-------------------------------------- 登場キャラクター: No.126 八王子 蘭(自創作キャラ)&ホーリーデジタマモン No.142 伊本 奏音&メイクーモン・ポテモン・モニタモンたち No.145 久根 針尾(バイオスティングモン) No.158 桐生 ユウセイ&ベルステラモン No.184 ジン ツジハ&デジタマモン No.185 倉間 舞&ブラックテイルモンUver・バコモン No.201 斉藤 彩乃&リヴァイアモン(成長期) No.261 将野 香&リュウダモン No.316 蜂矢 明良&タイガーヴェスパモン No.317 大神 露穂&ワーガルルモン No.320 院蔵 健也&クリサリモン No.326 二本柳 海砂緒&クレニアムモン No.328 子宝 豊&エビドラモン No.344 安出ホネオ&バケモン デジモンNo.139 アンコちゃん(暗黒のデジメンタマモン) -------------------------------------- //デジモンイモゲンチャーサイドストーリー 「大学生ズなテイマーズ!」// 「はやい、はやーい! 嗚呼、嗚呼っ! エビドラモンさん! もっともっとよ! スピードを上げてぇっ!」 「おうよ豊! 飛ばすぜぇ!」  デジタルワールドの広大な海を、大学生のお姉さんである「子宝 豊」を乗せた「エビドラモン」が、ジェットスキーの如きスピードで駆けていく。 「おぉ、良いなぁ〜。デジモンに乗る旅ってのは、快適そうだ」 「んふふ。ユウセイ! いつでも僕に乗って良いんだよ? さぁ、遠慮せずにどうぞ!」 「馬鹿言うなベルステラモン。お前のどこに乗るってんだ!? 巨大ツカイモンじゃないんだぞ!」  豊たちは大興奮と共に海の向こうへと走り去っていき、その姿を見送った大学生の「桐生ユウセイ」は、パートナーである「ベルステラモン」の発言に息をついた。  豊満な肉体を持つこのパートナーは、女性的な姿に進化しても精神は昔のツカイモンのままであり、時にはボディランゲージまで迫ってくるのだ…… 「真面目にやろうぜ。この荷物を運んでいる途中だってのを忘れるなよ?」 「おおー。忘れてない、忘れてないさ! 大事な大事な黒いデジタマ。奪われたら大変だ!」  ベルステラモンは、ユウセイが抱える黒いデジタマを覗き込む。  それは、二人が大切に運ばなければならないものだった。 「おうおう! 何が奪われたら困るって?」 「うおっ!?」  そんな中、二人の進路を阻むように、大きな影が前方に現れる。  それは、女性テイマーを傍に伴った人型の狼デジモンであった。 「いいもん持っているじゃねえか。オレ様の城のインテリアにピッタリだ!」 「ちょ、ちょっと、ワー様。いきなりそんなこと言ったら、あの人困っちゃうよ?」 「何だよツユホ。家臣のくせに文句があるのか? ピンと来たんだから仕方がねぇだろうが!」  狼デジモン「ワーガルルモン」は、パートナーである大学生「大神 露穂」の制止も聞かずに、ぐいぐいとユウセイに詰め寄っていく。 「おい、お前! それ以上ユウセイに近寄るんじゃない!」 「何だぁお前は?」 「僕はユウセイのパートナー、ベルステラモン! コイツでハチの巣にされたくなければ、大人しくあっちにいけ!」  ベルステラモンは大型拳銃ブラックローズを取り出し、ワーガルルモンを睨みつける。  露穂が慌てる中、ワーガルルモンは自身のかぎ爪を展開して笑うが…… 「ちょっと待ってぇ!」  一瞬即発の状況に、一人の女性が割り込んだ。 「そこのお兄さん! その黒いデジタマから手を放して!」 「またなんか増えたな……誰だ、君は?」 「私はカノン! えぇと、こういうものです!」  現れたのは、デジタルワールドを渡り歩く女子大生探偵「伊本 奏音(かのん)」。  パートナーであるメイク―モン、ポテモンが冷や汗を流す中、奏音はユウセイと露穂に、懐から取り出した名刺を差し出した。 「いもげ、いや、"芋と毛玉探偵社"?」 「えー! 大学生で探偵をされているんですか? 何だか格好良い!」 「へへへ、趣味のネットストーキングの延長で……って。そんなことを話している場合じゃない!」  奏音は思い返す。  ユウセイが持っている黒いデジタマ。それは以前にガベッジエリアで出会った「倉間 舞」という女性が発掘した遺物にそっくりであった。  あの時、遺物は恐るべきデジモンへと孵化し……もしあの時、通りかかっていた「ベルトを巻いたデジタマモン」とそのテイマーが居なければ、ガベッジエリアが丸ごと消滅していたかもしれないのだ。 