性格部分のせいだと思うことにする。  説得次第でウィルス種にもデータ種にも変化してしまう。  灰色のときは鋭いツッコミとかも入れて、実はこいつ結構頭いいんじゃないか?ってなるぐらいのキャラだと思う。  元大天使だし……まぁ読者投稿だし元ネタとか設定ないだろうけど無理やり当てはめるとサリエルなのかな……。  BVではダークエリアへのゲートを開けて行ってらっしゃいするお仕事。  ただぶっ壊すだけの任務ならデスモン送りつければ全部破壊し尽くすだろうが、性格がこれだから手元においてないと不安すぎるのでゲート開けの仕事のみ。  ついでに体色が黒くなってたら、何かわからないがこれからヤバいこと起きるな……という合図として機能する。  だらだら描いてるうちにエンシェントデスモンがデスデス言ってて冷や汗を掻く。  みんな考えること同じデスねー。 ■デスモンの性能  Vテイマー01と新デジカの狂ったデッキ破壊能力を主に参照。  ロイヤルナイツや七大魔王クラスとは直接対決したら劣るが、広域破壊能力にかけては上回る感じ。  Vテイマー01では初の究極体として戦ったが人間界へのゲートを無数に開けまくっていたが、後の究極体戦でゲート開けたのデーモン(超究極体)ぐらいだからデスモンの固有能力なのだろうと推測。  七大魔王クラスはゲート開けるの自由自在らしい(02のデーモンやリデジデコードとサイスルのバルバモンなど)のでデスモンもそれに匹敵してるのだろう。  天界の門を開く『ヘブンズ・ゲート』とかよくやってる天使型からの堕天組魔王なのも大きいのかもしれない。  セイバーズのゲームでデスウェーブって技あったらしいのでそれにアドコロのサウンドバードモンな性能も加える。  そうした結果、新世紀の新人なディージャン(混沌)モンのような性能になっていることに気付いた。見た目も結構にてるな……。  本来の性能とサイズでリアライズしてたらゴーストゲーム最終盤当たりに出てくるような奴基準の破壊神。デスモンが破壊神なのは破壊の伝搬にあると考えます。  ついでにアドコロ曰く黒いのでてきたってことはもっとヤバいのがでてくるという破滅の先触れらしいですね。  たぶんこの話はイモゲンチャー中盤ぐらいで、これから七大将軍が本格的に暴れ出す時期なのでそういう感じです。  なので、今後こいつが黒くなるということは、これから決戦が始まったり凄い敵がこれから出てくるぞという合図となるでしょう。  デスモンVS七大将軍は相手の軍団を『デスウェーブ』で暴れさせられそうだけど意思とか関係ないダークネスローダーを全員持ってる時点で不利。 『デスアロー』  手のひらについた目から放つ矢印状のエネルギー弾。着弾点で爆発したり相手の体に刺さったりする。  Vテイマー01では最初の一発でデジタルワールドと人間界をつなぐ次元の穴を作ってる。 『エクスプロージョンアイ』  デスモン最大破壊攻撃。目から放つ赤い光線。単発威力はこちらが上。DPSはデスアローのが上。  どうもデジモンスーパーランブル(韓国だけのネトゲ)でのモーション見ると撃つと頭がクラクラするらしい。 『グレイクロー』 『ブラッククロー』  体色で名前が変わる爪での格闘攻撃。 『デスウェーブ』  混乱させる技……らしい。  黒い歯車とか、Vテイマー01デーモンのデジモン凶暴化とか、アドコロのサウンドバードモンと同じような能力。  破壊神として盛った。 ■汚れた英雄  デジカのデスモンとケルビモン悪が写ってるカッコいいカード  ケルビモンはともかくデスモンも英雄だったんだ?  天使型時代のデスモンやデーモンもいずれはどこかででることがあるのだろうか。 ■世界の終わりを前に心躍らせるのは魔王と呼ばれるもの一切の宿命。  リアライズでリリスモンが言ってた概念。デジタルワールド消える瀬戸際でテンション上がって暴れ出した迷惑な奴ら。  バルバモンとデーモンの良く組んでるコンビは同時期に人間界侵攻してた。 ■唐橋チドリ(からはし ちどり)  本怪文書オリジナルキャラクター。  黙ってさえいれば手足の長いミステリアススレンダー美女だが口を開けば酔っ払い。酔って無くても酔っ払い。  女騎士(ドゥフトモン)と魔女(峰子)とPTを組むバッファーの踊り子をイメージ。  峰子の友だちの酔っ払いだったが、ドゥフトモンにより秘書になる。  パートナーとなったデスモンのことはミツメチャンと呼ぶ。  職業はダンサー引退してwebライター。  すごい適当に喋る。酔っ払いのおっちゃんの口調でよい。 「昨日な~、空を見たら雲がおにぎりの形しててよ。で、思ったんだわね。