「いや、しかし…もしも、負ければ…」
普段と違う、うろたえた弱弱しい視線が少女を見る。
負ければどんな苦痛が与えられるか、少年はその苦痛と恐怖を昨日の事のように思い出せた。
「…うん、わかってるつもり。
　でも、それでも私はあなたに戦ってほしくないの。
　とにかく藤木君は休んでいて。
　とてもデュエルなんてできる状態に見えないもの」

◆
黙々とデュエルを進める葵の姿を、遊作は座ったまま憔悴した表情のまま見ていた。
自分が立ち向かうべき戦いを肩代わりしてもらっていながら、遊作はいつ少女が悲鳴を上げるかと、気が気ではなかった。恐ろしくてたまらなかった。
VRゴーグルを用いて行われるデュエルの様子は外部からはわからない。
だが、時折逡巡する様子を見せる以外、栗毛の少女の姿に異変は見受けられず、少なくとも彼女があの拷問を受けていないことは確かなようだった。
十分ほどたっただろうか、やがて少女はふうと息を吐く。
首元のネクタイを緩め、ワイシャツのボタンを一つ外す。
「大丈夫よ藤木君、順調に進んでるわ」
励ますようにそう声を掛けられ、遊作はうろたえた。
何と言えばいいかわからなかった。
「…ああ」
「大丈夫」

◆　
悲鳴が上がったのは、さらに30分ほど過ぎた時だった。
装置の作動するカチリという音が響いて──その瞬間、反射的に遊作は頭を両手で庇っていた──そしておぞましい電撃の音が響いて、最後に少女の高い叫び声が上がる。
「きゃ、あ、ああああーーーっ！！」
断続的に電流を浴びせられ、少女の身体がのたうつ。
ひ、と遊作の口からも怯えた声が漏れた。耳を塞ぎ、必死で身を縮めてうずくまる。
彼女の体感している痛みも苦痛も自分の事のように感じられた。
今はそれを仲間に押し付けて自分は隅で縮こまっているのに、安全に守られているのに、汗が噴き出て気が遠くなる。
やがて電流の音と悲鳴の二重奏が止み、財前葵はぐったりとうなだれた。
拷問を受けた荒い呼吸の音だけが部屋に響いて、それ以外には何も聞こえない。
大丈夫か、もう十分だ、ここからは自分がやる──そう言うべきなのに、遊作の口からはただ乾いた吐息だけが漏れた。
自分はあの時とは違うはずなのに。運命に復讐する力を得たはずなのに。

結局数分経った後に──遊作が何も言えないでいるうちに──財前葵は再び身を起こした。
「ごめん、驚かせた、かしら…。　
　私…初めてだったから…。
　でも、このくらい、平気…」
幾分か落ち着いた呼吸を取り戻し少女は、再びデュエルディスクを操作する。
「次は…勝てるわ。ちょっと読み間違えただけ…」
無理だと思った。
一度この罰を受ければ、それ以降のデュエルを平常心で行うことはもはやできない。
電撃への恐怖が思考を縛り、思い通りに戦うことができなくなり、それどころか呼吸すらままならなくなり、それが次の敗北を引き起こし、その痛みがまたより強い恐怖を招き──。
その負の連鎖には決して打ち勝つことができないのだ。
「大丈夫…。
　美優ちゃんだって…藤木くんだって…」
今度の声は、むしろ自分に言い聞かせるかのようだった。

◆
しかしその後も財前葵の奮闘を見続けている間に、遊作は自分と彼女との違いに気づいた。
デュエルの最中、一瞬手が止まっても──即ち電撃を浴びせられるか浴びせられないかと言う瀬戸際の判断を迫られても──彼女は逃げ出したがる様子を見せない。
歯を食いしばって決断を下す。
つまり、彼女は自分と異なり恐怖に屈しないのだ。
それは単に彼女には未だ恐怖が強く刻まれていないからかもしれない。
あるいは当時の自分たちと今の彼女の年齢の違いかもしれない。
それとも天性の勝ち気な性格がそうさせているのかもしれない。
しかしいずれにせよ、彼女は自分が満足に立ち向かえなかった恐怖に立ち向かい、克服しようとする姿勢を見せていた。
やがて緊張していた葵の身体が脱力し、大きく息を吐く。
「あと、三勝…」

◆
「うっ…、くっ…、あ、ァ…っ！」
歯を食いしばって電撃に耐える。
体中が痛い。痺れと痛みでしばらくは起き上がれないだろうと思った。
望もうが望むまいがしばらくは休憩時間をいただけるというわけだ。
──この数時間でロスト事件被害者の「もうデュエルなんてしたくない」という気持ちが随分理解できるようになったように思う。
しかし、でも。弱弱しい息を吐きながら、私は体が自由を取り戻したら、また起き上がってデュエルに挑む意思を固めていた。
彼が戦えないのなら、私が戦うしかないのだ。
それに私は苦痛にのたうちながら、仄かな誇らしさを感じてもいた。
今やっと私は彼を守る側に回れたのだ。
これまでずっと守られてきたのだから、今度こそその恩を返したい。
その気持ちがあれば、私の心はくじけなかった。
あと三勝でいいのだ。

