「な、なんだ……！？」

慌てて顔に張り付いたそれを引っ剥がすと、どうやら白い帽子のようだった。海をイメージさせる、錨をモチーフにした装飾が施されている。セーラーベレー帽のような形をしている。
先程まで誰かが被っていたのだろう。ほんのり温かく、シャンプーの残り香だろうか、良い匂いがした。

「待って〜！　私の帽子〜！」

どこか見覚えがあるような帽子を手に佇んでいると、恐らくは持ち主であろう声がこちらへと近寄ってくる。
テレビ越しに聴いた覚えのあるその声は──

「あ！」

──そうだ、ヴィブロスだ。
彼女はぱあっと顔を輝かせて、女の子走りでこちらへと駆け寄って来る。
僕は、彼女に帽子を渡そうと──

「拾ってくれたんだー！　ありがと〜❤︎」
「っ！？」

──抱き締められて、頬擦りされた。彼女の腕に包まれて、身体が浮く。
ヴィブロスが甘えん坊で、親しい人には距離感が近いウマ娘であることはメディアでも知れ渡っている。しかし、初対面の僕にもここまでするのだろうか……？

「ん〜……ちゅっ❤︎ ありがとね、お姉ちゃんを助けてくれて❤︎」

さらにはほっぺにキスまで。
とても良い匂いで、柔らかな感触で──これは、夢なのだろうか？
僕は自分のほっぺを抓ろうとして、気付いた。

「……あれ……？」

視界に入る僕の手が、小さくて、丸みを帯びて、プニプニになっている。

「ふふ〜❤︎ 出来た妹がいて、おねえちゃん幸せ❤︎」

それに、なんだかヴィブロスがとても大きく見えるような気がする。僕の身長は平均的な成人男性のそれと同じだから、いくらウマ娘の力で抱き上げられてるといっても、彼女の腕の中にすっぽりと収まってしまうのはおかしい筈だ。
そして、お姉ちゃん？　彼女は確か、末っ子だったような。
さらに聞き逃せないのは、

「いも、おと……？」

何だか舌がうまく回らない。声も高くて、まるで幼児みたいな。

「うん❤︎ おねえちゃん、あなたがトレセンに来る日がとっても楽しみ❤︎ 一緒に三女神様にお祈りしようね❤︎」

ヴィブロスが僕を抱き上げまま、三女神像へと向き直る。
僕は訳がわからなくて、彼女の腕の中で──噴水の水面に反射された、自分の姿を見てしまった。

「……え？……ぼく……おんなの、こ……？」

そこにいたのは、ヴィブロスをそのまま縮めたようなとても幼いウマ娘。
髪の色はシュヴァルグランと同じ色。丸みを帯びた輪郭にくりっと大きな瞳。まだ小さいながらもヴィブロスとヴィルシーナによく似た面影があり、将来的には美人になることが約束されたような顔をしている。

「？　そうだよ？　私の、大事な妹❤︎」
「……なんで……なにが、起きて……？」

どうして？
さっきまで僕は、確かにここで三女神像にお祈りをしていた筈だ。
ヴィルシーナお姉ちゃんやシュヴァルお姉ちゃん、ヴィブロスお姉ちゃんみたいな凄いウマ娘になって──！？

「え、あれ……？」

僕は、ヒトの男として生まれた筈だ。中央のトレーナーを目指して頑張っている真っ最中だ。
なのに──思い浮かぶのは、パパやママ、お姉ちゃんたちの顔ばかり。

「ん〜？　おねむになっちゃった？　パパとママのところに戻る？」
「あう、ぼく……その……！」

ヴィブロスに、事情を説明しなければならない。
なのに、言葉が出て来ない。ヴィブロスお姉ちゃんに見つめられて、色んな感情がごちゃ混ぜに渋滞を起こして、わからなくなっちゃう。
色々と考えているのに言葉にしようとするとモヤモヤになって霧散して──まるで、幼児としての言動を、強制されているかのような。