人生も同じで、形なんてど~でもいいんだなって。 大事なのは中身よ中身。わかる? つまりおにぎりの場合は具材、人生の場合は思い出ってわけよぉ! 当然あたしゃ鮭おにぎりよ」  でも時々、教養を見せることもある。  BVの物販とかも企画しブロマイドやアクリルキーホルダーなどグッズを売る。  金次第でBVの個人情報とかも売る。スパイか?  デジモンワールドのシェルモン新聞みたくイモゲンチャーで今週起きたことを面白おかしくまとめるデスモンニュースとかやりたい。  無理だ。 ■チドリとデスモンの役割  ドゥフトモンがBVの活動にどう各所に言い訳しようか頭を悩ませる。  何か色々あってうまくいく。  チドリが「なるほどねぇ~! つまりこういうことだったんだねぇ~!」とデストロイメタルシティの古参ファンぐらい都合のいい解釈する。  デスモンが「そうだったんデス? さすが御主人様デス!」と持ち上げる。  ドゥフトモンが「フッ……」とイエスともノーともつかない曖昧な顔をするギャグシーンがBV司令室のテンプレ。  シーズン1でアルナブ拾ったあとはきっとここに混ざってる。  森事変のときはロイヤルナイツが来たらその場のノリで手のひら返して 「つまりドゥフちゃんは嘘つきだったんだねぇ~駄目だよ嘘ついちゃ~」 「デジモンノクズデス」  こんなふうに場の雰囲気に飲まれ味方しない日和主義のゴマすり野郎と書いてデータ種な連中です。  愛媛の時はデスモンにデータを注いで隕石を破壊させる案もドゥフトモンは考えたが、こいつが抑制解除されて力持ったら、そのまま地球も破壊しようとしてくるので却下。  あと黒くなってたので何かこれからヤバいこと起こると気づいてたと思う。まさか愛媛が隕石になるとは誰も思わなかったろうが。 ■三傑  言わずとしれた歴戦の戦士たちだ!!  フェアリモン、シューツモン、アグニモンで構成される仲間たち。その正体は一般的には不明。この怪文書でも正体の名前には触れてません。  彼らは暴れるデジモンたちの前に真っ先に駆けつけ鎮圧します。  それで勝てない敵はデジ対や偉大戦隊などが駆けつけるまでの時間を稼ぐでしょう。  風のヒューマンスピリットとビーストスピリットの共闘という珍しい事態によって風を操ったことでの機動力と防衛に長けていると思われます。  とにかく戦闘経験が多いため、究極体だろうがサイズさえ小さければだいたい連携で抑え込めるでしょう。  時期的にこの直後ぐらいにヴリトラモン・ルインモードやオキグルモン様の水竜軍団と戦うことになるはずなのでデスモン相手に互角に渡り合えるレベルは必要でしょう。  乱入無ければ『デスウェーブ』使う暇を与えず一方的に攻め立てて勝てていた。 ■フェアリモン(久能ナヤム)  ケツばかり語られるけどおっぱいもかなり盛ってる。  図鑑設定にある蜃気楼だの大気操作だのフェアリモンの能力をフルに使いこなしていると推定しています。 ■アグニモン(東日蓮也)  炎を使って流れ弾を燃やしつくしたりとか、そういうことがめちゃくちゃ上手くなっている。  燃え広がるために街を守るには不向きな属性だが、風のダブルスピリットが仲間なお陰で範囲を絞ったり威力を上げたり出来ている。 ■シューツモン(霧沼貴緒)  フェアリモンと組んだ夢の風スピリット同士のコンビ。機動力と連携がおかしなことになっている。  やさぐれお姉さん好き。 ■オキグルモン  オキグルモン様が人間界来たの封印できなかったドゥフトモンを追ってきたのでしょう。  先に潜入工作をしていたニョイハゴロモンに連絡を取り人間に化け行動する最中に蓮也といろいろあるとかないとかそんな感じかな。  ドゥフトモンが大々的に正体を公表してしまって迂闊に手を出しづらい。  正体を隠しながら水竜軍団を呼び寄せ各地で破壊活動を行なう謎の少女オキが現れ始める。 ■対オキグルモン作戦  戦闘中に度々感じていたグランドラクモンの視線にオキグルモンが気付いてなかったことから、未来視にはかなりの集中力が必要と分析していたドゥフトモン。  デスモンの『デスウェーブ』によって相手だけ冷静さを失わせ能力を奪えば、あとはX抗体ならスペック上だしどうとでもなるからそのまま殺すという考え抜かれた脳筋作戦。  さらにクトネシリカがデジクロスによって生まれた武器であることを見抜いており、それも『デスウェーブ』で暴走させられないかと思っている。  だが、今回と同じく、人間とデジモンが融合している者には効かないように調整をしていたために、人とデジモンの要素を持つオキグルモンには通じずに失敗してしまう。  