「すぐにそれを手放して! 誰からその黒いデジタマを受け取ったんです!?」 「誰からって、そりゃあ……あれ?」  ユウセイは黒いデジタマを入手した切っ掛けを思い返そうとするが、思い出せなかった。  まるで記憶に靄が掛かっているようであり、微かに覚えがあるのは、甘辛い炒め物。そして、黒いデジタマを抱えていた女性のシルエットだけだったのだ。  ―考えてみれば、何だこれ?  ―俺は何故これを大事に……一体、どこに運ぼうとしていたんだ? 「うわっ。ユウセイ、デジタマ割れそうだぞ!」 「え?」  ベルステラモンの声にユウセイが黒いデジタマを見ると、殻にヒビが入りはじめている。  その光景に、奏音は慌てた。あの黒いデジタマが、かつてガベッジエリアで見た遺物と同様のものだとすれば……現れる暗黒デジモンは、それこそ進化の頂点「究極体」のデジモンでも居なければ止められないのだ! 「ま、まずいっ!」  奏音はユウセイの持つ黒いデジタマを奪い取ろうとするが、ユウセイのパートナーであるベルステラモンはその動きを見逃しておらず、彼女にブラックローズを突き付ける。 「おい、これは僕とユウセイが運んでいるデジタマだぞ! それを奪い取ろうってのなら、容赦は……」 「まぁまぁ! 皆さんそうカッカしないで! 怒ると身体に悪いんだから!」 「え?」  その場のデジモンとテイマー達は、かけられた声に向かって振り向く。  そこには、「人体の骨格」と「オバケのデジモン」が笑いながら立っていた。 「わははは! 何があったか知らんが、あんたらイライラしすぎだ。カルシウムが足りていないんじゃないか?」 「うんうん。ホネオもそう思います」  パートナーである「バケモン」と陽気に話す人体の骨格は、「安出ホネオ」。  ホネオは怪奇デジタルクリーチャーではなく、歴とした人間の大学生である。ある日、友人と心霊スポットに肝試しに来て悪乗りをしていたら……一体何の天罰か? 気づけば彼はデジタルワールドに漂着し、おまけに骨以外のテクスチャが完全に消滅してしまっていたのだ! 「お、おば」 「あ、あああ……!?」  しかしそんなホネオの背景を、この場の皆が知っているわけもなく。  デジモンとテイマー達はそろってフリーズするが、その中で奏音は、一手早く正気を取り戻した。 「チャンスだ。モニタモンッ!」  奏音は、"芋と毛玉探偵社"の協力デジモンであるモニタモン達を呼びだす。  モニタモンは隠密に長けたデジモンであり、彼らはフリーズするユウセイとベルステラモンの隙をついて黒いデジタマを奪い取り、リレーのように奏音まで運搬した。 「あっ!? お、おいっ、お前! オレ様の城のインテリアをどうするつもりだ!?」 「これはインテリアじゃないし、ウチたちが何とか出来る代物じゃないの!」  覚悟を決めた奏音は「知人」に緊急通報を送ると同時に、取り出したクロスローダーからデジタルゲートを展開し、勢いよく黒いデジタマを投げ込んだ。 「えーっ 奏音! 本気なのぉっ!?」「あ、あとでデジ対に、めっちゃ怒られねえか!?」 「絶対怒られる! でも、このまま揃って、あの骨お化けみたいにお陀仏は御免でしょ!?」 「わははっ。骨お化けって! ハートがズキズキ痛むなぁ……涙もでそう!」  奏音が開いたデジタルゲートの接続先は、現実世界のデジタル庁デジモン対応特務室。  究極体デジモンも多数控えているこの組織であれば、黒いデジタマから現れる暗黒デジモンにも対応できるだろう。そう考えた奏音の行動であったが、黒いデジタマは放り投げられながらも抵抗をした。主の命に従い、そのゲートの接続先を改竄したのだ。 101010101010101010 11101011110101 1011010  現実世界。 「くそっ、おのれおのれ! 仮面テイマー・バイオスティングモンめ!」  鬱屈した大学生……否。タイムダイバー帝国先遣隊隊長である「院蔵 健也」は、プラモデルの箱が重なる自室で呻いていた。  彼が造り出す偶像は、パートナーであるタイムダイバー帝国所属デジモン「クリサリモン」の力を得ることで、命を得て巨大化する。  その力をもってこの星を侵略しようとする健也であるが、その企みは毎週のように、謎の戦士「仮面テイマー・バイオスティングモン」によって阻まれているのだ。 「何なんだ、デジタルショッカーって!? 人違いだ! 僕はタイムダイバー帝国先遣隊隊長だと何度も言っているのに!」 「言わせておけばいいさ、健也隊長。所詮彼はデータの露となる運命だ。