「それじゃ、帰る前に三女神様に一緒にお祈りしよっか❤︎」
「あぅ……！」

ヴィブロスが僕の手を取って、手のひらを合わせる。
三女神様の像と向き合わされて、ぼくは──

（……うん！　いつかおねえちゃんたちといっしょに……！）

──自分でも知らない、胸の高鳴りが、込み上げてきた。
そして、ヴィブロスお姉ちゃんに抱きしめられている幸福感。柔らかくて温かくて、良い匂いに目がとろんと蕩けてしまう。

（……ちがう、ちがう！　こんなの、おかしいのに……！）

でも、言葉にできない。

「じゃあ、また来ますね三女神様！」

ヴィブロスお姉ちゃんがペコリと頭を下げる。
ぼくも釣られてあたまを下げる。
そうしないといけないような、気がしたから。

「じゃあ、今日はお家に帰ろっか。美味しいご飯が待ってるよ❤︎」
「うん！」

ヴィブロスお姉ちゃんに抱っこされて、三女神像が遠ざかっていく。
まぶたが、おもくなっていく。ダメだ、ぼくは、ウマ娘じゃないのに──

「……」

お姉ちゃんに抱っこされてお家に帰るぼくを、三女神さまたちの像は、いつまでも見守っていた。

妹にされたい

やっぱりこのTSの仕方はホラーだよ！！！！

ここ数日で色んなパターンのTSがわっと浴びせられて…

テラ
恐怖ァ…

いっそここまで改変された方が幸せかも…意識そのまま中に閉じ込められてはいさいならされたやつが1番怖かった

>いっそここまで改変された方が幸せかも…意識そのまま中に閉じ込められてはいさいならされたやつが1番怖かった
コレも妹にされて幼児としての思考が混ざってるけど基本は成人男性だよ

>>いっそここまで改変された方が幸せかも…意識そのまま中に閉じ込められてはいさいならされたやつが1番怖かった
>コレも妹にされて幼児としての思考が混ざってるけど基本は成人男性だよ
えっ？あっ…あ…

元の家族はどうなるんだろうなぁ

>元の家族はどうなるんだろうなぁ
え？元からうちには息子なんていませんでしたよ？か
え？うちの息子は普通に今もトレーナー目指して頑張っていますけど？か
三女神様の気分次第

羨ましい

>>元の家族はどうなるんだろうなぁ
>え？元からうちには息子なんていませんでしたよ？か
>え？うちの息子は普通に今もトレーナー目指して頑張っていますけど？か
>三女神様の気分次第
前者も辛いけど後者は代わりに収まる誰かとかあるからもっときつそう

自我は元の男のままだけど幼女としての振る舞いしかできなくなっちゃうのいいよね…

まあマジックでウマ娘にされてそのまま返されるよりはいいか！

そのうち歩いてるだけで変えられそう

>まあマジックでウマ娘にされてそのまま返されるよりはいいか！
あの後ちゃんと貯蓄全部食い潰して身体ボロボロになってから本物のクラちゃんに拾われたからセーフ！

>>まあマジックでウマ娘にされてそのまま返されるよりはいいか！
>あの後ちゃんと貯蓄全部食い潰して身体ボロボロになってから本物のクラちゃんに拾われたからセーフ！
過程がお辛すぎるのよ…

たまに見るけど大体被害者可哀そうじゃない…？

クラちゃんのやつそのうち続き書きたい気もするしあそこで終わっといていい気もする

妹にされるのは割と見るけど姉になるのはあんまり見ないな

>たまに見るけど大体被害者可哀そうじゃない…？
ウマ娘になってる時点で最高じゃない？

>クラちゃんのやつそのうち続き書きたい気もするしあそこで終わっといていい気もする
続いて欲しいな…

ダイスで抵抗出来てたのってレアケースだったんだな…

幸せな妹ちゃん