二次元裏@ふたば

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133747 B24/05/18(土)23:55:36No.1190676920+ 01:25頃消えます
「ん…」
まだ頭の半分が気怠い感覚に支配されたまま、ゆっくりと目を開く。視界は眠る前と変わらず真っ暗なままで、変な時間に起きると明日が大変だぞ、などと、始まる前から次の日が憂鬱になりかけていたその時。
「あ、起きた。ふふっ」
眠る前にはなかった涼やかな声と温もりが、背中から感じられた。
「やっほー」
何よりも好きなその声のする方向に振り向けば、ほんのりと甘い匂いと長く跳ねた髪の心地いい感触が身体をくすぐる。目を開けることさえ億劫だったはずの身体が、嬉しくてすっかり目覚めることを選んでいた。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
124/05/18(土)23:55:59No.1190677032+
「おはよう」
さっきまで何も見えなかったくせに、振り向いた先にいる彼女の整った顔だけは、昼間よりもよほどはっきりと映る。人は見たいものしか目にしないと言った先人の言葉を思い出すが、彼女が相手ならば仕方ないと言い訳も立つだろう。
「おはよう。
ふふっ。朝はまだだよ」
「シービーが来たんだろ」
けれど、当のシービーは浮かれた自分よりもなお楽しそうに、からかうように微笑んでいる。
「なんだよ。随分楽しそうだな」
答えるようにますますよく笑う彼女は掛け値なしに可愛らしかったけれど、それが余計に気になった。突拍子もなく訪ねてきては想いを伝え合うのも、楽しいことを見つけては愉快に笑うのもいつも通りの彼女だけれど、今日はそれがやけに激しい気がする。
「何かあった?」
何かを隠すために明るく振る舞っているのではないかと心配になって、努めて柔らかく訊いてみる。
彼女の表情に一瞬だけ驚きが浮かんだように見えたが、次の瞬間にはいつも通りの笑顔に戻っていた。
「大したことじゃないよ。
ただきみの顔が見たくなっただけ」
224/05/18(土)23:56:35No.1190677216+
「…そっか」
それが本当になんでもないことでも、もし何かあったのだとしても、彼女が話さないと決めたのならば、これ以上自分が訊くことは何もない。
話すべき時が来たら、きっと彼女はどこまでも彼女らしく、話したいように話してくれる。そう信じていた。

何も話さずに見つめ合う静寂が心地良いと感じられる相手に、一生のうちどれだけ出逢えるだろうか。彼女以外を探すつもりは毛頭ないが、そのくらい得難いものがここにあると思うと、また胸が温かくなる。
見つめ合うだけでは収まらなくて結局はどちらかが何かしてしまうから、なかなか長続きしないというのが欠点かもしれないが。
「一緒に寝るんじゃだめか?」
「だめ。せっかく一緒にいるのにさ。
このままただ寝ちゃうなんてつまらないよ」
ゆったりと抱きしめられて腕に籠る力を感じていると、安心するのにもっと欲しくなってそわそわする不思議な気分を味わえる。それもこれも、彼女の手つきがこれから愛し合うときのそれに変わっているからだろう。
324/05/18(土)23:57:22No.1190677468+
「…いいのか?」
何の脈絡もなくただ愛し合うというのは、嬉しいけれど少しだけむず痒い気分になる。自分の気持ちだけが先走っているのではないかと少しだけ不安になるからだが、いつだって自分に正直な彼女にそんな遠慮が通じるはずもないのだった。