そうだろう? 君が造るものには、無限の可能性があるのだから」 「あぁ、わかっているさクリサリモン! だけれど、僕のプラモは今週もヤツに壊されてしまった。次は一体何を材料にすれば……」  健也が悩む中、彼の傍に控えるクリサリモンは背後からの物音に反応し、振り返る。  そこには、押し入れの中に突然開かれたデジタルゲートから転がり落ちてきた、黒いデジタマがあった。 ―あの歪なデータ構成。 ―なるほど。デジモンイレイザーの影……"暗黒のデジメンタマモン"が造り出した、眷属か。  デジタルゲートは閉じてしまい、その場には黒いデジタマが残される。  クリサリモンは眼を細めて触手を伸ばし、黒いデジタマを抱えた。そのデータには、自身と同じように「デジモンイレイザー」による改竄痕跡が残っている…… 「面白い。健也隊長、次はこれを素材にしよう」 「え? ……うわっ!? クリサリモン、そのでっかい卵は一体どこから!? しかもヒビ入ってるぞ!」 「パテと塗装で隠せば目立たないさ。さぁ、新たな創造を始めようじゃないか」  かくして現実世界へ転移した黒いデジタマは、モデラ―である健也の手によって補強と塗装を施され、クリサリモンの触手に包まれる。 『インスタンス・デジ・リアクション!』  クリサリモンの力により、ビルのように巨大な姿となったそれは……凶暴で、目つきが悪くて、格好良いファイアペイントが施された、黒い「デジタマモン」のような何かだった。  「とりあえずファイアペイントはつけたけど。歩く卵なのか、ピータンなのか? クリサリモン。結局あれは何なんだ?」 「ククク。それは私にもよくわからん。つかみどころのないデジタマ、"デジタマフォッグ"とでも呼んでおこうか」  よくわからないのが出来たが、早速仮面テイマーにぶつけよう!  そう意気込む健也であったが、デジタマフォッグ(仮称)は既に健也の制御を離れて、自身の意思で町に向かって進撃を始めていた。    それから、数分後。  爬虫類ショップ"嫉妬"の大学生バイト店員である「斉藤 彩乃」は、お店の看板ワニである「リヴァさん」の回転を見下ろしていた。 「おい、ヴァッさん。さっきから何興奮してるんだ。腹でも減ったのか? それとも発情期か?」  長い身体を持つリヴァさんの回転は大迷惑であり、更には回転に合わせて店長がギュインギュインギューンとエレキギターをかき鳴らす始末。  回転は迷惑だし、ギターの騒音は店内の爬虫類たちに悪影響を与えるだろう。彩乃は回転を止めるべく、ぺシペシとリヴァさんの身体を叩くが、今日のリヴァさんの回転は中々止まらない。 「あぁー。腱鞘炎になりそう。何でこんなバイトしているんだか」  店長のエレキギターは迷惑な盛り上がりを見せ、リヴァさんの回転は未だに続く。  虚無の表情で看板ワニの対応をする彩乃が、店の外を進撃する「超巨大卵」に気づかぬ一方で……   「「ぎゃあああああ〜っ!?」」  大学生の「八王子 蘭」とパートナーデジモンである「ホーリーデジタマモン」は、悲鳴をあげながら町を逃げまどっていた。  二人でスーパーに食料品を買い物に来たら、「超巨大な黒いデジタマモン?」なデジタマフォッグと出会い、追い回される羽目になってしまったのだ! 「ホーリーデジタマモン! "ホーリードリーム"で何とかしてよぉ!」 「無茶言うな、さっき使ったばっかりだ! 結構疲れるんだぞアレ!」 「何で、おばちゃんに割引シール貼ってもらうのに使っちゃうのさぁ!?」  蘭はくだらないことに必殺技を使ったパートナーを嘆きながら、後方を見る。何度も逃走経路を変えたが、デジタマフォッグは執拗に自分たちを追ってくるのだ。  「きっと、昨日ホーリーデジタマモンが真っ黒に焦がしちゃった、スクランブルエッグの亡霊だよ!」 「馬鹿言え! 俺はちゃんと食べたぞ!? それに、少しくらい苦みがあった方が味に深みが出るんだよ!」    道は袋小路になってしまい、追い詰められた蘭はホーリーデジタマモンを掴んで、大地を蹴る。  金色の翼を広げたホーリーデジタマモンは蘭を引っ張り空を飛ぶが、デジタマフォッグの視線は未だに二人を追い続けている。 「じゃあ、何で追いかけられているのさ!?」 「知るか!」  デジタマフォッグに黒いエネルギーが収束する。  暗黒の必殺技が空中のホーリーデジタマモンに向かって放たれる直前、デジタマフォッグの身体は大きく揺れ、その体制を崩してしまった。 「おぉっ!?」  危機一髪を救われたホーリーデジタマモンは、上空を見上げる。  