しかし、それによって蓮也に相手の正体を気づかせる切っ掛けとなってしまい……。 ■四季めもり  初期設定通り基本はデジタルワールドで配信しているとしています。  三傑と強敵の戦いによって次元に穴が開くと現れて、三傑の邪魔を何度もしているという設定にしています。  一通り暴れると都合よく開いてるゲートを通ってデジタルワールドに逃げるので現行犯では捕まりません。  頭の中には数字しかないので破壊衝動だの闘争心だの増幅されようと、元が0なので意味がないことにしました。  混沌の災厄。全てをBANする者。  ドゥフトモンにとっては予測全部外されたので、こいつこそ運命を破壊できる人間だと高評価でしょう。 ■スケイルモン レベル:成熟期 タイプ:幻竜型 属性:データ 必殺技:ルーラーオブトライアングル、リファレンスストリーム  聖なる力アルフォースに連なる力を持つと噂されているデジモン。  データ分析と活用に長けており、巻き尺のような形状をしたその舌を自在に伸ばして対象に巻き付け、そのデータをスキャンすることで、様々な能力を発揮する。  だが、その真の力が発揮されるためには、「注目度」を力に変えるため、多くのオーディエンスの存在が鍵となる。  そのため、戦闘中にライブ配信を行い、視聴者からの反応やコメントを求めることもある。  ライブ配信中の配信視聴者数や観客の熱気が増加するほど、スケイルモンの戦闘力は飛躍的に上昇するため、 時には、さらなる注目を集めるために、周囲を唆して事態をエスカレートさせるという。  必殺技は巻き尺型の舌、『スキャニングメジャー』で参照したデータを吸収し、口から放射する光帯の中に無数の弾幕を飛び交わす『リファレンスストリーム』。  注目度が高い状態のときは、完全体をも容易に葬るほどの威力となると言われている。  さらに、両腕に備えた三角定規型の武器で、攻防一体となったトリッキーな戦い方を見せる『ルーラーオブトライアングル』も強力。  という感じの設定で書きました。  実際の所は数字だけではなくパートナーの感情も読み取ってオーバーライトで自分の力に変えることの出来るデジモンだけど、めもりちゃんが数字が上がることしか喜ばないので、 それでしか上がらないというのが真相なのではないでしょうか。  技名は『ルーラーオブトライアングル』はトライアングルルーラーで三角定規そのまま。『スキャニングメジャー』はスキャンとテープメジャー(巻き尺)。 『リファレンスストリーム』はリファレンス(参照)とストリーミング配信。  これは勝手につけたやつなので公式設定ではないです。  ヌルスケイルモンの進化はワールド式のバケモンやスカルグレイモンへの死亡進化条件にアルフォースの再生能力の合せ技と思われる。  スケイルモンが自己強化の書き換えなら、0を司るヌルスケイルモンはスケイルモン時代より貧弱な代わりに相手にヌル参照入れてくデバフが強いタイプのデジモンだと思われるが、 めもりちゃんの都合でヌルスケイルモンで戦うこともなさそうなので真相は判明しないだろう。  ……と思ってたら、愛媛編で0参照させて分解消滅とかやってて予想があたったが、思ったよりやってることがすごくて大汗を掻く。  腕のノギスを万力代わりにして0になるとデバフかしら。 ■ジョン-ドゥ  デスモンと破壊衝動繋がりで出演、ついでに捕まるまでの話ももう俺が書いちゃえという欲張りセット。  冷静に見えるが『デスウェーブ』で暴走しています。喋らせすぎたかも。  アプモン使いだしせっかくなのでアプリドライブ持ちに。  それにしてもなんでデジモン殴ってくる人間がこんなに居るんだ。 ■ウェザドラモン  アプモンのアニメ見てだいたい能力把握しました  アニメだとAR空間内の天候しか操れないっぽいけど、気象予報システムに異常だして空港全急便止めてんのやばすぎだろ……。  そら……いつでも大災害ですね……。あと普通に喋れるけど敵になってる時「ウェザー」って鳴いてたよ。ポ◯モンね! ■ポリノーシス  改心後。言動は初出スレのポリノーシスっぽい発言を参考に。 「敵を倒すばかりが戦いの手段じゃない。仲間を増やすことが大事だと学んだ」とか、実は結構BVの根幹に居るキャラなんだと思うんですよ。  BVのサブリーダーは影さんだけどポリノーシスも結構そういうポジションなんじゃないかなぁ。  ジョンを止めるためにすみれさんあたりに交渉してフローラモンといっしょに出撃と思ったけどデスモンとウェザドラモン強すぎて無理だとボツ。  没セリフ:「フローラモンを連れてきてくれれば、なんとかしますよ。