ゲームに打ち込んだテキスト集です 性質上ネタバレの塊なのでせめてちょっとはやってね… 凡例 \I[122]    … ハートのアイコン用文字列 @       … キャラ名変更可能な印 以下にこのような表記 【11a2b】のある場合 ・先頭の全角数字   (1) … 大分岐 ・二文字目の半角数字 ( 1) … 大分岐後のイベントナンバ―(1→2→3…) ・三文字目の半角英字 ( a) … 大分岐内での小分岐 ・四文字目の半角数字 ( 2) … 小分岐後のイベントナンバ―(1→2→3…):二文字目と一緒 ・五文字目の半角英字 ( b) … 小分岐内での再小分岐          :三文字目と一緒 とします(六文字・七文字目があった場合も同様に更に分岐) ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 *【OP】 “黒の貴公子”率いる魔族がマナの剣。ひいては世界の覇権を得て後、 彼に逆らうものはほとんど壊滅し、闇が世界を遍く支配した頃。 貴公子は度重なる戦いの中で消耗した現在の身体を捨てて、 千年、万年先まで世に君臨するための身体を求めていた… 邪眼の伯爵: さて…貴公子様の今の御身体はローラント王子エリオット…。 あの方の魂を載せる器ならば、この一族のものが馴染みやすかろう。 ――そういえば、エリオットには一人、姉がいたな。 かつて仲間たちと共に、聖剣――すなわちマナの剣を求めて旅立ち、 幾度も魔族たちと戦って、手痛い打撃を与えてきた少年少女―― そのうち幾人かは、魔族の優位が確定した頃には命を落とし、 生き残ったものも、人知れず牢獄に繋がれるか、奴隷の身分にあった。 ちょうど“エリオット”の姉、“リース”は魔族の管理下に置かれており、 彼女ら姉弟の故郷、“ローラント”が滅んだ理由も、魔族にある。 仇を取ることもできず、生き別れた弟を取り返すこともできず―― その弟は、最も憎むべき相手の依り代として使われているのだ。 邪眼の伯爵: ふむ、やはり魂の波長が弟に似ている…これなら期待できそうだ。 女ゆえに器としては使えんが――ここは“作らせる”方が、よいか。 では早速、闇の心を植え付けて―― 美獣: あら、私を通さずに面白いことしようとしてるじゃないか? 一人で楽しもうだなんて酷い男だねぇ… 貴公子から――新たな器を作れ、という命令を受けていた“邪眼の伯爵”。 彼もまた、魔族の中では重鎮で、戦いにおける功がある。 だからこそ、次の依り代を作る、という大きな仕事を任されていたのだが、 そこに、“美獣”という、これまた別の、魔族の幹部が割って入った。 邪眼の伯爵: 貴様か…口を挟まんでもらおうか。 貴公子様からの命令を受けたのは私だ。引っ込んでいろ。 美獣: そこのリース王女と…エリオット“様”は誰が捕まえたと思ってんのさ? ローラントを落としたのだって、私がナバールの連中けしかけたからだろ? 貴公子様の御身体を用意するのなら、私抜きにはいかないでしょうよ。 美獣はローラントを滅ぼした仇敵で、弟を攫った連中の元締めでもある。 リースにとっては、殺しても殺し足りないほどの憎々しい相手―― 美獣の視線が、気を失っているリースの生々しい体つきを舐り回す。 確かに膨らんだ胸、しっかりとついた筋肉、丸くも細い腰と尻―― 美獣: ああ、いいねぇ…すごく綺麗で、汚しがいがある… 女の悦び全部教えて、憎しみも怒りも塗り潰してあげたい… ――ほら、さっさと出ていきなよ、交代さ交代。 邪眼の伯爵: ふん…何を言うか偉そうに。 お前がエリオット王子をブラックマーケットに売り飛ばさなければ、 わざわざ買い戻す必要もなかったのだぞ?くだらん手間をかけさせおって… お互いに思うところのある両者の間に、殺気を帯びた緊張感が漂う。 あくまで黒の貴公子の下僕である美獣と、魔族の世界を望んだ伯爵―― 貴公子がそれを実現させた今、戦時中のような共同体制は成立せず、 美獣も、本性である大型猫の姿に戻って威嚇する。 美獣: ああん? なんだい、やろうってのかい? 邪眼の伯爵: 貴様とはいつか決着を付けてやろうと思っていた… ならばそれが今、ここでであっても問題あるまい…! ――しかし不意に、両者は示し合わせたように矛を納め、睨みあうばかり。 お互いの全力でぶつかれば自身もただでは済まないし、勝てる保証もない。 ましてや、大切な任務を脇においてやるようなことでもない。 器の母体となるべきリースに、不要な傷でも付けば――そう、考えた。 邪眼の伯爵: お前の言葉も一理はある。 ならば、名代を立てることにしようではないか。 伯爵が手を鳴らすと、影の中から一体の魔族が現れた。 ローブに全身を覆われてその姿や表情は一切窺うことはできないが、 その異様な存在感から、常人では明らかにないことだけはわかった。 美獣は訝しげに片眉を吊り上げて、じっと、ローブの男を見る。 邪眼の伯爵: ――というわけで、手段、方針、その他についてはこの者に一任する。 魔族にしては仕事熱心な男だ、委託しても問題はあるまい。 私も、美獣も、直接的にはリース王女の件には関わらん、ということだ。 美獣: つまり、私が何かリース王女の調教について関わりたいなら―― あんたを介して、方針だけそっちに寄せてもらうってことかい。 なんだか、回りくどいねぇ… 邪眼の伯爵: 私は王女の魂をしっかりと闇に染めてから、器の種をつけるべきと思う。 肉体がどれだけ仕上がっても、光の残った体に魔王の魂は馴染まない… 器を産ませるまでなら、どれだけ汚しても、孕ませても構わんぞ。 美獣: 心だの魂だの、そんなまだるっこしいことより先に体を作らせるべきよ。 体が雌として熟すれば、精神もそっちに引っ張られていくからねぇ… その辺のところ、あんた、よく考えてやりなさいよ。 二人の意見の狭間に揺れながら、@はリース王女に手を向け、 【不老】【多産】【異種交配】…いくつもの呪いを重ね掛けした。 複雑に組み上げられた多重術式はもはや掛けた本人にも解除できない。 リースの運命は、この時、孕み袋以外の何物でもなくなった―― ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ★以下交配実験の回想部分 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪馬≫ *【破瓜】 誰の目にも明らかに大きな体躯、人の数倍の重量をもった雄馬が、 鼻息を頭上高くから打ち付けるように、じっと少女の体を見つめている。 彼女の故郷であるローラントは高低差の激しい、山間の土地だ。 それゆえ、平地に適した馬は、彼女にはあまり馴染みのない家畜。 リース: うう…なんですか、この生き物は…? 役目や名前を知らずとも、その生物の持つ重量感と存在感は雄弁に、 今まさに、自分が何かの危機――それも、耐え難いものに晒されていて、 しかも、それから逃れるための、何の手立てもないことだけは、わかる。 硬い石畳に、かつんかつんと蹄の音が冷たく繰り返し、響いている。 鎖で四肢を床に繋がれて、体を完全に起こすことはできないが、 固定された背中の後ろに、ずん、と重い存在を感じ取る。 それは最早本能的な、その“何か”への諦念と予感であった。 おおよそ無意識に彼女が息を呑むのと同時に、鈍い音が広がる―― リース: ごあっ、が、ぁ…! し、ごふ、し…ぬ…! 既に悲鳴とも言えない、呼気の断片が彼女の肺から逃げた。 濡れてもいない未通穴を、馬の剛直が情け容赦なく貫いているのだ。 上からも下からも血の混じった泡がぶくぶくと、ひっきりなしに。 目は白黒と、焦点も合わずばたついている。苦痛と、驚愕と、焦燥と。 リース: ころっ、ころし…! ぐ、ぁ…あああっ、ぎぃっ…! 手の指は激しく、断続的に開いたり閉じたりを繰り返しながら、 少しでもその苦痛を和らげようと、整えられた爪が石の床を掻く。 人の握力程度では掴めるはずもないその無機質な線と面とに、 すがるような指の動きがただ、無為に踊る。どうしようもなく。 插入の衝撃だけでもこうなのだから、その数瞬後に訪れた、 馬自身による、性器全体を打ち込もうとする激しい抽挿によって、 またたく間にリースの性器がめちゃくちゃに圧され、拡げられていく。 自分の下半身がどれだけ無惨なことになっている――されているのか、 脂汗にまみれて気絶した彼女には、もう確認のしようもないのだが、 この痛みが一度きりの悪夢でなく、リースに妊娠機能のある限り続く、 永い永い凌辱の一歩目に過ぎないことを、自覚せずにいられる、 この瞬間以上に幸福な時間は、この先ずっと、訪れない。 *【種付け】 馬の剛直に押し拡げられ、踏み潰された膣壁――初めてでこそないものの、 一突きごとに、リースの肺腑からはそれと同じの体積の吐息が絞り出され、 血と膣液の混ざった潤滑油が、ようやく出し入れを可能にする無惨な有様。 口からも赤い泡が漏れ、口内もしくは内臓へのダメージを窺わせる。 リース: うぐっ…あ、ぁ… ごっ、ぐ…ぅ! 交尾というよりはほとんど拷問か、処刑と表現すべき惨憺たる現状であるが、 悲鳴と床の軋む音の合間、耳慣れない水の音が、わずかに混ざっている。 それはほとんど反射的に、リースの体が身を守るために分泌する体液の音。 引き裂かれた膣肉の流す涎――涙と例えるには、それはあまりに淫猥な響き。 ひたすら貫かれるリースには、その変化に逐一気付けるだけの余裕はないが、 霞みゆく意識に、ゆっくりと苦痛が希釈され、全身から力が抜け始める。 すると、痛みに強張っていた筋肉が緩んだことで口が開きやすくなったのか、 幾分かスムーズ――とはいえまだまだ残酷な様相を呈してはいる――となり、 どくん、と無造作に放たれた馬の精が、赤い雫を白の中へと消し去っていく。 無論それは、彼女の最も神聖な、命の粒を狙い撃つために放たれたもの。 糸の切れた人形のように、がくがくと揺さぶられるだけのリースには、 自分の卵子が家畜ごときに貪られる屈辱に、抗うことなどできはしない。 リース: …! げほっ…! それを感知するはずもないのだが――がくん、がくんと無意識に反る背は、 せめてもの抵抗を表しているようで、無意識に溢れた涙は悲哀を示す。 彼女の魂の張り裂けそうな叫びさえ、馬には東風よりも意味がなく。 種付けは淡々と、ただ雌雄の交わり以上のものにはならなかった。 *【妊娠初期】 まだ膨らみは目立たないが、リースが馬の子を孕んでいるのは明らかだ。 にも関わらず、馬との交配が継続されているのは、それだけの行為をしても、 彼女の胎児が流れないという確信――それを可能にする術式のおかげである。 堕ろすことも死ぬこともできない。孕んでしまえば後は産む他にない。 リース: ぐぅ、ぁ… …うぅ…ぎぃ、ぁああ…っ…! 仮に母体の心臓が止まっても、子宮だけは活動を維持させられてしまう。 産むことでようやく解放されるが――無論それは、今の胎児に限って。 またすぐに別の雄が種を付け、ぼってりと胎の膨らんだ状態にされるのだ。 そうして負荷を掛け、彼女の心身を堕とすための行為なのだから当然である。 リース: やめ、もう、やめて… つぶれ、ちゃう… うわ言を繰り返すも、彼女はそれが有り得ないこととは知る由もない。 たとえ直接圧されたとしても、胎児に一切の傷は付かない。そういう体だ。 その分の苦痛は母体自身に跳ね返る。半不死の体を、より強く痛めつける。 仮に限界を迎えたとしても、すぐに蘇らされて続きが始まるだけ―― 快感を得るには、この行為はあまりに乱暴で、配慮に欠けた交尾。 牡馬は、好き勝手にリースの胎内に精を吐いておれば済むのだが、 その精算と苦痛を肩代わりするのは、彼女に一方的に与えられた債務である。 そしてそれが中途で投げられることも、終わることもありえない。 まだ胎児は予想される大きさの半分にも満たず、これから先は―― 臨月を迎える頃には、激しく迫り出した腹部の皮も、その裂けた痕も、 より惨たらしい形で、朱色に彼女の肌を染めるだろう。死ねもせぬまま。 さらにその先、出産――さらなる苦痛が訪れる想像など、できる訳もない。 *【妊娠後期】 リース: うぅっ…げほ、っ… いやだ、うみたく…やだ… 朦朧とした意識のまま、大きく膨れ上がった箇所が自然と体の下に来て、 自分自身の腹に上半身を預けるような不格好のまま、リースは犯されている。 尻こそ上げてはいるものの、それは負担を和らげる無意識の所作に近い。 元の体重に比べて倍近く――羊水や脂肪のあれこれ含めて増したため、 今のリースは、自分の体を支えることすら容易ではない体型となっている。 馬の胎児を収める腹部が重くて前に大きく突き出し、重心がずれるのだ。 その点を差し引いても、四六時中杭打ち機のように巨根を捩じ込まれ、 恥骨ごと股関節ががたがたになっている現状では、立つことすら難しい。 リース: いや…けるの…いやぁ… 内臓が――否、自分の体内の“何か”の、不随意で予測だにせぬ動き。 自分の体の中に、異様な、己とは違う存在がいるという何よりの実感。 それは、母親にとって本来、望まれるものにして歓びに満ちたもののはず。 しかし今のリースは、我が子の胎動を、その命があることを恐怖していた。 もう、そう遠くないうちに、この腹の中のものが出てきてしまう―― 種付けからずっと、この命は彼女に苦痛しかもたらしていない。 そして、限界まで膨れ上がった質量が、限界を超えて這い出てくる。 リースは心のどこかで、これが嘘であることを望んでいた… *【出産】 骨が砕け肉の裂ける音――轡越しの悲鳴に混じり、はっきりそれは聞こえる。 舌を噛まないように咥えさせられたもののせいで、呼吸は半端に浅くなり、 唾液と痰との混じった泡が、なおさらリースの喉を一杯に埋めてしまう。 まだ始まったばかり、頭の先端が見えたに過ぎないというのに、 既にリースの体には、常人なら数度は死に至るだけの負荷が掛けられている。 それを無理やりに起こし、蘇生し、ただ、出産をやり遂げさせる―― 産むまでの苦痛は、自分の体が変化していくことに対する恐怖であるが、 産むことの苦痛は、それより遥かに直接的で、命の危機を感じさせるもの。 リース: ……! っ…!ぐ、ん……ふ、っ! 瞳がぐっと小さくなり、焦点の合わないまま、虚ろな意識で、ただ、いきむ。 馬の子を馬が産む分には、体格面での不安がないのだから、すぐに終わる。 しかし今リースが産もうとしているのは、自身の体重の五倍以上の相手の子。 胎児の重量も、人間の胎児の十倍を優に超える巨大なものだ。 仔馬の両足に縄が巻かれ、出産を助けるために外部から強く引かれるものの、 そもそもが大きすぎて、ようやく上半身が出かかった程度に過ぎない。 引かれるのに合わせて呼吸を整えるも、わずかに苦痛を紛らわせても、 内側から引き裂かれる痛み、砕けた骨の軋む痛みは止まらない。 リース: むり、ぃ…っ! し、しぬ、っ…! これが単なる家畜の生産、交配実験としてのものであったなら、 麻酔や外科的処置が与えられる可能性は十分にあった。 だがこれは苦痛を与えることを目的とし、心身を闇に落とすためのもの。 より深い悲哀、より激しい苦悩こそが、魔の器の母胎を生み出すのだ… *【出産♀】 蹄を持った四本の足は父親のそれと全く同じ様子をしていたが、 馬の首が在るべき箇所に存在していたのは人間の上半身。 馬部分から出産が始まって、膣口が大きく開かれていたのが幸いしてか、 胴体を抜けてからは、比較的スムーズにお産が進んだ。 リース: あっ…ぎぃ…っ! で、でる…!でちゃう…! はや、く、ぅ…! 体全体が羊膜に覆われて白く光っているのは馬部分の影響であろう。 人間の胎児およびその出産においては、滅多に見られないほど頑丈だ。 全体が出たのを確認し終え、刃を入れるとぶつりと重たげな音が刀身に返り、 そのまま白く濁った羊水と共に、巨大な半人半馬の胎児が転がり出てきた。 上半身は人型――母親譲りの金毛に、うっすら覗く蒼の瞳。 顔立ちは出生直後というのに整って、将来の凛々しき面影を想像させる。 それが、いかにもごつごつした馬の下半身と不可分に混ざり合っている。 両者の遺伝子が混ざり合った姿として、実にわかりやすい外見だった。 リース: ふぅ――はぁ――ふぅ―― う…ぁあ… 馬そのものの胎児よりは小さいものの、人間の胎児よりは遥かに巨大。 肉体的な負担も相当なもの、リースが虚ろな目で天井を見上げているのも、 大きく押し拡げられた骨盤の痛みと、全身の軋みによる部分が大きいが、 馬との交配によって孕まされた、という精神的な部分も無視できない。 産まれた赤子は既に下半身をばたつかせ、体を支えようとしているが、 安定しない上半身がゆらゆらと傾いて実に危なげ、今にも転びそうだ。 飼育員に赤子の回収と臍帯の切除を行わせると、赤子は大きく泣いた。 ぴくり、とリースの指が動いたのは母親としての本能的なものだろうか―― ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪豚≫ *【破瓜】 リース: ねぇ、ちょっと!こんな獣と一緒にして、 私にいったい何をさせるつもりですか! 鉄格子をギシギシと軋ませながら、リースは悪魔達に向けて吠えた。 彼女の言う獣とは、すなわちこの世界のどこにでもいる家畜、豚であり、 そこにはまだ――“自分は人である”という、無意識下の甘えがあり、 いかにも発情期を迎えたこの豚と、同じ房に入れられる謂れはない―― 自分の扱いに対する、そんな、楽観的にも過ぎる感情が、まだあった。 リースの声は虚しく廊下の奥に響くだけ、彼女の問いかけには答えがない。 そんなリースを豚は脇から突き飛ばすような格好で横倒しにさせ、 両手の間に自分を挟み込む形で、彼女の上に覆い被さる体勢となった。 リース: あ、やめ…! 抗議の声を聞き終えるまでもなく、豚はリースの濡れてもいない性器目掛け、 既に勃起した捻じれ槍を深々と突き刺し、抉る。膜の裂ける感触ごと。 動転した状態では、自分より体重のある豚を押し退けることはできない。 仰向けで、力を入れにくい体勢を取らされていることも拍車をかけた。 必死に突き出した両腕も、豚の皮の上をずるん、と哀れに滑って宙を向き、 体と床の隙間に挟まった髪が、引きずられてぎしぎしと強く軋む。 頭皮を引かれるその痛みと、破瓜の痛みとは、なおさら冷静さを失わせ、 リースは目を白黒させて暴れるが、それは事態を益々悪化させるばかり。 リース: っぐ…いた、くぅ…! この、ゆるさ、な、ぁあ…っ…! 豚の性器そのものは、人のそれと比べると大きい部類。だが最大の特徴は、 螺旋を描くような回転した構造、雌を孕ませるための進化の結果である。 より奥の奥を穿ち、そこにある卵子を確実に撃ち抜く二つの策の一つ。 当然、リースは自分を犯している獣のそんな繁殖戦略など知るわけがない。 豚の睾丸から、精子がうなりを上げてリースの膣内に突撃を始める。 処女とはいえ、膣内に刺さった物体の動き、犯している雄の様子などから、 それが交尾の次の段階に移っているのだ、と推測するのは容易い。 じゃぼじゃぼした波打つ感覚と、粘っこい何かが溜まっていく感覚―― 膣内への射精ののち、粘度の高い別種の液体が蓋の代わりに中を埋める。 雌が精液をこぼしてしまわないようにする、雄のもう一つの戦略がこれだ。 自分が賤しき獣に汚された、という事実は強い衝撃を与えるが―― 彼女が真に苦しみ、悩むのは、むしろこの先のことである。 *【種付け】 独房の中に、金髪碧眼の美少女と、それと似つかわしくない粗野な獣畜生。 その対比だけで、下卑た思考を巡らせるものは決して少なくなかろうが―― 両者が実際に、あらゆる体液を撒き散らしながら激しく交わっており、 しかも、少女は現状に、絶望感すら滲ませる顔で必死に抵抗するとなれば、 彼女の尊厳を磨り潰す娯楽としては、もう文句の付けようもあるまい。 しかし、この行為はあくまで別の目的のもとに行われているに過ぎず、 彼女を嘲笑し、哀れな女と見下げてくれるものすら、ここにはいない。 誰からの視線も投げかけられずに、リースはただ豚の欲を受け止めるだけ。 リース: うっ…うぅう… だれか…誰か助けに…きて… 唯一、彼女のいる独房に何者かの気配が近づくのは、餌と掃除の時ぐらい。 交尾の最中はそれを邪魔しないように、飼育員はすっかり隠れてしまう。 彼女の縋れるものは、自分は豚ではなく、孕むことだけはないだろう―― そんな、無力な想像に過ぎない。そしてそれは――容易に裏切られるのだ。 リース: …っ、ぁぁあ… また、中に… 豚に犯されたところで、失うのは尊厳や誇り程度のもの。 自分はまだ人間で、豚と同程度の存在に堕ちているなどとは信じたくない。 だが――彼女の体は既に、あらゆる生物の母胎となるものに変化している。 下等な獣の精とて、リースを孕ませること自体は難しいことではないのだ。 *【妊娠初期】 目を背けていた事実――自分が豚の子を妊娠している、ということに、 その膨らみの明らかな今になってさえ、リースは抗おうとしている。 体調不良だから、太っただけだから、運動不足だから――言葉を弄しても、 日毎に重くなる体は、その程度では説明しきることなどできるはずがない。 リース: ちがう…こんなの… 私は… 彼女の内心の悩みを、豚は当然斟酌などしてはくれない。 目の前に、自分に宛てがわれた雌がいる――だから、交尾をする。 そんな、極めて原始的な欲求でもって、リースをひたすら汚し続けるのだ。 彼女が既に自分の子を孕んでいようがいまいが、関係なく―― いっそ、この行為によって流れてくれればいいのに――そんなことを、 リースは時折思っては、また自分で打ち消す。もう何回も、繰り返し。 その考え自体が、自分が豚に孕まされたのだと認めることに等しいからだ。 そしてまた、もう一つ――無意識の、母性の萌芽のために。 リース: や、やめ… … …うぅ… 豚なぞの子を、滅んだとはいえ一国の王女が愛しく思うはずも――と、 心のどこかにはそんな想いもある。そう簡単に割り切れるはずもないから。 その感情とは裏腹に、彼女の心身はゆっくりと、着実に、一日ごとに―― 母親のものへと、作り変えられている。今更、どうしようもないほどに。 *【妊娠後期】 リース: やめなさい、もう…! あなたの、子どもがいるんですよ…! 豚に孕まされた――そんな事実がもはや否定しきれなくなった時、 リースは必然的に、心を守るため――この子は望まれて作られたものだと、 相手も自分が妊娠したのを喜んでくれている――そう思い込むことで、 ようやく、己の無様な臨月腹に、肯定的な意味を見出そうとした。 確かに、それが尋常のつがいであれば――同種の雌雄でさえあれば、 あるいは、“彼”がそう考えることもあったろう。 けれど――豚の子を孕まされたからといってリースはあくまで人に過ぎず、 豚は豚、彼女の内心の悩みをどれだけ酌めるもの。 繁殖のための行為――そして、実際にそれは成っているわけであるが、 そこには、原因と結果の対応、妊娠という事実に対する豚側の反応がない。 もしかすると単に、自分とこの狭い空間を共有しているだけにすぎず、 性的な欲求を吐き捨てるだけの器に過ぎない、と見ているのかもしれない。 豚ごときが――そう、捉えようとすればするほどに、 その豚なんぞに、好き勝手に凌辱される己の惨めさが強調されてしまう。 まんまると膨れた腹の上に、豚が体重を乗せながら跨ってきて、 どう足掻いても、苦痛も羞恥も一切弱まることがない―― リース: やめなさい、もうじき、なのに…! やだ、うまれる、やめて… ださない、で… 既に子宮内には豚の赤子が丸々と太りながらその機を待ち続けており、 繰り返し放たれた精液も、蓋代わりの体液も、羊水に混ざって溢れ出す。 豚の子を妊娠し――あまつさえ犯されながら、出産が始まろうとする。 半狂乱になって手をばたつかせても、彼女にはもうどうにもできない。 *【出産】 リース: あぁ…っ… うみたく、ない…! 日課の性処理を終えた豚が離れると、押し潰されていた腹が戻り、 胎動は一層、内容物を吐き出すための断続的で容赦のないものへ変化する。 陣痛と嘔吐感による悪寒が全身をがたがたと余すことなく震えさせ、 目を剥きながら歯を噛み締め、その瞬間に抗うのである。 ここしばらく、豚としか交わっていなかったのだから――胎児の正体は、 人と豚との混血以外に、論理的にあり得ない。それが可能でさえあるなら。 一縷の懐疑――人と獣は交わらない“はず”、あまりに無力な蜘蛛の糸。 赤く、毛の弛んだ嬰児の頭――視認するまでは、嘘であるはずなのだ。 リース: やだ、やだぁああぁ…っ! その哀れな妄想さえ、もはや否定しきれない腹部の痛みと、その根源、 肩口までを覗かせた新生児の――折り畳まれた耳の形によって、砕かれる。 確かに胎児は人間のそれより小さく、産みの苦しみはいくらかましだろう。 それはなんの慰めにもならず――“人ではない”ことが強調されるだけ。 そしてまた、するりとお産が済んでしまう、ということは、 いかに出産に抗おうと股を閉じたり、力を入れても無駄ということ。 なまじ意識がはっきりしていると――異様な赤子の姿まで、見えてしまう。 引き裂かれる痛みは、身体よりもむしろ心の方にこそ、深く響く。 リース: ちがう…ちがう、ちがう… こんなの、わたしの、じゃ… だれか…やめ、て… たとえどれだけ必死に否定しようとしたとしても、眼前の赤子は消えない。 それが臍の緒によって自分と接続され――まだ胎盤と接続されているのも、 見覚えのある金の体毛がその頭頂部に覗いているという事実も、 その物体が上げる、心を揺さぶる不愉快な産声も――消えてはくれない。 *【出産♀】 リース: う…うぁ… おわ、った…? 豚との交配によって発生したものでありながら、形状は人間に近い。 人間の胎児に、豚由来のパーツが所々にあると捉えた方がいいだろう。 だからこそ、自分が産んだものが、他の生物との混血によってのもの―― どちらでもない、異形の混ざり子であったことは強い衝撃を与えるようだ。 リース: え…人間…尻尾…? なに、これ… わたしが…これを…? 疲労によって混濁した頭でも、四肢の先端が黒く硬い蹄であることや、 頭頂部にある、人間の耳とは明らかに形状の違うニ枚の三角形の肉片、 細長く螺旋状に巻いた尻尾などを、見間違うことはできないらしい。 赤子が泣いても、リースは呆然と臍の緒の先を見ているだけであった。 リース: ごめん…わたしには… わたしには、あなたのこと… たいせつ、に…できない… リースは顔を手で覆って泣き始める――臍帯を股間よりぶら下げたまま。 赤子は母のすすり泣きなど知らぬと、自らの命の存在を誇示して泣き喚く。 後産が始まってようやく、リースの表情は産道の開く痛みに歪んだ。 邪魔にならないよう、飼育員が臍の緒を鋏でぶつりと切ると―― “切られた”ことによって逆説的に、“それ”との繋がりが強く認識される。 “それ”、胎盤、自分――三者の連帯が、実感としてリースの心を揺さぶる。 産湯を済ませ、産着に包まれた赤子を握って去っていく飼育員の背中に、 ほんの一瞬、リースは何とも形容しがたい感情を交えた視線を向けた。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪ヘルハウンド≫ *【破瓜】 大型犬と同程度ながら、牙や爪の鋭さ、双眸の険しさは比べ物にならない。 リースは目の前の生物の姿に、本能的な恐怖を感じた。 地獄に生息し、本来なら現世に現れることなどほとんどないはず―― そんな魔狼と、この狭い檻の中、一対一で閉じ込められている。 リース: あ…ぁあ…ひっ…! これまでの、戦士としての生き様の中で、命の危機に瀕したことはある。 いつか死ぬこともまた、国を守るものとしての誉れであると考えてきた。 こんな形で、獣の餌になる――武器も取り上げられ、抵抗もできない状態で、 一方的に、食い殺される屈辱――そんな想像は、彼女の中にはなかった。 腰を抜かしたリースを押し倒すように、魔狼はその巨駆でもって圧を掛ける。 白く――それでいて幾重にも酸化した血の膜の張った牙が太く覗き、 赤い瞳には爛々と、獣の姿からは想像もできない悪意ある知性が窺えた。 そして――暗い体毛とそれらは、口から漏れる火の粉に、赤橙に照らされる。 だがリースにとって幸運だったのは、目の前の獣が腹を空かせてはおらず、 すぐに噛み殺されるような状況ではないだろう、ということ。 そして彼女にとって不幸だったのは、その獣は、繁殖期を迎えており―― 人の雌を交配相手に選ぶことなど、珍しくはない、ということだった。 獣の目にじっと見据えられると、体は竦み、抵抗らしい抵抗ができなくなる。 歯の根が合わず、全身の血が冷たくなっていく――のと同時に、呼吸は浅く。 単に命を奪うだけなら、こうして捕えるまでもなく殺してしまえばいいし、 晒し者にするでもなく、単に繋いで――という現状に、説明がつかない。 死の恐怖に怯えるリースは、四足をついて懸命に逃げようとした。すると、 獣は彼女が失禁していたのを目ざとく嗅ぎつけ、床に押し付け跨って、 性器――既にはち切れそうなほどのそれを、獲物に牙を立てるかのように、 ずぶり、と容赦なく、その目的を果たすためにねじ込んだ。 リース: あっ…! ぐっ…ぁああーっ…! 自分がなぜここに捕らえられ、そしてまた、獣などと共にいるのか―― その理由を思い知らされる。自分の想像が、余りに甘かったことも。 だがその先、この獣が果たそうとする目的を、彼女はまだ知らない。 自分の命がぎりぎりで保たれた幸運を、噛みしめるので精一杯だから。 *【種付け】 リース: うぅ… ぁ…いや…! 地獄に生息する狼――とはいえ、外見上は普通の大型犬に近い。 それは交尾の際の姿勢や、特有の進化を遂げた性器の形状においてもそうだ。 己の四足に隷属させるため、リースを床に引き倒して上に跨るだけでなく、 刃物に等しき鋭い爪を、彼女の脇腹横にぶら下げるようにして脅す。 獣に、四つん這いにさせられているだけでなく――凶器をちらつかせられ、 それらに対して、気丈な対応の一つもできない、己の醜態を恥じる。 それと同時に、“こう”されている間は、自分に害は及ばない―― そんな腑抜けた感情が起きるぐらいには、彼女の心は恐怖に支配されていた。 リース: (今は…耐えるしか…!) 狼の喉から、分厚く、重い唸り声が響くたびにリースの背は竦む。 少しでも腰を高く上げ、この獣を不快にさせぬよう、その怒りを買わぬよう。 畜生に媚びる有様、戦士としての生き恥、祖国をも汚す惨めな姿―― どれだけ貶められても、そこには、内心、獣を侮る気持ちがあった。 所詮、人の雌を気まぐれに犯し、性的欲求に操られているに過ぎない、と。 いくら精を吐かれようと、自分がそれの仔を宿すことなどありえない、と。 この獣は執念く、彼女のそんな慢心を砕こうとしている。 それは、彼女が腹部の異常に気付いた時――もう、すぐのことだ。 *【妊娠初期】 尻と尻を向けあって、射精の体勢を取る――挿入を維持したまま、 雄の性器だけが、橋のように両者の間を繋ぐ、いわゆる交尾結合。 その体勢に入ってから雄が射精を終えるまで、長い場合は一時間にも及ぶ。 瘤が腟内で膨らんで栓をするため、リースは逃げるに逃げられない。 犯されている最中の時間と合わせれば、優に二時間近くの強制的四つん這い、 しかも意図的に、腰を上げて乗りやすいように促してやらねばならないのだ。 彼女の屈辱は言うまでもなく、身体の負担も相当なものとなってくる。 これまでは、そんな中でも、獣への冷笑をもって耐えることができたが―― リース: (嘘…これは嘘…違う、妊娠してなんか、ない…!) 肘と膝に囲われた空間に、確かに腹部が張り出し、存在感を示している。 本来の細かった腰を思い返すまでもなく、その肉の出具合は異様だ。 見るからに固く、内容物のあることを如実に示す腹部の様子は、 もはやリースに、己の妊娠から目を背けさせてくれない。 初めは、この獣の射精量が想像異常に多かったから――腹部の膨満感も、 吐かれた体液で子宮が波打っているに過ぎないのだ、と初めの頃は思えた。 しかし食事の際にわずかに覚える胸のつっかえ、胃のむかつきや、 不意に手で触れてしまう、下腹部のほんのりとした弾力ある曲線―― この獣が、ここ最近は犯す頻度を下げてきている、ということ自体も、 嗜虐心の充足よりは、自分の子への、気遣いのようなものと感じられるのだ。 自身の支配下にあるつがいに対する、ある種の傲慢さにも似て―― リースは唇を噛み締めながら、己の変化に耐えるしかなかった。 *【妊娠後期】 既にリースの腹部はその突端、ぷっくりと飛び出した臍の部分が、 四つん這いの体勢を取ったとき、床に擦れんばかりになっている。 もはや狼は爪を彼女の脇腹や横腹に垂らして脅すようなこともせず、 丸めた指で小器用に、つがいを床に押付けて自分の性欲を満たすために犯す。 この種は多種の雌――特に人間の女を繁殖相手とすることがあり、 初めは命を脅かして支配し、次は自身に奉仕することを覚えさせ、 最終的に、相手の心が壊れるまで凌辱して追い込んだのちには、 つがいの体が限界を迎えるまで、ひたすら子を産ませるという生態を持つ。 リース: っ…!この、調子に、乗らないで…っ! う、ぁ…いた、ぐぅ… この獣にとって計算外だったのは、リースが未だに心折れず抗っていること。 当初の恐怖に支配された様子からは、遥かに長く耐えている――何故か? 目の前の雌に子を孕ませるという大目標は達成しているのだから、 後は自分に屈服させるだけ――その目処こそ立たないが。 腰を叩きつけられて、尻の肉がたわみ、腹ごと上半身が大きく揺れる。 下から持ち上げられた内臓がさらに激しく前後にかき回されて嘔吐感を誘い、 孕まされたという耐え難き屈辱が、熱苦く、酸い液体として喉を昇る。 ぼたぼたと落ちる大粒の涙――四つん這いでは、拭うに拭えない。 リース: うっ…うぅ…ぐすっ、うぅうう… 交尾結合に移行して、相手の体が背中から剥がれた時だけ、手が自由になる。 頭を抱えて唸りながら、この時間が終わることをただひたすら願う―― そんな一時しのぎの繰り返しの果てが、この大きく膨らんだ胎というのに。 “中身”の出てきてしまうその瞬間を――リースは死よりも、深く恐怖した。 *【出産】 リース: …!あっ、あぁあ…っっ…! いや、ぁ、あ…あ! 日課と化した種付がようやく終わって、交尾結合の最中から痛み始めた腹部。 リースは苦悶の声を力なく上げながら、少しでも早く性器が抜けるのを祈る。 瘤が小さくなり、ちゅぽん、と空気の音を立てつつ抜けたのを聞き届けると、 床の上をごろごろと転がって、より強くなった陣痛を我慢しようとした。 大型犬に相当する体躯の獣とはいえ、人間の胎児よりは小さい。 しかし、安産と言い切るには、彼女への肉体的負荷は大きなものであった。 子宮口が押し拡げられる感覚は、胎児の大小とは直接的には関係せず、 畢竟、産みの苦しみそのものが、無視できるほど軽いわけでもない。 直前まで交尾させられており、疲労もそのままに出産が始まったため、 体勢を探る余裕もなく、ほとんど叫ぶような有様で、リースはいきむ。 必死の思いで体を床に横たえ、両脚を大きく開いて力を入れて―― その胎内に宿った、忌まわしき獣の赤子をひり出すために。 リース… ぐっ――あ、っっ――! あ、で、でるぅううっ…! 背中に浮いたいくつもの脂汗が弾けて脇腹を伝い、床に爆ぜる。 少しずつ、黒い毛に覆われた頭が覗き――次は手、腰――脚へと。 羊水に濡れて艶めく産毛が、赤子の身悶えによってぬらりと光を返す。 一度始まれば、後は止まることなくお産は進み―― ずるん、と開いた膣口から細長い毛の束――尻尾が尻ごと飛び出して、 なお閉じないその穴からは、赤黒い白と青の紐が一本、生生しく伸びる。 彼女と赤子と――獣との血の繋がりが、臍の緒一本に如実に示されている。 自分の内臓と接続した、その物体の重量――獣に孕まされた赤子。 それを自分の目で見ねばならない、という本能的な要請に心は揺れる。 だがもし、自分との血縁を目視してしまえば――言葉を紡ぐのが怖くなる。 見るべきか、見ざるべきか――混乱した頭で息を整えている真っ最中に、 嬰児は、母の気持ちなどいざ知らず、大きな声で泣き始めた―― *【出産♀】 リース: う、ぁ、あぁ…! ずるり、と生々しい音と共に胎児は外気に触れ、元気よく体をよじった。 赤子は全身を短い銀色の毛に庇われており、一見して人型には見えない。 よく観察すれば、その毛は黒みが強い灰色の箇所と、光沢のある金毛とが、 斑になるように生え、羊水に艶めいていることがわかる。 耳は二対、犬のように頭頂部にあるものと、人のように側頭部にあるもの。 そのどちらもが、周囲の音を拾うためにぴくぴくと弱々しくひくついている。 体型は人のものとも獣のものとも言えない、実にアンバランスな姿。 両親の形質を引き継いでいることだけは、体の諸要素から伺える。 リース: これ…じゅうじ、ん…? あ…ちが、う… あえて評するなら変身能力の未発達な獣人の新生児に近いだろうか。 あれも獣人状態と亜人状態のどちらかに確定させる能力を身につけるまでは、 不安定な姿を持つものである。だがこの赤子にその能力は発現しないだろう。 獣人と、獣と人間の混血児は、自然と近い形質を獲得するようであった。 リース: 犬…?ひと…どっち…? なに…? 単なる犬を産むよりは、いくらか人に近い分だけ受け入れやすいか―― もしくは、なまじ自分に近いだけ、その差異を強く認識するのだろうか。 臍の緒がついたままの、己の異形なる赤子をリースはじっと見つめている。 無論彼女に、獣人の新生児の知識もそれに対する愛着も存在するわけも―― ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪キマイラ≫ *【破瓜】 獅子、龍、山羊――そして蛇の尾、蝙蝠の羽まである、異形のその姿。 魔術によって組み合わせられ、固定された不自然極まりない肉体は、 常に境界が互いを蝕みあって蠢き、ことさらに不気味な様相を呈する。 しかしその部品自体は、個々の生命として、それぞれに本能も欲もある。 リースを押し倒した際には、獅子の形をおおよそ維持してはいた。 雌を組み伏せるということは、雄としての欲求の最大の充足―― すなわち、子を孕ませるという一大事。興奮は激しく精神を波打たせ、 その変化はさらに流動的に、キマイラの姿を変化させ続けている。 リース: 何…この生き物…! 嫌、離れて…! 体格差のある両者では抵抗らしい抵抗にもならず、ますます雄を興奮させる。 そのまま、熱く脈打つ肉の槍が、リースの腹綿を強くかき回した。 破瓜の痛み――いやそれよりも、性器そのものに生えた、鋭い棘の痛み。 獅子の性器を模したそれは、膣内をガリガリと惨たらしく刻む。 リース: があっ…!ぎっ、ぐ、ぁあああ…! っ、ぁ…ぐっ、あ…っ…! 生娘に耐えられるような苦痛ではない――だが試練はそれだけではなく、 興奮によってキマイラの相が変化すると、例えば龍のそれに似た太さを―― あるいは蛇のそれに似て二本、尿道とを同時に抉り抜かれたり、と、 興奮に合わせ、性器の形状も激しく変化し続けるのである。 結合部がリースからは見えないため、自分が次にどれで犯されるのかは、 膣内をぐちゃぐちゃにかき回すその物体の変化から察するほかなく、 流されるばかりの彼女には、この行為は無間地獄のようにも思えた。 特定の苦痛なら、慣れることもできたろうに――それが不可能なのだ。 満足しきったキマイラが体を離すと、真っ赤に染まった惨状に、 リースはどこか、これが嘘であるかのように遠く見ていた。 現実のものとして受け止めるには、あまりに重い疲労と負担―― だが彼女の子宮内に泳ぐ精子は、どうあっても否定できないのだった。 *【種付け】 常に肉体が変化し続けるキマイラは、性器の形状も流動的であり、 また同時に、交尾の際の主導権をどのパーツが握るかも、不安定である。 そのため、それぞれの要素――獅子、龍、山羊といった各生物は、 他の自分に先を越されないよう、争いながらリースを犯している。 