二次元裏@ふたば

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708290 B24/05/25(土)23:31:14No.1193210386+ 00:57頃消えます
1週間悩んでようやく完成したので初投稿です
お借りした方々
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このスレは古いので、もうすぐ消えます。
124/05/25(土)23:31:39No.1193210537+
夕暮れ。
デジタルワールドにも日の入り日の出の概念があり、天候や季節の概念もまたある。それは現実世界とも変わらないようだ。
茜色に染まった森の中を、何となく歩いていた真菜は、そんな取り止めのないことを考えていた。
森の中にももちろんデジモンはいるが、仲間たちのうち腕っぷしの強い者たちが果敢に撃退したところで、森はひと時の静粛さを漂わせていた。仲間達は戦闘の恐慌から落ち着きを取り戻し、夕飯の用意をしているところだ。旅を続けるには生きなければならない。食は目下最重要事項である。
そんな中で、真菜が何をしているかというと、何のことはなく、一人になりたくてこうして歩いているだけだ。たまには一人もいいものだ。
もちろん、手伝いをするのはやぶさかではないし、実際にしてきた。ともあれ当番でもないとやる作業は限られてくるので、夕飯ができるまで手持ち無沙汰になるのである。だからちょっとした散策を考えたわけだ。シードラモンは近くの川を泳ぐと言って少し離れている。それが彼女なりに、一人になりたいという真菜の真意を汲んだゆえの行動であると察するに容易かった。気遣いの聞く相棒に感謝だ。
224/05/25(土)23:32:12No.1193210733+
デジタルワールドに転移して、シードラモンと出会って、仲間達と合流して───思えば、こんなにのどかなひと時を過ごしているのは初めてかもしれない。そう思いながら真菜はブラブラと歩く。
足の怪我のことも、水泳のことも、元の世界のことも。こんな長閑な森の風景を見ていれば小さなことのように見えてくる。いや、小さくはないのだけど。ただ気は楽になるのだ。

折り返して戻るところ、ふと真菜が視線を向けた先。草むらの影の少し大きめな木の枝に、ダランとぶら下がる人の手。一瞬びっくりしたが、それが見知った相手だとわかると、少しだけ安堵する自分に気づいた。
共に旅をしている同い年の少年。三上竜馬だ。
324/05/25(土)23:33:07No.1193211054+
真菜と竜馬はそれほど仲が悪くもなければ、よくもない。とどのつまり絡みがあまりない相手だ。というのも、真菜は社交的であるのだが、竜馬の方がむっつりとした表情の寡黙な男の子で、あまり人付き合いを得意としていない傾向があったからだ。
竜馬に関わるのも、いつも共に戦っているクロウや三下たちといった前衛の仲間たちや、彼を兄貴分として慕っている節のある勇太やシンラ(なぜだか彼は妙に年下に懐かれるのだ)くらいのものだ。あ、そういえばテルコちゃんとも仲良しだっけ。彼の独特の交友関係に想いを馳せながら、真菜は竜馬が眠る木の根元にそっと座り込み、少年を見上げた。
普段の険しい彼の顔からは想像できないほど、安心したような寝顔。あどけない子供のようだ。真菜は新鮮な気持ちだった。珍しいものもあるものだ。
仲間内でも竜馬は積極的に見張りを引き受けることが多く、クロウたちと比べても関わりが薄い真菜は、竜馬が休息を取る姿を見た覚えがなかった。そうでなくても、こんなに緩んだ竜馬の顔を見たのは初めてだ。
424/05/25(土)23:34:05No.1193211408+
珍しい光景をしげしげと眺めていると、後ろの草むらが音を立てた。驚いて振り向くと、大きな影が姿を現した。
「あれ?真菜じゃないか。珍しいね。一人?」
「…トリケラモン」
噂をすれば影がさすというか、竜馬の相棒トリケラモンと鉢合わせしたのだ。

「今のうちにこの辺の薬草採ってこようと思ってね。オイラ薬草や美味しい植物には詳しいんだ。」
「すごいね。みんな怪我した時助かるよ。」
「だろー!」
相棒の竜馬とは真逆の人当たりで、隣に座ったトリケラモンとのんびりと談笑する。竜馬よりも、ともすればシードラモンよりも呑気で柔らかい物腰の彼だが、その実シードラモンよりも強い完全体デジモンで、仲間内の中でも最強戦力の一角というのだから驚きだ。のんびりとした口調からは、とてもそんな猛者には見えない。せいぜいかわいいお兄さん、みたいなもののように感じる。
524/05/25(土)23:34:38No.1193211602+