そこには、デジタマフォッグに攻撃を与えた、大型の竜型デジモンの姿があった。 「ヒシャリュウモン! このまま行くぞっ!」 「良いだろう、香!」  町の平和を影から守る大学生「将野 香」が騎乗する「ヒシャリュウモン」が、デジタマフォッグの殻へと斬撃を加えたのだ。   「"縦横車"!」  ヒシャリュウモンは、自身の身体から刃を展開し、その全身をうねらせデジタマフォッグを斬りつけていく。その怒涛の斬撃は、並みのデジモンが耐えられるものではない。  だが、二人はデジタマフォッグの脅威を誤認していた。   「これは……一体どうなっているんだ、ヒシャリュウモン!?」  眼下の光景に、香は動揺した。  いくら斬撃を与えてもデジタマフォッグは断ち切れず、そのデータは殻零れ一つしなかったのだから。 「香! こいつはデジタマモンに見えるが、ただ身体が大きいだけではないらしい。こいつを倒すには、完全体をも超える更なる進化が必要だ!」 「完全体を超える進化!? そんなもの……!」  大学生活の傍ら、パートナーのリュウダモンは自身と共に悪との戦いを重ね、遂に完全体であるヒシャリュウモンへの進化を果たしたというのに、まだ力が足りないというのか。  香は勇気のデジメンタルを模したペンダントを握り締めるが、ペンダントは何も語らない。  デジタマフォッグはヒシャリュウモンへと暗黒のエネルギーを放ち、旋回して回避したヒシャリュウモンは、香と共にその場から離脱した。悔しいが、完全体への進化が限界である今の自分達では、デジタマフォッグに勝ち目はないと判断したのだ。 「げっ。アイツ帰りやがった!」  「ほ、ホーリーデジタマモン! 本当にどうするの!? あんなに強そうなデジモンでも倒すのが無理だったら!」  乱入したヒシャリュウモンに、デジタマフォッグを倒してもらおう!  そう考えて、彼らの戦闘の最中に地上に降りて隠れようとしていた蘭とホーリーデジタマモンであったが、その目論見は儚く消え……あっさり発見された二人は、再びデジタマフォッグと相対する羽目になってしまった。 「だったら! それでもあいつを倒せるやつがここに居ればいい! そうだろう!?」 「それは、そう!」  蘭の前に立つホーリーデジタマモンは、ビルのように巨大なデジタマフォッグを睨み上げる。  ヒシャリュウモンが時間を稼いでくれたおかげで、再び必殺技を使用するだけの猶予が手に入ったのだ。 「"ホーリードリーム"!」 「"ナイトメアドグマ"」    ホーリーデジタマモンは、理を覆し、不条理を跳ねのける願いの光・ホーリードリームを全身から放つ。  だが、デジタマフォッグが放つ暗黒のエネルギー・ナイトメアドグマがそれを覆い隠していく…… 「……!」  闇の中、光を放つホーリーデジタマモンの傍に立つ蘭は、願った。  この絶体絶命を何とか出来る「とっても強いデジモンを連れた、平日のこの時間帯でも出てこれる、暇な大学生みたいな人」が都合よく現れてくれますように、と!  101010101010101000 11101010010101 1010010  デジタルワールドの、はじまりの町。  デジタマ教徒が経営する定食屋の休憩室にて、定食屋店長の女性「アンコちゃん」こと「暗黒のデジメンタマモン」は、デジタルTVを見ながらほくそ笑む。  そのTV画面には、現実世界の光景が。進撃のデジタマフォッグが、ホーリーデジタマモンへとナイトメアドグマを放つ光景が映し出されていた。 「クリサリモン。確か、デジモンイレイザーが手遊びで造った改造デジモンだったかな……? ふふ。私の眷属に面白いことをするものだ!」  邪悪な意思と言葉を持つデジメンタマモンである彼女には、野望があった。それは、"全存在デジタマ化による理想郷創造"である。  暗黒のデジメンタマモンは、確信していた。  全ての始まりであり、終わりの姿であるデジタマを模したデジモン、デジタマモン。そのデジタマモンが、絶大な憎しみと共に迎えるとされる末路……究極体デジモン「デビタマモン」こそが、デジタマユートピア成就の第一の鍵になるのだと。 「嗚呼、ホーリーデジタマモンなどという、夢まぼろしの胡乱な進化! そんなものは、我が暗黒で塗りつぶし、葬り去ってくれる!」  暗黒のデジメンタマモンは、かつてデビタマモンの顕現を垣間見たことがある。  ズィードミレニアモンがデジタルワールドと強制ジョグレスする中で、八王子蘭のパートナーであるデジタマモンが、蘭が内包していた憎しみをその身に映し、デビタマモンへと暗黒進化を果たしたのだ。  