リース: いたっ、いたいい… う、ぁ…!やめ、てぇ…! 変化のたびに、交尾の形態――腰使いから勢いから何まで変わるので、 次に何に変わるのかまではわからずとも、今、どれが優勢かはわかる。 わかったところで、同時に何匹もの獣と交わらされているのと同じ、 この状況だけはどうにもならないし、解決策たり得ないのだが。 目の前の雌を孕ませる、という目的こそ、獣達は共有しているものの、 それを誰が成すのか、については統一された見解を持たないようである。 射精の瞬間の主導権を握ることで、自らの種をつけてやりたい―― 獣共の思考は、おおよそそれに支配されている。 もっとも、彼ら自身――そしてリースもまた、知るはずもないことだが、 魔術的に融合させられたこの生物の生殖は、個々の部品のものと違い、 例えば獅子の精が当たれば半人半獅子となる――といった、 単純な理屈で回っているわけではない。龍や山羊や蛇でもだ。 この姿が単独の生物として成立しているのと同じ理屈で、精子もまた別種。 遺伝情報そのものが、複雑に混ざり合って複数の生物の特徴を兼ね備える。 つまり受精卵には、そこに人間の要素をさらに混ぜ込むことになるのだ。 胎児がどんな姿か――この世の誰も、それを断定できるものはいない。 *【妊娠初期】 獣の混ざり合った異形の生命とて、生殖能力に陰りはない。 それが明らかになったのは、リースの腹部が目に見えるほどの膨らみを持ち、 しかもその種の主が、この獣の他にありえない、と確認されたから。 野生で生きられるような生命体でこそないが――繁殖欲求は機能する。 そしてその胎児がどうなっているのか、は産まれてくるまでわからない。 興奮冷めやらぬように、リースをいまだ凌辱し続けるその姿を見ても、 常に流動するその肌の色――鱗や毛の密度を細かく調べるまでもなく、 キマイラという生物がいかに不自然なのかを物語っている。 リース: うう…おなか…ぐるぐる…してる… こわい…やだぁ… 自分が孕んでいるものへの、言語化される以前の原始的な恐怖。 それが同種との間の子であれば、産まれてくる際の姿も想像はできる。 だが現在子宮にいる存在は、何の種から生されているかもわからず、 確実なのは、自分の卵子が使われている、という一点のみ。 胎児自体も、己の姿を決めあぐねているのか――妖しげに蠢く。 交尾の主導権だけでなく、吐かれた精子そのもの――受精を経てさえ、 キマイラを構成する各生物は、互いの存在を主張しあっているかのよう。 まだ初期の段階からこうである。リースの恐れも仕方のないこと。 これが外部からでも胎児の存在感をはっきりと確認できるようになれば―― 子宮から這い出るその瞬間さえ、翼が生えたり消えたりするかもしれない。 母のそんな感情も知らず、赤子は着々と己の肉体を肥らせ続けて―― 遠からず訪れるその瞬間に向けて、彼女の胎内で眠っているのである。 *【妊娠後期】 リース: また動いてる…こわい… 誰か…いや…消えて…! いよいよ臨月が近づくと、胎動もはっきりと目に見える規模になる。 人間の赤子なれば、その動きもせいぜいが身じろぎ、蹴る程度だろうが、 獅子とも龍ともつかぬ、あるいは山羊や蛇、蝙蝠にさえその姿は似て、 角やら翼やらを思わせる突起が、皮の下から主張している。 定期的な検診の際に、光に透かして調べる際も、形が変化を続けていた。 このことは母体であるリース自身にも伝えてあるために、 なおのこと、彼女の精神を暗く、重苦しいものへと変えているようだ。 そんな精神的の揺らぎに一々配慮するほど、父親たる獣は優しくなく―― リース: っ、もう、やだぁ…っ! いたい、いたいからぁ…! たす、たすけてぇえ… 腹の皮越しに、自分たちの遺伝子を引き継ぐものの存在を感じ取り、 その喜びと、自分のものではないかも、という妬みと焦り―― そういった感情の織り成す複雑な模様は、獣の脳では処理しきれない。 結果として、臨月の妊婦相手だろうが構わず、主導権争いの道具にする―― 一個体としては、目の前の雌を孕ませ、己の遺伝子を残す、という、 最も根源的な欲求に従ってはいるものの、内心はぐちゃぐちゃなままで、 生物としての矛盾を、リースという捌け口に全て押し付けていると言える。 それはたとえ出産の直前――あるいは最中でも、変わりはしないだろう。 *【出産】 リース: ぎっ…ぃ、いいいい…っ! ぁ、っぐ…っ…! 必死にいきむリースの股ぐらには、既に金色の頭頂部が覗いている。 獅子のたてがみというよりは、人間の髪の毛にも近くは思えるが―― 角のような突起がそこに見えていることから、それは確かに異形の仔。 さすがの獣も、彼女の出産をじっと見つめているばかりである。 涙と痛みに霞む視界では、はっきりと我が子を見ずに済んでいる―― 痛みばかりは誤魔化せず、リースはまさに獣の様相で、激しく吠える。 肉を裂かれる苦痛もさることながら、畏れていた瞬間の訪れそのもの―― それにこそリースは怯え、しかして逃げようがないのだ。 リース: はぁ、はぁ… これ、は…? さすがに卵殻の形成まではいかなかったが――角の一本は竜族のそれで、 肩口に見える突起には、翼らしき膜も。鱗や毛皮も確かに確認でき、 新生児にも関わらず、口腔内には肉食動物の牙が何本か見えている。 尻の先には、目を瞑った細い蛇の頭さえ生えているのだ。 自分の形質を一応は持った子が産まれたことに満足したのか、 キマイラは喉を鳴らしながら、奇妙な産声を上げる仔の姿をじっと見る。 人間の要素がどの程度あるかは、調べるまで判断できないだろうが―― 一応の目的、としては果たされたと、獣自身は考えているらしい。 臍の緒の色も、赤黒や蒼白の混ざった普通の肉色を持つのではなく、 その根本、胎盤ごと奇妙にまだら模様の複雑な色彩を有していた。 どれだけ異様な姿でも、それがリースの子であることだけは明白であり―― いつまでも痛みと疲労とに、逃避するわけにもいかないのだった。 *【出産♀】 蠢く肉塊――それが第一の印象である。それは実に不安定な姿をしており、 手足の数やその大小、肌の色さえも目まぐるしい呼吸しているのであった。 にも関わらず変化を続けるその形態は、結局のところ人型に収斂していく。 まず大枠として人間の胎児のそれがあり――その横を廻っているような。 リース: うっ…! なに、この音…! 泣き声は声帯さえも変化を続けているためか、高低の定まらない、 うねるような、時に吠え時に啜り泣く、心をざわつかせるものとなる。 声だけを聞けば、同時に数体が一斉に泣いているのだと思うに違いない。 それが、たった一人の赤子の喉から発されたものとは、とても。 泣き喚く赤子とは裏腹に、その母親――リースは凍りついたように静かだ。 自分の股間から伸びる臍の緒のさらに先、間違いなく己の内臓の一部―― そこにそんなものがぶら下がっていることを、頭で理解できていない。 まるで他人事、浅い呼吸を繰り返しながらその肉塊をじっと見ている。 リース: あ…あぁ… 辛うじて彼女の喉から漏れた一塊の呼気は、しかし言葉の形を成さない。 そして肉塊はようやく己の取るべき姿を見つけたのだろうか、 脈打つ皮膚と神経、目まぐるしく互いをくらい合う斑の体毛とが、 一つの均衡――すなわち生命としての外形に収まっていくのである。 ふっ、と止まった変化のさざ波、まんまるとした人間の赤子の頬が覗く。 それは確かに人間の、母親からの遺伝を想わせる見慣れた赤み。 不安に掻き乱されたリースの心は、目の前に差出された子にまた揺れる。 血縁を否定するには、赤子の顔はあまりに彼女に似すぎていた。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪ポロン≫ *【破瓜】 ポロンは元来、臆病な性格をした亜人種であり、一対一の状況を好まない。 自身が手先こそ器用でも、腕力において他種に劣るという不安のためだが、 ことこの房の中では彼は絶対的優位者で、誰にも害されない。 そのことが、本人も知らなかったような嗜虐性を目覚めさせた。 リース: 縛られてさえいなければ…! くっ、放しなさい…! ポロンの用いる伸縮性のある鞭と、同じ材質から作られた強靭な紐。 武器に使うには長くて用をなさないものだが、こと拘束具として使うなら、 却って強すぎると言えるほど頑丈である。肉にぎしぎしと食い込んで、 擦れた箇所からは、既にじんわりと血の赤が滲み始めていた。 身悶えしても、紐との接触部が痛むだけで、どうにもならず―― 力を抜いて頭を下ろし、肩で息をするリースの背後に、一つの影。 それは、何やら細長いものを手に抱え、大げさにそれを振りかぶって―― 高い音。空気と、肌――肉の裂ける音。少女の口からは困惑の悲鳴。 リース: ぎっ…あ、っ――く、ぁああ… なっ、に…を…! 痛みの原因を確認するより先に、追い打ちの二発目、三発目が続く。 たちまちに白い肌にはいくつもの無惨な赤い筋が通り、血を噴き上げる。 がくん、と全身の力が抜けて、倒れ込むリースの尻を、亜人が掴んで―― ずぶり、と純潔ごと食い荒らす。濡れてもいない膣の中に。 その苦痛も、決して生半なものではないのだけれど、 先程までの鞭に打たれる痛みに比べれば、遥かに些細なものであった。 ご丁寧に、リースの耳許で鞭の風切り音を定期的に鳴らし続け―― こうされたくないなら、大人しく犯されていろ――肉と魂とに、刻んで。 リースはただ、真新しい傷から滲む血と、破瓜の痛みに黙るしかない。 その先に訪れる苦悩がより深く、彼女の尊厳を傷つけるのだとしても。 いかに女戦士の一族とはいえ、直接的な苦痛はやはり恐ろしいもの。 生物としての本能に訴えかける、耐えがたき信号なのだから。 *【種付け】 リース: ――! っ、む――っ! 猿轡を噛まされ、後ろ手に縛られ、床に転がされて―― これではたとえ屈強な大男であっても、まともに力は込められない。 ましてや、全身に固くポロン族に伝わるロープが食い込んでいるとなれば。 身を捩るだけで、肉に食い込んだ縄がぎちぎちと薄皮を食うのである。 そして――風切り音が一度。 短く、先端が掌のように開けたバラ鞭で、拷問のために使われるもの。 轡がなければ、少女は舌を飲み込んて窒息していただろう。 目を大きく見開いて、目の端からは涙がぼとぼとこぼれる。 リース: ふぅっ――っっ… ぐっ、ぅ、うぅぅう… 鞭そのものの痛みと、反射的に反らせた体の痛み、縄の食い込む痛み… 三種類の苦痛が、バラバラのタイミングで、全身のあちこちに響いてくる。 血の滴る感覚も、背中を伝って一層ずきずきと酷く痛みを感じさせ、 ぬるり、とした嫌な感触が、リースの背中に大粒の汗を生じさせた。 たった一発の鞭打ちで、少女の抵抗しようという気力はごっそり削がれた。 ポロンが尻に小さな手を当てて、挿入しようとするその最中にあっても、 片足で蹴り飛ばせてしまう小柄な雄を――とても押し退けられない。 相手が何をしようとしているか、わかりきっているというのに。 リース: や、やめひぇ… おね、がひぃ…! 犯されて――凌辱者の子をむざむざ孕まされることになるか、 もしくは、抵抗の余地がなくなるまで、鞭で打たれて心を折られるか―― いや、鞭だけならまだいい。彼女の後ろにはまだいくらも禍々しい形の―― その音を利くたび、リースの体はがたがたと震えるのである。 死の恐怖には、慣れてきたつもりであった。戦の中で死ぬ覚悟はあった。 だが、苦痛そのものを目的とした、終わりのない時間――それには。 結果が――この亜人の子を産まされるというのが同じなら――受ける苦痛を、 ほんの少しでも小さくしたい、という彼女の選択を、誰も責められない。 *【妊娠初期】 リースを凌辱する際、ポロンは必ず彼女の四肢をぎっちりと拘束する。 自分と相手の立場の差を思い知らせるために、その必要性が薄れても、だ。 抵抗する気力はもはやほとんど残っておらず、瞳には活力の光がない。 背中にできた無数の鞭の痕、裂けた皮膚の赤が実に痛々しい。 なお彼女の心に深くのしかかるのは、明らかな膨らみを持った腹部。 亜人に汚されたリースの子宮は、その赤子を既に宿してしまっていた。 胎動は複数分のそれで、多胎であることを思わせるが―― この中から実際に産まれるのは、精々が一、二体というところだ。 リース: ふっ、むぅ…! っぐ、い、いやぁ… ポロンは立場的にも弱い、小型哺乳類の特徴を持った亜人であり、 多産、胎児の再吸収、胎内での共食いめいた栄養の奪い合いなど、 より生存に適した子を産むための特徴を、その名残として持っている。 文化を持てる程度に発展した現代でも、多死の頃の特徴は変わらないため、 他の種との混血が発生した時――まずは、胎児自体が大量に分裂する。 そして、その中から生き延びた個体が、最も大きく育って出産に至るのだ。 リースの胎内にいる――現在は二十弱のそれも、直に淘汰されるだろう。 外界からのストレスにより、母胎は自ら子の数を絞り込んでいく。 リース: ぎぃっ…!ぁ、あ…! っ、ず、ぅ…! リースの背中に、小ぶりな一本の錐――ダーツが突き立てられた。 鞭の痛み、縄の食い込みとも違う、抉られ、貫かれる苦痛―― 扱いなれたダーツを掌の中で転がし、ポロンは母胎にストレスをかける。 彼女が産む子が、少しでも強くなるようにと願いを込めて―― *【妊娠後期】 リース: ……うぅ… いたいの、は、もう…… 出産が近づくにつれ、リースの抵抗は明らかに弱々しいものとなったが、 凌辱の勢いは、却って激しさを増すようにも思えた。臨月の相手をである。 この頃には、胎内での生存競争もほとんど決着し、残る胎児は数体に。 胎動も明らかに力強く、産まれるべき個体の生命力を思わせる。 自然環境においては、力の弱いポロンは必然的にストレス下に置かれ、 このような人為的に母胎への負荷を増すような作業を挟む必要はない。 飼育環境という、特殊な空間だからこそ、の行為であると言えるだろう。 無論、そんなことはリースにとって、知ったことではないのである。 体を少し動かすだけで、走る痛みは鋭鈍様々、持続も強度もばらばら。 腹を内側から蹴られる、一切想像もコントロールもできない刺激により、 彼女の体は、否応なしに動く。そしてそれに合わせた痛みが、体を蝕む。 そこにさらに、自分を孕ませた亜人が意識の間隙を縫って―― リース: ぎひゃっ! いぎぃ、ぃいい…っ! 胎児が落ち着いた、という心の緩みを的確に狙われて、体が跳ねる。 片手に握った鞭で背を打たれ、股間には性器を突き立てられて。 リースの心の休まる時などない。意識的に、そのような空白を潰されて、 彼女の目元には、明らかな隈ができている―― それでも、この時間はいつか終わる、とリースは思っていた。 この子を産みさえすれば解放されるはず、そんな無意味な期待を懐き。 野良のポロンに捕まったのならいざ知らず、ここは魔界の最奥だ。 何も、彼女の逃げる余地などあるまいに――それは余りに残酷な夢想。 *【出産】 リース: やだっ、ほどいて、ほどいてぇええ…! でる、でちゃう…! 相変わらず、リースは四肢を固定され、惨めな姿を晒していた。 違うのは、多少は緩められていた拘束がかつてのように強く戻り、 破水が始まったにも関わらず、股間に縄が食い込まされている点だろう。 彼女の膂力でも、解ける気配のない強度のそれである。 胎児が内から這い出る勢いごときでは、とても緩むようなこともない。 しかし、排臨の時は既に訪れてしまっているのだから、そうもいかな。 数多の兄弟姉妹の中から、生きて出産に漕ぎ着けた折り紙付きの生命力―― それが、子宮を押し拡げながら、今まさに産まれようと暴れている。 内臓を内側から、さらに上方向に押し上げられる感覚―― 胎児の大きさは並の人間のそれと変わらない――ポロンとしては巨大、 本来なら、産みの苦しみ自体もサイズに見合ったものであるはずが、 内と外からそれぞれに痛みを与えてくるために、とても耐えられはしない。 さすがに亜人は今の彼女をいたぶりはしない――もっとも、意味もない。 産まれるべき個体の選定は済み、ストレスを掛ける理由もないからだ。 縄で出産を阻害しているのは、胎児の食い合いを誘発するためというより、 世に産まれ出づるための最後の試練のような、まじないの一種である。 リース: ――ぅ、あ、ぁああ…! ほんと、ほんとにでちゃうから…! ほどい、てぇええっ――! 体をくねらせているうちに生じた隙間から、それでも赤子は顔を出す。 父親が何をしようが、母親がどう喚こうが、この嬰児には関係がなく、 初めの一呼吸のため――必死に、産道を通って出てくるのだ。 その産声は、確かに生命力を感じさせる力強いものであった。 *【出産♀】 リースの胎内における生存競争を勝ち残ったのは雌の個体―― 異種交配の成功率と雌雄比率の不均衡、兄弟との栄養の奪い合いという、 何重ものマイナス要素を乗り越えてなお、雌が産まれたという事実。 これは人間とポロンの混血事例においては極めて稀なことである。 肌はうっすら浅黒く、頭頂部には父親譲りの垂れた耳と母親の金髪。 人間との混血であることを示す、五本の指や丸い体躯はあるものの、 それらを加味しても、新生児の姿は大ぶりな鼠のようにしか見えない。 外見からこの個体が珍しいものだと判断するのは非常に難しいだろう。 リース: うぅ…いやぁ… なかないで…わたしを、よばないで… 出産を終えてようやく宙吊りの状態からは解放されたものの、 ただでさえ悲鳴を上げていた全身は、否応なくリースを責め立てる。 脳内麻薬が途切れ――みしみしと軋む筋肉と骨の音に、ひたすら呻く。 大の字に倒れたまま、胸を上下させて喘ぐばかりであった。 耳を塞ごうにも、縛り上げられ疲弊した両腕は思うように上がらず、 かろうじて、リースは己の腕を目隠しのように顔の上に載せてすすり泣く。 腕ですら動かないのだから、脚は無論言うことを聞くわけもなく、 ぐったりと大股に開かれた股間の先には、赤黒い臍の緒がまだ、ある。 父親たるポロンは、自らの種族の血を引く胎児としては巨大な―― だが人間の胎児としては小ぶりな“それ”を興味深げに眺めている。 我が子に、というよりは珍奇なものへの好奇心からの視線―― 否応なしに母となることを選ばされたリースとは、真逆の感情であった。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪ウェアウルフ≫ *【破瓜】 虚ろな目の獣人が、怯えるリースを壁に押し付け、腕をひねり上げた。 毛皮のあちこちには切り傷と毛の禿げた跡が点在しており、 この捕虜が、彼らの王国が滅んだ際の戦争の生き残りであると語っている。 黒い毛皮には、よく見れば酸化した血の染みが無数にあるのがわかるだろう。 獣人は人間との交雑事例がいくつもあり、交尾の形態も非常に似通っている。 抵抗する少女の体を軽々と持ち上げ、自身の性器を取り出すその様子は、 人間が人間を犯す光景と、非常によく似通ったものであった。 脇腹を抱え込んで、浮かせた尻に勢い良く―― リース: いたっ…嫌ぁああっ…! 放して、放してぇ…! 挿入のために腰を屈めているとはいえ、獣人の脚は彼女の四肢より長い。 既に届かない床面に体を引き戻そうとリースは手足をばたつかせるものの、 しっかりと抑え込まれた腰のせいで、虚しく空を切り、逃げられない。 支えが効かないということは、彼女の体重はほとんど結合部に集約されて、 体ごと引き付けながら打ち込まれ、体ごと引き抜かれてまた次―― 自分の体重が、軽減もできない状態で膣肉を裂き、穿ち、削っていく痛み。 そしてそれと同時に、体ごと宙に浮いた状態で激しく前後左右に揺らされる。 歯を食い縛って抗うものの、力を込めて耐えるのも難しい。 リース: っぎぃ、っぅ――! やめ、やめてぇ…! 暴れれば、獣人の爪で脇腹を掻かれ、血が噴き出るばかり―― 結局のところ、苦痛の最小化には、抵抗を諦めて好きにさせるしかない。 それはどれだけ屈辱的で――同時に、射精されることへの恐れを与えたか。 膣内で膨らむその感触に、リースの喉からまた悲鳴がこぼれた―― *【種付け】 リース: あっ、っう…やめ、もっと、ゆっくり…! リースの体を抱え込んだ獣人は彼女の表情や苦悶の声など気にもせず、 ちょうど、性処理のための道具か何かのように――ゆさゆさと体ごと振って、 静止の懇願も、怒りや憎しみを込めた罵声も、一切聞き入れはしない。 獣人という種族自体に、本質的に備わった傲慢さもあるが―― 何より今の彼は、祖国と死に場所を失った抜け殻に近く、自由意志がない。 捕虜として、種付けをするという命令を与えられて実行するだけの、 リースの尊厳を汚すための、道具としか言えないような存在なのだ。 道具として使われる雄の、更に道具として消費される―― 思いっきり力で抑え込まれて、射精されてすぐのほんの僅かな休憩の他に、 リースの体が休まる時はなく――心は尚更、疲労の溜まっていくばかり。 そして行為を重ねるごとに、ある不安は少しずつ大きくなっていく。 もし、この獣人の子を孕んでしまえば―― リース: やめて…!休ませて… お願い、赤ちゃん、いやなの…! 檻の隅で頭を抱えるように震えるリースの手を獣人は無造作に掴み取り、 体ごと浮かせたと思うと、腰を打ち付け始める。虚ろな表情をしたまま。 無為な射精――孕ませたい、という目的すらない、無益な行為。 それでも――彼女の体は、その目的を果たしてしまうのだ。望まざれど。 *【妊娠初期】 どれだけ嫌がろうが、リースの身体は母としての機能を果たしてしまう。 それが種族的に近縁にあたる、獣人との交配となればなおさらだ。 健康な雌が、四六時中腟内への射精を、一切の避妊法なしに受ければ―― その結果が、膨らみの目視確認できるようになったこの胎である。 だが獣人との交尾は終わらない。孕ませるのが目的ではないからだ。 性行為を通じた、リースの肉体と精神の破壊と再生――改造であり、 強き器を産むために、妊娠中にこそむしろ負荷を掛けていかねばならない。 魔王の身体となる胎児は、宿す母体にも強烈な負担を強いる―― リース: あなたの、赤ちゃん、なのに…! いや、やめて…つぶれちゃう、からぁ…! 妊娠前と全く変わらない、激しく体を揺さぶる交合は、疲労も激しい。 自分のペースに合わせて速度を調整できるならまだ少しは違ったろうが、 相手の都合で、一方的に腰を打ち付けられ、休憩のタイミングも不明瞭。 そしていつ終わるとも知れぬ――ともなれば、なおさらである。 しかもそれが、機械のように正確で無変化な繰り返しならばよいが、 挿入の速度も打ち付ける強さも、深さに至ってもばらばらであるため、 刺激に慣れて無感動となり、心を無にして耐えるのも難しい。 早く射精して、次に移るまでのほんのわずかの休みに入ってほしい―― リースは、そう心から願う――しかしこれは、終わりのない行為を、 ただ次の苦痛までの間隙を頼りに凌いでいるだけに他ならず、 逃走、抵抗、打開――そんな根本的な解決には、一切向かわない。 そんな誤魔化しを続けても、事態は悪化するだけなのに―― *【妊娠後期】 腹部の膨らみはもう、どう足掻いても隠しようがなくなっている。 みっしりと張ったその腹の皮ごと、床の上すれすれを擦るように揺れて。 抽挿の衝撃で腹がことさらに前後に揺れるのが、一層惨めさを強調する。 胴体の動きより遅れ、予期せぬ重みが暴れる感覚は、もはや一個の生命体。 孕まされたという実感だけに留まらず、敗北感や虚無感を煽り、 この牢の中に自分を繋いでいる重石そのものであるようにも思えてくる。 父母の激しい交わりを嫌がってか、時折強く暴れる、胎児の生命力―― それも、リースにとっては福音ではなく、絶望の証に他ならない。 リース: いやぁ…うまれる、でちゃうぅ… むり、もう、むりぃいい…! 出産も間近に控えたところに、延々と犯され、かき回され続けて―― 羊水がじゃぼじゃぼと、音を立ててあぶくを吐いているかのよう。 そして膨腹感と並行するようにして、圧迫感と重量感がそこにある。 本来なら、喜ぶべきその重み――どうしてこれを受け入れられるものか。 学のない彼女にはわかるはずもないが――精液には子宮収縮の作用があり、 妊娠中の膣内射精は、早産や流産の可能性を著しく引き上げる行為。 そんな行為を続けても、流れることを許さない、彼女の身の上の呪い―― 胎児もまた、母親の背負った宿命のしわ寄せを受けさせられている。 普通の子なら、普通の母なら、とっくに流れて潰れてそれで終わり―― そんな安直な結末を、誰も彼女たちに与えてはくれないのである。 死すらもリースの自由にはならず、すぐに蘇生されてしまうだろう。 これはあくまで、彼女の精神を暗い闇の中に堕とすための行為だから―― *【出産】 リース: ぎぎぃ…っ!ふっ、ふぅ―っ…! っく、みて、ないで… たすけ、っ…たすけ、てぇ…! 寸前までリースを犯していた獣人は、唐突に彼女を床に放り投げて、 精液塗れになった膣口から覗く、半獣人の胎児をじっと見つめている。 孕ませるだけ孕ませて、好き放題に犯していたくせに――後は、放置。 勝手に産め、とばかりの冷淡な姿勢には、一欠片の愛情も読み取れない。 獣人は人間と比較的に近い種であるため、出産はそう面白くならない。 肩口が出たところで、その後の工程までつぶさに予測できるほどには、 ありふれた行為に過ぎなかった――当人の苦痛とは別問題だが。 床に爪を立てて、必死に足掻く姿は滑稽で、どこか美しくもある。 引き裂かれる膣口の、押し拡げられる骨盤の痛みに抗いながら、 リースはほとんど無意識に、呼吸のリズムを一定に揃えていく。 荒く、断続的な呼吸は、却って痛みを強く意識させるらしい―― 望まぬ子であろうが、母となりゆく体は今まさに、脱皮しようとしている。 リース: はぁー… はぁ、はぁはぁ… ……う、ぅ… 獣人は無言のまま、ようやく全体が抜けかかる直前の我が子の体を手で掴み、 乱暴に臍の緒ごと、リースの体から引き抜く形で、出産を終わらせる。 輝きのない目で、だるだるに伸びた腹の皮の下にまだ胎盤を残しつつも、 ひとまずは、出産の大部分は終わった格好だ。現に、赤児も泣き出した。 ぶよぶよの腹の上に、獣人の足が踏み降ろされると、少女の苦悶の声に、 さながら屁のように、ぶびり、と膣内に残ったものが絞り出される音がした。 そのあまりの無様さに、さすがの抜け殻も面白みを覚えたと見え、口が歪む。 その踵の下に、どれだけ惨めな少女の姿があっても―― *【出産♀】 人間と獣人の混血が珍しくはない以上、そこに生ずる命が雄か雌か、 そんなことに今更価値はない。その形質の遺伝度合いの先行研究も既にある。 大切なのは――この胎児を産むことが、リースの心身にどう影響するか、だ。 その点において、比較的人間に近い種族で、かつ自分と同性の赤子―― リース: うっ…うぅ… ごめんね… 弱い…お母さんで… 出産の疲労で、いまだ体を起こすことも、赤児を抱きとめることもないが 彼女の顔は、望まぬ妊娠とはいえ獣人との混血児の存在そのものを、 受け入れてしまいかねないような不愉快な喜びに満ちていた―― 開き直られてしまっては、その魂を堕落させるには至らないのである。 飼育員が獣人に泣き喚く赤子を拾い上げさせた――臍の緒を爪で切り。 手のひらにすっぽりと収まるほどの小ささで、故に彼ら獣人は混血児を侮る。 力こそ全ての価値観において、小さく脆い個体など意味がないからだ。 リースは自分の子が、その父親たる獣人の掌中にあるのをじっと見ていた。 リース: まって…何するの…? 乱暴、しないで… 這いずりながら獣人に縋りつき、赤子を放してくれるように目で訴える―― 当然、引き渡すわけもない。どん、と足先一つで転がされ、石畳の上。 飼育員に手渡される我が子――たった数歩が限りなく遠く感じられよう。 鉄格子の閉じる音が重く響き、リースはがっくりとうなだれ、意識を失った。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪ミノタウロス≫ *【破瓜】 リース: あ…! 向き合っただけで、リースは彼我の体格差、膂力差を見て取った。 倍はあろうかという身長に、みっしりと筋肉の詰まった重そうな皮膚―― 自身が女にしては相当に筋力があるタイプであるだけに、なおさら、 種族の差――雌雄による筋肉量の差を、一目で見抜いてしまったのだ。 リース: こないで… おねがい、そんな…! 見立ての通り、牛頭の巨人――ミノタウロスは、リースを軽々と持ち上げる。 彼にとって彼女の体重は、普段振り回す得物より、よほど軽くて華奢なのだ。 そして当然、その先にあるのといえば――二人の生物学的な差、 一対の雌雄であることへの、その当然の帰結しかないのである。 リース: っ、ぎ、ぃ…っっ! が、ぁ――! 子供を抱きかかえるような格好で開脚され、腿をがっしりと掴まれたあげく、 開脚によってわずかに開いた膣肉の隙間に、無理やり、剛直を叩き込まれる。 自らの体重でもって、自分の一番大切なところを引き裂かれる痛み―― しかも、己を貫いているのは、刃物のごとく鋭く尖った穂先などではない。 挿入にこそ適した形状であれ、それは無骨なまでに太く、硬い。 柱――そう形容するのがふさわしいと思えるほどの、肉々しき槍だ。 その激痛は、腕を突き刺され、そのまま開かれるのと何ら変わりはすまい。 リースは自分が女で――相手が雄であることを、心より呪った。 しかしどれだけ悪態と涙とを吐いたとて、痛みの引くはずも、薄まるはずも。 臓腑を掻き回されるのと同値の圧を、断続的に、抗うこともできず―― みちみちと裂ける秘所の哭き声は、どれだけの悲鳴があろうと耳に届く。 またそれが、リースの心にどうしようもない無力感を突きつけるのだ。 単なる性交、雌雄の間の自然の営みでしかないはずなのに、 体格差、という一点において、それはリースにどうしようもない負担となる。 彼女にとって不幸なのは、相手が差を理由に諦めてはくれないこと。 そして幸福なのは――この行為に耐えられるだけ、強く産まれたこと―― *【種付け】 リースの体が、床からちょうど彼女の身長と同じぐらいの高さに浮いている。 牛の頭と堂々たる体躯とを持った牛の亜人、ミノタウロスが―― 彼女の両腿をあっさりと抱え上げ、持ち上げてしまっているからである。 それだけではない、彼女の膣内には深々と、雄の杭が打ち込まれてもいた。 リース: …っっ!ぁ、ぅう…! ぁ、あああぁっっ…! 苦悶の声。無理もない、そもそもが太く、大きすぎるのだ。 よく耳を澄ますと――わずかに別の色をそこに感ずることもできるが、 やはりこの行為は荷が勝ち、されるがままになるしかない。 体ごと揺さぶられることによる吐き気も、決して無視はできないものである。 下手に体を動かして、筋肉が強張れば――痛みは必然、増すのだが、 犯され、振り回されながら、しかも痛みに耐えて力を抜くなど―― 結果的に、腹の中をかき回される苦痛ばかりはどう抗いようもないのだ。 亜人の興奮に比して、リースの声は重く、地を這うようなものとなる。 リース: げっ、う、ぐぁ…! 性交というにはあまりに一方的。快楽と生殖能力の搾取に等しい。 どくん、どくんと糊の塊のような精を雌の胎の中に吐き出し続ける雄―― その顔は、支配欲と性欲とに満たされている――しかしその裏で、 犯されているだけのリースの顔に――決して暗くはない、感情の彩もあった。 *【妊娠初期】 リース: おえっ、うぐ、ぅ… や、べ…て… 内臓を思いっきり押し潰される圧迫感と、体ごと上下に激しく揺れる苦しみ、 そこに、妊娠が明らかな腹部に対する精神的負荷まで重なったとなれば、 彼女の心身から抵抗に必要なだけのあらゆるものが失われたのも仕方ない。 リースとミノタウロスの間の隔たりは、種族や雌雄の差には収まらない。 相手を屈服させ、己の遺伝子を植え付けるという支配の構造そのもの、 彼の顔にある、嗜虐的な笑みのその意味――それはまさに、 子供がその万能感に従って小動物を玩ぶのと、なんら変わるところがない。 むしろ、子を産ませるために死なせてもくれないのだから――更に、残酷だ。 リース: う…ぁ…あぁ… し、しんじゃ、う…! リースはほとんど本能的な命の危機を感じる。この程度では死ねないのだが。 もしくは、己の子宮に眠る命をこそ惜しんだのか――自覚はないにせよ。 ごりごりと臓腑を削られる痛みが、少しずつ失せていく感覚―― 自分という人間の消えゆくことに対する恐怖であるのかもしれない。 いずれにせよ、どれだけ激しい行為を受けても、彼女が楽になれることも、 胎児からの中途の解放もありえない。そうなれないようになっている。 頑丈な自分自身を――少女は憎んだ。不要、不快とまで思った。 既にこの世に亡き二親が遺してくれた己の体を――呪った。 *【妊娠後期】 膨らみきった腹部は、腿ごと抱え込んだ体勢でもなお目立つほど。 交尾の最中、毎回リースはほとんど半失神の状態でいる。 相手がどうあろうと、ミノタウロスが抽挿の手を休めることはなく、 意識がなくとも、具合のいい肉穴さえあればそれで足りるのである。 リース: ぁ… … ……ぐ…… 自分の子がこの雌の胎の中にいる、という事実は却って興奮を誘い、 少女の腹部が大きくなるのと比例して、交尾の激しさは一層増していった。 臨界点を超えたリースの心身が、一切の反応を絶って流されるままとなり、 せめてこの時間をやり過ごそう、としたのも無理のないこと。 しかしそれも、もう限界だ。 いよいよ出産の迫ったリースの体は、その瞬間に向かって準備を整えている。 長丁場となる出産の間中ずっと、意識を手放すというわけにもいかない。 呼吸を上手く整えねば、頭を少し出すのにすら相当の手間がかかるだろう。 自分が目を背けてきた、雌としての部分といよいよ向き合わねばならぬのだ。 意識のある――つまり交尾が行われていない時間にも、腹部の痛みはある。 断続的に、重く、響くような――それが陣痛の兆しということも、 その痛みにこの亜人が配慮などしてくれないことも、リースは知っている。 その日が来れば――耐え難き痛みに耐え、犯され、辱められながら、 この生物の子を、孕んでしまったものを産まねばならぬということ―― その想像すら恐ろしくて、少女はまた意識を手放す。自衛のために。 何の解決にもならず――やがては己を苦しめるだけの、嘘の平穏に溺れて。 *【出産】 リース: ……! ぁ、っ、っ――さ、ける…っ! むり、むりぃいい…! 性交が普段の前穴挿入から、後穴への挿入に切り替わったことで、 確かに、出産の阻害にはならない――しかし、これはまた別種の痛みであり、 肛門を無理やり拡張されつつ、産道をこじ開けられる痛みに分散された。 慣れた痛みが、慣れない種類のもの二つに変わって――苦痛の総量は増す。 自分のペースで、何かに力を込めながら――ということもできず、 尻をほじくられつつ、両手両足を抱え込まれている宙ぶらりんの格好、 リースにできるのは、せいぜいが歯を食い縛る程度のことだけだ。 これまでのように、終わるのをただ待てばいいというわけでもない。 痛みを正面から受け止めつつ、自分の意志でもって産まねばならないのだ。 欲しくもない――自分の血を半分引き継いで産まれる、この異形の子を。 自ら母となるために、いきんで、力み、ひり出す――今の苦痛に耐えるため。 子を産むことで、自分にどれだけの不可逆の変化が訪れるか―― そんなことを考える余裕はない。この真っ白に飛んだ思考の中においては。 ミノタウロスが片手を離して、その太い指でリースを腹部をぐっと押すと、 蛙が押し潰された時の断末魔にも似た――血泡にごぼごぼと沈む音がする。 抽挿はいつしか止まって、片手はリースの胎児を受け止める形を取っていた。 リース: ――っぐ…ぅ! はぁ、はぁ、はぁ… あと、すこ、しぃっ…! 言葉の通り、ようやく下半身が出かかるところに辿り着き、 皿のように窪んだミノタウロスの手中に、残り半分までを産むだけ―― 容易なことではない。既に体力の九割は有に消し飛んでいる。 精神への負担もまた、とても無視できるようなものではないのだ。 それでも――鼻ちょうちんと唾の泡に顔をぐじゅぐじゅにしながら、 少しずつリースは出産を終えるための準備をしている。何のために? それを単純に、苦痛の稀釈のためだけと取るのは単純に過ぎる、 是非を言わさず押し付けられた母親としての役目を果たそうというのか―― 少しずつ、胎児の全体が外気に晒されて、羊水と血とにてらてらと光った。 人の胎児と大部分では共通しながらも、その頭頂部の角や黒い皮膚、 尻尾や蹄に、明らかな父親からの遺伝を想わせる姿をして。 必死にいきむリースには、その姿を一々眺める余裕などなかったのだが。 *【出産♀】 リースの胎内より排出された肉塊は、産まれてすぐにもぞもぞ動き出す。 人間の赤子には不可能な運動能力、それだけで異様さが窺えよう。 しかし肉体の頑丈さに反比例するように、赤子の動きは鈍重である。 産まれもっての膂力、骨格を脳が活かしきれていないためだ。 もっともこれが、既にミノタウロスとして確立している配分―― 牛頭人体の雄であれば、多少の足りない知能の発育の幅も予測可能だが、 このたびリースの股座より這い出たもの――それは雌の個体であり、 牛頭どころか、母親譲りの人間の顔をしていたのだから驚くべきことだ。 それでも己の肉体の操縦法を模索する赤子は、ようやく合点がいったか、 よたよたと危なげにも、母の太腿に這い上がり、じっとリースを見上げた。 まだ開いてもいないはずの目、臍の緒さえも切られていない状態―― それは却って、その赤子が純粋な人間とは明確に違うことを強調する。 リース: はぁ、はぁ、はぁ… …え、あれ…? にんげ、ん…? 焦点の合わなかった視界の端に、見慣れた金髪が一房、ちらり。 腿への圧迫感に意識を取り戻したリースは、その先を目で追った。 赤黒い新生児の肌、さらに黒く染まった手足の先端に、小ぶりの角。 凌辱者の血を引いていることは、朦朧とするリースにもよくわかる。 リース: ひっ… あ、あぁ…っ! 人間の胎児か、とほんの一瞬であっても思ってしまったことは、 こうして突き落とされたときの衝撃を、何倍にも膨れ上がらせるもの。 リースは反射的に、こんなの、私の子じゃ――そう叫びそうになるが、 我が子のどこか不安げな表情に、言葉ごとぎゅっと握り潰される。 溜め込んだ感情は、喉を降りてぐるぐるとリースの臓腑を切り裂いて、 今にも吐き出しそうな嗚咽を、リースは必死に堪えるしかなかった。 それよりは、少しでも体を休めたい――瞼が自然に降りてくる。 赤子がぺたぺたと肌を触る感覚にさえ、答える余裕もなく。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪バットム≫ *【破瓜】 房内をぎっしりと覆う、蝙蝠の群れ――通称バットムと呼ばれるそれは、 単体では、洞窟に生息する力なき小型哺乳類に過ぎず、脅威にはならない。 だがこの部屋の中で、リースと共に閉じ込められているのは数十匹できかず、 しかもそれらは全て――雄の個体だけを選んであった。 弱いバットムは集団、いわゆるコロニーを作って生活と繁殖をする。 獲物の血を少しずつ奪って弱らせる戦法には必須の生活形態だ。 雄と雌の数の釣り合いが取れていれば、異性の取り合いにはならないが―― ――この部屋にいる雌は、リースの他にいない。 リース: うっ…く、ぅう…っ… ちから、が… 交配実験の前に、リースには数種の薬剤が投与されている。 蝙蝠を惹きつけるフェロモンを発するようになるものや、筋弛緩剤、 妊娠確率を上げるためのあれやこれや――を、通常の倍量。 耳元に響く翼の音も、聞こえてはいても体が全く動かせない。 蝙蝠共は、雌が目の前にいる一匹の他にいないことに気が付いた。 羽もない、うすらでかく、色もおかしな個体だが、臭いだけはそうらしい。 聴覚、嗅覚優位の生物であるために、リースの容姿がいかに整おうが無関係、 自分たちの子を孕む、という最大の目的さえ達成できるなら構わない―― 床に倒れ伏すリースの上に、何匹ものバットムが群がって交尾をねだる。 