「美味しいものを食べるときに、きみはいちいちちゃんとした理由がないと箸をつけられないひと?」
むしろ臆病さをからかわれたような気がして、少しだけむっとしながら抱き返す。満足そうに微笑む彼女に出迎えられて、腕の中で拗ねるだけでは何とも格好がつかないが。
「いいんだよ。食べたいから食べる、でさ。
アタシはきみが好きだから。どんな理由だっていいから、きみに愛してほしいんだ」
愛バが甘えに来ているのだから、野暮ったいことは聞かずにただ可愛がれ、と言うことなのだろう。自分の単純な心は、何はなくとも彼女と一緒なら幸せで仕方ないのだから。
「シービーは極上の料理かな」
「きみにとってはそうだと思ってたんだけど。違う?」
愛を求められて喜ぶ心を見透かされたくなくて吐いた照れ隠しも、スパイスにしかならないくらいに。
「…違わないよ。全然」
424/05/18(土)23:57:36No.1190677560+
腰にあった手が今度は首筋へと回って、そのふたつの宝石とぴったり目が合う。
「理由がないと、アタシと一緒にいるのは嫌かな」
「まさか」
そんなことなんてしなくても、もう目を離せるわけなんてないのに。こっちがとうに首ったけなことはちっとも疑わないくせに、その愛を示せと要求することは忘れないのは彼女の常なのだ。
「じゃあ、証明してよ」
それを拒む理由なんて、ひとつも思いつかないけれど。
彼女を愛することをやめるなんて、できるはずがないのだから。
524/05/18(土)23:57:49No.1190677631+
どちらともなく差し出した唇が、ゆっくりとくっついて、離れる。瞳を開いてもう一度見た彼女の表情は、可笑しくて仕方ないと言いたげに綻んでいた。
「ふふ。どーん」
頬に優しく頭突きをされて、ぐりぐりと頭を押し付けられる。負けじとこちらも少し強く抱きすくめてやると、首元に吐息が当たってくすぐったい。
「悪い子」
「いいもん。かまって」
頬ずりをするようにもう一度頭を押し当てられると、構ってほしくて少し強引に甘えてくる動物を想起する。
「猫か」
「猫だよ。だからかまって」
顔の横で両手を丸めて、にゃあと鳴いて見せられれば、その見立て通りに彼女を可愛がる他はない。長い髪を指で梳きながらゆっくりと背中を撫でると、合格、と言うように尻尾がそっと手の甲をなぞった。
624/05/18(土)23:58:16No.1190677772+
そのまま背中をさすっていると、彼女の頭がもぞもぞと動く。
「頭」
「ん」
「撫でて」
今日は随分とリクエストが多い。普段の五割増しくらいで甘えられているような気がしてなんだかこそばゆい気分だが、彼女にあれこれと要求されるというのも、それはそれで新鮮で楽しいものだ。
そんなふうに言われるがままに彼女を満たし続ける時間に浸っていると、彼女の一言が静寂を破った。
724/05/18(土)23:58:31No.1190677858+
「ふふっ。きみってすごいよね」
唐突に褒められては喜べばいいのか驚けばいいのかわからなくて、その意味を問い返すことしかできない。
「なんで?」
「アタシのことなんでもわかっちゃうんだなぁって」
愛おしそうに呟く彼女の言葉だけが、頭の中に心地よく残っていた。
見つめ合っていた彼女が、首筋に顔を埋めた。少し言いたくないことを話すときに、彼女はよくこうやって顔を見られないようにくっつくということも、長い付き合いで知ったことだ。
「なんでもなかったって、嘘」
その言葉に自分も動揺しているのを必死に表に出さないようにするけれど、彼女を抱きしめる腕の力はどうしても強くなってしまう。
