ここは砂浜で行われている合同バーベキューの会場。肉を焼いていた千明遥希の目にある人物の姿が映った。 (あっ、千尋さんからチョコを貰ってた人だ… 皆が嫌がる様な雑用を率先して引き受けるなんて凄く良い人!さすが千尋さんの彼氏さんです) バレンタインでのやらかしが原因で雑用をやらされている三下慎平に対して盛大な勘違いをしている遥希が尊敬の眼差しを向ける。 (一体何なんだ…何か……すげー見られてるんだけど) ずっと視線を向けられている三下は 相手がこちらの方を向いた事に気付いた遥希は肉を数枚取り皿によそって三下の近くまで駆け寄った。 「お疲れ様です!えっと…こうして直接会うのは初めてですよね?はじめまして、千尋さんの彼氏さん!私、千明遥希って言います。 彼氏さん、お肉あんまり食べれてないですよね?良かったらどうぞ」 そう言って遥希は持って来た取り皿を三下に差し出した。 「待て待て千尋?彼氏?状況が全く読めん、何の事か説明してくれ」 「え?」 「え?」 ___________________ 互いに状況が飲み込めない二人は情報を開示し、事のあらましを整理した。 森の中で三下が灯導千尋からチョコを受け取っていた事。 そのチョコは差出人不明のもので千尋本人からのチョコではないという事。 そして千尋が三下にチョコを渡している現場に偶然居合わせた遥希は二人が付き合っていると誤解してしまった事。 おおよそまとまったところで… 「大変失礼しました!!私、とんでもない誤解を……」 遥希が深々と頭を下げる。 「そんなに頭を下げるなよ、周りが見てるだろ…」 周囲の目が気になる三下はどうにか宥めようとするが、そこへ… 「ちょっとちょっと、何してんの?ナンパ?こういうの良くないよ、少年」 灯導千尋が割って入った。 「何なんだよ、次から次へと…」 三下が頭を抱える。 「なぁアンタの口からこの人に説明してやってくれな…」 「この子、ボクの彼女なんで」 千尋は三下の台詞を遮る様に言い放ち、遥希の肩を持って抱き寄せた。 「だから違……」 「か、彼女!?……私が…千尋さんの…」 「お前も満更でも無さそうに顔赤らめてんじゃねーぞ、アホピンク」 「遥希?何か顔赤いけど大丈夫?熱中症かな…」 「いや、違うっすよ多分」 「で、結局少年くんは何が言いたかったんだい?」 こうして三下は同じ内容の話をもう一度する羽目になってしまった。 ___________________ 「いや〜、ごめんごめん。ボクの早とちりだったみたいで。遥希ってちょっとそそっかしいところがあるから心配でさ」 「それはまぁ…そうかもしれないっすけど」 いや、アンタもだよと三下は内心思ったが、また面倒な事になりそうなので黙っておく事にした。 「シンさん!さっきのお肉は冷めてしまったので新しいの持って来ました。食べてください!」 再び取り皿に肉をよそった遥希が戻って来る。 「ま、良い奴には違いないんじゃないっすかね。このアホピンク」 「でしょ〜!」 「なんで千尋さんが自慢気なんすか」 三下が突っこみを入れつつ取り皿を受け取ろうとすると、遥希が急に取り皿を下げた。 「?…どした?」 「シンさん、私の事またアホピンクって呼びましたね?」 千尋もあちゃ~と言いたげな表情をしている。 「よく見て下さい!ピンクなのは半分だけです!私はアホツートンですっ!」 「気にするとこそこかよ!?アホは良いのか!?」 「良いわけないじゃないですか!気が変わりました。このお肉は千尋さんにあげる事にします」 「ほんと?やったー」 「俺の肉………」 賑やかなバーベキュー大会はまだまだ続く。 そして… 「ねぇ、コカブテリモン」 「どうしたの?ヤエ」 「千尋さんと遥希さんが男の人と楽しそうに話してる。どっちかとお付き合いしてる人だったりするのかな?」 ここにも勘違いしている者がまた一人…