現宇宙における人類には、叶えられる願いの限界がいくつか定められている。 ――たとえば、人の完璧な複製 ――たとえば、死者の完全な復活 ――たとえば、隠れた変数の観測・実証 ――たとえば、アカシックレコードの接続 ある者はそれを「禁忌事象」とみなし、 実現不可能なものとして人類から遠ざけられている。 だが、ふとしたきっかけ、些細な奇跡の末、発生することがある。 かつて起きた「賢木夕立を巡る争い」では 死者の完全な復活の発生が予測された。 多くの出会い、多くの策謀、多くの戦い、 奇妙で数奇な巡り合わせが、それを実現させてしまう。 結果、この人類宇宙に「不可能なものが可能となる」概念が焼き付く。 「禁忌事象」は一度発生すれば、様々な存在を呼び水にして連鎖的に発生する。 遠くない将来、人類は「鏡見淡世」という存在を足掛かりに、 「アカシックレコードの接続」へと辿り着いてしまう。 仮に人類がアカシックレコードを手にしたとして、 人間のために用意されたこの宇宙に、 そんなものを許容できるほどの容量(よゆう)が存在するだろうか? 世界は無数に存在し、無限ともいえる物語(ルート)へ分岐する。 "ソレ"が実現すれば、物語の持つ情報量は加速度的に増加して、 宇宙(なかみ)は限界を超えてしまう。 そして、人類宇宙は破綻する。 空気を限界以上に入れられて破裂する風船のように、 人類宇宙は情報爆発を起こし、意味消失という死を迎える。 故に■■■■は姿を消した。 美しい物語(せかい)を守るために、夢から覚めるように。 ◇ この事象が発生する世界には存在しない この事象が発生する頃には世界から消失している この事象に介入することはできない アカシックレコードに触れるとアウト? じゃあソレそのものな鏡見淡世はどうなんだ、って? そりゃあ、この人厳密には人類のカテゴリじゃないので…。 人外魔境はルール無用なんですよ。 おのれ上位存在。