本当にどうしようもない。彼女が不安なら、その分だけ自分が強くなくてはいけないのに。
824/05/18(土)23:58:46No.1190677957+
「アタシが透明になっちゃう夢を見た」
彼女の話し方は相変わらずあっけらかんとしていたけれど、その端々に寂しさを感じるのは、さっきまでなかったことだ。
「夢の中のアタシは誰にも見えないし、何にも触れないんだ。なのに幽霊みたいに宙に浮かぶこともできなくてさ。すぐ飽きちゃった」
先を促すことはしたくなかったから、その代わりに彼女の背中を撫でた。口にしなければいけないほど彼女は弱くないのはわかっているけれど、話していいんだよと伝えたかった。
「なのに、どれだけ呼んでもきみは振り向いてくれない。アタシなんて初めからいなかったみたいに、ずっとアタシと関係ないことばっかりしてる」
そう言って、彼女は頭を起こしてこちらを見た。
いつものように笑っていたのに、その笑顔がひどく寂しく見えた。
「夢は夢だよ。どんな感じがして何を言ってたかなんて、起きたらすぐ忘れちゃった。
…でも、とても寂しかったことだけは覚えてる」
924/05/18(土)23:59:09No.1190678075+
「…シービー」
気持ちがぐちゃぐちゃに混ざりあって、ただ名前を呼んだ。
寂しい彼女のそばにいたかった。寂しいと思ってくれる彼女が愛おしかった。
「だからさ。きみが恋しかったんだ」
絡まり合った気持ちを解いてくれるように、ただまっすぐ想いを伝えてくれる彼女が。

「…言ってくれればよかったのに」
「ふふ。恥ずかしいじゃん。悪い夢見たから一緒にいてほしいなんてさ」
「それはそうかもな」
想いを独りで抱えているのが気恥ずかしくて、照れ隠しのように呟く。まだ煮えきらない自分と違って、口にしたあとの彼女は、恥ずかしいと言いながらもなんだかすっきりしているように見えた。
そんな姿を見ていると、少し恥ずかしくても伝えたいと思ってしまう。
彼女の夢の中にいた自分ほど、こっちは我慢強くも薄情でもないのだから。
「…やっぱり、夢は夢だよ。
シービーがいなくなったら、俺はいつまでも探すから」
1024/05/19(日)00:00:06No.1190678396+
触れ合わせた唇がゆっくりと重なっていくのが、委ねてくれているように思えて嬉しい。
その感触をはっきりと感じながら、彼女を目一杯抱きしめた。
「…見つけたら、こうしてくれるんだ」
「うん。
俺の方が寂しくて我慢できない」
同じくらい強く抱きしめ返されて、心地良い圧迫感に浸る。唇で伝えた想いが、同じくらい大きな想いで帰ってきたような気がした。
「続き、もっと見ておけばよかったな。
こんなに幸せな終わり方だったらさ」
1124/05/19(日)00:00:22No.1190678481+
夢なんて忘れていいどころか、もう一度見てみたい気分だった。きみがあんなに真剣に愛してくれるなら、少しくらい悪い夢の方がいいとさえ思えた。
だというのに、当の彼は枕に顔を埋めてそっぽを向いている。
「ねぇ。なんでそっち向いちゃうの?」
「…絶対顔赤いから」
自分からアタシの唇を奪ったことが、どうやら今になってじわじわと効いてきたらしい。どれだけいじけてみせたって、きみがくれた愛にまぶすスパイスにしかならないのに。
「大丈夫だよ。暗くて見えないから」
「…」
絶対に嘘だ、と言いたそうな目をしながら、枕の端からゆっくりとこちらを覗くきみを見つめる。
そう。嘘だよ。
きみの顔を見られないなんて、アタシが我慢できるわけないでしょう?