だが、ズィードミレニアモン、そして七大魔王ベルフェモンとの戦いの最中、デビタマモンに一体何のデータが混入してしまったのか? 野望の鍵たるデビタマモンの全ては、未知のデジタマモンである「ホーリーデジタマモン」へと書き換わってしまったのだ! 「闇の中から再び蘇るがいい、デビタマモンよ! 私の理想郷創造のために!」  暗黒進化を阻害する目障りなデータを消し去り、ホーリーデジタマモンからデビタマモンを復活させる。  その瞬間を想像しつつ、暗黒のデジメンタマモンはナイトメアドグマの闇に染まったTVの画面に注目するが、彼女は眼を見開いた。 「は?」  眩い光が闇を吹き飛ばし……画面には「胡乱な光景」が映しだされたのだから。 1001010 11100011010101 101000101110101010 「ヒィィィィィィィ ニア様!!!!! きゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」  闇を晴らす光の中、黄色い悲鳴が木霊する。  悲鳴の発生源は、パートナーである聖騎士型の究極体デジモン「クレニアムモン」を激推しする女子大生「二本柳 海砂緒」。  薙刀を携える彼女は、かつてパートナーが所以の出来事で、恋愛観を粉砕され、ガチ惚れし、クレニアムモン夢女子と化してしまった愉快なご令嬢である。 「光に導かれて来てみれば。一体何なのだ、この状況は」 「……ふう。ニア様! あの卵怪獣デジモンの正体はわかりませんが、彼を倒さなければ、町が大変なことに!」 「ああ、そうだな。今は、やるべきことをやろう! 海砂緒、貴女はそちらの女性と、羽根のデジタマモンを守ってくれ!」  暗黒のエネルギーを打ち払ったクレニアムモンは、魔槍クラウ・ソラスを握り、デジタマフォッグに向かって跳躍する。  デジタマフォッグは突然現れた乱入者に暗黒弾を放つが、クレニアムモンはその攻撃を遮断した。  クレニアムモンが構える魔楯アヴァロンによる、絶対防御の"ゴッドブレス"は無敵の守り。例えビルをも超える巨大デジモンの攻撃であろうとも、その防御を突破することは適わないのだ。 「うおおおっ、ロイヤルナイツ!? 本物だ!」  地上で戦闘を見上げるホーリーデジタマモンは、羽根を広げてクレニアムモンを応援する。  デジタルワールドで生きるデジモンで、ロイヤルナイツを知らないものはいない。彼らは誇り高き騎士デジモンの頂点であり、デジタルワールドの秩序を守る存在なのだ! 「す、凄い! あの攻撃を、完全に防いでいる!」  「いやーこれなら楽勝だな! 出たとこ勝負だったが、やってみるもんだ!」  あとは、スーパーで買ったポップコーンでも食べながら観戦しておこう!  そう思いながら買い物袋からお菓子を取り出すホーリーデジタマモンであったが、その殻を海砂緒がはたいた。 「ちょっと、そこの羽根タマモン様! 呑気にポップコーンを食べている場合じゃありません! 私のニア様の勇姿を! 真面目に! ごらんなさい!」 「誰が羽根タマモンだ。俺はホーリーデジタマモンだ! ……って。」  海砂緒に怒られたホーリーデジタマモンは改めて戦闘を見上げ、そして気が付いた。  デジタマフォッグに接近戦を挑むクレニアムモンであるが、彼の剣技をもってしても、デジタマフォッグに決定的なダメージを与えられていない。  健也によってパテを塗られたデジタマフォッグの殻は恐ろしいほど強固であり、その殻を貫くための「一手」に欠けていたのだ。 「くっ。何という堅さだ!」  地上のパートナーから黄色い声援が送られる中、クレニアムモンは焦燥していた。  海砂緒がデジヴァイスで疑似デジタルワールドを展開していると言えども、その効果時間には限界がある。短期決着が必要だが、それを成すためには、自分と並ぶ「究極体デジモン」の強力な一撃が必要なのだ。 「だが、そんな都合よく、究極体の助っ人が現れるとは……」 「はいはーい。ボクが助っ人になろうか?」 「あぁ、それは助か……。ん? 誰だっ!?」  クレニアムモンが声に振り向くと、そこには人型の蜂の姿をした、黄色のデジモンが。 「ボクは、タイガーヴェスパモン! 苦労しているみたいだからさぁ、手を貸してあげるよ!」  究極体デジモン「タイガーヴェスパモン」は、ちらりと地上を見る。  そこには、自身に進化のためのデジソウルを送ったパートナーが立っている。 「行けっ! タイガーヴェスパモン! その卵怪獣野郎を、食いちぎってやれ!」 「オーケェイ、明良!」  