抵抗しないということは、すなわち交尾の許可を出したのに等しい。 匂い立つ尻の側へと、蝙蝠たちは群れなして飛んでゆく。 では、誰がそれを成し遂げるか――という競争が、次にくる。 股間周りを陣取れなかった個体同士での喧嘩が始まるのと同時に、 良い位置につけたものの間でも、誰が挿入するか――誰が最初に射精するか、 睨み合いに取っ組み合い、雄としての意地の張り合いが起きている。 やがて彼らは――全ての個体が順繰りに行えばいい、との合議に至った。 リース: やめ…はな、れ…て… いた…ぃ… 一回一回の交尾は短いが、無数の個体が入れ代わり立ち代わり行うので、 それを相手させられ続けるリースにとって、休まる瞬間はない。 彼女の純潔を奪った個体も、それそのものに価値などは見い出さない。 順番は妊娠確率を高めるという、本能的な利益に寄与するだけだから―― *【種付け】 バットムは肉食の蝙蝠でこそあれ、単体では小さく、弱い。 人間のように大型の獲物を得られるのは、他の生物のおこぼれに預かるか、 もしくは大群で集って狩りをし、横取りをされない場合か、なものだ。 しかしそれぞれに欠点はある――鮮度や、分け前において不満が残るのだ。 コロニーを形成し、互助の関係を築いて襲われるリスクを分散し、 狩りの成功率を高める代わりに、個としての満足度は下げる―― 必然的に、自分の取り分となったものに対する執着心は強くなる。 交尾に関しては、コロニー内での多対多を前提とし、固有のペアがない。 リース: …! うっ、っぷ…!このっ、や…め…! 我先に、と群がる蝙蝠の群れにリースの姿は完全に隠れてしまい、 暗い翼と皮膚の隙間から、辛うじて彼女の金髪が覗くばかり。 交尾によって自分自身の遺伝子を残す、その目的のために、 この大きな雌を相手に、群れなす雄共は目を血走らせているのだ。 これだけの数に襲われていては、無手の彼女がどうにかできるわけもなく、 一回一回は短く、大した負担にもならないものの――ただ回数がかさむ。 そうしているうちにどんどんと、リースの全身はこぼれた精に白く濡れ、 風に巻かれた髪も、ぐちゃぐちゃにほどけて荒れ放題に。 休ませて貰えるはずもなく、際限のないその凌辱を、ひたすらに―― 一匹一匹にとっては、単に、ようやく回ってきた自分の番を行うだけ。 相手が一人で、その前にどれだけ犯されていたかは何の関係もないのだ。 段々と、リースの動きが鈍くなっていくのも――全くの埒外なのである。 *【妊娠初期】 リース: う…ぁ… リースの腹部が膨らみ始めようが、蝙蝠達にとってそれは大きな意味もない。 襲われるリスクを軽減し、おこぼれ交尾の可能性を高めるための群れは、 いざ自らの遺伝子が残されたとしても、それに対する特別な意識を持たず、 数回交尾しただけの相手の腹に“何かある”としか受け取らないのだ。 自分の子であるという認識が限りなく希薄で、無責任とも言える態度を取る。 受精率を高めるため、性的な満足を高めるために行為自体には執着するが、 実際に雌が孕んだ、となれば、産むのはそちらの勝手、いざ知らず、と、 実に冷淡に、雄蝙蝠たちは他の雌へと意識を向けていくのである。 リース: もう…あなた、たちの… こども…できてる、のにぃ… だがこの部屋にいる雌はリースのみ。雄たちは使い飽きた玩具を、 暇を持て余してまた弄ぶかのように、最終的に彼女の体に戻ってくる。 こんな、既に孕んだ雌しかいないのか――仕方ないから、使ってやるか。 自分たちがまさに孕ませたその相手というのに、そこになんの反応も見せず。 一時の射精――雄としての本能の充足のためだけに、彼女を使い、 その本質的なところである――子を産ませるという部分に対する、 ある種逆説的な無頓着――弱者ゆえの、悲観にも似た割り切りか。 当然、リースにはそんな内情は関係なく、日々膨らむ腹に怯えるのだ。 *【妊娠後期】 リースの腹が完全に大きくなっても凌辱は止むということもなく、 既にどの個体の種が付いたかの区別もわからない状態のまま、 決定的な瞬間の訪れるその時まで、蝙蝠たちはひたすら彼女を汚す。 消耗した体力では体を起こすことすら困難となっており、 仰向けに息を荒くするリースの胸からは、直に産まれるであろう子のために、 ぼたぼたと母乳が、重力に引かれて乳房の上を滑り落ち、床を濡らす。 順番待ちの蝙蝠は、それを舐め取りながら無聊をかこつ。 子が産まれるまでは、無為に消費されるだけのものであるのだから―― リース: … …… もう彼女は一々身を捩って逃れようともしない。 それは無意味な抵抗に他ならず、体力の浪費を喜ぶわけもないからだ。 それよりはむしろ、もはや避けようもない出産という一応の区切りに向けて、 どれだけ体力を残しておけるか――そんなことの方がより大切だ。 交尾によって雌雄の間に子が生される――それ自体は当然の帰結だ。 だが集団として高まった繁殖欲が、個体としての不満足のために、 自分の――かもしれない――子を孕んだ雌に対しても、雄蝙蝠は容赦しない。 やはり彼らはばさばさと、その翼を打ちながら雌の上を舞っている。 妊娠によりあちこちに肉を、雌性の具現体を膨らませて転がるリース、 その全身に、蝙蝠達は性器を擦り付けて精液を浴びせ臭いを付けていく。 この雌は自分たちの所有物、共有の財産であると知らしめるため――誰に? 檻の中に、彼らの他にリースを自由にできるものなどいないというのに―― *【出産】 リース: あっ…ぎ、ぐっ… いや、うま、れ…! 流石の蝙蝠たちも、排臨の始まった相手までは襲わない。 一塊の暗闇となった彼らは、檻の隅にてひっそりと呼吸だけを繰り返す。 視線だけがリースの上に注がれている――波打つように、肌の表面を。 それは時にねちっこく、あるいは冷淡に色彩を変えるのだった。 黒い毛並み――父親譲りの短くつるつるとした体毛に覆われた肉塊が、 ゆっくりと彼女の股座から、羊水にぬるりとした光沢を纏って姿を見せる。 父親の体積が小さいからといって、出産の苦痛が小さいわけではない。 肉体を内側から拡げられる痛み、そこに大きな違いはないからである。 むしろ、頭部が出てからが本番であった。赤子に生えた蝙蝠の翼は、 母の産道を通る際に、随分邪魔になってしまっているからだ。 人間の赤子には当然翼など生えてはいない。 それはつまり、出産の際に、翼を折り畳んでくれる気配りもないということ。 リース: お願い…! うまれ、てぇっ… いたい、いたいよぉ…! 新生児の肩口から下、膨らんだ翼の箇所がいわば“返し”の役割を果たして、 リースがどれだけいきみ、苦しみ、腹部に力を込めたとしても、 赤子は容易には出てくれず、負担を増すばかりなのであった。 そして無理矢理に引き出せば、新生児の肉体は傷ついてしまうだろう。 それを是としないだけの、最低限の――愛情とも呼べない本能的な訴え。 彼女はほとんど、それに突き動かされていきんできるようなものだった。 引っかかりが強いのは肩から翼の付け根――腋の部分までであって、 後は、また、するりと。荒い息を整えるリースを、蝙蝠達は睨んでいた。 *【出産♀】 純然たる人間の胎児よりは小さくとも、それはあくまで大きさだけ。 父親の――蝙蝠の羽は本来、人間の産道を通るようにできていない。 這い出るために何度も身をくねらせれば、その分膣内は傷つくし、 リースに与える苦痛もまた、動きに応じて深くなっていった。 赤子は羊水と――母の血にまみれ、見るも無残な姿で蠢いている。 吸血蝙蝠たちは新鮮な血の臭いに目を輝かせて、興奮しきりだ。 今にも、自分たちの中のいずれかの種によってなった我が子ごと―― リースの血を啜りに集まったって、まったくおかしくないような状況。 リース: っぐ、う――! 出産を終えて一段落したのも束の間、弛緩した股間からは血が、どろり。 空気に触れて痛む傷口に、リースはただただ呻くばかりであった。 蝙蝠の羽はまた――地を這いずるのにも、向かない。 赤子はじたばたと、重力に張り付けにされた己の肉体を持て余している。 母の胎内にては、羊水の中にぷかぷかと浮かんでさえいればよかった。 それが、期限が来たからと急に大気の中に放り出されたのである―― 彼女の産声は聞くものに悲壮感さえ与える、切実で危機を感じるもの。 呼吸が止まった途端、その肉を“父親”たちは容赦なく貪るだろう。 未成熟な翼がばちゃばちゃと、赤く濁った水溜まりを叩いている。 きちんと育てば、あるいはそれで空を飛ぶことも可能かもしれないが、 リースの出産の一部始終を見ている飼育員の誰一人として、 このままあの赤子が大きくなるまでの未来を、想像できずにいた。 リース: ぅ… おい、で… ぼろぼろの体をようやく動かし、リースは赤子をなんとか手元に寄せる。 少しだけは力が入るようになった翼の汚れを、己の髪で拭き取ってやる。 金髪が赤黒にくすんで、生臭い血溜まりをあちこちに付けるのも構わず。 娘の翼が風を切る音を立て始めたと同時に、リースはばったり倒れた。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪ダックソルジャー≫ *【破瓜】 裸に剥かれ、抵抗する力を失った艶めかしい女体が目の前にあっても、 職業軍人であるダックソルジャーは、気をつけの体勢のまま微動だにしない。 それは彼らの高い自制心の表れ――だがそれは穏やかさを意味しない。 飼育員の一人が、檻の外から彼に手で合図を送ったと同時に―― リース: !! …っう、 くぅ…っ! 白い翼が、一塊の波のように荒々しくうねってリースの頬を打った。 背丈そのものは人間よりも小さな彼らだが、翼のスパンは非常に大きい。 巨人の手めいた大きなものが、突然に自分の顔を跳ね飛ばしたのである。 石畳に叩きつけられたリースは、その痛みと衝撃に悶絶していた。 リース: あぁ…っっ! いたい、やめ…! 転がった彼女の髪を、乱暴に引っ掴んで起こし――無言でじっと睨みつける。 どちらが上でどちらが下かを、何よりもわかりやすく刻みつけるためだ。 彼の白い羽には、リースの鼻血がべっとりとついて赤黒く汚れていたが、 そのことを嫌がりもせず、無表情にじっと獲物を見下ろすばかりである。 また唐突に掴んだ髪を離すと――解放された体は重力に従って転がった。 ソルジャーは二度目の衝撃に床を這うように呻くリースの背後に回ると、 そのまま一息に、螺旋状の性器を彼女の尻にねじ込んだ。 直前まで影も形もなかったその性器は、ほんの一瞬で股間からぬるりと伸び、 そして構える余裕すら与えず、未通の穴を抉り抜いたのである。 いきなりの暴力から、あっという間の破瓜――悪い夢であるかのよう。 だが股間に垂れる赤い一筋は、それが否定しようのない事実と物語っていた。 そこから腰を動かされて抉られようが、中に熱を叩きつけられようが―― *【種付け】 処女ではない――ということは、雌雄の在り方を知っているということ。 それはこのような施設――および目的においてはすなわち、 相手が既に、雌として雄の欲をぶつけられた経験があることを意味する。 故に、リースは自分に雄が充てがわれていることの意味を理解していた。 狭い檻の中、裸の自分に雄がその欲の具現体――すなわち性器を見せたなら、 その先に起こる行為は一つである。彼女にそれを拒む権利はないのだから。 女性としての丸みを保った尻を相手に見せるとき――内心はいざ知らず、 目に見えるような抵抗を、リースはしないようになっていた。 リース: うっ…くっ…! …ぁ、あ…! だが体は、雄の侵入に反応してしまうのである。自分の体を変化させる―― 母体とさせるための行為を、彼女の肉体の側も無為には受け入れない。 それは時に快楽として、それは時に耐え難き苦痛として。 前者の可能性を、よもやリースは認めまいが――声は漏れるのだ。 彼女に種付けを行っていく生物は多様で、それぞれに繁殖形態が異なる。 そして雌に対する態度――どのような力関係を構築していくのか、も。 今回の雄――白い羽を有した水鳥の亜人、ダックソルジャーの場合は、 殊に、強者と弱者、従えるものと従うもののと別に厳しい種族である。 リース: …… うぅ… 激しく抵抗せねば、軍人たる彼らは相手に必要以上の暴力を振るわない。 だが少しでも興を削げば、容赦なく雌を腕力にて屈服させるだろう。 その際、自らの修めた拷問と尋問の知識を最大限に活用しながら。 同種にさえ厳格なものが、生意気な異種に対してどう当たるかなど―― だから彼女は、自分よりもよほど小さな凌辱者に屈服せざるを得ないのだ。 時折押し付けられる翼のその力強さ、握力に無言の圧を感じさせられて。 役得、とも思うまい。あくまでこれは、彼女を貶める任務なのだから。 限りなく冷たい目が鉄兜の下から覗くのに、リースは背筋を震わせた。 *【妊娠初期】 力関係の構築は既に為された。証拠はリースの腹部に明確に存在している。 それは彼女が凌辱者に対して抵抗を示さないことでも明らかであった。 反抗的な態度を示さず、与えられる暴虐のままに流されている―― そうすれば、過度の干渉はない。苦しみは最も弱く、薄くなる―― リース: ぐっ、や、ぁ… やめて、やめて…! しかしそのような無気力、無反応は積極的か受動的かの違いこそあれ、 心までを受け渡すまいという意思表示。リースの心の強さを示すものである。 それが気に入らないのだ。従順になりましたという姿こそ見せておれど、 いまだ屈服させられていないのを、ありありと見せつけられるのが。 ダックソルジャーはリースの髪を掴んでいた手を、唐突に放し、 彼女の体を冷たく硬い石牢に、したたかに打ち付ける。 二度目の暴行は、正常位の形で行われようとしたが、 思わず腹部をリースは庇う――目の前の凌辱者によってもたらされたものを。 リース: するなら…後ろで… お願い、します… 誰の種であるか、どのような理由で孕まされたのかはこの際関係ない。 父を、故郷を、弟を、仲間を――あらゆるものを失った彼女にとって、 我が子――という認識がどの程度確立しているかは別として、 血を分けた存在は、もはやこの陰気臭い城の檻の中にしか在り得ないのだ。 彼女の四肢を絡め取る呪い――孤独感への、ほとんど狂気的な恐れ。 腹部への負担を減らすために、リースは自ら凌辱者に尻を差し出した。 鳥風情に後背位を願い出るなど恥もいいところだが――感じる余裕はない。 彼女の心を折るための一手、そのヒントを得たことに、嘴はにやりと歪んだ。 *【妊娠後期】 腹部にあるごろりとした硬い感触は、明らかに通常の胎児のものではない。 鳥の精を受けて彼女が妊娠したのは、純然たる人間の子ではないからだ。 その体の奥にあるのは、羊水、胎盤、臍帯――尋常の哺乳類とは違う、 白く、冷たささえも感じさせる角質の殻を有した卵なのである。 それを手のひらごしに感じ取るたび、リースの背はぞっと冷たくなる。 人間としての一線が、いつの間にか既に遥か後方に移っていた―― あるいは己の肉体は、もはや人間のそれとは決定的に変質しているのか? 彼女の心が重く沈んでいくのは、妊娠に伴う憂鬱によるものだけではない。 それでも凌辱者の態度は、種付けの頃と何ら変わるところがなかった。 リースの心身を痛めつける――そのためには、己の種で生ったものすらも。 大きくせり出した彼女の腹に、翼を広げてばしん、ばしんと平手打ち。 鉄兜の下から覗く目は、何らの感情も含んではいないものである。 リース: いたい…やめて… やめて…!こわれちゃう、 たまご、こわれちゃうぅ…! 母としての本能が、リースの喉からそんな言葉を引き出す。 無論、彼女が鳥の亜人に孕まされたものに愛着を抱いたがためでなく、 信仰にも近い――命は望まれ、祝福されてこの世に降り立つべき、 そんな感情に縋ってのこと。本人が意識しているかは別ではあるが。 ふっ、と凌辱者の手が止まったのも、やはり慈悲ではない。 彼は懐から巻き煙草を取り出して、悠々とふかし始めた。 その様子は、眼前のリースさえも気にかけてはおらぬよう―― リースは両者の間の、限りない断絶に胸を締め付けられる思いがした。 *【出産】 リース: …! ひっ、ぐ、うぅ――っ! 牢の中に、リースの肺の奥底から絞り出された苦悶の声が響く。 かれこれ一時間にもなろうか、少しもその声は鳴りやまない。 その一時間のうちに彼女の体に起こったことといえば、 ただ股間から、白い卵殻が覗き始めたという一点だけである。 子宮の中には確かに一つの大きな卵が、みっちり詰まっていた。 腹部の外側からもわかる硬い感触、されど胎動のないだけ痛みは小さく。 それを体外に出す――産卵の瞬間に、いかに困難かが実感されたのだ。 陣痛を感じてから相応の時間が経っても、卵は一向に出てこない。 人間の赤子ならば、狭い産道を潜り抜けるために、その大きな頭部の骨を、 一時的に変形させてm、母の出産を助ける仕組みが備わっている。 だが卵は、一度完成すればその孵化の直前まで大きさが変わらない。 赤子の協力なしに、自ら子宮口を広げて出さねばならないのだ。 リース: いっ、いた、いぃ…っ! かはっ、ぁ、っっ――! 呼吸は荒れ、全身にじっとりと脂汗をかきながら、目を見開いて、いきむ。 リースの整った容姿は、かくも無残に破壊され醜く歪んでいるが、 そんな些末事を気にしていられないほど、苦痛は絶え間なく襲ってくる。 まだ全長の四分の一も出ていない。ここから先が長いのに―― みちり、みちりと少しずつ肉の裂けていく痛みが、延々と続くばかり。 子宮いっぱいに育った卵を出すのだから、ちょうど、子宮口を基準に、 内臓を反対側にそっくりそのままひっくり返すようなものである。 最も太い箇所に差し掛かると、なおリースの悲鳴は甲高くなった。 リースの苦痛がいよいよ最高潮に達しようかというときも、 彼女を孕ませた亜人はぷかぷかと呑気に煙草をふかし、へらへら笑う。 彼にとって目の前の光景は、所詮、暇つぶしに過ぎないのだから。 ぐっ、と大きな息を込めていきむリースの、必死の表情さえも―― *【出産♀】 リースは卵の最も太い“返し”を乗り越えた――そう思った刹那、 ぼきり、と嫌な音が胎内に響く。硬く、重く。取り返しの付かない音が。 それまで目一杯引き延ばされて卵の表皮に逆向けに張り付いていた子宮が、 音の立つのと入れ替わりで、しゅるしゅると張り合いをなくすようだった。 リース: あっ…あ、 え…? 風船に針――それならばまだ、大きな破裂音と破滅の明確なる印が見える。 だがリースすらも自覚しないうちに、決定的な“何か”が起きていたのだ。 全身の脂汗がみるみるうちに冷や汗へ、その性質を変えていく中で、 ただリースは、起きた何かに対応しきれておらず、理解もできていない。 あれだけリースを苦しめた卵殻の三分のニほど――それ“だけ”が、 本来一塊で排出されねばならない中身と、殻の残りに先じて床に落ちる。 想像される重量より遥かに軽い一部だけが、こうして出たということは、 リースの胎内にて――卵が砕けたということを意味していた。 リース: うそ――そんな… われ、た…? ――あかちゃん、赤ちゃんは…!? “中身”がこぼれ出さない――それはそのまま残留していることを意味し、 まだリースの耳に産声らしきものも届かない以上、出産も終了していない。 必死になって卵の殻を股間からつまみ出し、指先に血の付くのも恐れず、 大きな腹のままで、リースは懸命に中の様子を探ろうとした。 リース: いっ、たぁ――っっ! くうっ、あ… 弛緩していた子宮口に、ずきりとした新鮮な痛みが襲ってくると、 リースはたちまちに、それが第二の陣痛に当たるものだと理解した。 子が生きているいないに関わらず、彼女の体は母の役目を果たす。 外界に押し出すまでは、リースの責任の下に置かれているのだ―― 殻の破片とぬるりとした液体に塗れた内容物が姿を見せたのは、 リースが再度いきみ始めてからそう間もなくのこと。卵の中で既に、 人間と鳥の亜人の混血児は、おおよその肉体を形成していた。 胎生と卵生の中間、卵胎生の生物であるかのように。 “それ”は極めて特異な姿をしていた。両手が鳥の翼なだけでなく、 臍帯が卵の殻にへばりつき、その殻からはまたリースの胎盤へと、 通常の胎生にも似たような、どれにも分類しがたい様相を呈していたのだ。 飼育員も、彼女を孕ませた雄も、興味深げにまじまじとそれを見る。 いくらリースが、あらゆる他種の雄との交配が可能な肉体だからといって、 生物の道理を横断するようなこんな変化は、誰も想像しなかっただろう。 単に卵膜が角質化したというわけではなく、構造自体の変質―― 長時間に及ぶ産卵――出産の観察は、実に面白い結果をもたらした。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪バジリスク≫ *【破瓜】 間抜けにも見える、でっぷりと丸い体形に一対のみの脚―― 形状だけで考えれば、その生物は蛙に近い種類にも思えてくる。 リースが檻に入れられたそれを見て、油断したのも自然なことだ。 実際のところ、そんな悠長で大人しい生物であるわけもない。 体形に比して貧弱な脚で、ひょこひょこと跳ねているそれは、 蛙どころか、蛇の王の名を与えられた、危険な肉食動物。 牙や爪を持ち得ないのではない。彼にそれは必要ないのだ。 じろり、と睨まれた瞬間――リースはそれを理解した。 リース: …ぁ、れ…? あ、し、が…! 突然、リースはがくん、と膝から崩れ落ちち、床に倒れ伏した。 先ほどまで両の足で床に立っていたのが不思議と思えるぐらいに。 彼女の両脚は、鉛のように冷たく、重く、主を地に繋ぐ。 色合いそのものも、うっすら灰色がかった生気のないものだった。 それこそがまさに彼を、砂漠の頂点捕食者たらしめる武器。 睨んだだけで獲物の肉体を硬直させ、やがて石へと変える魔眼―― その上に、いくらかの魔法をも操る知性を有しているのだから、 砂漠でこの種族に喧嘩を売りに行くものは、ほとんどいない。 リース: いや…だれか…! 突如重くなった足を持て余し、力なく上半身だけで這うも、 当然、芋虫のような速度で件の獣から逃げられるはずはない。 呑気にぺたぺた跳ねながら、蛇は獲物をじっと見下ろした。 するとさらに、リースの体はずっしり重く、腹ばいとなる。 彼女の体に掛けられた呪いは、魔眼での完全な石化を防ぐ効果がある。 しかしそれは同時に、命を落とすぎりぎりまで効果が続くということ。 どんどん体温の下がっていく己の肉体に、リースは恐れを抱き、喚く。 バジリスクが何のために自分の上に跨ったか、理由もわからず。 リース: ぎぃっ…! あ、あぁあ―― 二本の槍が、ざっくりとリースの処女膜と括約筋を貫き穿つ。 蛇の類に属する彼は、それに倣い性器もまた複数保持しているのだ。 そんなことを知らぬリースは、ただ困惑し、悲鳴を上げる―― 見た目で判断した自分を、呪いさえもするほどの苦痛の中で。 *【種付け】 バジリスクは狡猾で残忍な蛇の一種であり、極めて知能も高い。 リースとの交配に回されたこの個体は、獲物をいたぶる嗜好があって、 彼女のが完全に石化しない体質であると見抜くや、方針を変えた。 石と化した彼女自身の四肢を、拘束具として活用したのである。 リース: あっ、ぐ、ぅ、が、ぁ――! その性器は二本、いずれも繁殖可能な正真正銘の性器であり、 いずれかが雌の性器に収まれば、それで役目は果たすのであるが、 この個体はわざわざ、彼女の尻の穴にもぐっさりと突き刺し、穿つ。 交配実験の際に前を使われはしても、後ろの穴はまだ未熟なのに―― 耐えるために何かを掴もうにも、指はすっかり固まって動かない。 不自然な体勢で動けなくなっているせいで、少しずつ疲労が蓄積する。 感覚のある部位、ない部位との境目がもぞもぞと痒く。もどかしい―― どれをとっても不愉快でたまらず、全身がずっしりと気怠く重い。 リース: いや、いやぁ――っっ! もどして、もどしてぇぇっ! 自分の身体が自分でないような不快感に、リースはひたすら叫んだ。 声を出すための舌、声帯、横隔膜――内臓が石になりきらぬわけ、 体の内側がそのままであるという不自然さが混乱を呼ぶ。 言うまでもなくそれは、子宮が健全なままであることを意味する―― 胎内にどぷり、と湧き出す生暖かい感触――それだけははっきりと。 この生物が、自分を嬲りながらも孕ませようとしている事実を噛み締め、 雌としての本能――危機感から、またリースは逃げようと足掻いた。 子宮内の卵子もまた、逃げ場を失っているとも知らず。 *【妊娠初期】 リースはこの交配実験が始まってから、ほとんど体の位置を変えていない。 正確を期すならば、硬直した四肢と力を失った胴と頭のせいで動けない。 あらゆる老廃物――汗や唾液も含めた一切はそのまま垂れ流しであり、 給餌も、石化対策済みの飼育員の補助によって行われている。 そのたびに、まるで赤ん坊であるかのような揶揄いを繰り返し受け、 わざと顔や肌の上に流動食をこぼされたりもしているようだ。 悔しさと恥ずかしさに涙がぼたぼたと流れてもそれすら拭えず、 リースの持つ王族の矜持は、極めて汚され尽くしたと言えよう。 体の外側が自由にならない一方で、内臓周りは通常の状態を保っており、 絶え間なく蛇の二本の性器でもって内側を抉られ続けていても、 その刺激が摩耗することも、小さくなってくれることもない。 小便と愛液の入り混じった膣道を、リースは延々と犯されていた。 リース: うぅううぅ… いやぁ、もういやぁ…! 彼女が健康体である以上、子宮の機能もまた健全に作用していて、 休みなくバジリスクと交尾している以上、その結果もまた起こる。 今はまだ、床に向いたままの腹の重みも気にならないだろうが、 時間が経つごとに、リースもそれを実感していくことだろう。 リース: おわって…はやく、おわって… 自身の胎内に、この奇怪で残忍な凌辱者の子ができたと知れば、 リースの精神に、また深い傷跡を残すことだけは確かである。 すっかり灰色になった指先で、石畳を掻こうとでもいうのか―― ちっとも動かない爪先が、かつんかつんと硬い音を立てていた。 *【妊娠後期】 リース: うっ…おえぇぇ… うぷっ、やめ、てぇ… 体をろくに動かせない状態は現在も相変わらず続いている。 変化があるとすれば、飼育員の業務において掃除が増えたこと。 体調や気分の悪化によって、リースの消化器官は弱りがちで、 なおかつ、彼女の身に起きた最も大きな変化でさらに―― リース: つぶ、れるぅ…! おなか、きもちわるいぃ… ぼってりと膨らんだ腹部が、腹ばい状態のリースの下に敷かれ、 動かない体の重みが、常に子宮を外側から圧迫しているのだ。 そして推された子宮は、胃や腸といった内臓を押し上げ―― 悪阻と合わせ、彼女の喉を苦酸い味で染めるのであった。 その上、下半身――その最奥に子を孕んだ子宮の直近まで、 彼女を孕ませた蛇の性器が、がつんがつんと突き立てられる。 逃げ道のないまま、内臓をぐしゃぐしゃに掻き回されて、 ここ最近は、流石のリースも弱音ばかりを吐いていた。 体重に押し潰されて腹部の一部が平たくなるような状況下でも、 リースの孕んでいるものはさしたる影響を受けていないらしく、 ごろごろと胎内で転がるたびに、リースはさらに苦しげになる。 胎動というほど大規模でないのが、唯一の救いと言えるほどに。 *【出産】 リースの四肢は種付け開始後から一向に動かないままであったのが、 羊水の排出に合わせ、急にその拘束が解かれることとなった。 だが自由になったのは体の左半身側のみで、右半身はそのまま。 左右の不均衡により崩れた体勢は、自然、仰向けを取る。 これはもちろん、魔眼の持ち主であるバジリスクの意志であり、 部分的・段階的な解除によって獲物を弄ぶ知性の表れ。 リースの表情を見ながら、自分の付けた種を見守ろうというのだ。 再石化と解除を細かく繰り返し、リースの体勢を操るうち―― リース: はぁ、はぁ… いた、ぃいぃ…っ! 可能な限り少しでも、産道の広さを確保するために脚を開き、 両手で腿をぐっと抱え込んで、そのまま大きく息を吐く。 人間の赤子ならば、出産に際して身じろぎの一つもするものだが、 リースの胎内にあるのは、バジリスク――蛇の卵である。 蛇の卵は鳥の卵と違って柔らかく、殻も多少の凹みを許容する。 だからといって、彼女にとってそれは出産の楽さを意味しない。 薄く、しっとりとした殻は自然に水分を取り込んで膨らむ―― 最も身近な水、羊水を吸って相当な大きさとなっていたのだ。 自然環境下のバジリスクの卵より、数周りは大きく育ったものが、 みっちりと子宮いっぱいに詰まって、腹圧で押し出されている。 単純な大きさだけでいえば相当なもの――それを出さねばならない。 腹部から、風船状のものがゆっくりと姿を見せ始める。 リース: っ、ふぅ…っ! むり、でかくて、むりぃ…っ! ようやく全体像を覗かせた白い楕円体。中がうっすらと透けている。 血管がびっしり張り巡らされたその中心に、蛇の子がいるのだ。 ごろりとひり出されたそれは、冬瓜ほどの大きさに成長していた。 人間の胎児と重さだけなら変わらない、実に巨大なものへと。 *【出産♀】 リース: っは――ぁ、はぁ、はぁ… 大きく胸を上下させながら、天井を仰ぎ見るリース―― その眼は焦点が合わず、混濁する意識と共にあちこちを見回している。 先ほど排出された卵は、どくんどくんと元気よく脈打っていて、 今にもその中より、何者かが産まれそうな予感を与えるものであった。 リースの視線が自分の産んだ卵に向いたのとほとんど時を同じくして、 一際大きく、ずん、と内側からの衝撃で卵殻が歪み――破れた。 普通の蛇の卵なら、外気に触れた瞬間に孵ることなどありえない。 異様な雰囲気に、リースも思わず目を丸くして、じっと卵を見る。 リース: あ、うまれ…? … …!うそ、これって…! 殻の裂け目から通る視線――それに貫かれると、リースの動きは固まった。 この実験中に散々味わった感覚、肉体の緩やかな石化の痛みである。 凌辱者によって自由を奪われるのは、嬉しくはないが仕方のないこと。 だが自分が産んだばかりの――赤子にすら、石にされてしまうとは。 がくん、と重みに耐えかねて床にだらりと垂れた左腕、同じく右脚―― 魔眼の持ち主の未熟さゆえ、その強弱も範囲も斑になってしまっている。 解除の仕方も知らない赤子は、動きを止めた母の下に歩み寄っていく。 母であるリースに拒絶されることなど、よもや想像もしていない。 赤子の望み通りに、リースは何の抵抗もせずに我が子を懐に招き入れる。 表情は苦悶そのもの。受け入れる態勢も心づもりもできていないのに、 卵から孵ったそれ――人間の赤子に近い四肢と胴体を持ちながら、 決して人間ではない、と知れる異様な混血児が、にじり寄ってくるのだ。 リース: まって… おねがい…まってぇ… 赤子が自分の動かせない右腿の上に不安定な尻もちをついて、 今にも落ちそうなのを手で掬おうと、リースは懸命に動く側の手を上げる。 しかしそちらに赤子の視線が刺さった瞬間、がくん、と力が抜けてしまう。 その衝撃でさらに赤子の体勢は崩れ――転げ落ち、泣く。 泣きたいのはリースの方であろう。差し伸べる手すら動かせないのに。 この光景を作り出したバジリスクは気ままに檻の中を飛び跳ねるだけで、 何らの手伝いも、赤子に対する執着も見せることがない。 彼にとってのこれは、一幕の喜劇にしか映らなかった。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪リザードマン≫ *【破瓜】 全身を包む緑の鱗、切れ長の目に。前に突き出した長い顎と牙。 人間よりも一回りは大きいその体格は、リースと並ぶとさらに目立つ。 爬虫類でありながら人に近い性質を持つ亜人、リザードマンは、 外見から受ける威圧感よりよほど、理性的で社会性のある種族だ。 リースはその黄色い瞳に睨まれてたじろいだ――それも当然だろう。 彼女の腿と同じ太さの尻尾で床をばたばた叩きながらにじり寄るそれに、 女の身ながら危機感を抱いたとして、どうして責められようか? 実際、リザードマンは人間との混血が可能な種族なのだから。 亜人はリースの様子を窺うばかりで、なかなか手を伸ばそうとしない。 もごもごと口を動かし――何かを語るも、それが伝わる様子もなく。 交配実験に参加していながら、強引に迫る様子を見せなかった。 おずおずと伸ばされた彼の手を、しかしリースは―― リース: いや…来ないでください! ぱしり、とにべもなく払い除けられた手は、すぐさま怒りの表情を取る。 亜人の手がリースの肩をがっしり掴むと、膂力に任せて床に押し倒す。 彼なりの同情――あるいは優しさが仇で返されたのだから、 それ以降、一切の慈悲を見せるようなこともありえない。 リース: …! ひっ、が、ぁぁあ…! 床に手をついたまま下半身だけをぐっと持ち上げられたリースは、 上半身の体重を二本の腕だけで支えなければならなくなった。 踏ん張りも効かない無防備な下半身へ、強引にねじ込まれたのだ。 腿を伝って破瓜の血だけが、重力に素直に落ちていく。 今やリザードマンはその外見通りの残酷な凌辱者として、 リースを汚す役目に準じているようであった。荒々しく、乱暴に―― その引き金を引いたのも、他でもないリース自身なのである。 檻の中では、愚かな少女の悲鳴が段々と大きくなっていった。 *【種付け】 リース: うぅ…っ! くっ、は、ぁあああ…! 体ごと床に押さえつけられたような体勢、たった二本の腕だけで、 リースは自分の体重と背後から叩きつけられる衝撃を受けている。 じんわりと痺れて感覚が薄れ、自分のものではないかのよう。 それに反比例して、打ち付けられる股間への痛みは明確になる。 下半身は彼女を犯す蜥蜴面の亜人に腰ごと持ち上げられて、 性交や交尾というよりは、ほとんど道具に対する態度であって、 リースがどれだけ大きな声を上げても、一向にその動きを止めない。 深々と奥に突き刺さるたび、リースの体は苦痛にわななく。 リザードマンは人間よりも大柄な体格であり、社交性も高い。 本来ならば、生息地近くの人間種との混血を定期的に行って、 群れの遺伝子多様性を保持する習性があるのだが―― それには勿論、種族間の緊密な交流が保たれてこそである。 リース: ごめんなさ、ごめんなさい…! いやぁ、やめてぇ…っ! 知らず知らずのうちに漏れる、慈悲を願う言葉――実に無力。 こんな暴力的行為は通常の異種族交配では起きてはいけないこと。 だがこの檻の中にいるのは一方的に奪われるだけの獲物と、 それを貪る権利を与えられた一匹の雄しかいないのだ。 床に向くリースの乳房がゆさゆさと揺れても、亜人は興味を示さない。 卵生の彼らにとって胸は性的興奮を煽る部位ではありえないし、 人間種との交配自体が、群れの維持を目的とした義務に近いもの。 今の彼は、実験参加者としての務めを果たしているにすぎない。 どぽり、と事務的な射精――しかしその結果はしっかりと。 結合部の生暖かい感触に、唇を噛み締めて堪えるリースの姿にも、 亜人は何一つ言葉を掛けるでもなく、ただ冷たく見下ろしていた。 それがお互いの果たすべき役目なのだと、理解しているからだ。 *【妊娠初期】 リースの妊娠が確認されても、出産まで両者は解放されない。 一連の行為によってリースの心身に負荷を掛けること自体が目的で、 妊娠している仔は、単なる実験の副産物に過ぎないからである。 これはリザードマンの常識からすれば、ありえないことだ。 同種での――リザードマン同士での婚姻関係ならいざ知らず、 他種の血を取り込むための交配は、子が生ればそごで完結するもの。 それをわざわざ、リースを追い込む手段として行うのだから、 亜人の蜥蜴めいた表情は、なんとも苦渋に満ちた貌となっていた。 リース: おねがいします…やめて… うぅ… たすけて… 凌辱者が気乗りしておらずとも、リースの受ける苦痛は変わらない。 あくまで義務、役目としての行為――ですらない、機械的抽挿。 いっそ彼の憤懣や鬱屈を吐き出すための、性処理目的の方が、 無体ながらも、その行動原理を理解できるだけましというものだ。 妊娠したからといって終わりはしない――この実験の大前提は、 まさにこのような無為な性交による心身の圧迫を目的とする。 リースと亜人の捉える手段としてではなく、この期間そのものが、 まさに彼女の魂を、何一つ光の見えない闇の中に引きずり込む。 今はまだ、腹部の膨らみがさほど目立たない状態ではあるが、 これが臨月に近づくにつれ、その齟齬はより大きくなっていく。 ただの手段として消費されるだけの、意義薄い繁殖行為は、 遠からず、リースの心に傷を残すことが約束されていた。 *【妊娠後期】 前に張り出した腹が、床と接するか接しないかのぎりぎりの高さで、 腰を打ち付けられる衝撃に、ゆさりゆさりと断続的に揺れる。 両者の交配は、この実験期間中はほとんど休みなく行われていて、 種付けが行われた当初から、この体勢が変わることはなかった。 既に仔が生り、安定し、後は産まれる日を待つばかり―― そんな状況下でも、一切の手心なく犯される日々は、 リースにとっては耐え難い苦痛をもたらすものであったが、 ではリザードマン自身にとっては、どうだっただろうか。 リース: うぐっ… おなか、いたいぃ… やめ、て…! ほんの一瞬、亜人は表情を強張らせたが、またすぐに腰を動かす。 リースへの憐憫ではなく――行為と目的の矛盾が彼を蝕むのだ。 仔を作り、群れを存続させるための混血ではなく、 そもそも、この二人の間の仔の存在自体、必要とはされていない。 人間種との交渉と交配は、高い知能と社会性を有したものの役目。 それが、こんな檻の中で一方的に、かつ無為に繰り返されている。 人間が胎生というのは、当然彼らは知っている――妊婦の腹が、 今のリースのような大きさになれば、もうじき産まれるのだということも。 何よりリースの姿は、彼の美的感覚にそぐわない。鱗もなく、尻尾もなく、 肌の色も薄橙で、緑の布切れで誤魔化したような醜女など―― いくらリースとの交配相手の役目を与えられたからといって、 まだ若き彼の胸の中で、容易に飲み込めるようなものではなかった。 *【出産】 リザードマンと人間の間に産まれた子は、卵殻こそ形成されるものの、 孵化までに子宮内で孵り、事実上ほとんど胎生と変わらない形で産まれる。 それゆえに、リースの味わっている出産の痛みは通常の人間の子供のそれ、 重く響く陣痛と、子宮口を開かれる感覚によるものである。 産まれる種族は、ほとんどリザードマン側の形質を受け継いでいて、 交配の相手方の形質が表に出てくることは、ほとんどない。 他種との交雑によって本来の血統が薄れるのを防ぐためである。 この特徴は他の異種と交雑可能な亜人でも、比較的見られる性質だ。 リース: うぅ――っっ! ふっ、ぁ、あ…っ! 柔らかな卵膜を突き破ってきた胎児が、リースの胎内で蠢く。 父親譲りの生命力、出産に際しての懸念事項はほとんど考えられない。 赤子の父であるリザードマンは、リースをじっと見下ろしていた。 母胎としての頑丈さを、彼も十分に理解しているからだ。 太い性器にて丹念にほぐされてきた膣道は、いざ出産の時を迎えても、 裂けるでもなく――ぬるぬるとした緑の肌を持つ嬰児を、外に送り出す。 ちらりと見えた己の股間から覗く、明らかに人ならざるその色は、 リースにとって、異様なものを孕んでしまったという印象をより強くする。 リース: くぅ…ぅ… いやぁ、こんなの…いやぁ… 先に飛び出したのは尻尾の方であり、これはつまり赤子の位置が逆、 足を下にした逆子の状態であることを示唆していた。 しかしまったくもって赤子は健康そのもの、尻尾を乱暴に振り回す。 人間よりよほど頑丈な亜人の血は、体勢など一向に問題としないのだ。 尻尾に遅れること少し、両脚がばたつきながら母の産道を潜り抜ける。 臍の緒は膣肉との間に挟まって擦れながらも、まだ赤黒く脈動し、 出産の最後の瞬間まで、母の栄養を吸い上げんとしていた。 艶々光る無数の鱗は、赤子の生命を代表するかのように煌めく―― *【出産♀】 出産がようやく終わりに近づいた頃、亜人はゆっくり頭を上げた。 おおよそ想定通り、自分によく似た半人の仔の姿を確かめようと。 