「……」
ゆっくりと、這いずるように身を起こす。
問題は、体の方にあまり力が残っていないらしいという点だった。
このまま私が気を失ってしまったら、その後どうなるかとても不安だった。
いけない、こんな事では。
私は頭を振って額を手で押さえた。
弱気はそのままデュエルの判断ミスにつながる。
ああ、だけど瞼が重い。
「財前」
頭の上で男の子の声がした。私が慕うヒーローの声。
「すまなかった、残りは俺がやる」
「まだ、大丈夫…心配しないで…
　あなたには…この状態は…」
私は反射的に虚勢を張っていた。
彼を過去の悪夢と対面させたくないという思いが私を突き動かしていた。

「いいや、もう大丈夫だ。ここからは俺がやる」
思えば、彼の声は部屋に閉じ込められた時と比べて随分としっかりしている。
どうしてだろう？何か変化があったのだろうか？
私のVRゴーグルに手をかけながら彼は言った。
「…ありがとう」
その声は不思議と私を安心させて、抱いていた懸念はもはや杞憂だという事を教えてくれた。
私の中の張りつめていた何かが切れたのが分かった。
ここからは彼の──プレイメーカーの時間だ。
「…そう、それじゃあお願いするわね。　
　私、少し、疲れたみたい…」
呟きながら、私はどうにか笑った。

書いてて思ったのはスペクターってマジで変態だったんだなという事です

まさかの怪文書だった…
てっきり文字画像スレかと…

突然のゆさあお助かる…

やるのか遊作！

いい…

いつエロくなるかなと思って見守っててすまなかった
でもエロくなってほしい…

>やるのか遊作！
ああ
（デュエルを）やる

少年は遂に立ち上がる時を知ったのだ

ストレートに良くて困った

開幕から脱出条件のせいでここのロスト部屋イメージになっちゃう

葵ちゃんは遊作を戦わせないために歯を食いしばってめちゃめちゃ頑張るけどそれでも力及ばない…という運命を背負った女の子だと思っていますが
葵ちゃん自身はこれでは彼のしてくれたことに足りない借りを返せなかったって思っているその懸命な姿が遊作に再び戦う力を与えて欲しいなと思います

やっぱスペクターおかしいよ…

いい話だったけど全部草薙さんの声で再生されて困った

葵ちゃんはなんで遊作が平常心を取り戻せたのかわかってないのがいいよね

こうお互いに器用な言い回しできないけどなんかよくわかんないうちに伝わる感じがね
いいよね

良かったよありがとう
それはそうと誰だよこんな部屋に閉じ込めたやつ！

>良かったよありがとう
>それはそうと誰だよこんな部屋に閉じ込めたやつ！
そんなの決まってんだろ？

まあどうせライトニングの残留思念とかそういうのだろう…

全ては鴻上博士のきぶり計画が発端だったのか！

ふざけんな鴻上死ね
死んでたわ

閉じ込めたのはスレ「」だろ

スペクターの個人用ロスト事件ルーム？

スレ「」は鴻上博士だった…？

やっぱ葵ちゃん闘争心の女だよね
ある意味鬼塚よりよっぽど闘魂してるって言うか…

>スレ「」は鴻上博士だった…？
これ裁判起こしたら勝てると思う

同じ痛み感じていたい

そこ知れぬ快楽の淵に沈めぇ！

リボルバー様はどう思います？

>リボルバー様はどう思います？
本当に申し訳ない

>リボルバー様はどう思います？
父の過ちの全てを清算するために生涯を捧げる覚悟だ

ヒロインと共闘してトラウマ克服イベント！これね！

>ヒロインと共闘してトラウマ再現イベント！これね！

>いい話だったけど全部草薙さんの声で再生されて困った
次回予告だこれ

死んだんならもう死んだでいいからおとなしく死んでろよ部屋閉じ込めとかするんじゃねえ
と思ったんだけど鴻上博士って死んでからもなんか結構しぶとかったな…

ネット上にPlaymakerがブルーメイデンを監禁したと言う噂が流れてそれを間に受けるお兄様

なんだこの記事は！！！
藤木君がそんなことをするわけがないだろう！！！
それはそれとして葵と藤木くんを同時に呼び出して聴取はさせてもらう！！！！

>>いい話だったけど全部草薙さんの声で再生されて困った
>次回予告だこれ
何ならOPが歌なしで流れてくる

(社の運営するレストラン)
(着飾らされた葵ちゃん)

>着飾らされた葵ちゃん
これカード名みたいで好き

次回遊戯王VRAINS
着飾られた乙女

>>着飾らされた葵ちゃん
>これカード名みたいで好き
青い天使の着せ替え人形