大学生「蜂矢 明良」は空に拳を突き上げ、その言葉に応えたタイガーヴェスパモンは、秘蜜武器ローヤルマイスターを手にデジタマフォッグへと突貫する。 「しっかし、何だ。探偵からの通報で警戒はしていたが、あんな巨大卵が出てくるなんてな」  デジ対との繋がりがある明良は、彼らと連携して暗黒デジモン出現の警戒にあたっていたが、デジタマフォッグ出現位置からは、距離が遠かった。  だけれども、一体何が起こったのか? 神秘的な光に導かれた明良とタイガーヴェスパモンは、気が付けば距離を超越してこの現場に立っていたのだ。 「あ、貴方、一体どなたです?」 「俺? 蜂矢 明良だ。デジ対の手伝いやってる。あんたらと羽根タマゴモンは、邪魔だし危ないから下がってな」 「邪魔ですって!?」  クレニアムモンと共に戦う。その覚悟でいる海砂緒は、邪魔者呼ばわりに怒り、薙刀の柄を地面に叩きつける。 「それはこっちの台詞です! 私はテイマーとしてここに」 「良いから、下がってろって。あのお嬢さんを見習いなよ」  明良は親指で後方を示す。  そこには、ホーリーデジタマモンと一緒に「いそいそ」と去ろうとしている蘭の姿があった。 「ちょ、ちょっと! 戦力にならずとも、貴女もデジモンテイマーならば、逃げずにニア様の勇姿をその目に焼き付けなさい!」 「ひい、理不尽。もう帰らせてぇ……!」  海砂緒は蘭の肩とホーリーデジタマモンの殻を掴んで、二人を引き留める。  クレニアムモンのパートナーである海砂緒はここから去るわけにはいかず、蘭たちにこの場から去られてしまったら、彼女達を守れる保証が無くなってしまうのだ。 「はぁ」  明良は息をつき、上空の戦闘を見上げる。  タイガーヴェスパモンの必殺技「マッハスティンガーV」、そしてクレニアムモンの必殺技「エンド・ワルツ」の同時攻撃により、デジタマフォッグに施されたパテが剥がれつつあった。 「タマゴの殻か。あれが割れたらどうなるんだろうな」 「ろくでもないことになるぞ」 「あん?」  かけられた声に、明良が視線を落とす。  そこには、ベルトを全身に巻いたデジタマモンが立っていた。 「誰だお前」 「デジタマモンだ」 「デジタマモンなら、そこに羽根が生えたやつがいるぞ。大暴れしている巨大なやつもいる。何だ、お前たちは繁殖しているのか? 戸棚の裏はデジタマモンでいっぱいなのか?」 「漂流させるぞ」  明良がデジタマユートピアな光景を想像してぞっとする中、ベルトを巻いたデジタマモンは、自身のパートナーを見上げる。 「やあ、蘭君。久しぶりだな」 「ツジハさん!?」  蘭は驚き、目を見開く。  現れた女子大生「ジン ツジハ」は、ベルトを巻いたデジタマモンのパートナーであり、かつて蘭がデジタルワールドで彷徨っていた頃、一時期同行して共にデジタルトンカツを作ったこともある仲である。  かつてツジハのデジタマモンは、その殻を破りミレニアモン、ズィードミレニアモン、果てにはベルフェモンへと暗黒進化を遂げたのだが……なんやかんやで丸く収まり、現在のツジハたちは、再びデジタルワールドで旅をしているはずだった。 「現実世界に戻ってきてたんですか!?」 「いいや? 私たちはデジタルワールドの定食屋で、甘辛炒めを食べていたところだったんだ」 「だが、光に呼ばれた。胡乱な光にな」  ベルトのデジタマモンは、蘭の傍のホーリーデジタマモンをジト眼で見る。  圧を感じたホーリーデジタマモンは、「おあしす」と言わんばかりに、すすすと目を泳がせた。 「まぁいいさ。呪いを解いてくれた蘭君とホーリーデジタマモンに、恩を返すとしようじゃないか」  ツジハは、デジタマフォッグへと片腕を向け、指を三本立てた。 「彼らと合わせて、三手詰みだ。行くぞ」 「ああ。……デジタマモン、究極進化!」  ベルトを巻いたデジタマモンから、巨大な機械竜の腕が生える。  クレニアムモンがデジタマフォッグに魔槍クラウ・ソラスを突き立て、ツジハは指を折りカウントする。 「1」  続けて間髪入れず、タイガーヴェスパモンが二刀の秘蜜武器ローヤルマイスターを手に突撃し、デジタマフォッグの殻を貫いた。 「2」  デジタマフォッグの殻の全体にヒビが入る。  だが、ツジハは予感していた。ここまま孵化を許してしまえば、現れるのは新たな暗黒進化デジモンであるのだと! 「3。決めろ、ムゲンドラモン。すべてを砕け!」 「"ムゲンキャノン"!」  ベルトを巻いたデジタマモンが進化した究極体デジモン「ムゲンドラモン」は、両肩のキャノンから超弩級のエネルギー波を放つ。  デジタマフォッグが孵化する前に、デリートする。  