実際に彼の目に飛び込んできたのは、今まさに産道を通ったばかりの、 リザードマンには生えるはずもない、短いながらもはっきりした金髪だ。 これはあまりに人間――母親であるリースの形質を受け継ぎ過ぎている。 彼の理解の範疇を超えるのはそれだけではなく、顔つきだってそうだ。 いわゆる爬虫類の、前にせり出し細くなっていく顎の形ではなく、 あくまで哺乳類、猿の仲間である人間のそれに似て後頭部が大きい。 リース: …! あっ、う、ぁぁあ… 緑の肌に明らかな異形を感じつつも、その体毛は間違いなく自分由来。 リースが否定しがたき血縁の重みに呻き声をあげているその一方で、 彼女の孕ませたリザードマンもまた、ほとんど表裏一体の想いを抱く。 しかしそれは実態においては真逆、自分の血を引く――異常な姿への。 人間と自分たちが交われば、おおよそリザードマンの仔ができる。 姿も純血のそれと大差なく、やがて取り込まれていくはずの―― それがこんなに、人間にあまりに近い姿を取ってしまっているのだ。 この異変の理由がもし、自分の側にあったとしたら――恐ろしい想像。 結局、この赤子はそのどっちつかずの姿ゆえに、どちらの親からも、 自分の血を引き継いでいることを認知されながら――歓迎はされない。 リースは赤子を素直に抱き上げられず、亜人はその存在を許容できない。 これが集落での出来事なら、“なかったこと”にもできただろうに。 両親の困惑をよそに、赤子は自ら臍の緒を切ろうかという勢い。 肌の色と鱗、太い尻尾は確かに蜥蜴を思わせるのだが、素体は完全に人。 取り上げた研究員の腕を尻尾で強かに打ちながら、赤子は泣き喚く。 既にこうして生ってしまった生命より、重いものはないのだ。と。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪プチドラゴン≫ *【破瓜】 小型とはいえ龍のはしくれ、その威圧感は侮れないものがある。 ましてリースは現在、対抗する手段の一切を奪われた状態だ。 ずんぐりとした丸顔も、むしろ不気味さを感じさせるほどであって、 檻の扉が開いた瞬間から、牢内の空気はぴりりとひりつくようだった。 リース: くっ…! 龍はばさばさと空気を羽でかき混ぜながらリースの下へ飛んでくる。 体格自体は人間と大差なくとも、上から押さえつけられるような位置関係、 忙しなく動く翼膜のせいで、リースの方がよほど小さく映るのである。 そしてそのまま、リースの背後に回ると、ひょい、と軽やかに―― リースの体は宙に浮いた。プチドラゴンに持ち上げられているのだ。 がっしりと脇から抱え込まれては、いくらもがいてもどうにもならない。 上下に揺さぶられるうち、自然とリースの両脚はぶらぶらと力なく開く。 その隙間を狙いすましたように、龍の性器が純潔を食い破った。 リース: いぎぃい…っ! あ、いた、ぁあ… 半ば宙吊りの状態で、己の体重がそのまま性器に返ってきている。 破瓜の痛みは想像以上に鋭く、リースの心の奥まで貫き通すと、 それに慣れる暇をも与えないまま、空中での交尾が開始された。 激しく揺れる視界と、一向に引かない股間の痛み―― リースの悲鳴は、二人分の体重を支えて余りある翼の音に呑み込まれ、 彼女がいかに無力で、貪られるだけの存在かを如実に表していた。 自分だけが好きにできる雌を手にした龍は、随分と興奮しているらしく、 下半身を大きく曲げたり伸ばしながらの、激しい抽挿を繰り返す。 リースは体力を見る見るうちに消耗していき、苦しそうな表情に。 焦った研究員が止めに入ろうと檻の戸に振れた瞬間、傲慢なる龍は、 口から毒性の強い霧を吹いて、邪魔をするなと威嚇した。 産児数の少ない龍がなぜ絶滅せぬか――その理由を示すように。 *【種付け】 大型の龍はその表して片脚だけで人間の胴回りを超える太さだが、 地上にいるほとんどの龍は小型で、力も、知能もより低級のものばかり。 しかしそれでも彼らが、押しも押されぬ強者として君臨するのは、 まさにその生まれもっての肉体が、他を凌駕するためである。 此度の交配実験に選ばれた龍は、その事実を何よりも強く語る。 人間一人を容易く持ち上げ、交尾しながらも翼で宙に浮く―― 蝶や蛾よりもよほど重い身でそれを成し、全身には鱗がびっしり。 彼らは飛ぶ要塞とでも評すべき、極めて強力な生物なのだ。 リース: あぐっ…ううっ! さけ、るぅ…! 自身より遥かに強く、獰猛な獣の懐に抱え込まれ、犯される―― 常に上下に揺さぶられ、肉の槍に骨盤をごりごり押し広げられ、 その上さらに、龍の激しい腰使いによって、奥の奥まで届いてくる。 リースにとってこの種付けは、どれだけ痛みを伴うものであろうか。 龍の口の端からは、抑えきれない興奮によって紫の煙が漏れている。 その毒性で、リースの体はぐったりと、生気を失ったように無抵抗だ。 それゆえ、がくんがくんと振り回される肉体の動きがより目立つ。 自分を受け入れる雌の態度に、龍の機嫌はますますよくなっていく。 リース: あぅ… あ、ぁあ… 弱っていく心身と反比例して、ただ彼女の乳房だけが、 開いた両腕の間、前方にてゆさゆさと、滑稽なぐらいに揺れている。 無論、龍は卵生で、それに関心を持つことなどありえないのだが、 彼の興奮は、不思議と、乳房の動きに合わせて増すようでもあった。 どぽり、と放たれた精が、リースの最奥目がけて突き進む。 龍の仔を孕む栄誉を与えるかのごとく、堂々と、ひたすらに激しく。 人と龍の混血自体は稀にあるが――それは大抵の場合、悲劇を生む。 その理由を、しばらく後のリースは嫌というほど思い知らされるのだ。 *【妊娠初期】 まだ目に見えるほどではない――されど確実な違和感。 交尾のたびに突き上げられる胎内に、はっきりと覚える異物感が、 日の経つごとに輪郭をくっきりとさせていくのが、リースを蝕む。 硬い芯のような何か――塊を、そこに認識してしまうのだ。 恐る恐る手で下腹部に触れても、確信というほどではないものの、 空中での高低差のある抽挿からもたらされるもの以外の、 どこか、全く別のところに根を持つ嘔吐感が――否定できない。 牢内には、リースの体調不良の証拠がいくつも広がっていた。 リース: うぶっ、やべ、やべてぇ… きもちわるい、で、でちゃう… その懇願はあまりに弱々しく、龍になんらの拘束力ももたらさない。 彼にとってこの雌が抵抗らしい抵抗をしないのは当たり前のことで、 その微細な変化を読み取れるだけの知能は、元からないのだ。 龍はただ強く、生活も繁殖も、己が肉体の求めるままに成す。 弱い個体への淘汰圧が、他の存在よりもずっと強い種族なのだ。 強くない龍は、それだけで生きる価値を見出されないといってよい。 よもや自分の仔が、そして繁殖相手がそんな弱者と考えもせぬまま、 龍はひたすらに、自身の欲求を満たすためだけにリースを犯していた。 リース: … うっ…ぐぇ、え… 性器の先端が、子宮口をごつごつと何度も何度も叩く感覚―― 全身の力が抜けたことで、唯一刺激を受けている場所への感覚は、 リースの意志に反して、ずっと鋭敏に、色濃く突き刺さってくる。 だからこそ――腹部の違和感が、段々と重みを増してくるのだった。 *【妊娠後期】 リース: やめてぇ… おなか、いたい、から…! っぐ、うぁあ…! リースの抱いていた懸念はまさに的中、これ以上なくはっきりと表れた。 前方に大きくせり出した腹部は、それを何よりも物語っている。 ずっしりと重みのある腹は突き上げられるたびに揺れて、 乳房と合わせ、ゆっさゆっさと歪な三角形を作り出していた。 龍はリースの腹の膨らみが誰の目からも明らかとなった今でも、 暇さえあれば彼女を持ち上げ、玩具のように犯し、投げ捨てる。 つがいとなった雌への気配りどころか、より支配欲が増し、 好き勝手に弄ぶことそのものに、満足しているようにも思えた。 リースの肉体は、そんな無体を受けても耐えられるようになっている。 通常の交配実験において――流産することは極めて稀であり、 いかに酷い仕打ちに遭おうが、体は母となってしまうのだ。 心がそれに追いつくかとは、次元の違う話として―― リース: …! いやっ、おなか、うごいて…! だめぇ、おろしてぇえ…っ! 母胎にて十二分に育った卵は、やがて次の状態へと移行していく。 母の体の外で、孵る日を今か今かと待つ、目覚めの時へ―― リースの肉体も、その瞬間が近いことをしっかりと理解したのだろう、 二人の結合部からは、ぶしゅぶしゅと液体が漏れ出していた。 リースの子宮内にて堅く、どっしりと育った龍の卵―― ただ孕むだけなら、例がないわけでもないが、産むとなれば―― 直に訪れるその苦痛の大きさを、まだリースは知らない。 股間から鉄球を産むような無理を、すぐに迫られるということを。 *【出産】 牢内には羊水がいくつかの水たまりとなって飛び散っていた。 日課の交尾を終えてリースを床に放り出した龍も気づいたようで、 自分の仔を孕んだ雌が、きちんと卵を産めるのかどうかを、 ちらちらと、その大きな瞳にて見極めようとしている。 リース: ぐっ、ぎ…ぁあ…っ! …!が、ぁあ…! 取り繕う余裕すらなく、リースは強烈な陣痛と格闘を始めたが、 彼女の腹部にある卵は、極めて高い強度と硬度を併せ持っており、 それが子宮いっぱいに詰まっているのだ。難産どころの話ではない。 歯をぎりぎり噛み締めて呻いても、全く出る様子すらない―― みちみち、ごりごりと肉を裂き骨を砕く音が大きくなっていく。 リースのあげる悲鳴はより悲惨に、しかし一切の効果を持たない。 口からはぶくぶくと、血まみれの泡さえ噴き出し始めていた。 口腔か、あるいは圧迫された内臓からの出血であろうか。 限界を迎えた股間は、リースの苦悶の跡にすっかり染まって、 しかしそれでも、ようやく、涙滴状の先端が覗いたに過ぎない。 それより遥かに巨大な本体が、まだまだ通っている最中なのに―― 観察する研究員さえ、途方のなさに背筋をひやりとさせたほどだ。 リース: しぬ…! じぬぅ…! あ、が、ぁぁあ…っ! その悲痛な声は、とてもあの可憐な少女の喉から出たとは思えない。 全体の三分の一ほどが見えた時点で、言語としては成立しなくなり、 ただ絶叫だけが、牢内に延々と木霊し続けることとなった。 少しも凹まず、そのままの形で母の狭い産道を通ろうとする卵―― これが龍同士の繁殖においてなら、本体の頑強さと体格で誤魔化せるが、 リースは人間、遥かに脆く、弱い。我が子の強さに、体が耐えられない。 人と龍の間に愛があっても、婚姻関係が成立しにくい要因である。 ましてリースと交配相手の間に――そんな浪漫はなかったのだから。 *【出産♀】 母親の肉体をずたずたにしながら外界へと転がり出た龍の卵は、 その表面をべっとりと汚す血液とは裏腹に真っ白に輝いており、 出産――産卵という難事を終え、疲れ果てているリースの脚の間で、 なんともてかてかと、生命力に満ちた艶めきを放っていた。 すぐにでも次の交尾をしようとリースに近づく龍を牽制しながら、 卵を拾い上げるために飼育員が檻の中へ踏み入ろうとすると、 突然、卵は大きくがたがた揺れ、ごろごろと床を転がりだす。 いかに龍の仔の生命力が強いといっても、これは異例のことだ。 リース: …はぁ、はぁ… ぐぅう…っ… 呻き声を漏らすリースは、その卵の異変に気付いてはいない。 惨憺たる光景の中で、不自然に活力的に転がり続ける卵―― 孵るまでには相応の時間を要するのが龍の卵の特徴だが、 リースの産んだ卵は、明らかに孵化直前の様相を呈している。 そのまさしく証明として、分厚い殻にはびきびきといくつも亀裂が走り、 ぱきん、と硬い音と共に、内側から内容物が姿を現した。 父親譲りの翼や鱗、尻尾が生えているのが目視できるものの、 その形状は龍よりも、ずっと人間の赤子のそれに近かったのである。 人間との混血にて、人と龍の混ざった存在が産まれた――そんな伝承、 それが現実のものとして、檻の中にて再現されていたのだ。 ただ伝説と違う点は、龍の側が人の姿に扮して交わった――というような、 両者の融和の象徴ではなく、荒々しき龍本来の姿であったところ。 普通の人間の女ならば、それに耐えられず絶命するのが普通だが、 リースの肉体は龍を受け入れ――そして同時に、己の中へ取り込んだ。 この金髪を持った女児の姿は、まさにそれを象徴する存在である。 自分の産んだ仔の特殊性など、リースが知る由もあるまいが―― ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪ビービー≫ *【破瓜】 名称からは蜜蜂のような無害なものを想像させるが、実態はまるきり違う。 むしろ獰猛な肉食蜂に近いのが、このビービーという昆虫の一種で、 蜜こそ集めはすれど、生物を狩って捕食することも多い生物だ。 その大きさ――幼児ほどはある胴体を見れば、それは明白である。 またこの蜂は、時に百にも届く数で巨大な群れを構成して生きている。 その膨大な食欲を支える、確かな狩りの能力の秘密は、尾部の毒針。 一刺しで大型哺乳類の動きを止める、即効性の強い麻痺毒だ。 刺された獲物の運命は、おおよそが肉団子だが、まれに―― リース: …! うっ、あ… ……っ…! がくん、とくずおれる膝、思考に全くついていけない眼球の動き。 リースの体は、ほんの一瞬で時が止まったようにすっかり動かなくなった。 刺されて痛々しく腫れた跡からも、何の信号も送られてこない。 自分の身ではない何かの入れ物に、無理やり押し込められたよう。 働き蜂である雌の大半が、狩りや自衛のために毒を持つのは道理。 働かず、交尾することだけが役割の雄蜂には無用の長物と言えそうだが、 実はこのように雄蜂が、獲物を得るために用いることもあるのだ。 寄生蜂であった頃の名残、退化しきらない部位ではあるが―― このように、交尾に積極的でない相手の動きを抑える裏の用途も。 リースの肉体は、虫風情から見ても魅力的な母体と映るようだ。 毒針が引っ込むと、体内からは雌蜂を孕ませるための性器が出てくる。 弛緩した股関節は、蜂の都合のいいように大きく押し広げられていた。 リース: やぇっ…! ひ…ぃ…ぁ… もつれ始めた舌は、もはや言葉をリースの口腔に形成できず、 嚥下しきれない唾液が、ずるずると口の端からこぼれ出してくる。 彼女にできるのは、窒息という最悪の事態を避けるために、 なんとか舌を、邪魔にならない場所に押しのけておくことだけ。 虫の性器が己の純潔を破壊し、処女膜の断片を血とかき混ぜていても、 天井を向いたきりで下げられない視線の端に、僅かに覗くのみ。 乙女としての一大事が、限りなく他人事のように感じられる。 けれどその結果だけは――リースが背負い込まねばならぬものなのだ。 *【種付け】 たった一刺しで奪われた全身の筋力が戻るまでの永い時間を、 リースはこの獰猛な蜂のご機嫌に任せ、ただ待つしかないのであった。 犯されているという実感も遠く――何も感じない無為な時。 だからといって、よもや寝て過ごす、というわけにもいかない。 リース: …ぁ、う… リースは出力するための一切を奪われているだけに過ぎず、 彼女の感覚は通常時とまったく遜色ないほどに健全なままだ。 むしろ、意識を他に割く必要のない分だけ、鋭敏とさえ言える。 その尖った神経で、羽音も、虫の横顔も、見てしまう。 刺された傷の痛み、犯される股間の感触――何も届かず、 それでも、鼻の奥からの血の混じった唾液の不快な味は届く。 交尾という行為によってもたらされる刺激がない一方で、 下半身に何かを叩きつけられている感じだけは、確かにある。 リース: うぁ…あ… ぼんやりとした靄が、リースの全身を包んでいるかのよう。 首から下――いや、脳の内とそれ以外とで、世界が分断されている。 実態は彼女の肉体が十全に信号を伝達できていないだけにしても、 凌辱というには、あまりに無味乾燥なものがそこにあった。 その一方で、肉体は必死に凌辱による苦痛を和らげようと、 潤滑液を分泌し、不要な緊張と筋力をなくして、懸命に抗うのだ。 もたらされる結果は、凌辱者に媚びるものにしかならないのだが。 受け入れを選んだ結果は、やがてすぐに身を結ぶ―― *【妊娠初期】 蜂とリースの交尾は、常に同じ出来事が引き金となって起きていた。 背後に回って、一瞬の隙を突いての一刺し。後は決まっている。 がくんと倒れたリースの体を交尾しやすいように仰向けにし、 毒針の代わりに出てきた性器を、彼女の股間に押し付ける。 いかにリースが気を張っていても、どうしても無防備な時間はある。 犯されないように神経を集中すれば、どうしても疲労も溜まる。 普段、山野の獣を狩る蜂にとっては、実に容易な獲物だろう。 まして彼女の腹部には、既にこの実験の成果物があるのだ。 リース: … ぐ……も、う… や、めへ… 麻痺毒と凌辱から解放された後の、肉体への帰還の瞬間―― その前後での、己の身に起きた変化には、より一層敏感に。 ちぐはぐな心身の擦り合わせが、彼女に一つの答えを与える。 自分の胎内には、既に――不快な想像が、頭から離れない。 そしてその通り、リースの体は母としての責務を果たすために、 芽吹いた命を受け入れ、栄養を与えて肥え太らせていく。 与えられる食事に対する、微かな食欲と味覚の揺らぎ―― いかに受け入れがたくとも、証拠は着々と育っていった。。 リース: うぶぅ… あ…っ、あぁ…! 肉体の変化を伴う体重増で、麻痺毒の掛かり具合が変化したのか、 ほんの少しだけ、失われたものが戻ってきたような感覚がある。 何も感じない恐怖からの解放であると同時に、それはまた別の―― 仔を孕んだことを自覚させられる、そんな苦悩が待ち受けていた。 *【妊娠後期】 当初に比べて、蜂の麻痺毒に対する肉体の反応が変わってくると、 リースはなおさら、自身の変容を自覚せざるを得なかった。 それは悪阻、倦怠感、意識の混濁といったものに留まらず、 物理的、視覚的な変化をも、多大に含んでいるのである。 リース: くうっ…! こ…このぉ…! 大きく膨らんだ腹部は、まさにその象徴だ。中に命が在る、 それを何も加味しない凌辱者への、言葉にし難い嫌悪感。 まだはっきりと感覚が戻ったわけではないが、不快感が募る。 好き放題されて、すっかり変わってしまった身体への悲哀も。 視界の端に、ゆさゆさ揺れる腹部の上部が見えるようになった。 体に伝わる振動が、いかにも重たくうねるようなものになった。 自由を取り戻しても、起き上がることさえ相当な難事になった… 決定的な何かが、自分自身を置き去りにして起きている。 リース: ぐすっ… ぁああ…いやぁ… 感覚と思考だけが、ただリースの傍に寄り添っていた。 ただ彼らは、その判断材料を手の上からぽろぽろとこぼす。 断片的な情報から、己の肉体の変化を推測するしかないのだ。 答え合わせの時が近づいていることだけは、確信としてある。 指先の痺れが、少しずつ、少しずつ消えていく―― もつれた舌が、息を吹き返してじたばたと口内を躍る。 変わり果てた肉体との再会の時、リースの心は沈んでいく。 母としての最初の役目から、少しでも目を逸らそうとして。 *【出産】 リース: が、ぁあ…っ! っぐ、ぉ、あぁ……! 蜂も流石に出産を目前に控えたリースと交尾をすることはなかった。 それは彼女が、肉体の主導権を取り上げられはしないということだが、 これまで感じなかった、妊娠に伴う苦痛を軽減されないことでもある。 その落差は、リースが想像するよりも数段激しいものであった。 胎児そのものは、人間のそれよりはいくらか小ぶりのものであるらしく、 しっかりと準備さえできていれば、さほどの苦痛はないはずだった。 結果は、ぎりぎりと歯を食いしばって突然の痛みに耐える姿。 急に、出産という大仕事の場に引きずり出されたに等しい。 リース: さ、け、るぅ…! っぎ、ぁ、っ……! はっと気づいた瞬間には、既にリースの産道は開き始めていて、 自分の股を濡らす液体の正体を、それで知ったようなものだったのだ。 どうすれば痛みが弱まるか、お産が前へと進むのかを考えるより、 怒涛の勢いで押し寄せる、肉体の限界を示す痛覚信号―― 目を見開き、全身に汗を浮かせて、身を半狂乱でよじりながら、 いつ終わるとも知れない波に、リースは翻弄されるほかないのである。 発露からの時間でおおよその出産完了時刻を予測する冷静さは、 もはや、今の彼女にはまったく無縁なものだった。 脳が許容しきらない苦痛に耐えかね、断続的な意識の空白を産む。 そして肉体が限界に達すると、それにょり気絶から引き戻される。 その繰り返しで、リースは今自分が何をしているかも理解できない。 いつかこの時間が終わってくれることを、ただ祈る―― *【出産♀】 自分の股間から這い出たものの正体さえも判然とせぬまま、 意識を繰り返し飛ばされて朦朧としていたリースは、 痛みが引いたのに合わせて、ようやく頭を上げ、周囲を見渡した。 己の撒き散らしたと思われる羊水、血液、その他―― 檻の中には実に色とりどりの、煩悶の跡が塗りたくられている。 それは肌にも髪にも、まったく容赦なく降りかかっていた。 ぬちゃり、と手のひらで生温い液体を押し広げてしまう―― ほとんど逃避として、リースは身を清めたいと強く思った。 リース: おふろ… …? これ、なに…? 胡乱な瞳は、股間から繋がる肉色の紐を先へ先へとなぞりだす。 それが自分の肉体を起点としていることも、うまく認識できない。 ようやく行き当たった先には――赤黒い体液に包まれた肉塊、 されど確かに蠢く、一つの命としての赤子がぶら下がっていた。 リース: ぁ…あぁぁ、ぁ…! 断片化されていた、この交配実験期間中の記憶が結びつき始める。 いかに心が受け入れがたくとも、肉体は十全に役割を果たし、 そして今ここに至って、彼女の体は一つの役目を果たしきったのだ。 鈍化した思考など、言い訳にもならない。事は既に終わってしまった。 追い打ちを掛けるように、後陣痛がじわじわと強くなり始めた。 体から引きはがされた胎盤は、異世界の寄生生物のように不気味で、 リースは全身の震えをやっとで抑えつつ、声にならない悲鳴をあげる。 母の声に反応してか、赤子が身じろいでも、取り上げすらせずに。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪クロウラー≫ *【破瓜】 大きくさえなければ、まだ生理的嫌悪感もそれほど強くはあるまいが―― リースの目の前に、ずんぐりと大きな芋虫が一匹、体を伸び縮みさせている。 体格は、四つん這いになった成人のそれとほとんど同じだけあって、 背中のあちこちに生えた棘も、一本一本が足の親指ほどはある。 リース: き、気持ち悪い…! だして、ここから出してぇ…! そんな巨大芋虫が、何かしらの目的を持って自分ににじり寄ってきている。 小さな足をてんでに動かし、地面を掴みながら、着実に、予想外に速く。 その様子に腰の引けたリースは、案の定あっさりと躓いてしまい、 芋虫は体勢を立て直す猶予も与えぬまま、転んだ彼女に覆い被さった。 柔らかくも、分厚い表皮の内側にて脈動する、緑色の体液が透けて見える。 至近でそれをまじまじと見せつけられて、平常心を保てるものは少ない。 さらに、肌の上を件の芋虫の短い無数の指先がもぞもぞと撫でるのだ。 リースはすぐにでも、押し退けて悲鳴を上げたかったに違いない。 リース: むぐ、っ…! ぐっ、ぅむ…! 顔の上にはどっかりと、芋虫の頭部がのし掛かってきているし、 体格に見合っただけの重量――リース自身の体重とほぼ同じものが、 彼女の体を床にしっかり抑え込んで、呼吸すらも容易に行わせない。 もっとも、この醜悪な虫がそれを計算してのこととは言えないのだが。 彼の行動原理は明確だ。生物に与えられた本能を、満たすことだけ。 リースは食欲の対象ではなく、睡眠欲を満たしたくなる状況下でもない。 最後の一つ――繁殖欲を満たす相手に、リースを見初めたのだ。 この芋虫は幼体ではない。堂々たる体躯の通り、既に立派な雄の成虫。 なんとか呼吸を確保しようとするリースは、その事実への認識が遅れる。 股間に押し付けられている箇所が、他に比べて動きの小さいことや、 硬度が変わって、柔らかい部位が中から現れ始めていること。 その正体を、みちりと肉を裂く痛みにて、一気に教え込まれたのだ。 何の変哲もない虫が、こうして宛がわれるはずもないこと、 リースにはそれがよくわかったことだろう――だがもう遅い。 繁殖のために動き出した芋虫の体は、目的を成すまで止まらない。 その相手方が、どれだけ拒絶しようが一切お構いなしに。 *【種付け】 見るからに巨大な芋虫――壮絶な生理的な嫌悪感をもたらすそれが、 床に押さえつけられたリースの上にどっしりと覆いかぶさる光景は、 檻越しに見守る研究員や飼育員にさえ、なんとも不愉快に映る。 ましてリース本人は、それに密着されているのだから―― まず、重い。外見相応、軽めの成人男性ほどの重量があって、 それが分厚いも柔軟な皮膚で、接地面全体にまんべんなく押し広がる。 圧力にむらが存在せず、肌の全体を圧迫される苦しみは想像以上だろう。 水の入った袋が、手のひらに沈む感覚をずっと重くしたようなものだ。 リースのじたばたもがく四肢を無視して、芋虫は体を伸び縮みさせる。 股間から覗く、朱色の突起――性器を、彼女の奥へ突き立てるために。 相手が何であろうと、彼にとって最優先は子孫を残すこと。 ぐじゅり、ぐじゅりとかき混ぜられるリースの膣肉―― リース: かはっ…! あひゅ、ぅ、ぁ…! 押し潰された肺がなけなしの酸素を吐き出して、視界は混濁し、 ほんの一瞬の息継ぎをするために、リースはなんとか隙間を探す。 人肌よりはわずかに冷たい――室温程度の芋虫の皮膚の温度は、 リースと密着することで、より不快な生温さへと変わっていった。 生存のための本能が、女としての矜持よりも上にきている。 ただリースは、渇望する酸素のために何をかを取り繕う余裕もなく、 芋虫に汚されているという屈辱を、改めて受け止められない。 彼女が現状を認識したのは、しばらく経ってからのことだ。 リース: っ…ぁ…! や、めて…ぇえ…っ か細き慈悲を乞う声も、この低級な虫けらには通用しない。 思考、意志、知性――それらと縁遠い、反射だけの生物。 そんなものに、雌としての自分を貪られているという絶望感は、 胎内に注ぎ込まれる液体の感触によって、より強くなった―― *【妊娠初期】 交尾の相手を慮るだけの知能を持たない芋虫にとっては、 異性との交尾の機会があれば最大限それを行使するのが当然で、 自身への不利益、不都合がその利益を上回らない限り、止まらない。 彼はまだリースの胎内に小さな命が芽吹いたことを感知しておらず、 ゆえに自らの最大の目的のため、暇さえあれば彼女を犯す。 もっともこれは、人間と虫の繁殖形態の違いも大きな理由だ。 虫の常識において、出産直前まで我が子を孕むのは無駄である。 卵は小さく多くして、それぞれが孵化後に育てばよいのだから。 リース: むぐっ…ぐぅ…! はなれ、ろぉ…っ! リースの抵抗も虚しく、今日も芋虫は彼女の体を堪能するし、 好き勝手に精を吐いて、最奥の卵子を仕留めようとする。 それを無為と断ずることが不可能なのは、彼女もよく知っている。 自分の肉体は、相手が誰だろうと母体として機能してしまう―― 今はまだ自覚していない腹部の微かな、しかし確かな違和感は、 どうあっても、彼女をより深い暗闇の中に引きずり込むのだ。 ゆっくりと彼女を責め苛む――こんな醜い生物の仔を、と。 そして想う――そんな生物の慰み者である惨めさを。 リースに彼を拒絶するだけの力はなく、ただ汚されるばかり。 押し倒されても呼吸を確保できるよう、体勢を整えておくことしか、 この悍ましい交配実験の中で、彼女に与えられた自由はない。 苦悶の先送りによって。リースは辛うじて正気を保っていた。 *【妊娠後期】 この雌は最近、なんだか形状が変化したようだ――芋虫にとって、 直に臨月を迎えるリースの大きく張った腹は、その程度の認識だ。 母親の胎内で仔を育てる虫も、多少ながら存在はするが、 それは彼の種とは大きくかけ離れた、別の世界の話である。 リース: おなかっ…! くる、し、ぃ…っ! 種付けの際から全く変わらない、リースと芋虫の交尾形態。 彼女の腹部に、押し潰すような圧力が常にかかり続けていて、 母体としての適性を引き上げる呪いが掛かっていなければ、 早々に流産、早産といった結果に結びついてもおかしくなかった。 それがここまで膨らむまで子宮内に胎児を保持させたのだから、 リースの意志とは無関係に、いかに優れた繁殖母体となったのか伺える。 彼女の胎内では、本来大量の兄弟姉妹に分散されるはずの栄養が、 ごく限られた個体数に集約され、常識外れの巨大胎児を作り出す。 リース: うごか、ない、でぇ… おな、かぁ…つぶれ、る…! 胎動さえも、芋虫の体の方にリースの皮膚を押し上げる力となって、 内と外の両側から同時に、子宮を圧迫される状態となる。 まして胎児は、芋虫としては相当な大きさに育ってしまっている。 交尾の時以外も、母親の腹部を大きく跳ね上げるだけの元気さで。 始まってすぐはなけなしの体力を振り絞って暴れるリースも、 じきに大人しく、無抵抗になっていくのが常である――ただし、 それは出産がまだ先のことであればこそ、の話だ。 いよいよ外界に這い出そうと、胎児はさらに強く蠢いた。 *【出産】 芋虫が体の上から退いてすぐ、リースの顔は痛みに歪んだ。 頃合いと見た胎児が、体外に出る準備を始めたためである。 挿入される内側への動きとは真逆、出すための外側への動き―― 母親が出産の体勢に入るのを待たず、胎児は激しく身をよじる。 リース: うぷっ、ぐ、ぇえ…! まっ…て… ちょっと、ま…ぅっ…! 呼吸によって少しずつ陣痛の波に乗り、力む瞬間を見極める、 そんな出産の常套手段を、当然赤子も芋虫も知るわけはない。 どくん、どくんと強くうねる子宮内の暴君のご機嫌次第で、 リースの出産までの道筋は、あっさり打ち崩されてしまうのだ。 角や翼を持たない分、それが産道に引っかかるようなことはない。 むしろ、父親の丸みを帯びた形状に準ずる姿なのだから、 お産の苦しみは、他の種のそれよりは弱くなるはずなのだが―― リースは不規則に、断続的に跳ねまわる胎児を鎮めるのに精一杯。 産道の口に胎児が触れた時を狙って、腹部に力を込めていく。 腹筋で思いきり押し出すように、ぐうっと目一杯、必死に。 あれだけ腹部に掛かっていた芋虫の重量が、今は恋しくなる。 出産ともなれば、あの圧力も随分助けとなったろうに。 リース: うっ…うぐぅうぅう…! おとなしく、してぇ…… 少し進んだと思えば、また蠕動で少し戻って、の繰り返し。 流石に芋虫も彼女の邪魔をしないが、助けにもならない。 人間の新生児とそう変わらない体積のそれを産み切るまでに、 リースの味わった苦痛と疲労は、その何倍にも上ったのだった。 *【出産♀】 リースの胎内から排出された緑の塊は、びくんびくんと大きく跳ねる。 蛆状の肉体は、まさに父親である芋虫のそれを引き継いでいた。 しかしその表皮をじっと見ていくと、途中で緑から薄橙へと、 まるっきり色の違う部位が、混ざり合ったように繋がっている。 それはまさに、人間の赤子の体色、肌の色そのものであって、 さらに辿れば、先にはきちんと両腕、頭と部位が連なっており、 人と芋虫の両方の形質を不格好に混ぜたものが、そこにいた。 ご丁寧に、人間部の臍からは臍帯にあたるものまで生えている。 リース: はぁ、はぁ… うぅ…こんなの、を… わたし… 凌辱者の血を色濃くそこに見せる異形の赤子の姿は、 心身ともに疲れ果てたリースに、とても呑み込めるものではない。 だからといって、両者を結ぶ一本の肉の糸――臍の緒は、 頭部の金の毛や、人型の上半身よりも如実に血縁を示す。 自分の卵子が芋虫の精によって汚されたことだけではなく、 かくも醜き寄せ集めの姿として地に落ちたというこの事実、 既に失ったはずの王族の矜持がみしみしと音を立てて痛む。 父、母、弟――あらゆる血族のその末端に、これが? リース: おねがい…なかないで… 私も…辛いの… 母親の悩みなど知ったことではない。赤子は元気に泣き喚く。 聴覚からの、我が子を早く救えという本能的な訴えかけは、 どれだけリースがこの子を拒絶しても、容易には抗えぬもの。 今にも娘を抱き上げようとする、自分の指の震え―― ぼろぼろと大粒の涙をこぼしながら、リースは起き上がる。 内側から込み上げる何かが、彼女を強く突き動かすのである。 せめて自分だけは、この子を否定してはならないのだ――と。 芋虫部分の柔らかな手触りは、人間の赤子の肌と何も変わらなかった。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪アンクヘッグ≫ *【破瓜】 丸まった背が伸びると、百足の頭部は牢内の天井に易々と届き、 首と背を曲げ尾先を床に長々しく伸ばしてさえ、巨体は溢れかえる。 地中にて肥え太った肉体は、この生物の旺盛な食欲と獰猛さの象徴だ。 捕食に毒などという軟弱な道具を必要としない、蟲の王である。 それに睨まれた瞬間、リースの脳内に駆け巡ったのは原初の、死の想像。 そしてすぐに思い直す。この実験が死などを目的としていないことを。 百足の口は確かに、眼前の弱者に舌なめずりするように動いていたが、 根源が食欲ではなく――別の本能からであるのは明白であった。 リース: あっ… あぁあぁ…! 狭い室内、壁と天井を自在に這う相手にどうして人が逃げられようか。 あっという間にリースの全身には百足の脚が無数にがっしり食い込んで、 完全に身動きを封じてしまう。一本一本の握力も、馬鹿にならない。 このまま骨ごと首を齧り取られるのが、彼の獲物の常であるが―― リース: っぎ、い、ぁ…! いや、やめ…! 百足は自身の懐中にある雌に精子を押し付けるべく、性器を突き立てる。 リースの最奥にある卵、自分の仔となるべきものを受精させるために。 四肢はおろか胴も尻もみっちりと脚に包まれて拘束されていては、 そこに彼女が抵抗する余地など、一切存在しないのである。 頭の上でかちかちと、物々しく大顎の鳴るたびに、体が竦む。 餌か交尾対象かは、今自分の上に覆い被さっている百足の胸三寸。 もしも――そんな想像が何度も何度も、無力なリースの脳裏を舞う。 人間とは大きくかけ離れた存在ゆえに、その胸の内が読めない。 いつ刃の落ちてくるかもわからない断頭台に架せられているのと同じ。 終わりの見えない恐怖は、リースの精神にじわじわと負荷を掛けていく。 百足の体の下、飼育員たちからも見えない彼女の表情は、 女戦士の末裔とは思えぬほど、憔悴しきったものであった。 *【種付け】 百足の交尾は本来、雄が精包を雌に渡すだけのものであるのだが、 ここまでの巨体――牢が狭く感じるほどの巨大個体相手では、 そんな道理が通用するはずもない。ましてリースとは種からして違う。 彼は、精を胎内にて直接授受する相手のやり方に、自身を沿わせた。 歩み寄りとはいっても、リースの意向を汲むわけでないのは当然のこと、 体格差に任せた強引な求愛は、彼女にとっては暴力そのもの。 餌に対しては、冷酷に無遠慮に牙を突き立てて喰らってきた彼だが、 こと交尾の相手、つがいとなればまた話は変わってくる。 リース: はなして…ぇ! あっ、がぁ、ぁ…っ…! 全身をぎしぎしと無数の脚で拘束されるリースは悲惨な有様。 けれど彼女の肌からは、無理に暴れて擦れた箇所以外、 どこにも、傷らしい傷も出血の部位も見当たらない。 体に掛かる圧力を考えれば、それはあまりに不思議なことであった。 仔が孵っても――それ以前の、卵が地に放たれた時点ですでに、 自分とは無縁のものとして、一切の世話を放棄する蟲も多い中で、 彼らアンクヘッグを首魁とする百足の一族は、子育てをやり通す。 もっともそれは、繁殖の最大効率化を狙ってのものではあるが―― 無数の幼体を自身の懐に抱きかかえて守る習性はそのまま、 赤子の居場所ががリースの胎内だという些細な変化にも適応した。 だからこそ、アンクヘッグの無数の脚の中でリースは―― 守られている、のである。横取りしようとする数多の雄から。 凌辱者の行動原理を理解できないリースは、ただもがくだけ。 理解したとして、こんな蟲の庇護下にあることを受け入れるかどうか。 恐怖の源泉でしかない、百足の顎が打ち鳴らされる重い音も、 彼にとっては、一端の愛の告白であるやも知れぬのに。 *【妊娠初期】 種付け開始からほとんど、百足はリースを解放する様子はない。 かくも弱く小さな雌は、自分が守るとでも言いたげな様子だ。 常に彼女の全身を捕まえながら、その足で丁寧に揉みほぐす。 これが人間同士なら、仲睦まじい夫婦の光景でもあったろうか。 リース: うぅ…はなしてぇ…! いやっ、いやぁ… 彼に自分を害する意図のないことは、流石にリースもわかるらしい。 されど常に密着され続けるのは、相当な負担を彼女に掛ける。 途中、飼育員が胎の状態を確かめるために寄ろうとしても、 百足は一切、自分以外の存在をリースに触らせなかった。 その光景は優しさというよりも――蟲の王の所有物に対する、 あらゆる他者からの尊重の欲求であるようにも見える。 事実、二体分の餌を与えられると百足はひどく機嫌を良くし、 甲斐甲斐しく自分の仔を孕んだ雌へ、食事を分け与えるのだ。 リース: にげない…逃げないから、 お願い、休ませて… なぜ悍ましい怪物が、このような不器用な優しさを見せるのか? その答えをリースとて、考えなかったわけではないが、 そして容易に辿り着く答えを、受け入れることができていない。 つがいとして見初められ、仔を孕まされているのだ。と―― *【妊娠後期】 百足の懐中にて守られていたリースの腹部は、いよいよ大きくなり、 無数の脚がぴたぴたと彼女の乳房の上を撫でると、 乳輪からは薄くもはっきりと、乳汁が筋として垂れてこぼれる。 そしてそれを、また脚の先端が塗り広げていく―― リース: うう…もういいから… 何も、しないで… 体を洗う自由も、運動する自由も与えられていない割には、 リースの肌も髪も、そう大した汚れがないように見受けられる。 妊娠という大きな肉体の変化を経由すれば、当然起こるべきこと、 それが起きないのも、百足の献身的な世話によるものだ。 定期的にリースの肌を舐めて汚れを取り、彼女自身の乳汁で、 知ってか知らずか、腹部の保湿を行っていることになっていた。 もっともこれは、幼体が外界に出るまでの父親の役目であって、 産んでからの処置を、リースは担わねばならなくなるのだが。 リース: あぁ…うごいてる… むかでの、あかちゃん… 時折リースの子宮内で動く幼体の動きを指先にて感じ取ると、 自身の役目の終わりが近いことを悟って、百足の動きが遅くなる。 後は任せるぞ、とつがいに言い含めながらの顎の音は、 悲しいかな、彼女に伝わる気配はないようであったが。 *【出産】 リース: …っあぁ…! うま、れ…っ! 胎動が大きくなり始めた頃合いで、ようやくリースは解放された。 だがそれは、出産という彼女にしかできない仕事をさせるためで、 現にアンクヘッグは未だに、自身のつがいをじっと見守っている。 どくん、どくんと大きく跳ねる胎内、その中身はいかに? リース: うぅ… で、ない、よぉ… あぅ…っ! 胎動の大きさに比して、なかなか出産は順調に進まなかった。 頻度からすれば、相当な数の幼体がいると思われたのだが、 実際にリースの胎内から現れ出した個体は、想像以上に少ないらしい。 最も強い個体が母の庇護を受ける権利を得る、これが彼らの常識。 頭が出たと思えば破片であったり、噛み千切られた足であったりと、 彼女の胎内にて、生を受けるべきものが誰であるかを争って、 多くの兄弟姉妹と、共食いを行った形跡が見られるのである。 そして胎内での熾烈な生存競争を経た個体は孵化直後より遥かに大きい。 何本もの脚で母の産道を踏みしめながら、悠々と頭を覗かせ始める。 地中の新たなる王となるために生き残った最も強い個体は、 産まれ出でる最中すら、何度も何度も膣道で体をくねらせていた。 