俺たちの防護服は特別性なんでね……」 初出とBV発足時あたりのポリノーシスっぽいレス 「世の中はそれができる奴の欲望で動いてるんだから相手に自分のしてほしいことをやってほしい時は相手に強い願望を植え付ければいい!俺たちにはそれが出来るんだ!」 「治療したいんじゃねェ。治療の必要のない世界がほしいんだ」 「俺いい医者知ってるよ」 ■詩虎ヨリオ&ベルゼブモン  デジ対も仕事してる描写と魔王ヤバい解説のためにご出演頂きました。  なんにもしないで帰るしかない役割でごめんなさぁい!! ■ガンコとニョロ  1章のオキグルモンに負けた時から時間全然立ってないんで当然デートしてます。 ■ネオデスジェネラル(七大将軍)の皆様  これから戦いがどんどんやばくなる演出のために最期ご出演していただきました。  全員、それぞれのキャラが定めれた運命を超えないと勝てない強敵だと思ってます。  ウォーティラノモンくんはイージスドラモン戦、勝てると思うけど負けそうな気もするから頑張って!! ■ディン  BVで一番苦労してるのこの人だと思う。  問題児共の最強の教育係。 ■オバちゃん  破壊を広げる破壊神としてのデスモンの恐ろしさ、彼の主張する人間怖いに対する説得力、そしてイモゲンチャーらしいあらゆる世界の要素が融合した感じを出すためにいつのまにか現れた強敵です。  かろうじてセイバーズ世界からの住人だと思われます。  デジモンを殴り倒せる「」イマーもそれなりに居る以上、デジモンと関わっていないが、戦えば殴り倒せるまだ見ぬ在野の強者はイモゲンチャー世界にはまだまだたくさん隠れていると思われます。  この野良のオバちゃんはそんな強者たちの氷山の一角に過ぎないのです。  こうして名も無き修羅であるオバちゃんと戦い消耗したドゥフトモン様は、ジョンやディンさんの存在、華蓮ちゃんをごく自然なものと受け入れたのでしょう。  また、ドゥフトモンにあった戦えば人間なんてどんな状態だろうと余裕で勝てると舐めてた部分がオバちゃんとの直接対決で考えを改めざるを得なくなりました。  この出会いは世界観とドゥフトモン様の人間に対する認識を改めるために必須な要素なのです。  などと言い訳しているうちに本当に必要だった気がしてきました。  なんだこのババァ!? ■Bootleg Vacctine  非正規ワクチン。  人間に対する条項は基本は峰子に任せてドゥフトモンは頷いてただけでしょう。  基本的にはロイヤルナイツ及びデジ対、警察、自衛隊などのまともな組織と違って火種が広がる前に刈り取ることを目的とした即応性の高い私兵ですが、 その真の目的は運命を良くも悪くも変えうる力を集めることでしょう。  後にBV1期のアルナブ絡みの事件後は資金に余裕ができたのか、部隊を分割して運用したり傭兵も雇うようになります。 ■BV専用ダークエリア移動  時空干渉能力の高いデスモンがダークエリアへのゲートを開き、そこからさらに人間界、デジタルワールド双方の好きな場所にゲートを開くことで行なう移動手段。  ダークエリアはデータが削除されたりデジモンが死んだら送られるデジタルワールドとはまた別のレイヤーに存在する場所。  故にデジモンが存在するならデジタルワールドでも人間界でもどこにでも繋がっているという理屈である。  これによってBVは作戦目的地への奇襲・増援を可能とする。  だが、ダークエリアを通るということは強力なデジモンと道中遭遇し消耗する可能性も高いということである。  書いてるうちにダークエリアが胡乱な場所になってて冷や汗を掻く。 ■デュナスモン  元は武器デジモンでメデューバルデュークモンの武器であるデュナスだったと思われる。  主君によって善悪を変えるというのも道具そのもの。  超クロスウォーズのラスボス、持つものは世界を支配するというアルマモンを武器としていたらしい。  更になぜか十闘士の力も使える設定考察のしがいがあるやつ。  この話には登場してない。 ■アルマモン  ヤンデレ。ゾーンを守るために全部デジモンを武器にする計画して、デュナスモンに封印されるが、死んだデュナスモンを復活させようとするぐらい愛が重い系ラスボス。  なおこいつを復活させたバルバモンは品がないとしてこいつの剣にされた。  七大魔王のオグドモンにぶっ刺さってるっぽい剣の設定とかあいつらも実は武器デジモンなんですかね?  オグドモンに刺さってるバルバモンとこいつが持ってる剣デザイン違いますが。  カードに封印されたデュナスモンをアルマモンが復活させに行くような話が見たい。  この話には登場してない。