その意思が込められたムゲンドラモンの必殺技であったが、抵抗するデジタマフォッグからは蠢く闇の触手が生え、ムゲンキャノンの波をかき分けて拡散させた。 「何っ!?」 「チッ……!」  三手で決められなかった。  ムゲンドラモンの必殺技には再充填が必要であり、クレニアムモンとタイガーヴェスパモンも必殺技の連続使用で消耗している。 「まずい。蘭君……あれは、進化するぞ!」  デジタマフォッグは全身のヒビから暗黒進化の光を放ち、クレニアムモン、タイガーヴェスパモン、ムゲンドラモンはその波動に気圧される。 「いや、まだだ! まだ何とかなる! お前ら、腰に気合を入れろ〜!」 「ホーリーデジタマモン様っ! 貴方はさっきから何もしていないのに、何を偉そうなんです!? 貴方が成長期だか成熟期だかはわかりませんが、黙ってニア様の勇姿を」  海砂緒がホーリーデジタマモンの態度に耐えかねてその殻を揺らす中、一陣の風が吹いた。 「わっ」  その風の強さに、テイマー達は思わず振り返り、「それ」を見た。  強い風と逆光で良く見えないが、遠くのビルの屋上に何者かが立っているのだ。 『バイオエボリューション!』  やがて、その人影はデジモンの姿に。  彼は、仮面テイマー「九根 針尾」。「バイオスティングモン」への変身能力を有する、改造人間である! 「俺を呼ぶ光に導かれて来てみれば。おのれ、デジタルショッカー!」 「罪なき人を傷つけ、町を蹂躙するなど、この俺が絶対に許さん!」 「とぉっ!」  デジモンへと変身した仮面テイマー・バイオスティングモンは、拳を握り、飛蝗のごとき跳躍力でビルを跳ぶ。  一般大学生である彼は、ある日世界制覇を企む悪の秘密結社「デジタルショッカー」に拉致され、デジモンへの変身能力を有する改造人間にされてしまったが……洗脳前に組織を脱走した彼は、人とデジモンの自由のために日夜戦い続けているのだ! 「誰だ!?」 「誰です!?」 「誰かな?」 「誰?」  テイマー達は改造人間の登場に顔を見合わせるが、誰も彼の正体を知らない。  それもそのはず。仮面テイマー・バイオスティングモンは、孤独な戦士なのだから。 「来たな、仮面テイマー! 行け、デジタマフォッグ! お前の力を見せてみろぉっ!」  双眼鏡を手に、冷や汗でデジタマフォッグの暴走を見守っていた健也は、仮面テイマーの出現に拳を振り上げる。  デジタマフォッグは迫るバイオスティングモンへと暗黒の触手を叩きつけるが、バイオスティングモンの接近は止められない。バイオスティングモンの踵から伸びる刃での斬撃「スティングヒールクロウ」は、闇を次々切り裂いていくのだ!   「な、何ィ!?」  バイオスティングモンはビルを跳び加速を続け、最高速、最高高度に達したところで、両足をデジタマフォッグへと向けた。 「エクシード・スパイキング・フィニッシュ!」  究極体デジモン、そしてテイマー達が「ぽかーん」とする中、降下するバイオスティングモンは、必殺のテイマーキックをデジタマフォッグへ叩きこんだ。  バイオスティングモンの脚部を通じ、デジタマフォッグに「封印のデータ」が流し込まれ、暗黒進化に向かっていたデジタマフォッグのデータは改竄され弱体化していく。     もしその光景を語るものがいるとすれば、それを聞く誰もが平気な顔をして「夢だ」と笑っただろう。  だが、現実として、デジタマフォッグは普通のデジタマサイズへと小さくなり、バイオスティングモンの必殺キックの衝撃で開いたデジタルゲートの中に吸い込まれていったのだ。 「…………」  町に平和を取り戻したバイオスティングモンは、その場のデジモンとパートナーたちを一瞥する。  バイオスティングモンは、針尾は想った。独りで戦い続ける自分にとって、信頼を寄せるパートナーがいる彼らのことが、少し羨ましいと。  だけれども、仮面テイマーとなったその日から、針尾は孤独に戦い続けると決めたのだ。 「デジタルショッカーとの戦いで、血を流すのは……俺一人で十分だ」  彼はテイマー達と言葉を交わすこともなく、ただ一人、その背を向けて立ち去ってしまった。 「お、おお。これは……どう見ても大勝利。いや、俺達の完全勝利だな!」 「う、うん。そうだねっ!?」 「はい、解散解散っ! とっとと帰るぞ蘭!」 「いやいや、流石にそれはあんまりでしょう、ホーリーデジタマモン!」  蘭は足早に帰ろうとするホーリーデジモンを、羽根を掴んで引き留める。  究極体デジモンであるホーリーデジタマモンの必殺技「ホーリードリーム」は、理を覆し、不条理を跳ねのける願いの光。