薬草採りに出ていたトリケラモンは、どうも連戦と夜警で疲れていたらしい竜馬を無理やり良い含めて、寝かせていたのだという。
「この木ならデカくて並のデジモンじゃ倒せないだろうし、倒せるような奴が来たらオイラがすぐわかるからね。」
「…トリケラモンはパートナー想いだね。」
「おうともさ!竜馬はオイラの大事な相棒だからね!元気でいて欲しいんだ!」
屈託ない気遣いの言葉が眩しい。シードラモンも自分に対して(ある意味過保護なくらい)優しいが、トリケラモンもまた竜馬に優しい。
「パートナーデジモンはみんなこんな感じなんだけど、竜馬って普段からしてアレだろ?オイラもう危なっかしくて見てられないからね。」
624/05/25(土)23:35:14No.1193211830+
危なっかしい。頼もしいとはよく聞く竜馬評だが、これは初耳だ。目を丸くした真菜の様子を見て、トリケラモンは続ける。
「竜馬は自分がそんなに好きじゃないみたいなんだ。だから自分を大事にしないことが多くてね。危ない目に何度もあってる。パートナーとしてはいつも助け合ってるけどそれはそれで心配なんだ、オイラ。」
「…あー。何となくそんな気はする。」「だろー?」
なんとなく話を合わせたところもあったが、割と腑に落ちるところも真菜にはあった。何でいつも危険な戦いに率先して参加するのか。何でいつも誰よりも動くのか。自分を大事にしないとは、言い得て妙だった。
「オイラと一緒に頑張ってくれるのは良いけど、無茶はして欲しくないしさ。だからこうしてお休みしてもらってたってわけ。」
「…ふふっ。トリケラモンったらお父さんみたいだね。」
「お父さん?人間で言うジジモンみたいな奴かな。えへへ!オイラそんなに頼もしく見える?」
「見える見える。私のパートナーのシードラモンくらい。」
「そいつは光栄だな!」
724/05/25(土)23:35:51No.1193212040+
トリケラモンとのおしゃべりは楽しくて、時間を忘れるようだった。気づいたら日は大きく傾き、夜の帳が下りつつある。ふとトリケラモンに向き直ると、神妙な面持ちで真菜を見つめていた。大きな丸い瞳が、真摯に真菜を見つめている。
「ここだけの話、真菜にお願いがあるんだ。」
「お願い?どうしたの改まって。」
「こんなことお願いするのも変かもしれないけど、真菜にも竜馬をよく見ていてあげて欲しいんだ。」
「…私が?」
不意にされたお願いに、真菜は目を丸くした。竜馬とさして関わりのない自分に、わざわざ彼のパートナーがお願いしてきている。
「真菜はよく周りを見ているから。オイラや他のみんなだけじゃ足りないところはどうしたってある。そんな状況でも竜馬はお構いなしに突き進んじゃうんだ。オイラのトライホーンアタックみたいに。そうなると大変だからね。真菜にもお願いしたいんだ。仲間として。勝手なお願いだとわかってるけども。」
それはトリケラモンの、竜馬だけでなく真菜にも向けた強い信頼の証だった。よく見ているのは貴方もじゃない。真菜はトリケラモンの誠実さに照れくさくなり、少しだけ笑みが溢れた。
824/05/25(土)23:36:33No.1193212302+
「いいよ。三上くんは私も見張っててあげる。」
「ありがとう〜!真菜はとっても良い人だね!」
「そんな。貴方の思ってるほどじゃないよ。」
「うんにゃ。オイラ見る目はあるからね。真菜はとっても良い人だ。見込んだ通りだよ!…あっ!そろそろご飯ができたみたいだよ!オイラ薬草を持っていくから、よかったら真菜は竜馬を起こしてくれるかい?」
大きな背負いカゴの中に詰めた薬草の山を背負い直し、トリケラモンは大きな体をよっこいしょと起こした。
「うん。わかった。薬草重そうだね。」
「なんのなんの!オイラ力には自信あるんだ。」
朗らかに返すと、トリケラモンはのっしのっしと歩いて行ってしまった。その小山のような後ろ姿を眺めながら、少しだけ微笑みつつ一言。
「…、だそうだよ。三上くん」
私でも、起きてたことくらいわかるんだよ。
924/05/25(土)23:37:08No.1193212541+
頭を掻きつつも憮然とした表情でむっくりと起き上がった竜馬は、バツが悪そうに口を開いた。意図せぬタイミングで目が覚めてしまい、そのまま狸寝入りを決め込んでいたのだろう。つまり先ほどの話も聞いてしまっているわけだ。
「…うちのトリケラモンがすまない」
「ううん。良い子だったよ。パートナー想いだね。感謝した方がいいよ。三上くん。」
「…善処するよ」
「ふふっ」
自分のパートナーが同年代の女の子にあれこれと話してしまったのが照れ臭い。男の子の考えることだ。真菜にはよくわかった。気難しそうな少年が見せた年相応の照れ隠しだ。微笑ましい。思わず笑みが溢れる。