自分が勝ったのだ、さぁ育てろ――そう言っているかのよう。 やっとの思いで胎児の全身を外にひり出したリースの股間からは、 仔百足との血縁を示す臍の緒が、無数の噛み痕を付けながらも伸びる。 アンクヘッグは自身の役目を終えたのを確認するように顎を鳴らした。 その仔をきちんと育てろ、わかっているだろうな――そう呟いて。 *【出産♀】 百足からの無言の圧力に押され、くたくたの体を起こしたリースは、 いまだぼやける視界の端、臍の緒を辿った終着点に手を伸ばす。 散々教え込まれた、百足の硬い殻の感触を予想したものの、 脱皮も不十分な新生児の殻は、ぶにょりと柔らかな手触りだった。 自分がされていたように、その身についた様々な汚れ―― 食い潰した破片、リース自身の血、羊水、あらゆるものを拭き取るため、 半分目を瞑ったような状態でゆっくりとその殻の上を指でなぞる。 するとどういうことか、殻の部分よりも遥かに柔らかな――肉の感触? リース: え… これ…って…? 甲殻にぴったりと張り付いた、人間の赤子の柔らかな肌。 二体が産まれたわけではなく、これが一体のものとして在るのだ。 下半身が百足めいた殻と複数の脚を有した姿でありながらも、 上半身はほとんど人間――触角が一対生えている以外は。 百足にとって、我が子が自分にもリースにも似きらない異形だろうが、 大した問題とはならないらしい。それは視覚的な問題だから。 赤子の皮膚からは、彼の満足するような甲殻の感触が返ったし、 全身を覆う、兄弟姉妹の破片から漂う臭いは、百足の体液そのもの。 リース: いたっ…! やだ、噛んでる… 既に生えた乳歯で、がっしりと母の乳房に噛みつくその姿は、 獰猛な百足の血を思わせながら――しかして天使のようでもある。 醜い下半身があればこそ、人型の上半身がより際立って見える。 お転婆に過ぎるその仔をどうすべきか、リースにはわからなかった。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪サハギン≫ *【破瓜】 檻の扉が音を立てて閉まると、リースはそちらに振り向いた。 身長こそ低く、ずんぐりとした体形でさほどの威圧感はないものの、 侵入者の手にした銛の刃先の鋭さは、彼女を驚かすのに十分である。 くるり、事もなげに銛の柄を手の中で回してリースに近づくと―― 石突にてリースの水月に、どすん。鋭くも重たい一撃が入る。 全身に走る電流のような痛みが、あっという間に四肢から力を奪い、 体勢が崩れたのを見計らうや、魚人は彼女を床に引き倒した。 その手際は実に見事で、彼らが槍の扱いに長けていることが窺える。 リース: うぐっ…! くっ、げぁ、あ… 濁った瞳は、リースに意思疎通の困難な存在であるとの想いを抱かせた。 だが彼の意図するところが何であるかは、実にわかりやすい。 人間を含めた他種族との混血を行う彼らサハギンは、このような形で―― 繁殖に協力的でない相手を、無理やり手籠めにすることがあるのだ。 リース: こひゅ――… ごほっ、っぐ…! 崩れ落ちて目を白黒させ、息を整えるリースの股を易々と開くと、 魚人は股間に生えた肉々しい性器を、手慣れた風にねじこんだ。 彼の全身を覆う、ぬらぬらとてかる粘液は、さながら潤滑油めいて、 まだ男を知らないリースの胎内に、その槍を深く突き立てるのである。 リース: ぁ、いた…っ! …ぅぐっ、や、め… まだ痺れて動かない手足では、凌辱者を押し退けることはできない。 弱々しく頭を左右に振って拒絶の意志を示すも、まったくの無効果。 ぐちゅぐちゅと、滑りよく前後する魚人の性器の感触が、 取り返しのつかない、汚されているという感覚をリースに与える。 それでもこれは序の口、純潔を奪われたというだけに過ぎない。 この交配実験の先には、無論両者の生殖機能の産物があるのだし、 魚人もまた、そうすることを目的に、リースを犯しているのだから。 リースの苦難は、始まったばかりに過ぎず――終わりは、遠い。 *【種付け】 サハギンは魚と人間の両方の特徴を持った亜人の一種であり、 魚部分と人間部分の比率、表れ方の差異によって多種に分かれる。 それは、本来別種のものである両者が混血しやすいということ、 異種との交配に、ほとんど抵抗感を持たないことを意味する。 魚人がリースの裸体に、同種に向けるのと同じ興奮を見せ、 また何の葛藤もなく、彼女の膣内に己の性器を挿入したのも、 彼がリースを、交配相手として魅力的だと認識した結果である。 心なしか、獲物を捕まえる腕にも力が入っているかのよう。 リース: うっ…! あぁっ、うぁあ… 魚人の肌に滴る生臭い体液は、感想を防ぐものであると同時に、 性器の構造がサハギンのそれと噛み合いにくい相手であっても、 無理やり奥までねじ込むことを可能にする役割を持っている。 まして人間との交尾なら、効果はより強く発揮されるのだ。 犯されている、相手が醜い魚の顔をした亜人である―― リースがこの交尾を拒否する理由は言うまでもなく無数にあるが、 それとは裏腹に、ぬるりとねじ込まれるサハギンの性器は、 あっさりと、彼女の肉体の防衛本能を突き破ってくるのだ。 気持ちいい、とはとても言えない――言いたくもない、のだが、 油断した瞬間、苦しいともまったく思えなくなってしまう。 魚人の満足げに勝ち誇る顔を見ていると、それがうつるようで、 リースは必死に、彼の顔から眼を逸らし続けていた。 種を跨いだ交配が、一方による他方への遺伝子の強奪であるならば、 やがて両種族の諍いの種となり、決定的な絶滅戦争を招くだろう。 しかしそうはならず、サハギンが人と共生しているという現状は―― リースが今感じている、心身の隙間に潜り込む生存戦略によるのだ。 *【妊娠初期】 既に定まった力関係、サハギンからの要求にリースは逆らわない。 抵抗したとして、彼の手にある銛で殴られるのがおちである。 ならば、苦痛と屈辱の最小化を図るのが妥当――それだけだろうか? 自ら床に仰向けになって雄を誘うリースの姿は、実に艶めかしい。 リース: …っ…! ぁ、はやく…終わらせて… にゅるん、と何の抵抗もなく滑り込む魚人の性器―― この交配実験が始まってからリースが咥えこんだ回数は数知れない。 挿入されてから、射精、引き抜きまでの一連の流れにおいて、 どの程度の時間で終わるかは、おおよその見当がついている。 耐えなければならない時の永さがわかれば、我慢もできる―― だがそれは同時に、受け入れる器をリースの心の中に創り出す。 感情と理性において、この時間を許容することはとてもできない。 けれど、肉体に抵抗を諦めさせているうちに、自然と―― リース: ――っ! ぁ、ちが…っ… 頭の中に弾けた何か。否定の感情とは、根源の違うもの。 心と体との間に、看過しきれない齟齬が生まれたのだ。 ただ、それを言語化はできない。自覚できるほど強くもない。 快楽といえるだけの強さも、そこにはないのだから。 既に仔が生っている以上、この交尾は何も生み出さない。 リースの心身を、痛めつけるという他には、何の意義も―― それが別の意味を持ち始めている、その兆しがそこにあった。 たとえ両者がそれに、自覚的ではなかったとしても。 *【妊娠後期】 リース: くっ、あ、ひぃ、ぁ…! やめっ、て…っ! すっかりリースの胎が膨らんでも、サハギンは彼女を犯し続ける。 孕んだからといって終わるようには命令を受けておらず、 彼自身、その程度でこの雌を解放してやるつもりもないからだ。 具合を教え込んだリースの膣肉を、いつものように耕す。 ぐちゅり、ぐちゅりと、彼の体表の潤滑液が役目を果たす一方で、 それとは違う液体――明らかにリース由来のものが、それと混じる。 破水には早く、尿でもなく。ならばその正体は必然的に絞られる。 声の上ずりようからも、答えを推測するのは難しくなかった。 しかし。それを認められるか――否。リースの誇りにかけても。 敗北を喫し、虜囚となり、数多の異形と交わらされる身に堕ちて、 底の底まで尊厳が損なわれたとしても、越えるわけにいかない一線。 自分を汚し孕ませた雄のいいように、弄ばれているなどとは。 リース: ――っっ! は、ぁぁあ…っ――ふ、っぐ…ぅう…! 後から後から押し寄せるその感覚を否定しようとするあまりに、 ぐっと歯を噛み締め――それでもなお、声は腹の底から漏れる。 顔は上気し、彼女の肉体がどうなっているかを推察するのは容易い。 それでもリースは否定するのだろう。火照り、にやけた己の貌を。 *【出産】 サハギンと人間の混血――それは大抵、サハギン側の再生産だ。 人間を含めた他種の遺伝子を利用して、個体数を増やす戦略は、 そもそも、仕掛けた側の形質が顕性でなければ成り立たない。 それを裏付けるように、羊水には剥がれた鱗の破片が混じっている。 リース: っぎ、ぃ、っあ…! で…て…るぅ…っ! 出産ともなれば、母体の感じる痛みは極めて大きくなるもの。 産道をこじ開けられながら、腹圧で外に出す苦労もひとしお。 だが人間の胎児よりは、魚人の仔は安産となりやすい。 本人の体を覆う粘膜が、母の手助けをするからである。 種付けから出産までの期間、否定し続けてきた不本意な快楽と、 こうして出産に伴う、肉体が否応なしに味わう苦痛。 そのどちらにも、リースは必死に耐え、抗おうとはしてきた。 片や己の変化を拒絶するため、片や変化の結果と向き合うため。 リース: っふ――っっ! く、ぅ、ぁあ…っ… ずるり、ずるりと胎児は素直に、母の胎外を目指す。 大きさは人間の新生児とそう変わらない程度、体重も然り。 リースの出産を見つめるサハギンは、それが想定の範囲内なこと、 出産直前まで性行為を繰り返したのが功を奏したことを確認する。 彼らが人間の雌をさらって繁殖に“協力”させる場合は、 こうして丹念に、心と体の抵抗力を削ぐのが一番なのである。 解放されたのち、自ら彼らの下に嫁ぎ直す女さえいるという話だ。 リースが産後、どう出るか――彼の目下の関心事は、それだけである。 *【出産♀】 赤子の全身が現れると、サハギンは驚いたように目を丸くする。 産まれたばかりのその肌には、確かに自分と同じ鱗があって、 ひれも、水かきも、一対のえらも、一通りは揃っていた。 けれどそれらの部位が載っているのは、どう見ても人間の新生児。 人混じりの個体同士が交わると、稀に起こる事案ではあっても、 彼は数代遡っても、純血を保つ生粋のサハギンの出である。 それならば前例通り、自分とそっくりな仔が産まれるはず―― 結果はどうか?人間の側にすっかり主導権を握られているではないか。 思わず彼は反射的に、自分の種から生ったとは信じたくないそれを、 愛用の銛で突き殺すところであった。研究員の声掛けがなければ。 お前のせいではない、責任を取る必要などないのだから、 その個体のことは、我々に任せろ――ため息が、二つ。 リース: …え、なに…? 半分意識の飛んでいたリースは、一拍遅れて現状を問い直す。 苦々しい表情の魚人、額の汗を拭う研究員、状況が把握しきれない。 その懐に、銛で乱暴に臍の緒を切られた赤子が投げ込まれる。 サハギンがその処遇を、リースに丸々放り投げた格好だ。 リース: あか、ちゃん… …! っぐ、ぇ… 鼻に近づいた途端、赤子の肌からは生臭い、半乾きの体液の臭いが。 顔をしかめた母のただならぬ様子に、赤子はぎゃあぎゃあ泣き始める。 見れば、血縁はわかる。けれど、他の感覚は生理的な拒絶を叫ぶ。 リースがどうあれ、父親から否定された娘に、肉親はないのに。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪マイコニド≫ *【破瓜】 子供ほどの太さの軸を持った、ずんぐりむっくりの体形の茸。 それがこのマイコニドの特徴で、世界各地に分布する生物である。 手足代わりに小さな突起を用いて、存外に俊敏な動きを行うだけでなく、 近縁種が一種の共同体を形成することもあるなど、侮れない知性を持つ。 しかし根本的には植物、交尾という形態からは程遠い。 それでもリースは、今から何をされるのかを本能的に理解している。 ゆっくりとマイコニドが向き直ってくるのに合わせ、身構え―― ぐっと息を呑もうとしたその鼻先、薄ら白い霧が舞う。 リース: ごほっ、ごほっ…粉…? … ――ぁ、う… リースの意識はそのまま途絶えた。マイコニドの持つ胞子の力だ。 至近距離で嗅げばたちまち気絶し、そのまま森の栄養分となる。 脳からの信号の途絶えた四肢は、混乱をきたしてびくびく動くも、 それは外敵を押しのける目的などには、何の効果も発揮しない。 大茸はすっかり動かなくなった獲物の前に立っていたが、 やがて何かを思いついたように、リースの両脚の間に体を滑り込ませる。 その光景は、戦利品を検める野盗のそれと何も変わらなかった。 ただ、凌辱者が雌雄の別もない歩く茸であるということ以外は。 リース: … リースが無抵抗なのをいいことに、マイコニドは体を前後に揺らす。 檻の外からでは見にくいが、彼女の股には純潔の残滓が、一筋。 呆気なく、リース自身の介在せぬうちに奪われた乙女の誇り。 昏睡状態の続く肉体は、人形とほとんど変わらぬようでもあった。 だが当然、そんな詰まらない変化一つを起こすことが目的ではない。 女の最奥に、何かをねじ込むとなれば――起きることは一つだ。 知らぬ間に起きた出来事さえ、彼女の肉体は受け入れてしまう。 それこそが、リースが人形でなく、生身であることの証左なのだ。 *【種付け】 マイコニドは傘の裏側に溜め込まれた胞子を用いて狩りを行う。 もっとも、彼らが肉食動物ではない以上、捕食のためではない。 動けない獲物に、己の分身を作り出す繁殖用の胞子を植え付け、 苗床として利用し、生存圏を増やすのが狙いである。 リース: … …… 胞子によって昏倒したリースの運命も、おおよそそれに相違ない。 しかし苗床となる生物が雌である場合、事態はより深刻だ。 雄の場合は、胞子を体表に振りかけられる程度に収まって、 救出と処置が迅速であれば、茸の除去も不可能ではないが―― マイコニドの中には、雌の体の中、特に胎内に集中的に植え付け、 一見して、どこに胞子が滞留しているかわかりにくくする種がいる。 それは対応の遅れを呼ぶ、という副次的なものだけではない。 場合によって、植え付け後に意識が戻るよう胞子量の調整をすることで、 あえて解放した苗床が、別の地域に自ら移動することを当て込んだ、 被害者を自ら移動してばらまく保菌者に変える、という戦略だ。 哀れな苗床は助けを求めて、自身の縄張りや仲間の近くを訪れ、 その生活圏に、危険な茸を目一杯ばらまいてしまうのである。 リース: …… 自分がそんな存在へと変えられつつあることをリースは知らない。 何かをされた――というおそれまでは抱くことができたとしても、 わかりやすく精液や血などの証拠が残っているわけではないのだ。 雌の胎内は湿って、温かく、菌糸を委ねるのに最適の場所だ。 苗床の末路は、全身の神経系まで根を張った茸により絶命するか、 肌の大部分を茸に覆われた、生ける屍のように成り果てるか―― そんな安易な結末を、我々は用意しない。あらゆる手段で、元に戻す。 その程度の苦しみで、リースを解放してやる義理などないのだから。 *【妊娠初期】 苗床に使われた雌の胎内において、一定量の胞子が保有されていても、 機会を得たマイコニドは、彼女への凌辱をやめることはない。 動物がそれぞれに持つ、妊娠機能を間借りする形を取ってはいるが、 交尾を経て受精、という本来の手順を飛ばした歪なものだからだ。 妊娠中に更に重ねて妊娠する、重複妊娠の機能を持つ生物は少ない。 それは、既に仔を孕んでいる雌にとって、その仔を産むまでの永い間、 新しく仔を抱え込む負担が、決して馬鹿にできないためでもあろう。 けれども、新たな菌糸は先に送り込まれたものと、喧嘩をしない。 リース: … 新天地へと向かう船の中、わざわざ潰しあいをする理由がないからだ。 じわじわと母――宿主の肉体の栄養を食い潰して耐えながら、 体外から排出されたその機を逃さず、着実に広がり、根付き、増える。 苗床となった雌が、十数種類もの菌糸を体内に保有していた事例もある。 リースがこうして気絶させられるたびに、胎内には新たな菌糸が増える。 彼女の知らないうちに、苗床として肉体は開発されていき、 許容量を超えた時、それは一斉に外界に飛び出してくるのだ。 まだ自覚症状はないものの、それは遠からず起きる事実。 目を覚まし、マイコニドに何をされたのかをリースが調べたところで、 所詮素人の見立て、自身の肉体の変化に気付けるわけもない。 だが否応なしに気付くだろう。己の腹部、子宮の盛り上がり―― 人間の胎児大に膨らんだ仔茸が、外に出ようとし始めた頃には。 *【妊娠後期】 リース: このっ…やめなさ―― …… … 腹部の異様な盛り上がり、それは現状を把握するには十分すぎる物証。 意識が断ち切られた空白の時間に起きていたことへの答え合わせ。 リースは自身の体の中、膨らみの中心地――子宮において、 何らかの存在が根付いていることをもはや否定などできない。 この檻のなかにいるのは自分とマイコニドだけ、となればもちろん―― 胎内の“何か”は、この茸の行為によってもたらされたとの結論が出る。 それでどうなるというのか?己の子宮内を覗くわけにもいかず、 かといって、これは単なる異物だと割り切ってしまうわけにもいかず。 リース: … なかば本能的な、胎内の中の何かを守れという肉体からの呼びかけに、 リースは腹部を庇おうとする――だがこの精神の作用そのものが、 雌を苗床に利用しようとするマイコニドたちの目論見通りで、 菌糸を植え付けられた女が、摘出手術を受けたがらなくなる理由だ。 許容量が限界に達し、この雌の“出産”が近いことを大茸は悟った。 外界にて新たな繁殖地を生み出せるだけの生命力を得た合図―― 子宮の収縮を促し、偽の陣痛を母胎に感じさせていることに。 直にリースの胎内から、忌まわしき菌糸類の仔が現れてくる… *【出産】 リース: う…ぁ… ぐっ…! リースの胎内にて十二分に太った仔茸が、子宮壁からの分離を始めた。 元が動く茸のマイコニド、現状でも運動能力の一端は有している。 臍の緒めいて“母”と接続していた細い紐を自切し、 外界に通じる穴、子宮口目がけて緩やかに体勢を変えていくのだ。 胎動は目に見えるほど激しいものではなく、限りなくゆっくりと、 途切れることのない腹部からの圧力として、リースを責め苛む。 内臓を丁寧に丁寧に押し潰されるような痛み――そこに山も谷もなく、 息継ぎのために吸った酸素が、苦痛のあまりにごほり、と逃げる。 リース: いた…いぃ…っ! っ…っぐ…うぅぅ…っ! 内側から蹴られ続ける痛みだけではなくて、狭く細い子宮口が、 ゆっくりゆっくりと、こじ開けられ続ける痛みもまた、 リースの顔中に脂汗を浮かべさせるのに、十分なだけのものがあった。 止まらない痛み――圧迫感、異物感、焦燥感…喉が痛む。 声をひたすら絞り出され、ただリースは呻き、体の向きを模索する。 少しでも痛みを小さく、お産が早く終わってくれるように―― その願いも虚しく、一向に茸らしきものは、膣口に姿を見せない。 目を見開き、歯を食いしばって、ひたすらに耐える哀れな女… 苗床たちは、大抵、この痛みで肉体か精神のどちらかが壊れる。 もしくは、胎内でさほど茸が大きくならず、複数回産むか、だ。 死ねばその躰を菌床に、生きればまた別の土地に菌糸を運ばせ。 どちらに転んでもいい。これがマイコニドの編み出した生存戦略である。 *【出産♀】 リースの体液まみれになって出てきた、いくつもの黄土色の塊。 “母”の体外に出た瞬間、ぼろぼろと無数の茸が転げ落ちた。 複数の子実体が寄り集まった合計重量は、人間の新生児よりやや上。 研究員たちがそれらの選り分けをしていると、その山の中心部に―― リース: うごい…てる…? 嘘…! ほとんどの“兄弟”が芋虫めいてじたばたするのが限界であるところ、 その一際大きな塊は、体をぐらぐらと揺らし体の上の茸を振り落とす。 そして中から現れたのは、通常の人間の胎児に限りなく近い形状のもの。 一つ違う点は、その個体の頭頂部に生えた、一本の茸である。 頭部に触られると“それ”は体ごと激しくばたつかせて抵抗した。 小片を切り取ろうと刃物を当てると、なお強く暴れ出して、 最終的には、ちょうど赤子が癇癪を起こすのとまったく同じ風に、 激しく泣きだしたのである――本来在るべきではない姿として。 いかに苗床の子宮を利用していても、それはただの間借りに過ぎず、 このように、宿主の遺伝情報を受け継いだような姿を取ることはない。 菌床化しつつ生存し続けた生物から、奇形の茸が取れた事案はあるが―― “赤子”を様子を調べたがったのは、研究員たちだけではない。 リース: それ… 私の、赤ちゃん、ですか…? 困惑しながらも手を伸ばすリースを、一人の飼育員が蹴り倒した。 胎内に残留する菌糸の除去が先決で、余事に構っていられないからだ。 “赤子”の頭の茸は、さながら角のように肌と一体化して生えており、 珍しい研究材料を手にした研究員は、子供のようにはしゃいでいる。 生物と植物の中間的な存在として産まれたその個体の処遇について、 何人もの研究員が目の色を変えて持論をぶつけ合うのを横目に、 リースは胎内に鉄箸を挿入されて、丁寧な“清掃”を受けていた。 頬に伝う涙は寄生による仮初の母性か、あるいは――答えは、出ない。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪メガゾーン≫ *【破瓜】 一見すれば、それは丸まった葉か、色づく前の蕾と取れないこともない。 そして誰もがその認識を改めるだろう。あまりの大きさと不気味さに。 緑を基調とした巨大なその塊は、分類上は食肉性植物の一種であり、 二本のたくましい腕で、自ら動いて餌を探す獰猛な狩人でもある。 リース: な…何、これ… 自分の背丈よりもさらに大きな緑の球体に、リースは恐れおののく。 ただ不気味なだけであればよいが、その上端からは赤い紐がゆらゆらと。 動き出さないのは、既に愚かな獲物が射程圏内にいるためであろう。 目にも留まらぬ速さで舌が伸びたと思うと、同時に葉が一斉に開く―― リース: きゃあっ! …あっ、はなしてっ…! リースの体は、あっという間にメガゾーンの“口”の中に消えた。 獲物を一呑みにする生物は、爬虫類種の中にはいくらかいるものの、 植物の中でこれだけ機敏かつ的確に相手を呑み込めるものは他にない。 硝子片の舞う過酷な砂漠で、彼らが絶滅しない理由はまさにここにある。 一瞬で口中に取り込まれたリース――しかし捕食目的ではない。 まともな土壌のない荒れた大地に、彼らの種が根付く秘訣。 それは哀れな獲物の体内に種を植え付けて、その躯に芽を生やすこと。 そして相手が雌ならば――植えるべき畑の箇所は決まっていよう。 リース: あっ…あっ、っっ…! やめ、てぇっ… 繁殖期のメガゾーンは、雄しべと雌しべを触手のように器用に動かし、 獲物の体内奥深く、種を押し込んで自ら受粉させて植え付ける。 生娘の純潔がその過程で失われようが、一切の容赦もなく。 リースの受難は、まだまだ始まったばかり――軽くなることはない。 *【種付け】 リースを一呑みにしたメガゾーンの口中、外界からは何も見えないが、 その内側では獲物に種を植え付けんと、激しく舌が蠢いている。 何対もの雄しべと雌しべが、一塊の触手めいてぐねぐね踊り、 より深くに、容易には抜けぬところに――種を蒔くのである。 獲物を咀嚼するための歯は、内側に閉じ込めるための錠となり、 抵抗を諦めさせる舌は、じっくりと舐って体の力を奪っていく。 どの角度から、どこに突き立てれば最も効率よいのか―― こうして探られるうち、獲物は苗床と化してしまうのだ。 リース: ひっ…あ…っく、ぅう… んうっ…! 首だけが口中より解放されているのは、無論窒息させぬため。 植え付けの段階で死んでいては、筋肉が硬直し用をなさない。 柔らかい体が防護を解いたその隙間を潜っていかねば意味がない。 彼らは本能的に、相手の油断を誘う手段を知っているのだ。 無数の指先がリースの肌という肌を撫でまわし、感触を検める。 肉体の凹凸から、骨の硬さ、筋肉の張り、髪の手触り… その力加減は絶妙で、思わずリースの声も上がっていってしまう。 これが化け物の口中でなければ、どれだけよかったことだろう。 リース: ぁ――んんっ、ひぃ…っ! 肉体がじっくりと開かれていく中、いまだ根強く嫌悪感は残る。 何が起きているかは見えないが、屈服すればよくないことが―― その予感はあれど、首だけの状態のリースに何ができるだろう? ぐちゅぐちゅと掻き回される膣道のその奥に、この生物は―― がくん、と腰の抜けた瞬間に、雄しべはずっぷりと入り込んだ。 リースの胎内に、種を植え付け繁殖に協力させるために。 その感覚に、取り返しの付かない何かが起きたことを悟りつつも、 ひたすら犯され、弄ばれ続けるしかないのである… *【妊娠初期】 一度口内に囚われ、苗床候補となった相手をメガゾーンは放さない。 体内に植え付けた種が十分に根付き、容易に剥がせなくなるまで。 その間、執拗に相手の体を“舌”で撫で回して抵抗力を削ぎ、 自らの肉体に起きた変化を、実感する隙も与えないようにするのだ。 リース: はひっ…やめへぇ… ちか、らぁ…ぬけちゃう…! リースの胎内、子宮壁には既に癒着した種が根を張り始めている。 彼女の栄養と水分を貪欲に奪い、どんどんと丸く大きくなっていく。 最終的には、人間を一呑みにする巨大な花に成長するこの種は、 たった一粒作るために、苗床の命のほとんど全てを吸い取ってしまう。 やがて自ら歩き回り、餌と新たな苗床を探して暴れだす―― あまりに植物離れしたその生命力は、この世界のものとさえ疑わしい。 砂漠の過酷な環境でさえ根絶できぬこの食肉性植物が、 もし餌の豊富な環境に放たれれば――恐ろしい未来予想図だ。 リース: わたしにっ… なにを…! 恐れからか、リースは懸命に己の肉体がどうなっているか知ろうとする。 言葉の通じない相手――道理さえ共有せぬ、異界からの存在に。 無駄な抵抗を試みる間も、リースの腹部では種が着実に育っていく。 彼女という畑に、獰猛な食人花を咲かせるその日を夢見て。 *【妊娠後期】 リース: あぁ…おなか、おもいよぉ… なにが、いるの…? 間断なき愛撫によって実感を失っていた肉体も、流石に重力には勝てず、 メガゾーンの口中にて大きくせり出した腹部に触手が触れるごとに、 自分の肉体が明らかに変わっていることをリースは実感させられていた。 もし今の己を直視していたら――彼女の精神はそれに耐えられたろうか? 妊娠による体形の変化と、それは限りなく似た事象である。 子宮内に“何か”が居座って、ご丁寧に臍の緒もどきの根まで伸ばし、 “母”の命を、比喩なしに吸い取って育っているのだからそれも当然。 けれど、この植物からの働きかけによってそんなことが起きるのか――? リース: たすけて… だしてぇ…! 四肢はがっしりと“舌”によって絡め取られているのだから、 彼女が多少手先足先をばたつかせたところで、拘束は緩みもしない。 むしろその機先を制し、先んじて全身を丹念に愛撫してほぐすことで、 もはや自分は無力な存在なのだと、教え込まれている格好だ。 しかしこの甘美な時間も、やがて終わりがくる。 苗床が自ら種を除去する能力を喪失したと見なされた時、だ。 口中にて肉の飴玉を転がしながら、メガゾーンはそれが近いことを知る。 じきにリースは呆気なく吐き出され、哀れな末路を演じるのだ。 *【出産】 リース: はぁ――はぁ、うっ…! うごけ、ない… 床に放り出されたリースの腹部は、臨月大にぼってり膨らんでいる。 根付いた種は、膣口から一対の双子葉を覗かせていて、 子宮壁からそこまでの道程――“産道”に茎があるのを想わせた。 リースの呼吸で胸郭が動くと、それにつられて葉もぴょこぴょこ揺れる。 自然環境下ならば、この葉は太陽光を浴びてどんどんと成長を続け、 自力での行動が不可能となった“母”の骸の上に、大輪の花を咲かせる。 白骨化するまで栄養を吸い上げたのち、発達した二本の腕でもって、 価値のなくなった土壌から、新たなメガゾーンが旅立つのである。 もちろん、この檻の中で彼が成長しきるだけの光は射さない。 不幸中の幸いか、リースはそのまま“仔”に殺されることはないが、 自分の体から離れてくれないその甘えん坊を、退ける手段も有さない。 ゆえに必然的に、第三者からの協力により摘出せざるを得ないのだ。 リース: あ、ぁ、あああぁ…! いぎっ、いた、いたぁいぃい…っ! 胎盤という緩衝材なく、直に子宮壁に張り付いた根をこそぎ取る―― しかもその最中に、誤って茎や葉、種本体を傷つけてもいけない。 人間を母胎に生育したメガゾーンの種など、あまりに貴重な材料だ。 器具によって開かれた子宮口へ、金属製の刃が差し込まれていく。 大きく育った種を出すだけでも一苦労、子宮口を開かれ悶絶、 びっしり絡んだ根の一本一本を切り取るために、内膜が薄く剥がれ―― それを丁寧に時間をかけてやるものだから、とても耐えられはしない。 騒ぎ立てるリースの口に乱雑に布を押し当て、黙らせながらの作業だ。 永い時間を掛けて取り出された種は、蠢くかのように力強く、 代わりにリースは、精魂尽き果ててぐったりと黙り込んでいた。 母の生命を吸い上げるという点では、植物も動物も変わるまい。 いかな花が咲くか――我々の興味は、そこにしかなかった。 *【出産♀】 摘出された種の表皮部分の細かい根、リースの肉片を剥がすうちに、 当初本来得られた楕円体――あるいは涙滴型の形状から、 人間の胎児を想わせる、ぐにゃりとねじ曲がった勾玉のような姿へ。 苗床の体内に根付くだけなら、そんな特異な形状は必要ないはず。 花弁との位置関係や、種自体に役割を持たせる目的ならいざ知らず、 外敵のいない楽園にてぬくぬくと育つはずの種が、なぜ? その答えは、極めて単純なものだった――種子が、動いた。 静置された盆の上から転げ落ちるように、確かに動いたのである。 リース: …? いま…うごい、て… あらゆる存在と交わって“仔”を生すリースの肉体的特徴が、 体内にて種を育てるうち、その中身に影響を及ぼした――という仮説。 元々が運動性の高い植物といえど、種の間から動くことはできないが、 人間の形質を取り込んだ結果、さらに変異したのではないか、と。 その仮説を裏付けるように、その種は何かを求めて蠢いていた。 本来なら抱かれているはずだった母の懐――土壌を探すように。 土の入った植木鉢に置かれた途端、種は嘘のように大人しくなり、 土中にて赤子が寝返りを打つかのごとく、小さな回転だけに留まったのだ。 リース: … 種というよりは孵化直前の卵、あるいは胎児そのもの――? この特異な存在をどう捉えるべきか――興味が尽きないところである。 ようやく“お産”から解放されたリースが倒れているその真っ最中、 不気味に動くその種を見ようと、牢の中はごった返していた。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪グリーンスライム≫ *【破瓜】 決まった形を持たないゲル状生物の中で、グリーンスライムは最も弱い。 打撃耐性や分裂能力、融解、毒――保有する能力はいくらかあっても、 それを行使する知能がほとんどない、極めて原始的な構造だからだ。 いわば、脳のない裏返しの胃だけが外界を彷徨っているようなもの。 彼にあるのは限りなく本能に近い欲求のみで、それは生物の最終目標、 繁殖という到達地点に至るまでの、栄養の補充と貯蓄、それだけである。 そしていざ機会を得た場合には、何の躊躇もなく繁殖を行う。 いかに弱くとも、彼らが常に存在し続けられている最大の強みだ。 リース: あっ…! その捕食行動はいたって単純。不定形の肉体を獲物の体の一部に伸ばし、 動きを鈍らせてから素早く這い上り、覆ってしまうという方法だ。 リースはたちまちにスライムの緑色の体液に包まれて動けなくなり、 そのひんやりとした体温に、ぞっとするような悪寒を感じた。 この状態に持ち込めば、後はものの数時間で獲物の肉体は融け、 その身に溜めた栄養を、まるまるスライムに奪われてしまうものだが―― 生憎この個体は実験前から十二分に餌を与えているため、食欲は薄い。 代わりに、繁殖欲だけが彼を支配している。相手に、リースを据えて。 リース: …! ぃ、っあ…いたっ…! スライムの肉体は均一に柔らかいようでいて、実は硬度にむらがある。 いわば“核”――ほとんど水分でできた彼らの肉体を統括し、 生物としての外形を保たせる、唯一の弱点といえる部位が。 それを他者の体内に侵入させるのが、スライム式の繁殖方法だ。 繁殖相手に選んだ生物の遺伝情報を取り込んで姿を模倣したり、 新しい能力を得るための機能なのだが――あまり有効に機能しない。 本質的に体が柔らかくて、新たな臓器を作るのに適さないのが理由だ。 それでも彼は、リースの肉体を貪るだろう。それしか考えていないから。 *【種付け】 リース: あぐぅう…っ! ひぃ、っあ、ぁ… リースの全身をしっかりと捉えたスライムは、性器めいたその“核”で、 彼女の胎内に、己の遺伝子を送り込むための抽挿を始めた。 自身の核の破片を相手の生殖細胞と融合させ、栄養を吸い上げる。 そうして“親”とは違う遺伝子を持った仔スライムは、別個体に。 ちぎれてもくっつきさえすれば個体としての同一性を保つ彼らが、 しかし無暗に融合せず、小さな塊でいるための個体識別方である。 他の生物の遺伝情報を奪うとはいえ、産まれるのはやはり“父”と同じ、 決まった形を持てない、緑の汚泥にしか過ぎないのだが。 リース: いやぁ…きもちわるい…! だれかぁ…っ! 凌辱者の中でも最下等、彼にとって相手が誰であろうと変わらない。 それゆえに、リースの尊厳は一層貶められ――惨めさが強調される。 おとなしくしていれば、胎内にスライムの一部が残るだけで、 水分と栄養分を切らさなければ、それに殺されることもないのだが―― リースがスライムの生態を知るわけもなく、犯されている苦痛により、 ぎゃあぎゃあと喚きたてるのが、今の彼女の精一杯なのである。 暴れられるだけの活力ある獲物は、十分に栄養を溜め込んでいる――、 そんな確信をスライムに与え、より凌辱を加速させるとはつゆ知らず。 体の中に、冷たいものがゆっくりと押し込まれてくる感覚に、 リースは何度も、吐きそうなほどの不快感を堪えつつ、耐えた。 その目的が、自分を孕ませるためだと半ば理解しながらも。 いかに抵抗してみせたところで、彼女の運命はもう変わらぬのだから。 *【妊娠初期】 リースの胎内には、ごく小さなスライムの核の破片が侵入していた。 それは、彼女の卵管を通って、排出されたばかりの卵子を呑み込み、 そのまま何食わぬ顔で子宮壁に張り付き、受精卵と同じ振る舞いをする。 仮に相手が男なら、精子を使って同じように細胞分裂し始めるのである。 その意味では、十分に体を大きくできるまで隠れていられる女体の方が、 スライムの繁殖相手に選ばれやすい傾向にある、と言えよう。 さらに言うなら、子を体内で育てる胎生や卵胎生はより好都合、 人間の女が狙われやすい理由の、その一端を担っている。 リース: うう…もう、いやぁ… スライムに、自分が既に核を植え付けた相手だと識別する能力はない。 というよりは、自分と、遺伝情報の違う別個体のスライムの別しかなく、 それ以外は、餌であり苗床となる、有象無象としか映らないのだ。 最も低俗なる存在ゆえ――逆説的に、この世で最も傲慢生き物。 リースの胎内に再度侵入し、同じように核を植え付けようとする先端が、 先んじて細胞分裂を始めた“受精卵”に振れたとしても、 その構成要素が自分と、目の前の雌の遺伝情報でしかないのだから、 可能な限り凌辱し、植え付けの成功確率を増やすために無視される。 リース: んんっ、っくぅ…! ぁ、あ…っ… 繁殖状態に移行したスライムは、溜め込んだ栄養を全て出しきり、 身軽な状態に戻るまで、植え付けをした獲物を解放することはない。 そしてその頃には、相手の体内の仔スライムは十分に成長し、 “親”と別個体として認識されるのだ――よくできた生態である。 *【妊娠後期】 リース: やめぇ…っ…! あっ、あ、ぁ――っ! 種付けから延々と犯され続けていれば、肉体も変化しようというもの。 ひんやりとしたスライムの肌が、ぞわぞわとリースの鳥肌を撫でる。 気持ちいい、という言語化しきれない感情の泡が湧いては消え―― 彼女の理性が、それを自覚するより先に磨り潰して無意識に押し込める。 それでも、噛み潰されてきた快楽の残滓は、着実に彼女を蝕む。 スライムの仔を孕み、胎が大きくなりきってしまった今ではなおさらだ。 重くて邪魔っけな下腹部を、丹念にスライムの指が撫でまわす感触は、 妊娠による心身の負荷を、確実に軽くはしていたのである。 リース: っ――! いや、やめへぇ…っ! 頭の中を閃く、稲妻のような信号――それと引き換えに、意識に空白。 断絶した記憶の意味は、もはやリースが自覚するまでもなく明らかである。 こんな生物のいいようにされて――受け入れている自分がいる、と。 それがどれだけ受け入れがたいものであっても、はっきり。 この時間も、遠からず終わるだろう――スライムが目に見えて痩せ、 凌辱の速度も、当初よりは随分と落ちている。これらのことはすなわち、 リースの胎内のスライムが、自分とは別の個体に育ったと認識、 繁殖期の終わりが近いと、彼が判断しだすことを示唆している。 自らの指で、”生殖器”で散々にリースの肉体を弄んでおきながら、 彼は一切の執着なく彼女を捨て、餌を求めてうろつきだすだろう。 不思議なことに、その最初の餌に仔を孕んだ苗床が選ばれることはない。 それをスライムなりの親心、と取るのは――あまりに情緒的だろうか。 *【出産】 体積を十分に増やしたスライムが、リースの胎内で激しく動き回っている。 陣痛と腹痛の入り混じったようなもの――それがひたすら続く。 リースとスライムの遺伝情報をいずれも受け継いだそれは、 確かに、両者の間にできた仔と考えて差し支えないだろう。 リース: ぐぐっ… あ、で、でるぅう……! 通常の出産ならば、胎児より先にそれを包んでいた羊水が出るものだが、 液状の体を持つスライムは、己の肉体そのものが羊水と一体化している。 ゆえに破水は、薄白く濁った体液のそれとしてではなく、 仔スライムのちぎれた体の一部、緑色の水滴として始まった、 子宮口自体がさほど開いていなくても、スライムの出産には問題ない。 元より、どんなに狭い隙間であっても潜り込むことができるのだ。 ぶしゅり、ぶしゅりと細く寸断された噴水めいて、スライムが噴き出す。 びちり、びちりと緑色の水溜りが、床の上にいくつも広がっていく。 リース: あれ…ひっかかって… っ、でな、いぃ…! 不意に緑の噴水の音がやみ、代わりにリースの苦悶の声が響いた。 仔の体の大部分は、小さな子宮口を無事に通り抜けていたのだが、 最後、胎内に残った“核”が蓋のようにすっぽりと引っかかっている。 それを通すために、体の残り部分が内側から押し出しているのだ。 用済みになった胎盤は、出産直前に仔スライム自身が剥がして融かし、 あとは自分自身の体を、外に出してしまうだけ――というのに、 肝心の“母”が、一番大事な核を産むのにもたついているのだ。 早く外に出たい、その本能に従い、仔は強引に母の子宮口をこじ開ける。 出産があまりに早く進むせいで、母体の方が体勢を整えられない。 これはスライムの繁殖相手に人間の雌が選ばれた場合、よく起こる。 心構えのできない状態で、急に襲い来る痛みに耐えねばならぬ―― リースの額にはびっしりと脂汗が浮き、その苦しみを物語っていた。 *【出産♀】 スライムの出産は、破水という形で先行する体の大部分と、 核を押し出すために残った少量部分が、合流することによって終わる。 