その輝きによって導かれた「とっても強いデジモンを連れた(暇な)大学生たち」にお礼をしなければ! 「あの、皆さん。私とホーリーデジタマモンを助けてくれて、ありがとうございました! 良かったら、ファミレスでお昼でもおごり……」  だが、集まったテイマー達は蘭のお礼どころではないらしかった。 「ヒィィィィィィ折角のニア様の晴れ舞台がぁ!?」 「あー。なんか知らないけど終わった。今戻る……うん? また別件のリアライズが? あぁわかった。すぐ向かう」  海砂緒は仮面テイマーがクレニアムモンの晴れ舞台を「貫通」したことに憤っており、会話にならない。  明良には別件の緊急要件が入ったらしく、とてもお昼ご飯を誘える状況ではなかった。 「えぇと、ツジハさん」 「悪いな蘭君。私たちは、定食屋で食事中だったんだ。冷める前に帰らなくては」  ツジハは、バイオスティングモンがこじ開けたデジタルゲートを見る。  不安定なそれは、もうじき閉まってしまいそうであった。 「次に会った時は。そうだな。一緒にトンカツ屋さんにでも行こうじゃないか」 「! もちろん!」 「トンカツ? そんなもの、俺がいくらでもつくってやるが?」 「ホーリーデジタマモン。俺は知っているぞ。お前のつくるトンカツは喰えたもんじゃないと……」 「何だと!? お前のような味音痴謎デジタマ野郎に、とやかく言われる筋合いは無いっ!」  ホーリーデジタマモンが怒るなか、ムゲンドラモンに騎乗したツジハは、手を振る蘭に見送られつつデジタルゲートをくぐっていく。 「ムゲンドラモン。奴を追うぞ」 「あぁ」  弱体化しているのならば捨て置けばいいが、もしもあのデジタマフォッグが未だに暗黒進化の兆しをもっているのならば、デリートしなければならないのだ。   1011110 101010111110101 111010101010101110  ところが。  デジタルワールドに戻ったツジハたちが降り立ったのは、元々食事をしていた定食屋だった。 「ムゲンドラモン。何故ここに?」 「痕跡を追ったが、奴は偶然ここに落下したらしい」  何やら、定食屋の店内が騒がしい。  ツジハが覗くと、そこには店員デジタマモン達によってタンカで運び出される、店長のアンコちゃんとデジタマフォッグの姿があった。 「おや、ツジハさんだ」 「?」  ツジハはかけられた声に振り返る。  そこには、定食屋の近くに立っていた大学生「倉間 舞」、そして彼女のパートナーであるブラックテイルモンUver&バコモンの姿があった。 「舞君、久しいな。この騒ぎは一体?」 「えぇと、私たちは配達に来ただけで、詳細は店員さんに話を聞いただけなんだけど……」  舞は語る。  数分前、休憩室でTVを見ていたアンコちゃんの傍にデジタルゲートが開き、アンコちゃんはゲートから落下したデジタマフォッグに、頭をぶつけてしまったらしい。 「球(きゅう)〜。おのれおのれおのれぇ、胡乱なホーリーデジタマモン……いつか貴様を滅ぼし、理想郷への鍵を顕現させてくれる……!」  うわごとをぶつぶつ呟きながら、アンコちゃんはドクターCの元へ搬送されていく。 「ねぇ、あの黒いのって。以前ツジハさんがガベッジエリアで何とかしてくれた遺物に、似ているような」  デジタマフォッグに舞は不安を覚えるが、タンカとすれ違いざまにデジタマフォッグをスキャンしたムゲンドラモンは、その精査結果に苦笑した。 「ツジハ、あのデジタマのデータ構成にスキャンをかけたが、完全に無力化されているようだ。あれではもはや、デジタマ・インテリアの機能しかもたないだろう」 「あぁ〜ほっとした!」「それなら安心。配達にもどるにゃ、舞!」  安堵した舞とそのパートナーたちは配達を再開し、彼女達と別れたツジハは、ムゲンドラモンを見上げて微笑んだ。   「それじゃあ、こっちは中断していた食事の続きと行こうか」 「なんだ。随分といい加減だな?」 「ははは。私たちは、蘭君たちのお気楽さがうつったのかもしれないぞ?」 「俺を巻き込むな。変わったのはお前だけだ」  ムゲンドラモンから退化し、ファッションとしてのベルトを巻いたデジタマモンは、ツジハと共に離席していた食事の席に着く。 「ツジハ。この甘辛い炒めもの。冷えてもうまいな」 「ふふふ! 確かに美味い! 今度、蘭君たちにもこの店を教えてやろうか」  店長であるアンコちゃんにトラブルはあったものの、被害と言えばその程度で済み、騒動は何とも都合よく収束してしまったが……それはそれで、二人にとって何よりなことであった。   【終わり】