「いいじゃん。恥ずかしくたってさ。アタシのこと見てよ。
きみの顔、ちゃんと見せてよ」
1224/05/19(日)00:00:46No.1190678598+
観念したように顔を上げたきみのむくれた頬に、そっと手を添える。なのにそこまでしても、きみは目を逸らして少しでも逃れようとしている。
逃げる相手を捉えるのはアタシの得意技だって、きみが一番知ってるくせに。そんなふうに可愛く抵抗されると、余計に捕まえたくなっちゃうよ。身体だけでも、視線だけでも足りない。
その心まで捕まえて、アタシのものにしてしまいたい。

「ん…ん…!あははっ」
ただ唇を合わせているだけなのに、いつも胸の奥が溶けるくらい熱くなる。
触れ合うまでの時間が焦れったいのも、ほんの少し触れていただけなのに離すとこんなに名残惜しくなるのも、きっときみだからだよ。
きみも、そうだったらいいな。
だって、きみの唇もこんなに熱いんだもの。
1324/05/19(日)00:01:02No.1190678688+
「もういいのか?」
腕の中でそっと余韻に浸っていると、頭の上からそんなきみの言葉が聞こえる。
「足りないよ。もっとしたい」
「…そういうことじゃなくてさ。夢のこと」
まだ少しいじけたままのきみを見ると、さっきまであんなに淋しかったのが嘘みたいだ。早とちりを窘められるのだって、幸せだと思えるくらい。
「もう忘れちゃった。
きみがいっぱい癒してくれたもん」
時折、自分がひどく単純な人間なじゃないかと思うことがある。楽しいことが一番なのは昔からだけど、きみと愛し合うようになってからはもっと節操がなくなった気がする。
1424/05/19(日)00:01:26No.1190678847+
アタシと違うところから、アタシと同じものを見ようとしてくれた。
誰にも寄り添わないアタシの生き方を、好きになってくれたのが嬉しかった。
それが、きみを好きになった理由。
「不思議だね。
はじめは理由があるから好きになったはずなのにさ。
もう、好きだから愛していい理由を探すようになっちゃった」
だから、きみに好きって言ってほしくて、どんなことがきっかけでもいいからくっついていたくなった。

アタシも伝えたいんだ。
きみのこと、こんなに好きだよって。
「だからさ、ちょっと恥ずかしかったけど、すごく幸せだよ。
きみの気持ち、すごく伝わってきたから」
こんなに幸せなら、きっかけが悲しい想い出だったことなんて、どうでもよくなっちゃうくらい。
1524/05/19(日)00:01:43No.1190678964+
きみが好きな理由。きみと愛し合ったきっかけ。
そのひとつひとつに名前をつけて、さみしい夜にちりばめてみたい。思い出はみんな、きらきら光ってるから。
アタシときみだけの、小さな星空。
星をなぞって星座を作って、きみと同じ星を指差したら言うんだ。
きみが好きだよ、って。
1624/05/19(日)00:02:37No.1190679274そうだねx1
おわり
しょうもない理由でもいいからシービーに甘えられたい
1724/05/19(日)00:02:59No.1190679387そうだねx2
まぁ猫みたいな女だからな
1824/05/19(日)00:05:26No.1190680247+
ちゅ〜るじゃなくてちゅーしてないかこのキャッツ
1924/05/19(日)00:12:36No.1190682714+
シービーは甘え方が爽やかで可愛くて甘えられた方が甘えてくれないとそわそわする身体にさせられる
2024/05/19(日)00:15:52No.1190683758+
悪い夢を見たら慰めてもらうために一緒に寝る
いい夢を見ても早く話したいから一緒に寝る
2124/05/19(日)00:29:34No.1190688480+
なんとなく尻尾くるくる巻き付けてきそうなキャッツ
2224/05/19(日)00:33:47No.1190689868+
そういう気分になったら逆に甘えてもいいよって腕広げて待ってることもあるんだよね
抱きしめて頭撫でたりしてくれるんだけど結局飽きたーって言っていつも通りのシービーが甘える体勢に戻るんだよね
2324/05/19(日)00:40:11No.1190691880+
目くりくりさせながら耳ぺたんと下ろして撫でるんぬしてくるシービーはめっちゃ見たいが…
2424/05/19(日)00:51:30No.1190695465+
この自由な女すぐに理由を見つけて引っ張ってくる…
2524/05/19(日)00:59:54No.1190697990+
この時期は若草の匂いつけてくっついてくるキャッツ
2624/05/19(日)01:13:03No.1190702339+
眠れなかったらベランダに出て一緒に星を数えたりするんだ…
2724/05/19(日)01:14:12No.1190702682+
寝る前に大変いいものを見た…


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