それまでは、単なる緑色の粘り気ある液体がばらまかれているだけで、 核からの指令が入った瞬間、それは一塊の有機的な生物となるのである。 リース: うぅ… 通常の――例えば哺乳類の仔を孕んだ場合と比較すれば、 よほど容易な出産とはいえ、リースの体にも疲労は残る。 股間から噴き出してきた水が、いかな姿を取るのか? 浅い呼吸を繰り返しながらぼんやり見つめるリースの前で、それは―― リース: ひと…人間…? スライム、なのに… 核を中心に集まり出したスライムは彼女の想像していたような、 一塊の泥を乱雑に掬って地に落とした、山の形ではなく、 その山頂からさらににゅるりと伸びた体にくびれを持った、 二つの塊を胴がつなぐ、達磨めいた形を取ったのである。 そして達磨の胴はさらに細く伸び、ぴょこりと小さな二つの突起が。 見れば突起の先端は五つほどにさらに細かく枝分かれしていて、 半透明で緑色の人形が、下半身をスライムの山に突っ込んだ格好だ、 さらに、人形の頭部には目や鼻と思しき凹凸まで彫られている―― リース: わ…わたしの… おなか、から、こんなのが…? 人形と山とはお互いの釣り合いを取ろうとぐにぐに変化を繰り返し、 ようやく納得がいったのか、体を起こしてリースの方を振り向いた。 目の細工はより精密に、瞳まで再現されているかのようで、 鼻筋もまた、母親譲りのすっと通った綺麗な稜線を描き出す。 絶句するリースの前で、仔スライムの鼻の下、口にあたる箇所が波打つ。 ごぼごぼと、いくつもの泡が内側から込み上げ――透明な管が覗く。 それはまさに、喉と声帯を模したもの――不格好極まりない口で、 スライムは自分がリースの仔と示すように、見事に産声を上げてみせた。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪ヒューポスライム≫ *【破瓜】 小型で単独のスライムは、魔物としては取るに足らない自然界の掃除屋だ。 駆除する方法も、撃退する手段も無数にあって、大した脅威たり得ない。 彼らはお互いの境界が曖昧になることを恐れ、互いに協力しないからだ。 しかしもし、何らかの事故によって複数体が混ざれば話は変わってくる―― リース: ぁ…お、おおきい… やめて…! その声も虚しく、水色の津波が彼女の頭の上からざばりとのしかかった。 原始的生物であるスライムが混じり合うと、彼らは互いの役割を分担する。 膨れ上がった肉体を統括する役割、餌の多い場所を探しだす役割、 余った判断能力を思考能力へと昇華させ、意志を構築する役割、と。 大型のスライムの中でも、単に餌が多くて肥え太った個体ではなく、 このような知性ある大沼と化したものは、危険性がぐっと高くなる。 今ちょうどリースにしているように、獲物を無力化させて――嬲り、 虐げられた鬱憤を晴らすかのごとく、己の体内の中で弄ぶのである。 リース: ごごがぼ…! おぼっ…! 口中に入り込む太いスライムの腕に溺れさせられ、リースは目を白黒させた。 しかしよく見ると、腕には小さな無数の穴が開き、頂点まで伸びている。 窒息させないために、薄く薄く酸素を取り込ませ、長く苦しませるのだ。 そして自分たちの遺伝情報を込めた“核”を獲物の体内に―― 天井に届きそうなほどの巨体の中では、リースがいかに手足を動かしても、 先端が外の空気に触れることはない。そうできないよう、沈められている。 もがけばもがくほど、貴重な酸素が逃げていく――視界はどんどん朧気に。 彼女の抵抗が収まった頃には――股間に“生殖器”が突き立てられていた。 たぷん、たぷんと波打つスライムの体内で、ゆらゆらとリースの体は揺れる。 朦朧とした頭で、自分がなぜここにいるのか、何をされているのか―― 思考がまとまらずにいるうちに、胎内にはスライムの魔の手が迫る。 彼女の遺伝情報を奪い、より高度に進化していくために―― *【種付け】 スライムは本来、単体で完結した単細胞生物であり、伸びしろもない。 だが複数体が混ざると、多細胞生物めいた分化により一気に危険になる。 今回、リースとの交配実験に選ばれたのはせいぜい数匹分だが、 さらに集まれば、魔法を操るほどの知性を獲得することさえある。 リース: ごぼっ…! …!…! が、はっ…! それはまさに、状況に応じて身の振り方を判断する知能だけでなく、 自身の懐に引きずり込んだ獲物の処遇をも決められる思考力の表れ。 繁殖と捕食しか頭にない単体のスライムとは違い、彼らは、遊ぶ。 無論、生殺与奪を支配され己の体内に浮かぶ哀れな獲物を使って―― リースはわずかばかりの酸素で、ようやく息を繋いでいるような状況。 酸素は無駄に使えない。だが、暴れても分厚い水の壁は破れない。 無力感と疲労感が彼女の四肢から、すっかり元気を削いでしまう。 あとは、力なく開いた股の間に、スライムの性器を押し込むだけ。 リース: うぁ…ごぼ…が…! … ずん、ずん、とゆったりとした――しかし重く、芯に残る衝撃が、 下腹部をぐっと上がってくる感覚がある。それはまさに抽挿のそれ。 体には、液体の浮力がかかっているものの、気怠さが抜けず、 リースはスライムの体中を、ゆっくりと上へ下へとたゆたっている。 体に絡み付くスライムは、特に彼女の肌を締め上げはしないが、 みっちりと詰まって上下左右から圧迫を加えてくるために、 仮にリースが嫌がっても、抵抗することなどまったく不可能。 それをスライムは十分理解し――緩やかな凌辱を続けているのだ。 数体分のスライムの遺伝子の混ざり合った“核”はやがて、 リースの卵子と結びつき、より高度な知性を持つスライムを作る。 これが実験でなければ、すぐにでも駆除が必要な相手だが―― 彼らは己が実験という名目で保護されていることさえ、理解している… *【妊娠初期】 リース: んん…! ぐっ、うむぅ… 酸素、栄養、水分――生命維持に必要な外界の一切を握られた上、 尻穴と尿道に入り込んだスライムに排泄までを管理されていると、 もはやリースが自分の意志でできることは、思考を放棄することだけ。 ずっと続く息苦しさ――そして倦怠感が、どろどろと意識を融かす。 性器に挿し込まれた触手が常に膣内をぐちゅぐちゅ掻き回し、 ふっ、と気を失いそうになると、見計らったように刺激が強くなる。 それに合わせて、喉深くに押し込められたスライムの管の中を、 肺から絞り出された空気が、ごぼごぼと泡となって登っていく。 リース: おごっ…! ごげ、ぶ…っ…! 子宮には、着床を終えた“受精卵”ことスライムの核が根付き、 彼女の胎内で、通常の多細胞生物と同様に己の肉体を作り上げている。 まだ膨らみは目立たぬものの、凌辱者がそれに気づかないはずもない。 単なる繁殖行為としてなら、犯す意味などもうないはずなのだが―― 傍目から見ても、リースがスライムに弄ばれ、嬲られているのは明らか。 苦痛を薄く引き伸ばし、ただ延々と快楽との境にどっぷり沈める―― 表情が苦悶の側に傾けば、乳首や陰核への愛撫で帳尻を合わせ、 快感に溺れそうになると、酸素を減らし全身ヘの圧迫感を強めるのだ。 全てを諦め、凌辱者に一切を委ねてしまえば、きっと楽になるだろう。 しかし彼女の僅かに残った矜持がそれを許さない。凌辱者自身も。 リースが無抵抗となった瞬間――頭だけを水面に出し、もがかせる。 彼はこの行為を、娯楽として消費しているのだ――スライム風情が。 *【妊娠後期】 リースの胎の仔スライムは、いよいよ出産の時が近づいたと見えて、 胎動も大きく、母親の腹の皮を蹴り破らんとする勢いだ。 その元気さとは裏腹に、リースの反応はどんどん薄くなっていく。 玩具にされ続け、まともな睡眠も取れず疲弊しきっているのだ。 リース: … ぁ… 大きく膨らんだ胎の重量は、臨月の妊婦のそれとほとんど変わらない。 スライムの与える浮力によって、それを感じることはほとんどないが。 こね回された乳首から、時折、白い筋がぶびゅう、と液中に噴き、 やがてその白い靄が、リース自身の口腔へと導かれていく。 反射的に己の乳汁を嚥下するも――喉がびくびく震え、泡が登る。 彼女がそんな屈辱を、受け入れまいと抗っている証拠である。 それでもスライムは慣れたもの、酸素吸入量を減らして口を開かせ、 強引に、リースの乳をその喉の奥の奥まで流し込んでしまう。 リース: うっ、げほ…! うぁあ…! 彼女の肉体は、床にもつかず天井にもつかず、どっちつかすの位置。 息苦しさに頭を上げれば、同じだけの高さが頭上にぐぐっと伸びて、 力が抜けて沈み始めると、足元に入り込むスライムに持ち上げられる。 そしてその前後には、彼女自身の体重を利用した抽挿が待っている。 孕んで浅くなった膣道を、ごりごりと抉られ、貫かれて―― 胎内に眠る仔スライムの動きに、無理やり意識を覚醒させられて。 リースの心身が休まる瞬間はない。ただ時間はどんどん過ぎていく。 こんな腹にされたことを悔いる機会は――もう失われてしまった。 *【出産】 挿入した性器経由でリースの陣痛を感じ取ったスライムは、 彼女の体をゆっくりと、己の液中から引きずり出し、床に転がす。 全身に張り付いているスライムの破片が、綺麗に剥がれ落ち―― 悠々と構える彼の麓に集まって、再び一塊の肉体へと帰る。 リースの体内に残っているのは、彼女の遺伝情報を取り込んで、 親スライムとは別の個体へと成長した、新たなる生命体だ。 それが今、自身の生を謳歌せんと、産まれようとしているのである。 浅く長く息を吐きながら、リースは必死にいきみ、泣き叫ぶ。 リース: ぎぁあ…っ! ぐぅ…ぁ、いた、いっ… みちみちと押し広げられる産道から、赤子が無理やり這い出てくる。 裂けた肉から噴き出す血を吸い、己の肉体へと取り込みながら。 部屋の明かりに照らされると、その内部までがくっきりと見えた。 人間のそれに近い形状ながら、半透明の肌を有した新生児。 透き通った体の中には、分化して個別の役割を得た臓器が浮かび、 人間とスライムの中間的存在であることが一目でわかる。 リースは己の股座を潜り抜けてくるそれに、恐怖に引きつった顔をした。 スライムに犯され孕んでしまったことを、何より如実に突き付けられて。 リース: いやぁ… で、でない、でぇ…っ! 軟体の体は、母親が股を閉じようとしても全く意にも介さず、 隙間を見つけては、自らぐにぐに変形して押し通ろうとする。 ただのスライムではない、恐るべき知性を持った我が子に、 まだ産み切らぬうちからリースは完全に恐れおののき、震えていた―― *【出産♀】 姿を完全に外界に出しきった仔スライムは、まず己の身体を整えた。 凹んでいた頭部を戻し、細くしていた胴体を膨らませ、手足を伸ばし、 最後に、均一に青だった全身の色を、部位ごとに色分けする―― さながら金髪を模したような、黄色の長い肉垂まで作ってみせて。 リース: ぁ、あぁあ… いや、いやぁ… 歪ながらも、それは誰が見てもリースの外見を模したものであった。 彼女にとって最も近き人間の姿は母親であるリースなのだから。当然だ。 白目と黒目の反転した瞳でリースの顔をじろじろと見つめると、 くるり、と白と黒の比率が反転、見た目上は普通の眼球に。 仔スライムにとって、それらの臓器は人間を模倣する道具に過ぎず、 いかに“お手本”の通りに作るかの方が、重要なのである。 その額には、リースの髪飾りについた、宝玉めいた青い突起まで―― みるみるうちに自分そっくりになる我が子を、恐れずにいられようか? *: ア…ぁ… あっ、ア…ぁ… そしてリースの喉の震えを観察し、声帯をも自ら作り上げていく。 体積が小さく――ゆえに声道も短いため、必然的に高音となるが、 リースの耳には、幼少期の自分のそれに、限りなく近い声が聞こえている。 この城の誰も、知っているはずのない声がそこに再現されていた。 産まれたての時点で、己の肉体をここまで完全に操作してみせるなど、 高い観察力と変形能力が窺える。自分の姿を母親そっくりに似せた仔は、 より多くの情報を得ようと、好奇心たっぷりに檻の中を見渡していた。 彼女がスライムであるのを忘れそうなほど、純粋で、理性的な瞳で―― ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪ローパー≫ *【破瓜】 その名称の通り、リースの眼前の怪物には、無数の触手が生えていた。 一本一本が人の腕よりはやや細い程度、それらが自由に波打っている。 触手そのものと本体は、薄皮一枚で覆われた皮下組織の色が覗いて赤黒く、 同じ数の蛇の群れも、これほどに悍ましい姿を取りはしないだろう。 リース: くっ…! やめ―― 身構えたリースの腕に、ローパーの触手が絡み付く――骨の軋む音、 比べ物にならないほどの膂力差に、リースの喉からは悲鳴が上がる。 それも当然だ。それらの触手は筋肉のみっちりつまった生きた縄、 彼らが狩りをする際に、これ一本で獲物を絞め殺せる力を有している。 磯巾着のような形状を見れば、彼らの住処は海中だと勘違いしそうだが、 れっきとした陸生生物で、一生を湿り気ある陸上で過ごす種族である。 移動、捕食、そして生殖――そのあらゆる行動を、触手を用いて行うのだ。 そしてリースが何の相手に選ばれたのかは――もはや言うまでもない。 リース: むっ、ぐむっ…! うぶ…! 口腔内に一本、四肢にそれぞれ一本、両乳房に一本ずつ、胴、首にも。 張り付けのような体勢で縛られたリースの体は軽々と持ち上げられ、 ローパーの、脈打つ肉色の胴体の上に腰かけるような格好となった。 その股間には、より醜悪な一本の触手が突きつけられている。 リース: むぐぅ…っっ! …! つう、と腿を伝う破瓜の証――ローパーは頭頂部の口でそれを舐めた。 血の香りに興奮したのか、全身に回された触手の動きはより激しく、 リースの肌を、何匹もの蛇が這うように、好き勝手に横断、縦断。 逆らいようのない状態でもなお、リースの表情は反骨心を纏っていた。 だがそれも――この拘束状態から抜け出る手段が一切ない、と知るまで。 疲労は顔に出、無力感は指先に、やがて抵抗すら諦め始める。 一方のローパーは、よき母胎を得たことへの興奮冷めやらず、 リースの全身を撫で回し――どうやって遊ぶか、思案しているのだった。 *【種付け】 不気味に脈打つ何本もの触手によって、リースの四肢はひねり上げられ、 ぎちぎちと痛々しい肉と骨の悲鳴が上がる中、股間には一本の触手が。 言うまでもなくそれはローパーの持つ生殖用の突起物であり、 普段は他の触手に紛れ、目立たぬよう隠されている急所でもある。 リース: むぶぅ…っ! 口にねじ込まれたもう一本のせいで、リースは声も上げられない。 かといって、人間如きの咬合力で噛みちぎれるほど柔でもない。 顎の外れそうな太さのそれが、舌を押し退け食道近くまで伸びると、 その圧迫感だけで、リースの頬には自然と、大粒の涙がこぼれていた。 だが彼女の苦難は、そんな程度で収まるものではない。 ぐちゅぐちゅと、同じ太さのものが膣道を乱暴に掻き回し、 リースの反応がもっとも大きくなる部位を、探られている真っ最中。 これからの長い交尾にて、相手に無理やり“協力”させるため―― リース: …! っぐ、んん…! 反射的にびくん、と固くなった肢体の変化を、ローパーは見逃さない。 どの部位がより効率的に、交尾相手の動きを封じられるのか―― 視力の弱い彼らは、まさにその発達した触覚と触手にてものを視る。 いかにリースが隠そうとしてもほとんど筒抜け、隠しようもない。 動きを切り替え、リースの弱点を責め立てながら――その性器には、 ぼこりと液を詰め込んだ瘤が、胴体からゆっくりと上がってきていた。 中に詰まっているのは、無論彼の精――雌を孕ませるためのもの。 絶頂後の弛緩した体では、それを拒むことなどとてもできない―― *【妊娠初期】 他種の雌を繁殖相手とする場合、ローパーがもっとも気にするのは、 それがきちんと、出産までこぎつけられる母体であるかどうか。 故に、一度や二度の交尾で相手を解放することはありえず、 リースもその例に倣い、いまだに拘束され続けている。 リース: …ぁ、ぐっ…う、ぅ…っ! んんぁあ…! 元々が女戦士の血族、人一倍頑丈な体を持つとはいっても、 ずっと同じ体勢で宙に吊られていては、体のあちこちがぎちぎち痛む。 そこに無理やり、股間や乳房を弄くり回されての刺激が差し込まれ、 耐えるために込めた力が、またするりと逃げていってしまう。 苦痛一辺倒なら、いつか解放される時まで歯を食いしばればよい。 快楽一辺倒なら、終わりがくるまでそれに溺れてさえいればよい。 その両方が、予期せぬ瞬間に入れ替わり――またぶり返すのは、 今の彼女の体勢同様、どっちつかずに浮いているのと変わらない。 リース: いっ、いぃ…ぐ、ぁあ…っ…! 絶頂に辿り着きそうになった途端に、関節がばきばきと痛んで―― それに慣れそうになればまた、目の前が真っ白になりそうな刺激。 触手をねじ込まれた口の端からは、だらだらと涎がこぼれていた。 もはやそれすら、自分の意志では止められない状況。 既に腹部に己とリースの仔、受精卵があるのをローパーは知らず、 リースもまた、自分が妊娠させられていることに自覚的ではない。 現状を分析するだけの余裕がないといえばそうなのだが―― もしや、とその可能性に言及することすら彼女は恐れているのだ。 *【妊娠後期】 人間一人を苦もなく吊り上げられるローパーの筋力は、 仮にその重量がいくらか増えたところで、全く問題としない。 リースの臨月胎は彼女に疲労感と倦怠感を十二分に味あわせるものの、 それを体ごと持ち上げるローパーは、一向に気にしないのだ。 リース: ぐっ、ぅう…! ぁ、あ――っ…! 快楽と苦痛の均衡は、ここにきてやや前者に傾いているらしく、 たびたび、リースの表情は望まぬ刺激を噛み殺すようなものになる。 体が慣らされたのか、ローパー側がこつを握ったかはさておき。 身重ながらも、十二分の飴は与えられているようではあった。 だがそれは結局、胎内でいよいよ出産間近となった胎児から、 目を逸らすための材料が与えられているというに過ぎず、 快楽で麻痺した心が不意に素面になると、より不安が強くなる。 彼女の表情は、明らかに憔悴、狼狽、恐怖を纏っていた、 リース: うぅぅ… ぁ…んぁあぁ… 本人の心とは全く無関係に上り詰める体をどうしようもなく、 溺れるには、じわじわと存在感を増す陣痛が邪魔をする。 この悍ましき肉塊との間に生された、姿さえ想像できぬ仔―― それを想うと、リースの目尻にはじんわりと涙がにじむ。 事実、ローパーが他種と交わって得る子孫は、ぶれ幅が広い。 多くの種類と交われるからこそ、出産直後に形質があまり現れず、 ばらばらの容姿で産まれ、やがてローパーの外形に収斂していく。 子々孫々まで醜き姿となるべくかけられた、呪いめいて―― *【出産】 犬と交れば犬にどことなく似た四つ足が基準となり、 鳥ならば羽、虫ならば甲殻、人ならば二足――という風に、 ローパーの精を受けた相手が産む姿は、おおよそ母親に似る。 ローパー同士の交尾なら、また話が違ってくるのだが。 リース: ふっ、ぅ――くっ…! うぅ…! 陣痛が強くなり、破水が始まるとリースはあっさり解放された。 長期間の拘束に伴う関節と筋肉の痛みが襲い来る中で、 外界に出る準備を終えた赤子を、産まねばならないのだ。 呼吸を整えるだけでも大変、姿勢を変えるのも一苦労。 みちみちと開く子宮口の痛みが、骨盤の開く痛みと共に来て、 天秤が一気に苦痛に傾いたことと合わせ、落差が大きくなる。 ぼろぼろと大粒の涙をこぼしながら、リースは必死にいきむ。 赤子がそう大きくないことだけは不幸中の幸いだろうか。 リース: いた、ぃ…い…っ! やだぁあ…! 赤子のように泣き喚いても、誰もそれを慰めはしない。 彼女自身が赤子を産もうとしているのだから、なおさらだ。 股間から覗き始めた頭頂部は、まさに肉色に赤黒く、 凌辱者由来の触手が生えているのは、もはや明らかだった。 己の子宮にそんなものがいたこと――そして抗えなかったこと。 産みの苦しみよりも、無力さを突き付けられた方が心を抉る。 人型の部分と触手との混ざった、非対称で不格好な新生児は、 母の感情を逆撫でするように、生命力に満ち満ちていた。 *【出産♀】 リース: … みたくない…やめて… 胎児の姿がほとんど出きると、リースはそちらから自然を外した。 おおよそ人間の赤子に近く――それでも否定できぬ異形。 四肢のうちの一つは小さく折れ曲がったように未発達で、 背中からの生えた太い触手が、対照的に力強く躍る。 人間の中でも、容姿の整ったリースと――醜い肉塊の間の仔。 その両者の血を引き継いだ姿として、実にわかりやすい。 リース自身、、突き付けられたその事実を呑み込めぬのだ。 たとえ、いまだ繋がったままの臍の緒を無視したとしても。 リース: うぅ…! 赤子が己の身体を操縦できず、羊水の水溜りの上を転がる。 左右非対称で、筋力の釣り合いも取れず、這うことも難しい。 びちゃん、びちゃんと生臭く滴の跳ねる音が牢内に響く。 思い通りにならない肉体への苛立ちをこめた鳴き声と共に。 そうするうちに、やがて彼らは地に当たった箇所を硬質化させ、 親であるローパーそっくりの、ずんぐりした肉の柱になっていく。 母親のリースのことなど、やがて全く連想できなくなる姿へと。 だが――リースはその異形の我が子を、その手に抱いた。 彼女がローパーの発育について、詳しく知るわけもない。 ほとんど無意識の行動か――あるいは本能の訴えかけか。 赤子は機嫌よく、母の腕に触手を絡ませ、体重を預ける。 やがて自分も、この姿になるのだと疑いもせぬ様子で―― ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪シェイプシフター≫ *【破瓜】 つるりとした肌――いや、皮膚とさえいえないような、異様な表面。 油の浮いた水面の、常にぐるぐると模様の変わる様をどこか想わせる。 見ているだけで、意識をどこかに持ち去られそうな深く青い闇の色、 それは彼らが、本質的にこの世の存在でないことを示しているのである。 リース: よ…寄らないでください! 得物こそ手元になくも、不埒物を寄せ付けぬという強い意志のもと、 リースが身構えると。シェイプシフターの体表はぬるりと波打った。 そして橙色の眼球が彼女を見据えたと思った次の瞬間には、 たちまち、リースと限りなく近い姿に変貌していたのだった。 リース: …ぁ…わた、し…!? 息を呑むのも束の間、偽リースの体はばっくりと前後に二つにちぎれ、 それら一つ一つが、またリースとまったく同じ形状に変身する。 自分の体が引き裂かれるだけではなく、それが増える光景―― 口をぱくぱくさせるリースの前後に、素早く二体が回り込む。 姿が同じなら膂力も同じ。ならば数の多い方が圧倒的に有利。 床に抑え込まれたリースの目の前に、信じられないものがぶら下がる。 自分の体――がより男性的で筋肉質なものに変貌し、顔だけは同じ。 そして股間には、血管が浮き、怒張した男性器が生えている。 リース: い、や――むぐっ…! その口腔内に、生臭い雄の臭いがみっちりと押し込まれていく。 自分の顔をした、男。それが前後から、同時に襲い来る。 破瓜の痛みなどほとんど些事だ。現状を理解しきれていないから。 “自分たち”が一斉に腰を振り始めてようやく、リースは理解した。 この凌辱者は、自分の姿を利用して辱めようとしているのだと。 嗜虐心に歪んだ自分の表情は、あんなにも醜いのか、と。 雄の肉体から放たれるもの――それが何を意味するのかさえも。 既に彼女の心は軋み始めていたが――ここからが、永い。 *【種付け】 リースと同じ姿に化けるだけでなく、その股間に悪趣味な男性器を足し、 一対二で行われる凌辱に、彼女の精神はみるみるうちに消耗していく。 それが露悪的な、実情と離れたものであっても、自分の醜い姿を見、 そして自分自身――達に犯されているとなれば、無理もない。 リース: ぐぶっ…! うぶぅ、むぅ…! 偽リースのうち、後ろにいるものはリースの尻を鷲掴みにして腰を振り、 前にいるものは、口の中を喉まで押し込むように男性器で埋める。 四つん這いの状態で上下からぐっと抑え込まれて逃げ場もなく、 強引な同時抽挿に、リースの表情はどんどん曇っていった。 彼らは生者、特に生身の人間に対し強い攻撃性を示す。 相手に苦痛を与えるためなら、手段を問わない――今のように。 狙い通り、リースの表情は絶望と不安に彩られ、青ざめていた。 そこには、この凌辱の先にあるものへの予感さえも―― リース: んぐぅ… いや、ぬい、うぶ……っ! ほんの僅かに開いた隙間から、リースの慈悲を求める声が漏れるも、 そんなものでやめるほど、シェイプシフターは慈悲深くなどない。 却って、彼の作戦が功を奏していると伝えているようなものだ。 リースを孕ませる前に――とことんまで、心を痛めつけるという。 前後の偽リースがぐっと動きを止め、めいめいに精を吐く―― 流れ込んでくる悪意、雄の繁殖欲、暴力性、殺意にも似た感情。 生者を汚し、その胎を穢すことで彼らは仮初の命を得る。 やはりその仔もシェイプシフターとなる、呪われた輪廻において。 *【妊娠初期】 シェイプシフターはあくまでリースの心を折るために凌辱しており、 その精が彼女の胎内に芽吹くかどうかを重要視してはいない。 だが事実リースの子宮には、まぎれもなく両者の間の仔がいた。 凌辱の副産物に過ぎず、行為が緩くなることなど一切ないが―― リース: むぶ…っ…! うぅ…いやぁ… 凌辱と凌辱の間の束の間の休息、リースが体調不良の様子を見せると、 シェイプシフターは彼女本人より先に、その妊娠を見てとった。 模倣の際、その遺伝子までを完全に観察し、複製するのだから、 妊娠などという大きな変化を、見抜くのは容易いことなのだ。 だが彼らはその情報を、リース自身に伝えたりは一切しない。 むしろより激しく、強く、彼女の心に負担を掛けようとする。 リース本人が、諸々の体調不良の理由――胎児の存在に行き当たり、 無意識のうちに、胎を守るような行動を取っていたとしても。 リース: うぐ… やべ、ふぇ… 顎を掴まれ顔を上げることができず、視線だけでリースは慈悲を乞う。 それをシェイプシフターは黙殺した――きちんと理解しながら。 無力さを突きつけ、心を折るという目的において情けは不要。 弱っている時にこそさらに苛烈に冷酷にいたぶるべき、と。 胎が目立ち始めれば、ますますリースの心労は重くなるだろう。 だが凌辱者は、それに乗じてより態度を厳しくするに違いない。 そのことをうっすらと理解させられはじめたリースはただ無力、 何をされるのかを想像し、身を震わせることしかできなかった。 *【妊娠後期】 リース: … ぅぐ…げほ、ぉ… リースの腹部が臨月のそれとなっても、凌辱は全く収まらない。 それどころか、これまでは口を犯されている最中、開いていた鼻―― 唯一許された酸素吸入のための細い道すら、指で摘ままれ閉じられる。 息苦しい。辛い、死にたい――?弱った心はより悪い方向に流れだす。 また、出産の近いであろう膣道も相変わらずごりごりと抉りぬかれて、 その上、いつのまにか増えた二本目の性器で、尻穴までを犯される始末。 そして前後のシェイプシフターが入れ替わるとき、口に入るのは二本目だ。 己の腸液と血の臭いが精液のに混じり、猛烈な嘔吐感を引き起こす。 リース: うぶっ… おぇ、え… 悪阻と混じって込み上げる吐き気も、喉の奥に無理やり掻きこまれ、 吐き出すことも嚥下することもできぬまま、リースの体力が削られていく。 性器の太さが、人間の雄のそれよりよほど凶悪であることなどもはや、 彼女を傷つける主要因たり得ない。それ以外のことが辛すぎて―― そして彼女はまだ、自分の孕んだものがどんな存在かも理解していない。 シェイプシフターの精から産まれるものは――やはりそれに近く在り、 母であるリースを傷つけることに、なんらの躊躇も抱かないことを。 いや――率先して胎内より母を苦しめ、陰惨たる想いを抱かせることを。 凌辱の最中も、胎児はどくんどくんと激しく母の腹を蹴り回す。 まるで意識的に、彼女の体を傷つけているようにも見える激しさだ。 出産が近づけば――必然的に彼女は我が子に恐れを抱く。 己の想像を超えるであろう苦しみは、いったい如何ほどなのか――と。 *【出産】 リース: あぎぃ…っ! さけ、さけっ…るっ…! リースの想像通り――いやそれ以上に、シェイプシフターの仔は危険だ。 陣痛と胎動の区別がつかないぐらいの激しい動きをするだけでなく、 破水が始まってなお、出てくる様子がほとんどないどころか、 胎内でさらに体積と重量を増していくようにも感じられるのだった。 人間の子宮は、あくまで人間同士の交配による胎児を納めるためのもの。 その許容量をどんどんと超えていく巨大な胎児は、あるいは成人―― 腹の皮が裂けるかとも思える、急激な膨らみにリースは苦しみ悶え、 それを通すための骨盤の開き方は、尋常のものではなかった。 リース: ご、ぁあ…っ… じ…じぬっ…しんじゃう…! めりめり、ごきごきと開かれていく股――痛ましい限りである。 その中からようやく胎児が覗き始めたが、全体は遥か奥にあり、 拳一本分出すのですら、相当な時間と労力を要した。 もっとも、その拳は通常の胎児の頭部に相当する大きさなのだが。 リース: ひゅ――… かはっ、ひゅ―… リースの唇からは血が垂れていた。内臓の圧迫か、口内を噛んだのか? ろくに悲鳴もあげられぬほどに擦り切れた喉はなお限界を超えて、 耐えきれぬ苦痛を、耳障りな音に変換して奏で続けている。 目は虚ろ、焦点の合わない瞳が視線をあちらこちらに振り回す。 胎児の体は、リースの胎内から出る最中までは大きいままだったのが、 出きった瞬間、見る間に縮んで通常の新生児の大きさに。 この出産を、己の命の誕生としてではなく――母への拷問か何か、 本質的に相容れないものとして認識しているのが窺えた。 *【出産♀】 あまりに負担の大きな出産で、リースは完全に失神状態にあった。 出血の激しさだけでなく、筋肉と骨への被害も甚大なもの。 呼吸をするたびに上下する胸郭、それに連られて波打つ腹の皮。 妊娠線ができる暇もない。あまりに巨大化が早く進行したからだ。 リース: は――… は――ごほっ、うぐ… べこべこに引き延ばされた皮は、治療だけで相当な時間がかかる。 今はまだ、己の惨状を理解していないリースも、直に気づくだろう。 脳内に分泌された麻薬が途切れた瞬間、第二の地獄が来ることに。 惨憺たる有り様のリースに対し、赤子は健康そのもので、 体を縮めるより先に、自ら胎盤を母の子宮より引きはがす有り様。 そしてはたと気づくのである。体を変化させることが不得手だと。 父親であるシェイプシフターは、肌の色さえ自在に変えるのだが、 産まれてきた仔――おそらく雌――には、それができない。 リース: あ… わたしに…に、て… 朦朧とした意識の中で、リースが捉えたのは確かに我が子の方だ。 青い肌、橙色に輝く瞳、明らかに人間のそれとは違うもの。 しかしリースの血縁を確かに感じさせる、幼子の姿をしていて、 帰るべき本来の――定まった姿を持たない父とは、一線を画す。 自分の中に、人間としての姿があることを仔は驚いた。 そしてそれが母からの贈り物であること――自分は既に一個の命、 亡者の輪廻から解き放たれていることに、困惑し、涙した。 父と共に母を苦しめたことを、後悔すらしている様子で… ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪チビデビル≫ *【破瓜】 悪魔の中では最下級、体格も魔力も、才覚ある人間の子供にすら劣る―― 矮小なるチビデビルが、それでもなお人の世をたぶらかす尖兵なのは、 ひとえに、彼らの個体数の多さと――外見に見合わぬ狡猾さと悪辣さ、 その両面から、常に他の生物を惑わし続けているからである。 リース: …! たかが一匹、されど一匹。無手のリースにはそれさえ荷の勝つ相手だ。 出方を窺う彼女に小悪魔はじりじり近づき、逃げ場を潰すと、 懐から取り出した拘束具で、彼女の手首と自分の手首を繋いだ。 そのままぐいっと鎖を引いて体勢を崩し、さらに、首にも。 悪魔は実に手際よく、リースの身動きを封じて絡め取ると、 床にごろんと寝転がって、自分の体の上に彼女を引き倒した。 リースに掛けられた手鎖は極めて短く、体を起こす余裕はない。 そしてさらに悪魔は、尻尾で器用に彼女の後ろ髪を握り込む。 リース: いたっ…やめ、かみが…っ! やめなさ、いぃ…! 後ろ髪を引かれて体が浮くと、首と両手の鎖がぎっちりと肉に食い込む、 逆に首の鎖を緩めるために体を悪魔の側に寄せると、彼はまた髪を引く。 リースは悪魔の機嫌次第で前後左右に揺さぶられる操り人形であって、 悪魔は手の中で弄ぶように、リースの体勢を完全に支配している。 何度か引き具合を確かめると、悪魔は下半身だけをもぞもぞとずらし、 リースの下腹部にぴったりと己の下腹部を合わせ、腰を突き上げた。 肉槍の突き刺さる痛みを噛み締める間もなく、髪が引かれて体が浮き、 そしてすぐに、両手と首が引かれて密着状態――奥までの挿入に。 リース: あっ、っぐ…! リースは自分がこの小さな存在に完全に御されていることを自覚した。 だがそれが何になろう?理解したところで取れる選択肢は変わらない。 びく、びくと緩やかに震える悪魔の性器に、自分の未来を想像し―― それを震えながら受け止めるしかない、無力な人の雌ごときには。 *【種付け】 リース: うぁ…や、めてっ…! リースの首と両腕に掛けられた鎖、がっちりと掴まれて離せない髪。 悪魔は自分の上に跨らせた彼女のそれらの部位をぐいぐい引っ張り、 時には前に、時には後ろに、あるいは左右と、自由自在に振り回す。 体格だけでいえば、リースよりもずっと小柄なその姿で―― 悪意と悪知恵一つで、そんな差はあっさりと埋まってしまうものだ。 そして勝者は、のんびりと寝転びながら、敗者を嘲り、弄ぶ。 リースの腰使いが自分にとってちょうどよくなるように調整を続け―― 両者の結合部からは、勢いよく性器の出し入れされる音がし始めた。 リース: っく…いやぁ… とめて、おねがい…! リースが力を入れて流れに逆らっても、綱引きに負けている以上。 より大きな反動でもって痛めつけられるだけにしかならず、 苦しみから逃れるためには、自ら適切な勢いで腰を振る必要がある。 まるで凌辱者に、命惜しさに媚びるような真似を――? 彼女の心はそれを拒絶する。しかし肉体は苦痛への反射で本能的に、 それを最小化させる方向へとリース自身を誘導してしまうのだ。 悪魔の満足するような速度と角度、位置、緩急――それらの要素を、 頭皮の痛みと息苦しさで常に答え合わせさせられ続ける。 そして“正解”は――彼女の体自身が、防衛のために垂らす蜜、 潤滑油代わりにこぼれる膣液の、下品に弾ける音にて示される。 いやだ、やめたい、助けて、そんな想いと裏腹に、肉体は膝を屈す。 どうか貴方の仔を孕むから、これ以上いたぶらないでくれ、と。 *【妊娠初期】 悪魔によって掛けられた手鎖を外す手段をリースは持たない。 交配実験の間の休息の時間も、窮屈さに息が詰まりそうなほどだ。、 不慣れな犬食いで餌皿に顔を突っ込まざるを得ないのを、 わざと蹴り倒し、屈辱に打ち震える様を指さして笑いもする。 リース: うぅ… こんな…こんな程度で… そんな暇つぶしが終われば、またリースは玩具にされる。 苦しみの少ない、わざと開かれた道に誘導される悔しさも、 断続的に襲い来る苦痛の前には、ほとんど意味をなさないのだ。 結局、悪魔の思い通りに彼女は膣肉にて奉仕させられる。 リース: んっ…う、くっ…! ぁ… 凌辱者にとって理想的な抽挿の条件は、裏返して言うならば、 リースの体にとっても負荷が少なく、相対的に快楽が優るもの。 だからといって、苦痛と相殺できるほどはっきりしてもいないが、 たまにこうして、彼女の喉からは熱の塊が逃げるのだ。 今はまだ、小さく、自覚もほとんどないような違和感の種。 それはゆっくりと大きくなり、リースへの負担を強くしていく。 体の火照りもそう。下腹部の、些細な変化――受精卵もそう。 目に見えて感じられるほど大きくなったとき、リースはより苦しむ。 悪魔という種族が、本質的に他者を害する存在であること。 それによって苦しめられながらも、適応し始めている自身の体。 積み上げられる事実から目を逸らすため、リースは自ら腰を振る。 より深い絶望を、ほんの僅か先延ばしにしているだけなのに―― *【妊娠後期】 胎が前に大きく張り出せば、当然それまでと同じ動きはできない。 リースの腰使いも、自身の妊娠を前提としたものになっていくが、 凌辱者がそれを気に入るか、情けを掛けるか、といったことは、 彼女の苦しみとは全く無関係、慈悲を乞うしか手立てはない。 そして案の定――浅く、ゆっくりとした抽挿しかできないことは、 彼女を孕ませた小悪魔にとって、実に面白からざることであった。 ゆえに、妊娠前よりもむしろ激しく、彼女の体を前後に揺さぶる。 子宮口の直前まで、無理やりねじ込んでしごくために。 リース: あっあ…! もっ…とぉ…ゆっくり…! 容赦なき抽挿――リースの体にとってそれは、毒にしかならぬもの。 しかし彼女の頬は無意識のものか――緩んでいるようにも見える。 被虐の感情に目覚めたか、自棄か、心にひびが入ったか? 言葉でこそ拒絶しても、リースは自ら腰を振るのをやめない。 それが悪魔の意向の通りとならずとも、動きは段々と勢いを増し、 身重ながらも交尾に溺れる様は、淫魔に魅入られた女そのもの。 かくして最下級の悪魔は、己の傀儡と孕み袋を得るのである。 人を堕落させ、破壊する手練手管に長けた種族だからこそ―― リース: っ――! ぁあ…やだぁ… ほんの一瞬の、意識の空白。その意味するところはリースにもわかる。 凌辱によって変わり果てた体のせいと、認めてしまうのは簡単だ。 だが同時に、それを是とした心の弱さに向き合うことともなる。 彼女が両者の境に悩む間にも――その瞬間は、着々と近づいていた。 *【出産】 リースの胎内に根付いた、悪魔の仔が十二分に育ってのち、 彼女の拘束は解かれ、久方の自由が訪れた――陣痛と引き換えに。 知りたくもなかった被虐心を植え付けた悪魔は、ことここに至って、 リースの行動の一切から手を引き、彼女の苦しむ様子を眺めている。 リース: ひぎ…っ…っ! ぐぅ、ぁ…ぁあ…! 性交ならば、望むと望まざるとに限らず、一定の刺激は得られた。 出産において、痛みを和らげるだけの何かがあるかといえば――ない。 リースの心情からすれば、いきなり梯子を外され蹴落とされたようなもの。 その苦しみを、彼女は一人で耐えきらねばならないのである。 にたにたと笑う悪魔は、苦悶の表情を浮かべるリースを見ているだけ、 手を伸ばすことも、励ましの言葉をかけてやることもしない。 もっとも、リースの眼前に何らかの救いが与えられたとしたら、 それはまさに、悪魔の囁きとしか言えないものであったことだろう。 リース: うぅ…ふぅ――… っく…!ふぅ――…! やがて呼吸は一定の間隔で、長く浅く、落ち着いたものに変わる。 小悪魔の仔は、やはり親に似てさほど体格も大きくはならず、 出産の苦痛そのものは、純粋な人間のそれよりは、やや軽い。 ただ魔族の特異な点は、母体に己の残滓を残していくこと。 悪魔と交わり、屈服し、その仔を産んだ女は、人の身から離れ、 魔界由来の物質に、心身を少しずつ変換されていく――のだが、 生憎とこの研究でそこまでの不可逆変化は許容できない。 それを封じる呪いを掛けてあるため、起きることはない―― だが、視線にて繰り返し繰り返し悪魔に手助けを求めるリースは、 常人ならばとっくに彼らの眷属となっているほどに、情けない姿。 これがかつて聖剣を求めた英雄の末路とは、とても。 それを自覚してか。リースの頬には、また新しい涙が降りた。 *【出産♀】 半人半魔の存在は、実に中途半端な立場に置かれている。 人の世には、言うまでもなく紛れ込むことが困難であるし、 だからといって魔族の世界では、力不足が如実に表れる。 