「…何?」
「んーん?なんでもないよ。…私、頼まれちゃったなぁ。」
「…本気にしなくていいよ。」
憮然と言い放つ竜馬。ここで真菜に少しだけいたずら心が芽生えたのは、彼があまりにもいじらしかったからだ。
1024/05/25(土)23:37:51No.1193212798+
「そうはいきません。かわいいトリケラモンの頼みだもの。ちゃーんと見ててあげるからね。キミのこと。」
「…見てて面白くないと思うよ。こんな奴。」
「そんなことないよ。実際、見てて飽きないもの、キミ。」
「…魚澄さんってそんな性格だったっけ?」
「そうだよー?私もキミのこともっと知っていくつもりだから、三上くんもね。」
「…。」
ついに黙りこくってしまった竜馬をおかしそうに笑いながら、真菜は立ち上がった。仲間達の元に戻る。何のことはないが、今回はそれに動作をもう一つ。
振り向いて、木から降りた竜馬を見つめて一言。
「一緒に行こっか。三上くん。」
行きは一人だったが、帰りは二人だ。不思議な取り合わせの二人は、そのまま仲間達の元に帰るために歩き出した。
たまには二人も良いものだ。
1124/05/25(土)23:39:25No.1193213338+
以上になります。
「」゛「」゛!「」゛「」゛!勝手にキャラお借りしてごめんなさぁい!!
竜真菜描くつもりだったのに大半トリ真菜でごめんなさぁい!!
シードラモン出せなくてごめんなさぁい!!!
この分は私と冨岡義勇(究極体)が責任をとって腹を切ります
1224/05/25(土)23:41:17No.1193214000そうだねx3
ちゃんと自分も責任を取ろうとする「」初めて見た
1324/05/25(土)23:42:05No.1193214283+
俺は責任はないので失礼する
1424/05/25(土)23:44:31No.1193215121+
>俺は責任はないので失礼する
おい待てェ
責任もって真奈竜見届けろ
1524/05/25(土)23:44:55No.1193215291そうだねx3
ついでに言いますがクロ真菜怪文書様とバッティングしたのは偶然です!!意図はありません!事故です!!本当です!!信じてください!!
嘘だったら私と冨岡義勇(究極体)が腹を切ります
1624/05/25(土)23:47:36No.1193216206+
竜馬を悪戯っぽく翻弄する真菜ちゃんいいよね…
1724/05/25(土)23:48:06No.1193216359+
「」イマーに優しい少女は存在したんだ!
1824/05/25(土)23:50:55No.1193217340そうだねx1
>(究極体)
の圧がすごくて変な笑い出ちゃう
1924/05/25(土)23:52:20No.1193217833+
戦闘だと頼れる竜馬でも女の子相手だと手玉に取られちゃうんだな…
2024/05/25(土)23:53:17No.1193218190そうだねx2
>事故です!!
えっ自分の書いたの併せて1日に二度も真菜CP接種できるんですかナイス事故!!!
2124/05/25(土)23:54:49No.1193218749+
トリケラモンは本当にいい奴だなぁ…
2224/05/25(土)23:55:51No.1193219094そうだねx2
竜真菜をありがとうございます!嬉しい…うおっ力作…
真菜とトリケラモンのやわっこい空気感のある会話が大変微笑ましくて好きです…
>行きは一人だったが、帰りは二人だ。不思議な取り合わせの二人は、そのまま仲間達の元に帰るために歩き出した。
>たまには二人も良いものだ。
キテル…
2324/05/25(土)23:56:29No.1193219306そうだねx1
>>事故です!!
>えっ自分の書いたの併せて1日に二度も真菜CP接種できるんですかナイス事故!!!
うわーっ!!!恐れ入ります!!
私も拝読しましたが良いですねクロ真菜…王道…
2424/05/26(日)00:10:51No.1193224813+
>竜真菜をありがとうございます!嬉しい…うおっ力作…
>真菜とトリケラモンのやわっこい空気感のある会話が大変微笑ましくて好きです…
>>行きは一人だったが、帰りは二人だ。不思議な取り合わせの二人は、そのまま仲間達の元に帰るために歩き出した。
>>たまには二人も良いものだ。
>キテル…
ありがとうございます!!
突貫で描き切ったので変なところがないかちょっと心配でした!!


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