合同バーベキュー会場、その砂浜に設営された水着コンテストが行われるステージ裏手。 これから行われるコンテスト出場者にインタビューして回っている少女がいた。 濃い水色の髪に赤い目というちょっと目を引く出で立ちの彼女は安藤イヴと名乗っていた。 どうやら舞台裏の様子を配信中らしい。 「ありがとうございましたー!それじゃあ次は……っと?」 黒髪碧眼の少女へのインタビューを終えたイヴに近づいてくる女の子がいた。 小学生の低学年ぐらいだろうか、イヴに比べるとずいぶんと背が低い。 フリル付きの真っ白いなワンピースの水着を着ている。 「あら、あなたもコンテストの出場者なの?」 「はい、そうです……安藤イヴさん、ですね?」 その女の子は水色というより白に近い髪色で、、イヴと同じように赤い目をしていた。 「あれ、私のこと知ってるんです?リスナーの方ですか?」 イヴの言葉に女の子はコクリと頷いた。たちまちイヴの顔に喜色が広がる。 「お姉さんの配信はいつも見てます。この前のロードナイト村の配信、とてもよかったです。」 「ありがとう!リスナーの方とお話できるなんて嬉しいです!」 「あの……イヴさん。」下からまっすぐにイヴの顔を見上げる女の子。 「はい、何ですか?」イヴはまっすぐに女の子のほうを見る。 「……わたしには無理だったけど、きっとあなたなら幸せにしてあげられると思うから。」 赤い目と赤い目が引き合うように見つめ合う。 「押し付けちゃってごめんなさい。それと、ありがとう。」 「?……どういたしまして、こちらこそ。」 端から見るとまるで意味がわからない発言に、それを理解しているのかしていないのかまるで不明な返しをするイヴ。 「そういえばあなたの名前をまだ聞いていませんでしたね。お名前を……」 「イチカさんー!インタビュー終わりましたの―?」 「!?」突如聞こえてきた声に女の子が反応してそちらを振り向く。 見れば、先程インタビューを受けていた少女に向かって駆け寄ってくる女子高生と思しき姿があった。 「虚空蔵お姉様!ええ、先程終わりましたわ。」 どうやら呼ばれたのは黒髪の少女のようだ。 「……まぎらわしい。わたしと同じ名前なんて。」 「じゃあ、あなたのお名前ってもしかして?」 ハンディカムを向けられて女の子が答える。 「いちか。名張一華っていいます。」女の子は右手をやや上に向けて差し出す。 「よろしくね、一華さん!」ハンディカムを左手に持ち替えてイヴは握手に応じた。 「あーっ、名張主任じゃないですか!主任もコンテスト出るんですか?」 迷彩柄ビキニパンツの若い男が手を振りながら駆け寄ってきた。 「そりゃそうだよ。開発主任のわたしを差し置いて部隊全員で出るなんてずるいじゃん。」 少し離れたところには同じ迷彩柄ビキニパンツの筋骨たくましい男たちが20人程集まっていた。 おそらくあれが噂に聞く、今回コンテストに特別参加する自衛隊デジモン部隊なのだろう。 「それじゃイヴさん。」年格好の割にはややごつい指先に込められる力が少し強くなる。 「何かあったら呼んでね。わたし……わたしたちが、助けに行くから。」 そう言うと彼女は手をほどいて男たちの方へと歩き出した。 「じゃあ、またね。」 「またあおうね、一華さん!」ファインダーで彼女の姿を追いながら手を振っていると、突然画面が真っ白になった。 「わっ……?」気づけばレンズのすぐ前にゴースモンがいた。 一華のパートナーデジモンと思われるその姿は通常のゴースモンと違い真っ白で目の部分だけが赤かった。 「はじめまして〜。アチシはゴースモン、ヨロシク〜、って見りゃわかるわよね。」 一華の幼さを感じるたどたどしい口調に対してこちらはギャルっぽさ全開である。 「はい、よろしくですゴースモンさん!」 「ま、こんな感じじゃ伝わんないわよね……安藤イヴよ。」 突然ゴースモンの口調が厳かなものに変わる。 「はい?」それに対してイヴの様子はまるで変わらず動じていないようである。 「新たなる天の巫女、次なる古の魔女たるあなたの誕生を、我々歴代の魔女は先代ともども祝福いたします。」 「……」 「先代もあのように申しております故、我ら歴代の魔女は貴方様の力となることを約束いたしましょう。」 「……はい、ありがとうございます!」 笑顔で固定されたかのようなその表情からは、ゴースモンの言葉を真に理解できているのか判断できない。 後ろに控えるジェットメカタマモンは何も言わずに右往左往している。 「じゃアチシが言いたかったのはそんだけだから。じゃーねー。」 ギャル口調に戻ったゴースモンは一華たちのほうへと飛んでいった。 「……じゃあ次はあの自衛隊の人たちにインタビューしよっか!行こう、ジェットメカタマモン!」 パートナーの気苦労を知ってか知らずか。そう言うと彼女はマッスル自衛官軍団の方へと駆け出していった。