魔界の最下層にて、隠れて生きるのがやっとというところ―― 母胎を魔族の側に近づけるのは、人間の血で薄めてしまわないように、 せっかく産まれた子を、無為に死なせるのを避ける側面もあるらしい、 堕落しきった元人間の中級魔族が上級魔族と交配した結果、 母よりも高位の仔ができたという事例も文献上にはある。 リース: う… ぁ…あれ…? うま、れ… リースの産んだ赤子は、下級魔族との混血の雌個体。珍しくもない。 彼女の肉体が変異していないのだから、血は当然薄まっていて、 研究材料としての価値は、ほとんどないといってよい。 多少、人間に近い姿をしてはいるが――これも、よくあること。 父親である子悪魔もまた、赤子には興味を示していなかった。 充分に母胎が“仕上がって”いない時期の血の薄い個体は軽視されやすく、 大所帯では、長子の立場が弱くなることもよく見られる。 リースとの交配において、彼の満足するような優秀な仔は産まれまい。 赤子は己の不安定な地位を知らぬ。知ったからとて何になる? 自分は親から十分なだけの愛情を受けて育つ権利があるのだ、と、 まるっきり疑わないような産声とぐずり。だが父はそれを黙殺する。 ただリースだけが、その孤独な存在の受け皿となれるのだ―― リース: … …… おいで… 悪魔の血を引いた紫の肌、母の乳房に吸い付いては小さな歯形を残す。 それは決して、人間の子ではなく。また、悪魔の仔とも言い切れない。 どうしようもないような感情をいったん棚上げにしておいて―― リースはこの仔がどんな運命を辿るのか、考えずにはいられなかった。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪グレートデーモン≫ *【破瓜】 そこにそれがいるだけで、地獄の口が開いたような威圧感が噴き出る。 血に濡れた紅い肌、根元から捻じ曲がった太い角に、大きな翼―― 耐性のない者は上位魔族の姿を視認するだけで精神に悪影響が出るほど。 その不気味な容姿に、高い知性と魔力をみなぎらせた存在なのだ。 リース: うう…っ! 気圧されるリース――だが仕方のないことだ。狭所にて一対一、 しかも己の手元には棒切れ一本だになく、身を守る鎧も着ていない。 デーモンの爪は、人間の柔肌など紙切れのように容易く切り裂く。 何の道具もない彼女に、対抗する手段など―― リース: 来ないのですか? まさか悪魔の唯一の弱点――破瓜の血を恐れて。 悪魔はくつくつと、余裕たっぷりに目の前の獲物を嗤う。 だが彼が自らリースに近づかないのは、確かな事実であった。 そこに勝機を見出した彼女は、勇敢にも一歩、距離を詰める。 己の持ちうるたった一つの武器を見せつけるよう、股を開きつつ。 リース: 怖気づいているようですね… では、私から行きます! 自身の倍以上ある悪魔の体を両手でどん、と押し退けると、 床にどさりと倒れ込んだ彼の上に、リースは自ら跨った。 取り得る選択肢は他にない。ならば、先手、先手が肝心だ。 両腿で彼の腰を挟みながら、ずりずりと上に這い上がり―― そして自ら、悪魔の性器の上に、深々と腰を降ろして咥えこむ。 ぐっ、と歯を噛み締める。有効な一打を加えるには仕方ない。 だがリースの目の前の敵は、この程度で音を上げたりしないだろう。 憎き敵を打ち倒すため――リースは腰を動かし始めた。 *【種付け】 牢の中にて、女が一人、堂々たる体格の悪魔に跨っている。 その光景だけ見れば、何らかの脅迫の結果かと考えそうなものだが、 自ら腰を動かし、相手の性器を咥えこむ選択を取ったのはリース本人、 悪魔はただ彼女の下で、されるがままになっているだけである。 リース: ふふふ…声も出ないようですね! 悪魔が女性器に弱いと、私が知らないとでも? 自信たっぷりに言うリース――しかし悪魔はわずかに片眉を上げた。 ぱちり、と指が鳴る。右手をそうして軽く上げた他は何もなく、 リースが自ら腰を激しく上下に振っているのも、先ほどと同じだ。 反応の薄い相手に、また畳みかけるように―― リース: ローラントに伝わるおまんこ術っ\I[122] とくと味わいなさい\I[122]\I[122] 悪魔の鼻からは、堪えきれぬ笑いが漏れる――やりすぎた。 そのまま自分の目の前に、魔力で薄い長方形の膜を張ると、 その上に指で文字を書いていく――なぞった跡はすぐ消える。 彼がそうして何かしていても。リースはまったく反応しない。 視線はずっと、自分が犯している相手に向けられているのだが、 その行動が、認識の外側にすっぽり転げ落ちているのだ。 しかしその他は、全く普段通りの彼女の人格であって、 発する言葉も、彼女自身の本心から出ているものばかり。 リース: 覚悟なさい… このまま、貴方の仔を孕んでやりますからね! 己の膣内に、悪魔の呪われた精を受け止めようとする姿―― この実験前の彼女にしてみれば、それはあまりに愚かなこと。 だが現在の彼女は、現況とかつての姿に矛盾など感じまい。 自らの知識と判断で、相手を追い込んでいるつもりなのだから。 *【妊娠初期】 リース: 私は妊娠した程度では手を止めませんよ…! 悔しかったら、貴方も何か抵抗してみせなさい。 リースの言う通り、彼女の子宮には半人半魔の仔が眠る。 自ら悪魔の性器に跨って精を搾り取り、孕んだ仔が。 主導権を握っているのはあくまでリース、選んだのも彼女の意志。 ただその基準が、本来のものより少しずらされている―― リース: んっ、くぅ…っ\I[122] そんなにいいですか、私の中はっ…\I[122] 簡単に御せる女でなくて、残念でしたね…! 彼女は今、目の前の悪魔と必死に戦っている最中である。 唯一手元にある己の武器、子宮を用いて悪魔の仔を孕み、 それを彼の目の前で産むという、最大の一撃を加えるため。 そして悪魔は、妊婦との性交が大の苦手であるとも知っていた。 リースの息は上がり、明らかに疲労が溜まっているのがわかる。 しかしここで追撃の手を緩めては、これまでの苦労が台無しだ。 火照る体に鞭打って、懸命に腰をうねらせ膣襞を震わせ、 少しでも悪魔の肉体から精を奪ってやろうとしているのである。 リース: はぁ、はぁ…… まだまだこんなものでは終わりません。 お腹が大きくなってからが本番ですよ…! 悪魔はわざとおどけた風に、大げさに怖がる手振りをした。 ああ、恐ろしいことだろう――身重の女に跨られるなど。 そして彼女は、己の肉体の変化を押して、犯しにくるだろう。 それが本当に効果的だと、一切の疑念を抱くこともできず。 *【妊娠後期】 リース: ぐっ、ふうぅ…! はぁっ…これで、あなたもっ…! おしまい、ですっ、ね…! 身重の体でも、相変わらずリースは悪魔の上にて跳ね、責める。 大きな腹が挿入の衝撃でばうんばうんと弛み、押し潰され、 その感覚だけでも相当な負担であろうものを、彼女は苦にもしない。 臨月の女と交わるのは、悪魔にとって最大の屈辱であるからだ。 胎児と羊水の重さが増しただけでなく、脂肪もついた妊婦の身で、 種付け前と同じだけの腰使いを実現するのは、容易なことではない。 その上、子宮が膨らんで膣道を圧迫することで浅く狭くなり、 相手の性器を根元まで呑み込むのも、段々と苦しくなってきている。 リース: 私の、きつきつ妊婦まんこはどうですかっ\I[122] 出産直前まで、解放なんかしてあげませんよ…っ\I[122] 悪魔が最も恐れるものを手にして、リースはなおも勇猛になる。 繰り返し彼の性器を咥えこみ、弱点を知り尽くした膣肉―― そのおこぼれ――あるいはご褒美として、快楽までついてくる。 多少の無理を押してでも、性交の時間を減らすわけにはいかない。 リース: んっ… あぁっ…\I[122] どぷり、とリースの膣内に悪魔の精が跳ねる感覚にも慣らされて、 射精されただけで、彼女の肉体は知らずと悦び、悶えていた。 上り詰める感覚に頬は緩み、腰の動きも遅くなってしまう―― ああ、いけない――もっともっと、激しく動かねば。 束の間の絶頂と停止から復帰したリースは、さらに激しく腰を振る。 出産直前まで――と彼女自身が宣言したのを履行するため。 赤子は胎内から、愚かな母の姿を感じ取り、嘲け笑う。 まるで父親たる、悪魔の内心の侮蔑と嘲笑を真似たように。 *【出産】 リースが股を開いていきみ始めるのを、悪魔は退屈気に見つめる。 大きなあくびが一つ。目の前には魔力でできた薄い膜。 それを指で弄りながら、リースの表情が変わるのを見ているのだ。 快楽に蕩けた顔から、苦痛に満ちた顔まで、実に幅広く。 リース: あぁ…っ\I[122] うまれっ…\I[122]\I[122] いくっ、いくぅ…っ\I[122]\I[122]\I[122] 今のは快楽が振り切れて肉の裂ける痛みすら快楽になった状態。 羊水がぶしゅりと噴くと、その刺激だけで潮まで撒き散らし、 胎動など感じようものなら、全身に鳥肌が立つほどの幸福感の中、 脳の血管が切れてもおかしくない悦楽に溺れ、仔を産むだろう。 リース: へぁあ…\I[122] … …ぎぃっ、あっ、なに…ぃいいっ…! 次はそれらの暗示を切って、本来の痛みに引き戻した例。 急に脳内麻薬が途切れ、歯の奥ががちがちと鳴る悪寒が襲い来て、 仔に対する愛着も、産むことに対する肯定的な感情も吹き飛んだ。 一気に込み上げる恐怖と不安――リースは目を白黒とさせる。 それでもしばらくすると、リースは産む決意を固めたようだ。 ――より正確に言うなら、“固めさせられた”。暗示によって。 これは彼女を孕ませた悪魔の所為ではない。彼は腕を組んでいるだけ。 胎内に眠る赤子が、己の母の感情を操ったのだ――早く産め、と。 これまでの断片的な記憶から、何らかの干渉があったのは理解しても、 その状態で、悪魔の仔を孕み、産む選択をしたのは自分とわかっている。 良いように弄ばれた悔しさを噛み締めている暇はリースにはない。 過程がどうあれ、母親の責務を果たせるのは自分しかいないのだから。 *【出産♀】 暗示の解けたリースは、己の淫らな有り様を振り返り、恥じていた。 ローラントの王室を穢すようなことを、王女の自分自身が―― あんな行動をしてしまったことに、一切の違和感が抱けなかった。 完全に悪魔の術中にはまり、玩具とされていた虚しさに涙する。 リース: うぅ… 私は、あんなに…違う…嘘… ぶつぶつと脈絡のない言葉を繰り返すリースの股の間には、一本の肉の紐。 彼女と悪魔の混血児――その忌むべき存在と母とを繋ぐ鎖である。 その先にて身をよじる赤子は、産まれながらに中位の悪魔の力を持つ。 ――しかしそこがその女児の限界。純血悪魔とは次元が違う。 赤子からの、自分を見てくれという圧力と魔力の干渉を跳ね除けて、 “父”は心底無関心な眼をする。存在すら認知していないように。 リースを貶めるための副産物に過ぎない半人には、全く興味がないのだ。 その場でくびり殺さぬのが、彼から与えられる最大限の父性である。 リース: …? ぁ…また…! …そうだ、私の…大事な、あかちゃん… リースは不自然にびくんと体を震わせ、赤子の方にじっと視線を向けた。 呆然自失の状態に、赤子を抱き上げろという命令を書き込まれたためだ。 まだ未熟な精神干渉術ゆえ、リースの動きは人形のようにかくつき、 心身との擦り合わせが上手くいっていないのが、傍目からもわかる。 リース: えへへ…あかちゃん… あは… 視線はまたふつりと操り糸の切れたように、何もない宙を横切り、 口の端から唾液をだらだらとこぼしたまま、リースは赤子を手招きする。 本能の訴えかけと、それを塗り潰す暗示――いまだ拒絶する理性、 そのどこにも辿り着けない不安定な海の中を、彼女は漂っていた。 心身の疲労が収まって、自分の産んだものと向き合う余裕が戻れば、 そこで初めて、彼女は我が子に対する感情の出発点を探れるだろう。 だが今は、無理やりに愛着の側に感情を引っ張られている―― 悪魔と交わることの恐ろしさを、リースは魂に刻み込まれたのであった。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪ゴブリン≫ *【破瓜】 ゴブリンは亜人の中でも、最も繁栄した種族の一つと言えよう。 単体の力は弱いものの、能力ごとに階級を分けて役目を分担することで、 巨大な巣の中でも統率の取れた行動ができる、社会性の高い種族だ。 だが下位になればなるほど、性格は粗暴にて残忍、短絡的となる―― リース: う…一匹…だけなら… リースは見誤っていた。己が今、いかに無力で脆弱な存在であるかを。 獲物を目の前にしたゴブリンが、いかに危険で狡猾であるかを。 リースを傷つけないよう、ゴブリンの側も武器と衣服は剥ぎ取られていた。 その意味ではまだ、リースの側に付け入る余地があるかのように見える。 しかし――彼らが覆面を外すのは、自分たちの巣の中でだけ。 醜き素顔を見せる相手は、仲間ともう一つ――孕み袋にだけだ。 それを隠しもせずに正対している時点で、彼の考えは透けて見える。 目の前のこの雌に、己の種を植え付けてやりたい、と―― リース: はなし、てっ…! うぁあ…! 生身の人間を拘束する程度、この小鬼には造作もないこと。 巣の中で暴れる雌に無理やり種付けをするのは、彼らの日常だ。 どうすれば抵抗をいなし体を貪れるかを、ゴブリンはよく知っている。 まして初物。彼の興奮はいよいよ激しく、執念にも似た感情があった。 抵抗できないように床に押し倒されたリースは、己の浅はかさを知る。 自分はただ、この亜人の仔を孕まされるだけの肉袋でしかないのだと。 普段、多くの同胞からのおこぼれを頂戴していたようなものが―― 自分専用の雌を手にしたときの、その執着心の強さも。 *【種付け】 ゴブリンの生息域が広いのは、彼らの組織力と社会性も大きいが、 何より、他種の雌を母胎として爆発的に増える生態が主要因だ。 混血児がいても、巣の中では互いにゴブリンと認識し合うだけでなく、 覆面を被れば、その個人に現れた形質如何は言及されないのである。 リース: っく… このっ…! いかにリースが両手で小鬼の体を押し退けようとしたところで、 仰向けに転がされた状態では、たかだか腕二本分の力しか出ない。 そしてゴブリンは巧みに己の脚をリースの両脚に絡めて抑え、 馬乗りの体勢を、容易には崩されぬように固めているのだ。 リースの膣口にねじ込まれる、緑肌の亜人の性器――実に悍ましい。 彼女の自由を奪いながらも実に器用に、ゴブリンは腰を前後させる。 雌からの抵抗があっても、問題なく交尾のできるこの手管は、 巣にて凌辱される孕み袋の姿を幼少期から見ることで培われたもの。 リース: はなれ…てぇ…っ! やだ、ぁ… 腕の力は段々と弱々しく、つっかえ棒としても機能しない程度に。 ゴブリンはそれを自らの胸板で受けて、抽挿の助けとする始末。 孕み袋に意志など不要、ただ子宮さえ機能していればよい。 どれだけリースが嫌がっても、種付けが終わるわけもなく。 無力感が反骨心をゆっくり融かす――するとその隙間に、 彼らが孕み袋をそのまま飼い慣らし続けられる秘密の一端が忍び込む。 結合部から溢れる体液の意味――リースは直に思い知らされる。 ゴブリンの実に巧妙に、飴と鞭を使い分ける種族であるのだと。 *【妊娠初期】 種付けが始まってからも、ゴブリンはたびたびリースを押し倒す。 いつ雌にありつけるかわからない集団生活で、交尾の機会は貴重だ。 ゆえに自分の遺伝子が残る可能性を最大化するために、 近くに雌がいる場合、暇さえあればそれを犯そうとするのである。 リース: くっ… っ――! 一度交尾の体勢に入られてしまえば、リースになすすべはない。 ゴブリンの、成人男性よりはやや小柄な体格に比した大きさの性器で、 容赦なく、孕んでいるかどうかもわからぬ子宮を責め立てられるのだ。 一度の交尾時間がさほど長くないことだけは、救いであろう。 さてその時間をいかに受け止めるか――それこそが問題なのだ。 嫌だやめろと喚いても、事実、彼女に交尾を終わらせる力はなく、 気を張っていても、あっさり終わってしまう程度で拍子抜け。 ならば頻繁に始まっては終わるこれを、どうすれば――? リース: …っ、ぁ――! んんっ…! 不意に喉から漏れる声。想像以上に高く、弱々しく、雌臭い。 その高低を耳ざとく聞き分けたゴブリンは、腰使いを工夫し始めた。 どうすればこの孕み袋を、快楽という麻薬で凋落せしめるか、と。 それを判断する嗅覚もまた、彼らに備わった基本技能である。 水音は少しずつ淫らな音階へ、答え合わせの代わりに移っていく。 リースは己の肉体の変化に動揺するが、ゴブリンに弱点を握られては、 やがて抵抗する心ごとゆっくりと、土台を融かされていくことだろう。 これまで多くの女たちが、そのまま心を支配されてきたように… *【妊娠後期】 リース: くっ――ぁ、い、や――っ… や、やだぁ…! リースの胎が大きくなっても、ゴブリンが交尾を始める頻度は変わらず、 自身の仔を孕んだ雌を気遣うどころか、より乱暴に扱っている。 彼女が腹部を無意識に守れば、その分こかされやすくもなるし、 出っ張った胎のせいで、逃げ道自体がほとんどなくなってもいた。 孕み袋はゴブリンの個体数を増やすための道具としてだけでなく、 巣の中に大勢いる雄の性欲を解消する玩具としての側面もある。 だからこそ、この小鬼は彼女の臨月胎のことなどお構いなしに、 自分の性欲が高まった瞬間、我慢すらせずに襲うのだ。 リース: はぁっ、ぁ――! っく、う、うぅ… ゴブリンの性器が突き立てられた瞬間、リースの膣肉は歓喜に震える。 彼女自身よりよほど詳しく、性感帯を知り尽くした性器が、 的確に弱点を叩き、浅くなった膣道の奥の奥へと入り込むのだ。 快楽を無視しようとすればするほど、声は蕩け、力が抜ける―― こんな存在に弄ばれ、女としての自分を掌握されきった屈辱に、 大抵の女は自意識を放棄し、何も考えぬ孕み袋と化していく。 快楽に身を委ね、飼われてさえいればいい、もう何もいらない―― そんな安直な道を選ばぬだけ、リースの心は強いのだろう。 だがその程度のものが、現状、一体何の役に立つというのか。 体は屈し、子宮にはゴブリンの仔、自身の弱さを突きつけられる日々。 いつしかゴブリンは己の脚で、リースの脚を抑え込まないようになった。 彼女が自ら――意図せずとも――脚を彼の腰に絡めていたからだ。 *【出産】 リースの体で性処理を終え、彼女から離れたゴブリンは。 その股間から、半透明の液体がこぼれ出しているのに気がついた。 するとそれまでの情欲に満ちた表情から、実に真剣な表情で、 リースの体勢を整えさせ、口に薄汚れた布の猿轡を噛ませる。 リース: ふっ、むぐ…っ! うっ…! 手慣れた様子でリースの股間を大きく割り開くと、その両手首を握り、 彼女がいきみやすいように、上半身だけを引き起こさせた。 この一連の介助も、彼が出身地にて見て覚えたものである。 思考能力を放棄した孕み袋に、自然に分娩させる方法―― 巣に運ばれ尊厳を失い、孕んでなお耐える女は稀にいる。 だが大抵、仔を産んだことで最後の一線を越えてしまうのか、 初産以降は、他の雌と同様の存在に成り果ててしまうのがほとんど。 リースの目にはまだ、諦めぬ輝きがあるが――さて、どちらか? リース: っっ…! んぐ、ぅう…っ! めりめりと開かれる膣口から覗く緑の肌は、まさしくゴブリンの仔。 耐えてきた女たちの心をへし折る最後の一手としては十分だ。 そんな赤子が、臍の緒にて自分と確かに繋がっていることを知って、 なお己の尊厳を信じ切れるだけの心の強い敗者は、いない。 なぜなら、ゴブリンたちはじっくりと雌の肉体を蕩かしていく。 苦痛を超えた先が絶望なら――甘い堕落に溺れてしまいたくなるもの。 一度“素直”になってさえしまえば、後は死ぬまで可愛がられる―― リースはその瀬戸際で抗っていた。王家の誇りなどというもののために。 *【出産♀】 リースの股間から這い出たのは、全身が真緑の皮膚に覆われた赤子。 まぎれもなく、ゴブリンの血を引いているのがわかる一方で、 その頭部には、リース由来の金髪が薄いながらもはっきり見えていた。 他種族との混血児としては典型的な、半人の姿である。 父親がそれを取り上げると、赤子はぐるんと身を回転させて逃れ、 まだきちんと臍の緒を切ってもいないうちから、母親へと近づく。 母胎が強いと、こうして早くから動く個体が産まれることがあり、 それは大抵、元気さ以外のある要素をも持ち合わせている―― リース: いたっ…! やめ、っく…! 赤子は母の乳房にがっしりと掴みかかり、乳首をしゃぶる。 意志なき孕み袋から栄養を奪い取るのは、仔ゴブリンの常であるが、 仮に母親が思考能力を保持していても、甘え、己を委ねることはない。 日々多く産まれる兄弟姉妹の中に、埋没し無視されてしまわぬよう。 ゴブリンはおろおろと、その特別お転婆な個体を扱いあぐねている。 彼の出身地には、こんな心の強い孕み袋もいなかったらしい。 ましてそれから産まれた、這い出て早々胸にかぶりつく仔などは。 飼育員が間に入ってなんとか場が収まったが、彼の立場はない。 リース: あれが… わたしの… 我が子を抱えた飼育員が牢を出るのを呆然と見送るリースは、 ゴブリンの気まずそうな表情にも気付かないほど呆けている。 産みの苦しみから解放され――そして赤子もまた手元から消えた。 これまでの時間がまるごと嘘であればいいと、願うような表情で―― ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪ダークプリースト≫ *【破瓜】 牢のど真ん中に置かれた、巨大な紫色の壺――人間一人が優に入る。 その口から、リースの顔だけがひょっこりと飛び出すどこか滑稽な様子。 これは、一生を壺の上にて暮らすダークプリーストの要望によるもの。 彼らは個体数を増やすための行為すら、こうして壺を介すのである。 火山島に集落を持つ亜人の一種で、特有の文化と宗教を持っており、 稀に、このような形式で他種族との混血を行うことがあるようだ。 壺の中で何が行われているかを、外から見る手段は存在しない。 唯一覗く、リースの表情を通して、間接的な形でしか―― リース: こんな壺に入れて…早く出しなさい! … …ひゃっ! 啖呵を切ったリースだったが、そのすぐ後に可愛らしい声を上げた。 くすぐったそうな表情から察するに、中で、何かが触れたのか―― しかし壺を設置する際、内部に何かを入れたとの記録はない。 もがくうち、肌に壺の内側の表面が当たったとでもいうのだろうか? リース: う…く…やめ… そんなところ…! ひ、ぁあ…っ! がくん、とリースの頭が揺れた。中で激しく動いているらしい。 巨大な壺はそれでもびくりともせず、彼女を呑み込み続けている。 何かに耐えようと、ぐっと噛み締めた唇、紅潮した頬は、 既に内部にて、彼女の尊厳が汚されつつあることを窺わせた。 リースを壺に入れたダークプリーストは、特に変わった様子もない。 それだけ、リースのころころ変わる表情が、不自然極まりないのだ。 彼女の表情は、驚愕と羞恥から、諦念を帯びたものとなっていく。 まるで手品のように、彼女の純潔は壺の中より奪われたらしい―― *【種付け】 リース: やめっ…! あっ、あ、くぅ…! すっぽりと壺に呑まれ表情だけしか外界に見せないリースを相手に、 ダークプリーストはどうやら、交配をやってのけているらしい。 その手段、中で起きている事象の一切はただわからぬままで、 彼らが他種族と容易に交流しない理由は、ここにあるのだろう。 言葉にならない、ぱくぱくとした唇の動き、千切れた吐息の塊。 それと頬の赤みを鑑みれば、内部で彼女がされていることの、 その一端を想像することはできる。だがその仮説を立てると、 どのようにして、の部分が謎として大きく立ち上がってくるのだ。 リース: っ…むね、 さわらない、でぇ…っ…! 興味深い一言だ。壺の内部の何かが、彼女の乳房に触れている。 その巧拙はともかく、身動きが十分に取れない状態では、 視認もできない体に与えられる刺激は、より強く感じるだろう。 ――ダークプリースト自身は、リースのいる壺の外にいるのに。 雌の性器以外の箇所に触れ、性感を高めてから交配すること自体は、 知性の有無に関わらず、そう珍しくもない事例であろう。 彼らがそうしたとしても、一向に不思議ではない――のだが、 どうやらリースのいる壺の中は、常識の通らぬ空間のようだ。 愛撫らしき何かをされ終えたリースは、ぐったりと息も荒い。 その様子は、交尾を終えた人間の雌の姿とまるきり同じである。 この交配期間中、彼女は壺の中に閉じ込められ続ける予定だ。 ダークプリースト流の、雌を堕とす手管の一環として。 *【妊娠初期】 分厚い壺の外壁によって中の動き、音を探るのは困難であるものの、 リースの声に混じって、うっすらと聞こえる音を探ることはできる。 荒い呼吸の合間合間に、よく耳を傾けると――水の、音? 粘性の強い液体の詰まった浅い窪みを、掻き回すような音がする。 リース: やらぁ… そこばっか、さわらない、でぇ…っ! リースの懇願とは裏腹に、漏れ聞こえる水音は段々と早くなっていて、 ずるり、と唾を呑み込みながら彼女が背を逸らせると、途絶える。 その次に響くのは、皮膚と皮膚の擦れるような音―― 硬い何かが、何者かの指にて弾かれ、摘ままれるような雰囲気だ。 リースは瞳をぎゅっと小さくし、びくびくと痙攣しながら震える。 強制的に与えられた刺激で、絶頂させられた姿であろうか。 先ほどの水音と合わせて考えれば、どこへの刺激かわかりそうだ。 さらにまた、同じか、近い場所を責められているらしく―― リース: いぃ…ぁ、あ――っ! う、ぁあぁ…っ…! 大粒の汗がぶわりと額に浮き、口の端からこぼれる泡、それに涙。 休ませてももらえないらしく、快楽が許容量を超えているようだ。 がくがくと体が震えるも、膝を折ることは許されず、頭も出たまま。 子供のように泣きながら、ひたすら与えらえる刺激に耐えている。 第三者の我々が分析できぬ以上、彼女が全貌を知ることもなく、 いつ、どこにくるかわからぬ刺激に怯えながら囚われるしかない。 腹部に関する言及の見られない以上、まだ先ではあるだろうが―― 己の胎がいつの間にか埋まっていたら、どんな反応をするのだろう? *【妊娠後期】 リース: うっ、ぐぅ…っ! たた、くなぁ…! 壺の外にも響く、ぱしん、ぱしんと空気の爆ぜる大きな音。 何かしらの液体が、リースの腹部――それもおそらく大きく張ったものに、 べったりと塗りたくられた上で、そこを叩かれているのだろう。 音がするたびに、リースはぐっと歯を食いしばって目を丸くする。 敏感な部位への執拗な責めはそのままに、種類が増えた形だ。 腹部への平手打ちは、リースが快楽によって呆けた時を見計らい、 彼女の意識を現実に引き戻すために行われているようである。 そして覚醒した意識をまた、ゆっくりと融かしていく―― リース: はぁ、はぁ…っ、ぁあ… やすませ、てっ…くだ、さい… …ひぎっ…! 生意気にも口答えしたリースは、再び全身を弄くり回されるだろう。 おそらく乳首も陰核も、悲惨なほどに赤く勃起させられて、 そこを執拗に捻られ、摘ままれ、齧られて――といったところか? 表情をころころ変えながら、リースは何度も絶頂に達していた。 リース: やめて…ください… おな、か…いたいん、です… リースの様子からは、彼女が妊娠後期であることが読み取れる。 交配実験の開始時期から逆算しても、おそらくこの予想は正しい。 出産後の後処理まで、壺を片付けないという計画書からすれば、 彼女はこの壺の中に、その胎の仔を産むことになるのだろう… *【出産】 責めの頻度が落ちたのは、リースが推定出産日を迎えた頃だ。 これまでの激しい陰部への干渉や腹部への殴打は鳴りを潜め、 彼女の胎を労わるような、ねっとりとしたものになったらしい。 与えられていた刺激が弱まると――また、リースの表情は変わる。 リース: くっ、うぅ… やだぁ、そっちじゃ、なくてぇ…! もどかしさが顔に表れ、より強い快楽を求める雌の表情に。 それでもダークプリーストは焦らしに焦らし、決定打を与えない。 彼女が直に出産を迎えることを、当然彼は把握しているのだから、 そんな大事な体の女に、以前のような激しい手段を取るわけもなく。 リース: あっ、あぁ…! う、うま、れっ…! 丹念にほぐされた膣口は、お産を実に速やかに終えるのだろう。 リースの表情は内側からの激痛に耐えるような苦悶のそれではなくて、 股間からの、新たな刺激を噛み締めるような悦びを纏っている。 壺の中で立ちながらでも、出産は十分にやり遂げられるに違いない。 リース: …ふっ、う、うぅ…! ちがっうぅ…そっち、おしりぃい…っ! リースの目は、思いがけぬ刺激に見開かれた。干渉があったのだろう。 それは彼女の求めていた側でなく、後ろの、出産に関係のない穴に―― 発露が難航している場合、反対側の穴を責めることで出産を促す手法、 所謂お迎え棒、というものがあるとは聞くが――それをされているのか。 出産の方に向いていた意識を別の方向に逸らされている最中にも、 彼女の膣口からは、ダークプリーストとの仔が産まれ出でようとしている。 母胎の負担を減らすためなのか――虜にさせるためなのかはさておき、 彼の狙いは、おおよそ思い通りだった、と判断してよいだろう。 *【出産♀】 リース: ――っ\I[122]\I[122] あっ、あ――\I[122]\I[122]\I[122] 無事に出産を終えた“ご褒美”とでもいうのだろうか。 リースの声は蕩けきり、我慢させられ続けた刺激を、存分に味わっている。 その声があまりにうるさくて、壺の中の音は聞き取りにくいものの、 うっすらと、甲高い鳴き声が内壁に反射しているように思われた。 壺の中にひり出された仔は、最終的に母体と一緒に取り出されるらしく、 ダークプリーストが呪文を唱えると、リースの首はするりと壺の中へ。 彼女の体勢をずっと固定していた、拘束具のようなものが外れたようだ。 リースの全身が引きずり出されると、次はいよいよ赤子の番―― リース: …? なに…? 壺の中を覗いたままじっと固まっている亜人。リースもまた困惑する。 産むまでに何か問題があったわけでもない――そう考えているのだろう。 ダークプリーストはやや険しい表情をし、懐から壺を取り出した。 彼の乗るものより遥かに小さい、子供か赤子のためのもの。 それを持ったまま壺の中に入り――彼がその腕に抱いていたのは、 確かに赤茶けた肌、亜人の血を引くと一目でわかる新生児。 元気そうな産声が、父親の背中越しにも聞こえてくる――が。 それはダークプリーストというより、限りなく人間の子に近かった。 彼の想定では、自分にそっくりな姿をしているはずだったそれは、 リースの血の方を色濃く受け継いだ、半人半亜人の女児である。 壺の上に乗せられた赤子は、ふよふよと宙を漂いながら、 飼育員たちの元へ誘導され、檻の中より出ていった。 最後の最後、産まれ出でた赤子の姿こそ予想を裏切りはしたものの、 彼は自分たちのやり方で、リースを孕ませることには成功したのだ。 けれど――当初からの仔を引き取る要望は、おそらく履行されない。 その存在をどちらの側とも見定めきれぬ、苦渋の表情からするに。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪サイクロプス≫ *【破瓜】 檻へ体を曲げて窮屈そうに入ってきた亜人は、その単眼にてリースを見た。 山岳地帯に棲むサイクロプス――見ての通りの強靭な肉体を持つ。 数歩ごとに、どしん、どしんと床が揺れ、壁の鎖がうるさく跳ねる。 人間の数倍はあろうかという体躯、牢が狭くなったようにも思えた。 そして無造作にリースの腕を掴むと、彼女の全身をひょいと持ち上げ、 子供が掌中にて人形を握るのと同じ要領で、その全身を検めた。 見かけによらず、彼らは理性的で他者への思いやりを持つ種族だが―― 何分、サイクロプスの尺度でものを考えてしまいがちなところがある。 リース: このっ…! はなしな、さいっ…! リースがじたばたと手足を動かしてもがいても、全く抜け出ることは叶わず、 却って手のひらの上でころころと、おもちゃのように転がされるだけ。 リースの胴に太いその指が一本乗せられているだけで、身動きが取れない。 しばらくすると、亜人はリースを掴んだまま拳を下に―― リース: ひっ…! あ…! 彼我の体格差は歴然――しかし雌雄、することは決まっている。 リースの眼前には、己の太腿と同じ太さの亜人の性器がそそり立っていた。 恐怖に打ち震える彼女を、サイクロプスは軽々と運び――一気に貫いた。 殺人的な抽挿が、めきめきとリースの股間を破壊していく。 リース: ごぎっ…! あがぁ…っっ! 股関節が外される激烈な痛みの前には、破瓜の痛みなど些事である。 これから先、この太さに耐え、その仔を産まねばならぬのだから。 だが現状、リースの頭の中はそんな想像をするだけの余裕などない。 内臓ごと、押し潰されて死んでしまいそうな苦痛の中にあっては。 *【種付け】 人間と交配可能な亜人の中でも、サイクロプスは最も巨大な種だ。 身長差は数倍にものぼり、体重差や膂力差はさらに隔絶している。 これが雌のサイクロプスと雄の人間なら、問題は起きにくいのだが、 雄のサイクロプスと雌の人間の場合、一体何が起きるかというと―― リース: っ、が、ぁぁあああ…! ざげ、ざげるぅううっ…! 許容量を遥かに超えた直径と長さのものを、強引にねじ込まれ―― 自分の身長ほどの落差を抽挿によってぶんぶん振り回されながら、 破綻寸前の股関節と、圧迫される内臓の痛みに耐えねばならなくなる。 交配性交確率は、雌雄が逆の場合と比べて著しく落ちる… 彼らは特段、人間を害そうと思っているわけではない。 ただ種としての違いに対して、あまりに無頓着なのである。 いちどつがいとなり――子宝に恵まれればよき父、母となろうが、 その最初の第一歩で、相手が挫ける可能性が見えていないのだ。 リース: ごほっ… か、ひゅ――がはっ…! それでもリースの体は頑丈だ。これだけの痛みの中、意識を手放さない。 そうなるように、特別に保護を掛けているのだから当然のこと。 サイクロプスの性器が半分押し込まれるごとに血泡を噴き、 半分引き抜かれるごとにふいごのように空気を吸い込む。 しかしこの程度で壊れていては、これから先に耐えられまい。 サイクロプスとの混血児は、人間の赤子よりよほど巨大で、 今挿入されているものよりも、ずっと大きく育つのだから。 リースはぶくぶくと泡の中、助けを求めるような言葉でもがいた―― *【妊娠初期】 サイクロプス同士の交配において、相手が妊娠中であろうと、 夫婦の営みとして、ごく軽い行為を行うのは珍しくない。 そもそも彼らの体は規格外に大きく、頑丈なのだから。 しかしそれを、他種との異種交配事例に当てはめると―― リース: づぶっ、れるぅ…! おなか、つぶ、れ…! がっ、は――! 交配実験開始当初よりは、いくらか彼の性器に慣らされたものの、 やはりリースの体には、サイクロプスのものは凶悪にすぎた。 彼はただ、ごく軽い抽挿で彼女の欲求を解消しているつもりなのだが、 その道具が、相手の穴と適合するかどうかに対し無神経だ。 傍から見る分には、抽挿の速度や上下運動の幅、継続時間など、 彼なりの配慮――といっても無意味だが――が、あることはある。 根本的に――いや、物理的に受け入れの問題を抱えた相手に、 それらの工夫が、いったい何の効果をもたらすというのだろうか。 リース: やべっ、やべ、て――! ぐぶ、うぇえ…! リースにとっては、内臓ごと磨り潰される抽挿は耐え難い苦痛。 まだ胎児が十分に大きくなっていない現状でさえこうなのだから、 より重く、大きくなっていけば――負担は倍々に増えていくだろう。 種族が逆であれば、なんらの問題も生じないというのに。 膣口は、サイクロプスの胎児を通せるだけにはほぐされていないが、 それも遠からず、十二分な広さに拡張されてしまうに違いない。 彼はただ熱心に、自分と交わり――子を孕んだ雌に対して、 サイクロプス流の礼儀を、尽くしているだけにすぎぬのだから。 *【妊娠後期】 出産時期が近づくと、リースの腹部は痛々しいほどに大きく張り出した。 限界まで張り詰めた皮膚にはびっしりと妊娠線が出てしまい、 いかにサイクロプスとの混血が困難であるかを物語っている。 それでも、彼はリースの性器を“ほぐす”のをやめはしない。 リース: …! っあ、げほっ―― リースが悲鳴を上げる頻度が落ち、“大人しく”なったからだろう。 もっともこれは、防衛反応として意識を強制的に落としているだけ。 彼女に施された魔術的調整がなければ、とっくに死んでいたろうが。 胎児に圧迫され、狭くなった膣道を穿ち貫かれる苦痛の前には。 胎動も、子宮の形が皮膚越しにわかるほどに大きく、激しい。 どん、と赤子が一蹴りすれば、腹部ごとリースが跳ね上がる。 内と外から、引き延ばされて薄くなった腹の皮を責められていては、 こうして思考を手放さぬ限り、とても正気ではいられまい。 リース: ぁ…あぁ… …っぐ、うぅ…! ころじ…てっ、ぇぇ…! 死を希うかすれ声は、無論、サイクロプスの耳に届きはしない。 後は仔を産むだけなのだから、どうして命を奪う必要が? 我が子の力強い動きに、無事に産まれる想像こそすれども、 その過程で相手が死ぬはずもないと、そう信じているのだろう。 実際、リースの股関節脱臼や出血などの副次的な要素を度外視して、 子宮の内部だけを診た場合――母子ともに健康そのものである。 産道がしっかり担保された今、出産行為にも不安材料はない。 苦痛に摩耗したリースの心身がどうなるかは、また別問題だが―― *【出産】 巨大な己の子宮に押し潰されるような格好で仰向けになったリースは、 元気いっぱいに出口を求めて暴れる胎児の動きに翻弄されている。 少し動かれるだけで内側から体勢を崩されるような有様では、 呼吸も心構えも整えてはいられない。呻き声だけがする。 リース: うご、くなぁ…っ! うめ、ない、から…ぁ! 何度も息を吐きながら、胎児が静かになるのを待ち――いきむ。 いくら産道を大きく広げられた後といえど、簡単な話ではない。 羊水は既に隙間を通ってこぼれ出ているのに、肝心の中身が―― 狭い子宮内から自由になりたいと、まだまだ動きを止めないのだ。 リース: ふっ…! うぅっ…! っく、ぁ、あ…っ! 腹圧だけで子宮内の暴君に対抗するのは、相当な難事である。 少し押し出しては止まり、再び機を窺っていきみ、 気の遠くなるような繰り返しの中、それでも出産は前に進む。 ひたすら歯を食いしばり、激痛に脳の血管が切れそうな中――、 やっとの思いで、発露が始まり――そしてすぐに引っ込む。 ここからがまだ長いのだ。リースは絶望的な感情に包まれていく。 頭が抜けたところで肩、胴と太い部位がいくつも残っていて、 赤子は外の光を感じてか、再び体をもぞもぞと動かしだす。 ようやく足までたどり着いた頃には、リースの意識も途切れかけ。 最後の一押しは、ほとんど無意識で行われていたようなものだ。 ずるん、と赤子の抜けたあとには、ぽっかりと開いた無残な肉洞が。 それを悲しむだけの余裕は、今のリースには残っていない。 *【出産♀】 赤子の姿を改めて見ると、人間の新生児よりずっと大きな体躯だけでなく、 父親譲りの角が一本、額に生えているうえに、その角からやや下に、 大きな瞳が一つ、これも父親由来であろうものがくっついていた。 しかし――この娘には、それとは別に一対の蒼い瞳も。 リース: … 虚ろな瞳で天井を向くリースの姿を、赤子の第三の瞳がじっと見る。 その眼には、通常の視覚器官に収まらない力が篭められているようにも。 通常の眼は、新生児らしくほとんど機能していないようなのに対し、 母を見据える瞳だけは、その常識の中に入らない風でもあった。 飼育員の手が赤子の額の前に掛かると、その異様な雰囲気は途絶え、 まるで普通の――といっても大きいが――新生児のように幼く、無垢に。 彼女自身、自分の持つ異例の感覚器の力を理解してはおるまい。 常人には見えぬ何かと共に、この赤子は育つのであろうか? リース: ぁ… うぁ… リースがうわ言を発し、意識を取り戻す直前、また赤子は母を見た。 彼女が体を起こす前兆を、誰よりも先に感知した――あるいは“知った”。 研究員と飼育員の誰も、リースの復帰を予測できてはいなかったのだから、 単なる母を求める本能の成せる業、と結論づけるわけにはいかない。 そして自ら、リースの手がふらふらと不随意に振られるその下に潜り、 自分はここにいるぞ、と伝えているようにも――穿ちすぎだろうか? 赤子を連れていこうとする研究員の訪れもまた、早くに察知され、 実におとなしくその懐に収まるのを見るに――考えすぎとも思えない。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪ゴースト≫ *【破瓜】 見ての通り名の通り、ゴーストは実体を持たない霊的な存在である。 現世に直接干渉する能力は失われて久しいが、他の物体を介すことで、 間接的に、己の存在を生者に対し強く印象付けようとする。 それは時に、怖がらせるためであり――復讐や、八つ当たりであったり。 リース: っ… 有効打を持ちえないのは、生身で素手のリースの側も同じことである。 幽霊のつるりとした無機質な貌に、無力な女への嘲笑が張り付いていた。 そしてそのまま――彼の姿は融けるように消えてしまう。 ひやりとした空気は、まだゴーストがそこにいるのを感じさせる。 不気味な気配が去らぬまま、相手が消えたことにリースは警戒するも、 霊視の才能のない彼女が、姿を隠した霊体を捉えられるわけもない。 するとその背後、意識の外側にうっすらと半透明の姿が覗いた。 ゴーストの両手はリースの肩を抱くように浮き、胴体は首裏へ―― リース: あ…! なに…!? 幽霊に取りつかれたリースはがっくりとへたり込み、左手を胸へ、 右手は股間へと、何かに操られたように動かし、自慰を始める。 彼女の体の周りには、うすぼんやりと青い霊光が輝いていて、 肉体の支配権がゴースト側に握られていることを示唆していた。 リース: っく… やめっ…! リース自身の手が、指が、本人の意思を無視して彼女を穢している。 それも撫でるだけの軽いものではなく、激しさを伴って。 胸への刺激も、乳房を握ったり、乳首を潰したりと荒々しい。 中指を勢いよく股間にぐちゅぐちゅと突っ込んで掻き回すうち―― リース: い、いたっ…! そんな… リースの顔は痛みに引きつった。指の先には赤い液体が付着している。 性行為ではなく、自慰によって処女を喪失させられたのだ。 だがこれも、まだ始まりに過ぎない。子宮への道が通じた以上、 ゴーストが彼女の胎を――卵子を使うことも可能になったからだ。 *【種付け】 リース: あうう…っ…! くっ、あぁあ…! 牢の中にて一人、リースが自身の性器と胸を用いて激しく自慰をしている。 胸を鞠のように手の中で押し潰したり、乳首や陰核を捻ったりと、 自分の体を、とにかく痛めつけようとしているような有様だが―― 実際、これら一連の行為は、既に彼女の意志を離れたところにある。 少しく霊感のあるものならば、彼女の背後に浮かぶ半透明の霊体を、 その両手を糸繰り人形めいて操る二つの朧げな拳が見えるだろう。 幽霊はリース本人の体を道具として、その尊厳を貶めているのだ。 意識は奪わず、己の痴態を見せつけるというやり方で。 リース: ひっ、ぐぅうう…! ひゃめ、っ――! 親指から中指までを束ねて三本、およそ人間の男性器と同等の太さ。 それを挿入る限界まで、指の付け根を押し込むように中に沈める。 自身の指こそ使えども、操縦しているのが他者である以上は、 この行為は、限りなく男女の交合に近しいものであった。 ただ、これをリースの尊厳の否定のために行うほど幽霊も暇ではない。 リースの三つ指の先端に、ぼんやりと青い光が集まっている。 ゴーストの霊体の核となる部分――存在を規定する根源の箇所。 もしこれが、雌の卵子の中に取り込まれたとしたら? リース: なに、この、光…! やめ、ぁ…ぁあ… するん、と抵抗なく胎内に潜っていく光は、リースの体の奥底へ。 そして卵管の先にて眠る卵子を一つ掴むと、さらに、その中へ―― 怪しげな雰囲気に危機感を覚えても、もう“受精”は済んだ。 霊によって孕まされるという稀なる体験を、リースはすることになる… *【妊娠初期】 胎内にある“受精卵”の中では、霊核が精子と同じ働きをし、 着々と細胞分裂を始めている――ぼんやりと薄く光りながら。 今はまだ、目に見える膨らみもなく、リースの自覚もないため、 一部の霊視技能持ちの研究員からの報告に頼ってはいるが。 リース: くっ、あうう…っ…! っあ――っっ! 執拗な指での責め――外見上は彼女自身の自慰に過ぎないものが、 ゴーストの取りついている限り、不意に始まってひたすら続く。 食事をしようと餌皿を持ち上げた直後、眠るために転がった後―― いつ、自分の指が乳首や性器を触り始めるか、彼女にはわからない。 しかし、あくまで幽霊からの干渉は、自慰行為だけに留まっている。 生者の肉体を奪った霊は、時に所有権ごと奪おうとしだしたり、 自分で自分の首を絞めるなどの自傷行為に走ることもあるのだが。 その点では彼の態度は“紳士的”なうちに入るのだろう。 リース: っは、ぁ――っ! ぁ、いった、ばっかり…っ! やめ―― リース自身が絶頂を迎えても、指は止まらず中を掻き回し、胸を揉む。 むしろ彼女が限界を訴えるほど、その責めは苛烈になっていく。 指が意識との乖離にてびくびくと痙攣を点告げている状態さえ、 一向に蕾は開かず、膣の奥までを擦り上げているのである。 リースが絶頂するごとに、胎内の受精卵の輝きは強くなっていく。 快楽を糧に霊体は成長し、物質的な卵子との結合を強めるのだ。 繰り返し絶頂すれば、その分胎児が育ってしまうのだが―― それを止める権限すら、今の彼女には与えられていない。 *【妊娠後期】 リースの子宮を大きく膨らませた“それ”は物質と霊体の境界、 半ば生物にして半ば幽霊の、中間的な存在である。 霊核由来のぼんやりとした光は、臨月大になるに合わせて強く、 リース自身にも視認できるほどの、はっきりした印として輝く。 ただ自分の指で自慰をしていただけで、ここまで胎が大きく―― この事実は、リースの常識を大きく超えたところにあった。 思い当たる原因だけがすっぽりと抜け落ちたまま、体は変わる。 じわじわと、自分の体が作り変えられていく恐怖―― リース: やだぁ… こわい、こわいの… 股間を触るために指が下に降りれば、自然と突き出た腹をなぞるし、 胸をもみくちゃにするうち、腹の上端に何度も手首がぶつかる。 触りたくない、直視したいものが、意識の中に飛び込んでくる―― その上最近は、操られた指がぷっくりした臍を爪の先で掻くようにも。 普段は折りたたまれて引っ込んでいる臍、それは十二分に敏感だ。 そこへの刺激もまた、定期的に、不随意にリースに送り込まれてくる。 どっしりと重い下腹を、愛おしそうに撫でる手つきも、そこに。 もっともこれもまた、ゴーストに操られてしているにすぎない。 リース: あぁ…動いてる… ごめん…ごめんね… 腹部の重さを実感させられるうち、自然と、己の子宮に宿るもの―― 赤子に対する母性が、リースの心の中には芽生え始めていた。 その肯定的な感情によって、彼女の精神の均衡は保たれている。 いつ破滅に傾くかもわからぬ、不安定な天秤の上に―― *【出産】 破水と陣痛こそあったものの、そもそもがこの世の存在ではない胎児。 それと母とを繋ぐ、肉の紐こそ彼女が自前でこしらえたものだが、 さて出産が始まれば、赤子はそれほど苦もなく排臨へとこぎつけた。 通常の胎児ならば、腕まり頭なりが産道のどこかに引っかかるものだが。 リース: ふっ… っく、うぅ…! 当初、リースの腹部にはぼんやりと小さな突起上のものが覗いていた。 その先端は五つに枝分かれし、うっすらとした爪の凹凸もある。 胎児の片手が、本来通るはずの産道から離れて母の腹をすり抜け、 ふわふわと宙に漂おうとしている兆しとわかったのは、その直後である。 このままでは赤子だけが体外に出て、紐がリースの胎内のどこか、 予測もできない位置に取り残される危険性があったために、 急遽、腹部周りだけに霊体封じの紋様を描いて対処することになった。 その下準備に、赤子を子宮に戻すのは随分な手間がかかったが―― リース: うぅっ… もう、すこしっ… 産道さえ通ってくれるなら、その過程でいくらか透過しても問題はない。 骨盤を開く手間も掛からないため、母体への負担も非常に軽い。、 青く今にも消えそうな霊体と、赤みの差した肉体とが入り混じり、 この存在が、実に儚いどっちつかずなものであることが見て取れる。 孕むまでの過程が異例なら、産むまでの過程もまた尋常とは違う。 その体重こそ、繰り返し意識はさせられていたが――まるで夢のよう。 しかし臍の緒と胎盤は、リースの妊娠が事実であるという何よりの証拠。 片付けられていくそれらを眺めながら、リースはぼんやり呆けていた。 *【出産♀】 産まれた赤子は臍の緒を切った瞬間、軛から解き放たれたように、 牢の中狭しと、縦横無尽に飛び回って、あわや壁に入り込む寸前。 かと思うと、急に霊体化が解けで新生児の肉体で床に落ちるので、 それを傷つけさせずに捕まえるまでに、実に騒がしく落ち着かない。 その様子を、リースは床にへたり込みながら見つめていた―― あれはいったい何なのだろう。私の子供?あの不思議な何かが? 自分が産んだ赤子というのに、まるっきり彼女の態度は他人事だ。 じんわりとした後陣痛はあるものの、それさえ不確かに遠く。 リース: あ… その鼻先に、ぼんやりと火の玉様に姿を変えた赤子が浮かんでいる。 うっすらとその中に覗くのは、金色の髪をした嬰児の姿だ。 現世と幽世のどちらの存在でもあり、どちらでもない―― 腹部に見える切られたばかりの臍の緒が、唯一の存在の証明だ。 リース: まって…! ふわりと離れていきそうな半人半霊の仔に、リースは手を差し伸べる。 無論、霊体化されれば素手で掴める道理もないのだが――赤子は、 その懐に自ら収まるように、少しずつ実体化しながら近づいた。 想像以上の軽さ――羽毛の詰まった枕より、さらに軽い。 自分で抱きとめてやらねば、今にもかき失せてしまいそうなそれを、 リースは必死に抱える。産着の中にも手がめり込み、見失い―― そして赤子の指は、いつしかリースの肌をしっかりと握っていた。 自らの寄る辺として、母の体をそこに見出したように… ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪ゾンビ≫ *【破瓜】 彼の身に意志はなく、突き動かすのは生者への妄執と怨念である。 朽ち果てた肌からは、ところどころに骨が覗くほどの穴が開いていて、 がさがさと乾いた皮膚の層の中を、無数の蛆が川のように泳いでいる。 それでもなお、崩れることがないのは、体に纏った魔力の膜のおかげだ。 リース: …っぐ、ごほっ…! く、さい…! 内臓や骨をこぼさないように包む膜はあくまで皮膚の代替物であって、 リースが感じたように、臭いや醜悪な見た目までを隠すものではない。 ほとんど腐肉と骨のつぎはぎのような外見をしているその屍は、 与えられた命令の通り動くだけ――リースを汚し、孕ませろ。 生前に比べて、筋肉量は虫と微生物に食われた分だけ減ったものの、 脳からの制御が外されているため、実質的な筋力は向上している。 指がちぎれそうになっても、決して相手を放すことはあり得ない。 リースの手首に掛けられた力は、想像を絶するほどのものであった。 リース: やだっ…! はなしてっ! ゾンビの股間――既に腐りきった男性器は、しかし十分に勃起している。 その先端が太腿に触れた瞬間、リースは言いようのない恐怖に囚われた。 固く、脈動する赤黒い肉の塊――だがそこに生気はない。血の熱もない。 ただ冷たい生肉を、股間に押し当てられているような思いだ。 屍は抵抗する彼女をしっかりと捕まえたまま、腰をぐっと押し込んだ。 自分の純潔が、生物ですらない腐りきった死体に奪われた―― 膣内に潜り込む、不気味な冷気にリースは不快感をあらわに、叫ぶ。 この先、その屍に孕まされるのだという絶望から目を背けるため―― *【種付け】 命を持たない生ける屍――ゾンビは、呼吸も、脈動も一切しない。 肺には虫が巣食い、溜まったガスが込み上げる自然現象によって、 その内側から、瘴気としか言いようのない澱んだ風が噴き上がる。 思わず、牢の外からでも鼻を覆いたくなるような不快な臭いだ。 リース: うぶっ… げ、うぉええ… それを至近距離で嗅がされているリースは、我々よりずっと大変だろう。 込み上げる嘔吐感を堪えながら――同じ臭いのする男性器が、 彼女の膣内に、ずっぷりとねじ込まれるという二重苦だ。 だがゾンビの握力は想像以上に強く、彼女は決して逃げられない。 体温の失せた性器は、生身のものと思えないほどの異物感を呼び、 半端に固く半端に柔らかなその感触が、なおさら気持ち悪い。 そしてそこにも、容赦なく蛆虫が湧いているというのに、 それごと胎内に掻きこむような抽挿をされているのだ。 リース: ぁあ… …なかで…うごいて…? ゾンビの体内からリースの胎内へと無理やり引っ越しさせられた虫は、 新しい環境がどんなものなのか、必死になって探り出そうとする。 その過程で、何十もの蛆がリースの膣内を這い回ることとなり、 女の神聖な場所を、下等な虫が這いずる悍ましさがそこに加わる。 射精、というよりは漏洩に近いような、勢いのない液の流れ込み。 その主の命が絶たれて久しく、精子もまた古く成り果てた―― と、いうわけでもない。彼の肉体にいまだ宿る無念、怨念は、 とっくに変質した精子に、十分な生殖能力を担保していたのだった。 *【妊娠初期】 腐った性器で生者の膣肉を穿つのは、彼が望んでのことではない。 思考能力の揮発した体の操縦者が、そうあれと命じただけだ。 ゆえにその抽挿には――雌を孕ませたいという本能が欠けている。 リースが既に妊娠しているかどうかを、判別する力もまた、ない。 リース: うっ…ぁ、おぇぇ…っ! やべ、んぐ、ぅう… 悪臭によって悪阻はより酷くなり、食餌中にもどすこともしばしば。 だが吐き気が最も強くなるのは、やはりこうして犯されている時。 それでも耐えるのは、彼女なりの矜持のつもりなのであろうか? 終わった途端に真っ青な顔で牢の隅に行っていれば、同じだろうに。 ゾンビの体は、もはや生前の――人間のそれとは違うもの。 破綻した骨格、筋組織、臓器周り――あらゆる不全を抱えた箇所を、 強引に魔力の袋の中に放り込んで人型を保たせているようなものだ。 体内に循環する一切のものもまた、人間の道理の外にある。 リース: やだぁ…っ…! だして、だしてぇ… 解放を求めるリースの声は、当然のこととして黙殺される。 する意味もなければ、今更解放して何が変わるというわけでもない。 彼女の胎内には、ゾンビの精子を受けて授かった仔がいて―― 蛆も入れぬ子宮の中で、母親の栄養を吸い続けているのだから。 自分がこのゾンビに孕まされているかも――との恐ろしい想像は、 脳裏をよぎるたびに、彼女に強烈な拒否感と嘔吐感をもたらす。 性器の中に充満する、押し潰された蛆の死骸を指で摘まみ出すごとに、 惨めさと虚しさが、リースの心を冷たく凍らせていくのだ―― *【妊娠後期】 普通の雄ならば、リースほど外見の整った雌を孕ませるのに成功すれば、 大きな満足と征服欲の充足に預かりそうなものだが――生憎と、 この生ける屍は、自分の精が相手の子宮に根付いたことも、 あるいは、リースと交尾できること自体も、欠片も喜んでいない。 リース: うぁ… おな、か… やめ… ただ冷たく、折れかけ、千切れそうな性器を彼女の膣内に、 妊娠前とまったく変わらぬ速度で押し込み、掘り穿つだけ。 なぜなら、そう命令されているから。それ以外を考えられぬから。 一個の生物ではなく、肉と骨の継ぎ接ぎからくりに過ぎないから。 腐った精子が、今なお若く活気に満ち溢れる雌の卵子を貫き、 一塊の存在として定着したこと自体驚くべきことである。 リース自身は、このような呪われた生命を決して喜ぶまい。 どんな肉塊が己の子宮にいるか、わかったものではないから。 リース たす、けてぇ… おかあ、さま… 吐き気に埋められていく思考、朦朧とした頭は亡き母を偲ぶ。 その母と――父とに顔向けできるか?腐った精にて孕んだなどと。 王家の末裔に、そんな存在が一時でも残るであろうことを―― 両親の面影が濃くなると、罪悪感はますます強くなっていく。 膣内を蠢く蛆は、機械的な抽挿にぐちゃぐちゃに潰され押し込まれ、 赤子の眠る子宮の手前にすら辿り着けず、その命を散らしてしまう。 無為な性交の中で、さらに無意味に浪費される虫けらたちは、 母にも望まれぬ仔の存在を、いったいそう思うのだろうか―― *【出産】 死せりといえど、ゾンビの元は人間。精子の構造も限りなく近い。 それが人間の卵子と一つになったのだから、胎児の形状もほぼ人間だ。 だが人間の赤子がそのまま産まれてくるなど、そんな甘い話もない。 腐り、欠けた遺伝子を魔力にて補完する以上、完全に同一ではないのだ。 その影響は、まさにこの出産直前になって、極めて強く現れる。 重量と張りこそ、通常の臨月胎と相違ない水準であったものの、 胎動が極めて微弱、その頻度も少ないのは観察の時点で明らかである。 そして胎動だけでなく、陣痛もまた――通常のそれとは違った。 リース: うぐっ… はや、くぅ…! で、てぇ… 破水は通常通り、だが赤子が胎内から出てくる様子が一向にない。 すわ死産か、そう疑ってしまうほどに弱く、だが確実にそこにいる。 胎内の様子を魔術で探っても、死んでいると断言することができず、 辛うじて身じろぐその姿から、命のあることを判別するほかない。 そんな調子だから、リースの体は排出のために陣痛を感じはするものの、 赤子自身が、開かれた産道を通って協力する様子が見られないため、 子宮内に居座ったその塊を、強引に絞り出すしかないのである。 段々とリースの息は荒く、余裕のないものへと変わっていくが―― リース: ぎっ、ぃ…っ! ひっか、かって…っ! 凹凸のある人間の赤子はつるりとした卵を産むようにはいかない。 手も足もあれば、頭と肩の付け根にだってくびれがある。 赤子の体温は、通常の人間のそれとはずっと低く、冷たく―― 母親の胎内の温度でようやく、室温よりは温かい程度になった。 自分が産んでいるものが、生きているのか死んでいるのか―― そもそもこれは、生物なのか、命を持たぬ肉塊であるのか? 出産が進むにつれて、不安はより強く、リースの心をかき乱す。 赤子という言葉が適切かもわからぬ、青ざめた肌の仔を見て。 *【出産♀】 人間と元人間、ゾンビの間に成立した赤子は人間同士のそれとは違い、 ゾンビ側の青ざめた肌を保有した、見るからに不健康な外見であった。 全身に穴が開いたり、蛆がたかったりこそしてはいないものの、 その体温はひんやりと、変温動物かと思わせるほどに、冷たい。 これも欠けた肉体を魔力で補完して動くゾンビに由来するもので、 人間として通常持つべき体温や脈拍が、すっかり失われているのだ。 だが死んでいるのか、何かしらの内臓疾患を持っているかといえば、 決してそう断言できないだけの、不思議な行動力をも持っている。 リース: あ、いたっ… このこ、噛んでる…! 新生児にも関わらず、その口中には乳歯が上下ともに何本もある。 術師の管制下から離れたゾンビは、手あたり次第有機物に噛みつくが、 その際、最も酷使される部位は歯だ。その影響もあるのだろうか? 赤子とは思えぬほどの咬合力は、特筆すべき点といえよう。 リースの手が、ひんやり冷えた赤子の肌に触れると、熱を求めてか、 乱暴に乳房にかじりついていた赤子の動きが、やや大人しくなった。 その青い皮膚の下には、確かに赤い血が流れてはいるものの、 心臓の動きはゆったりと、指でも測れぬほどに穏やかで小さい。 リース: いきてる…よね…? 懐の中にてむすっとした顔の娘に、リースは困った表情を向けた。 自身の常識に照らし合わせるなら、それを命と呼ぶのは難しかろう。 だが現実としてそこにいるものを、拒絶することもまたできず。 それが特有の時間を持った、別種の存在と納得するしかないのであった。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪ナバール兵≫ *【破瓜】 リース: 貴方は…! 牢から入ってきた男をみるなり、リースは敵意をあらわにした。 自身の故郷を滅ぼした、砂漠の民、ナバールの兵士の装いであったからだ。 彼女にとってはいくら憎んでもまだ足りない、不倶戴天の存在だったろう。 しかし憎悪の眼を向けるリースに対し、男は冷ややか――いや、静かだ。 リース: 私を嗤いに来たのですね…! 汚されても…心まではっ…! どれだけリースが怒りを見せても、男は何一つ言葉を発しなかった。 そして牢の外からもう一人、同じ出で立ちの男が入ってくるものの、 二人して、リースの言動になんらの反応を見せるでもなく、黙りこくる。 無言のまま、男たちはリースの前後両側を挟むように手足を押さえつけ―― リース: やめっ…む、ぐっ…! リースの口と性器の両方に、砂漠の民特有の浅黒い性器がねじ込まれる。 固く反り立ち、目の前の雌を穢すための形状をしてはいるものの、 彼らはリースの方を見ていない。淡々と、腰をうごかしているだけ。 その覆面の下、ちらり覗いた瞳を見て、リースは恐怖した。 視線は胡乱、どこを向いているかもわからず焦点も合わぬ、人形の眼だ。 彼らは今や生きる傀儡として、支配者たる美獣の命令に従う道具。 今自分がどこにいるか、何をしているかも理解してはいない。 先ほどのリースの言葉も、壁に向けているのとまったく同じなのだ。 どこまでいっても独り相撲。恨みを向けたところで誰にも届かない。 処女を奪われたこの怒りさえ、彼らに投げかけても無駄というもの。 どっと疲労感が湧き出て、リースの体から力を奪っていってしまう。 こんな木偶風情に犯され、孕まされるであろう自分を想像して―― *【種付け】 砂漠の民ナバールの兵士二人が、彼らの滅ぼした国の王女を犯す―― 一部の好事家の好む筋書きだろう。勝者の仔を、敗者が孕む光景は。 しかし、リースを犯している男たちの表情は能面のように固く、 相手が美女であるという光栄に、全く何の感慨も抱かぬ様子。 リース: うぼっ… ぐ、ぶ、むぅ…っ! その割には、喉の奥までをみっちりと竿で埋めて気道でしごき上げ、 性器もまた、太く硬い雄の槍で散々に突き回して苦しめている、と、 行為と表情、肉体と精神の乖離がはっきり見て取れるほどに激しい。 それも当然だ。彼らの意志は、もうとっくに擦り減っているのだから。 呼吸を潰される息苦しさに、反射的にリースは目の前の男の性器を噛む。 だが男は、眉一つさえしかめず、流れる血すらも気にしない。 肉体と断絶された精神は、股間への痛みさえも処理できないのだ。 彼らは美獣から入力された信号がなければ動かぬ、機械と同じ―― リース: ぐっ、ぶ…! それは後ろ側の――性器を犯している男に関しても同じこと。 彼はただ、淡々と己の竿にてリースを犯し、孕ませるという命令に沿い、 無感動に腰を振っているに過ぎない。射精に導くための刺激として、 膣内の締まりを利用しているだけで、そこに悦びなどもない。 男二人がかりで抑え込まれては、元から抵抗の余地もないのだが、 そこに、本人たちの意志さえ不在なら、抵抗する意味さえ失われる。 リースの頬を伝う涙は、あるいは彼らに向けてのものかもしれないが―― その哀れな木偶は彼女を孕ませることに、一切の躊躇などない… *【妊娠初期】 リースに子を産ませろ――その命令が与えられている以上は、 男たちはその通りに動くだけの人形で、自らやめることはない。 妊娠しているかの判断能力を有さないだけでなく、仮に目視しても、 そこで中断する権限も剥奪されているのだから、どうにもならない。 リース: …っ、うぐ…! げほっ、やめ… 今はまだ、膨らみが目立つほどではなく、自覚症状もないものの、 これが臨月に達したとしても、彼らの行動は変わるまい。 機械的に、何の手心も加えず、ひたすらにリースを犯し続ける―― 最近は彼女も、この流れに抗う無意味さを理解し始めたようだ。 交配実験が始まってから、この牢内にはリースと男二人がいる。 自由時間に体を休められるリースとは違い、男たちは休まない。 交尾開始時刻までは直立不動で、体力が限界に達した時だけ、 どさりと床に倒れ込み、死んだように眠りにつく以外、何も。 リース: むり、っぐ…! もう、やすま、せぇ… 休息の懇願は喉の奥に流し込まれる精液によって押し込まれてしまう。 尻は繰り返し叩きつけられる男の腰によって真っ赤に腫れて、 リースの目の下の隈は、この交配実験が過酷であることを示していた。 そしてこの回が終われば――男たちもまた、倒れ込んで気絶する。 自らの生命維持に必要な行動さえ、今の彼らには自分で行えない。 食事もリースが取る分を最優先に、自分たちの飢えを度外視していて、 己の命さえも、完全に他人事のように切り離されているようだった。 ただ酷使され、いつか使い潰される道具に、もはや安息の日はない―― *【妊娠後期】 リースの腹部はぼってりと重々しく前方に突き出て、臨月大に育っている。 彼女の妊娠は、こうして見ている飼育員や研究員だけでなく、 リース自身にも、体型と体調の変化で実感されているところだ。 ただ彼女を孕ませた男たちだけは、それを呑み込まないようで―― リース: うぁ、あ…! うぶっ、むぐ…! 安静にせねばならぬ妊婦を、彼らは激しく犯し、苦しめ続ける。 浅くなった膣道をごりごりほじくられるのなど、まだ軽い方だ。 口の中を、常に男の性器がいっぱいに埋めて呼吸を阻害する―― 苦悶の声が、何度も何度もリースの喉から漏れ出していた。 産ませろ、との命はあったが、妊娠後にやめろ、とは言われていない。 停止するための条件が、それこそ出産の瞬間にしか成立しないのだ。 それを薄々、リースも感じてはいる――彼らに、自由はないと。 自分を汚すという役割を与えられただけの、被害者なのだと。 リース: まっ、てぇ… むぐっ… おええ… 胃の中に落ちてくる生臭い精液。何度呑まされても慣れぬもの。 膣内にもだが――彼らはそれを出したくて出しているわけではない。 彼らの道具としての価値は、もはや雄であるという点以外にない。 かつては義賊として、忍として働いた男たちの末路である。 胎内に流れ込む、熱い迸り――既に子宮に先客がいて、無駄なだけの。 要不要の判断もできず、リースが産気づいた時に、彼らは解放される。 だがそれは、この交配実験という役目を解かれるだけで、自由はない。 またどこか別の戦場に送られて、命を落とすまで永遠に―― *【出産】 リース: ふっ、く、ぅう… ひっ…ふぅぅ―― リースの股間から半透明の――精液の混じった羊水が噴き出し始めると、 男たちはそれまで一分一秒とずれることのなかった交尾の時間にも、 彼女を犯し始めることはなく、じっと、直立不動の体勢でいる。 犯し、孕ませろの次、産ませろ、の状態に移行したからである。 だからといって、特別彼らはリースの出産を助けるようなことはない。 そういた命令が与えられていないのがその大きな理由ではあるが、 そもそも元が女っ気のない男所帯の出、出産介助の知識など。 万が一あったところで、それを自己判断で適用などできないが。 リース: うっ… うぅうう…! 精子も卵子も通常の人間同士のもの、胎児もまた同じ。 出産において、特異な形状や体質による弊害のあるでもなし、 おおよそごく普通の、人間の赤子の出産の範疇内の出来事。 今更そこに、なんらの懸念事項もあるはずもない。 父親由来の――といってもどちらの男のものかまではわからないが、 赤子の肌は、見るからに浅黒く、母との人種の違いを鮮明にする。 その一方、頭頂部の髪は艶々とした美しい金色をしていて、 これがリース由来であることは、わざわざ強調するまでもない。 リース: っ…! うま、れっ…! 体の大部分が抜けて、出産も峠を過ぎた頃になると、 男たちはがっくりと床に倒れ伏し、ぴくりとも動かなくなった。 その生死を気にするものは、誰もいない。彼ら自身さえも―― ただ赤子だけが、その生命を受け継いだように元気であった。 *【出産♀】 リース: … あ…! 子を産み終えて、ようやく周囲を見渡す余裕のできたリースの視界に、 ぐったりと倒れた男たちの姿が見えた。そしてその様子を見ただけで、 彼らの肉体が致命的に破壊され、もはや助かるべくもないことを知る。 口の端からは、まだ乾いていない鮮血がたらりと、赤く―― 長期間、休みらしい休みもなくひたすら種付けをした結果の、死。 それはまるで、雄の蜂が辿る最期と重なるような光景であった。 リースの胎内に赤子を残し、己らの命を全て使い果たした上で―― 肉体の使用限界に従い、何一つ残さず死んでしまったのだ。 リース: かわいそうに… 客観的に見れば、体を汚され子を孕まされ、産まされたリースの方が、 よほど悲惨で、救いのない状態であったのは間違いないことだ。 しかしリースは、思わず彼らへの哀悼の意を呟かずにはいられなかった。 彼らの肉体は誰にも顧みられることなく、獣の餌となるだろう。 そして次に彼女が憐憫を抱いたのは、父を知らぬ我が子に対して。 父親譲りの日に焼けた肌も、その由来の人間を知らずに育つ―― この施設では、自分が手取り足取り育ててやることもできぬだろう。 人間同士の赤子が、この魔物ばかりの城でどう育つというのか。 リース: ごめんね… せめて、今だけは… 赤子を胸に抱きながら、ぼろぼろとリースは大粒の涙をこぼした。 やるせなさ、申し訳なさ、虚しさ――一言では表現できまい。 我が子を取り上げるために研究員が牢の扉を開ける音を聞くと、 なおいっそう、リースの悲しみと無念さは、強くなるのだった。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ★以下エンディング部分 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 *【ED0・1共通:種付け】 *: なぁ、いったい何が始まるんだ? *: 貴公子様から大事な報せがあるって聞いたが… *: おい、来たぞ…! 魔族の本拠地ダークキャッスルの一角、地の底を望む高台―― 陰気な闇が支配するこの城も、今日ばかりは賑やかに声が絶えなかった。 展望台の周囲を囲むように大勢の魔族が並び、何が起こるかじっと見ている。 魔族が世界を支配してから久しく、こんな見世物はいつ以来のことか。 邪眼の伯爵: ようこそお越しくださいました、貴公子様。 既に準備万端、整っております… 美獣: リース王女も、既に壇上に待機させてあります。 さぁ、どうぞ階段をお上りください。 *: リース…ってのか、あの女。 *: 貴公子様の今の器、あの小僧の姉らしいぞ。 黒の貴公子は美獣にも、邪眼の伯爵にも、並み居る魔族にも興味がないらしく、 ゆっくりと壇上に足を向けながら、視線をその上にいるリースだけに注ぐ。 彼女の弟、エリオットの青い瞳が――姉の身体を値踏みするように睨む。 その視線は肉親に向けてよいものでは、根本的にありえなかった。 リース: …! エリ、オット… リースの切なげな――苦しそうな顔。熱望した肉親との再会にはそぐわない。 それも当然だ。彼女の弟、かつてのローラント王子エリオットは既に亡い。 肉体こそこうして残れど、それを操るのは憎き仇の首魁、黒の貴公子。 同じ顔つきでも、魂が違えば全く別の表情を見せている―― 黒の貴公子: 聞け、魔族ども! この私、黒の貴公子は魔族の時代を永久に続けるため―― 世を統べる神としての新たな器、真の肉体をここに創り出す! 黒の貴公子の宣言と共に、魔族からは驚きと称賛の吠え声が上がる。 足を踏み鳴らし、牙を噛み合わせ、城ごと揺れるような大歓声。 しかし――具体的に何が起こるのか、それを予期しえたものはいなかった。 地鳴りが収まるのに合わせ、リースの服に指がかかる。 エリオット――否、黒の貴公子もまた、身にまとっていた衣類の一切を脱ぎ、 己とリースの裸体を、台の下にて見守る一切に向けてすっかり晒した。 そこには無論美獣も、伯爵もいる。自分たちの計画の遂行を見届けるため… 汚されきってなお、リースの肌は美しく、艶めいた若さを見せている。 リース: ああっ…!  ―――――【分岐始】―――――  1:普乳  形のよい乳房が、服を剥ぎ取られた勢いでささやかにぷるんと揺れた。  目ざとい観衆はそれを見逃さない――下劣な野次が、嘲笑が飛び交う。  けれどリースは乳首や股間を手で隠すことも許されないままに、  羞恥と怒りとで、その白い肌をほんのりと朱く染めていく。  ―――――【大分岐】―――――  2:巨乳  大ぶりな乳房――人間の女としては相当な基準のものであろう。  それが勢いよくまろび出ると、観衆はおお、と一斉にどよめいた。  魔族の美醜観においても、リースは雌として相当な上澄みに入る。  役得、というにはあまりに下卑た視線が、彼女の肌に突き刺さった。  ―――――【大分岐】―――――  3:爆乳  ゆさり、と空気の揺れるのが誰の耳にもはっきり聞こえたかようであった。  事実、リースの莫大な乳房は、彼女自身持て余すほどの大きさであったし、  本人の頭ほどのそれが、滑稽にも見える重量感で波打ちながら現れたのだ。  驚嘆はすぐに、牛のような馬鹿乳女への軽蔑の視線へと切り替わった。  ―――――【分岐終】――――― 黒の貴公子: どうしたリース王女…怖気づいたか? それとも弟の肉体に汚される想像まではしなかったか? くっくっく…お楽しみはこれからだ! リース: いや…やめて…! 放しなさい…いや… 黒の貴公子はその少年の姿からは想像できない力で、リースを押し倒す。 白く広いベッドのど真ん中に仰向けとなったリースはあくまで無力、 手をよたよたと動かして抵抗するも、両者は全く勝負にもならない。 股の間にするりと体を滑り込ませてきた弟の顔に――少女は心底恐怖した。 にたりと幼い顔が嗜虐に歪む。これこそが彼女を最も傷つけると知って。 それを、するのだ。実の弟の精子でもって、彼女の子宮に命を宿す―― 新しき己の器のために、千年、万年とこの世に君臨し続けるために。 有象無象にこの悍ましき近親相姦を見せるのは、半ば娯楽、暇つぶしだ。 リース: あっ…あ、やめ、エリオット… おねがい、いや、ぬいてぇ…! 理性と感情が弟からの凌辱を拒絶し、リースは必死に慈悲を乞う。 だが、数多の雄に蹂躙され、雌としての悦びを刻み込まれた肉体は違った。 彼女の態度とは裏腹に、弟の性器を挿入された途端に声は甘く蕩け始め、 びちゃびちゃと蜜の垂れる音が、喧騒の中にもしっかりと響く。 傍から見れば彼女は、敵の本拠地で無数の悪意ある視線に晒されながら、 弟を奪った仇に犯されるという異様な状況でも乱れる色狂いでしかない。 観衆からの痛罵はなお酷く、誰も味方のいない絶望感がリースを包む。 肉体が目の前の雄に屈服していることすらもまた、何よりの恥である。 リース: みないで…わたしをっ、みないで…! ちがう、ちがうの…こんな…! リース: …! うそ、ぁ、あ、あ…! 中に出されてしまった――実の弟の精を。憎き仇の精を。 幾度となく魔物たちに犯され、孕まされ、産まされてきた経験からわかる。 もっとも忌まわしき相手の種が、己の中に芽吹いてしまうという確信が。 深い闇の中に、ぽい、と放り捨てられ落ちていく――落下感と無力感。 自分よりずっと小さな弟の躰、それが人喰いの獣のように思えた。 最後の一線を、あっさりと超えて踏みにじられた悲しさが全身を駆け巡る。 力が入らない。行為としては、極めてあっさりとした一度きりの交配―― それが、リースの心身の全てを食い荒らしてしまったのだった。 黒の貴公子: ふふふ…最高の時間だったぞ、“姉上”… いや、“母上”とお呼びするべきかな? そう、その顔だ…私の求めてやまない、絶望の貌…! リース: … …かえして…わたし、の… エリ… うわ言のように弟の名の断片を繰り返すリースと、誇らしげな黒の貴公子。 かつて彼に逆らった英雄の一人であったリースが、かくも無残に穢されて… 両者の力関係を、もはや誰も疑うはずもない――残された人間たちも。 いまだ奇跡を信じていた人々の心に、絶望の種が蒔かれていく―― *: いよいよだな…貴公子様の転生の儀。 *: これで俺たち魔族の天下が、ずっと続くってわけだ。 邪眼の伯爵: さて皆…先日のローラント王族同士の近親交配は覚えているだろう。 あれから一年ほど…今日はその結果をお目にかけよう。 美獣: 見届けてもらった通り…今から産まれるのは、正真正銘この姉弟の子。 ここにいる全員が、貴公子様の新たなお体誕生の瞬間の証人なのさ。 既に貴公子様は霊体にて待機しておられる、さぁ始まるよ…! リース: っ――! ふ、っ、う、うぅぅう…! いや、うみたく、ない… リースの腹部はあの種付けより一年弱、しっかり臨月大になっていた。 種が人の――エリオットのものであるなら、それと混じった卵も、人。 ぶわり、と背中に嫌な汗が止まらない。本能が我が子を恐れ、震えている。 人間の精子と人間の卵子から――得体の知れない何かができてしまった。 これまで人ならざる忌み仔を繰り返し宿してきた肉体でさえも持て余す、 別次元の存在が、臍の緒を通じて自分のはらわたを啜っているのだ。 リースが異形の混ざり仔に絶望し、泣き喚いた経験はこれまで何度もある。 その感情も、今まさに決壊した羊水の前には、塵芥に等しい。 リース: …! でて、くる…ぅっ! うごいてるの、いやぁ…! 彼女の体験した出産は、あくまでリース自身が“産む”という行為。 だが今、彼女の産道を内より押し広げてくる赤子はまるっきり正反対―― 自らの意志で、外気に触れたこともない四肢を使って這い出てきている。 “産まれる”という能動的行為として、出産すら奪おうとしている。 息を整え苦痛を抑えることもできない。勝手に出てこようとしているから。 産みたくないという感情にて抗うこともできない。主導権は既にあちら側。 自分が通り抜けるだけの隙間を確保するために、赤子が自ら動く感触は、 彼女の理解と経験の範疇を、あっさりと飛び越してしまっていたのだった。 *: 見ろ、産まれたぞ… *: すげぇ魔力だ…産まれたばかりとは思えねぇな… 赤子――魔族の上に君臨し世を統べる新たな神の器が産まれ出でると、 並み居るものたちは、その存在感に圧倒された――ごくり、と唾を呑む。 一方赤子は産声一つ立てず、臍の緒も繋げたままでじっと彼らを見ていた。 高台の上だけが、別の世界に変貌したかのように歪んでいる。 リース: は――っ… はぁ、ぁあ――ぁ、あぁぁ… わた、し… やがて新生児の視線は、繋がったままの“母”へと向いた。 リースの胎内に、いまだ胎盤を残している状態であるというのに、 その視線は冷たい。一切の興味を失った、単なる肉の塊に向けるもの。 ぼう、と体と瞳が青く光る――自身が超常の存在であることを示すために。 女悪魔たちが震える手で臍の緒を切り、産着を準備していく。 万が一にも、彼に粗相があってはいけない。これは魔の王の器であるから。 一方打ち捨てられたリースは、どんよりとした魔界の雲を見上げるだけ―― 役目の終わった彼女に今更意識を向けるものは、もはやここにはいない。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 *【ED1:体と心開発済…魔王の母】 魔界に建てられたある城の一角、暗雲貫く塔の一室に、リースはいた。 辺鄙な立地ながらも、人の出入りは激しく、物々しい警備が解かれない。 この城の主は彼女一人。とてもこれだけの人員を割く価値などあるまいに、 今日も多くの魔族たちが、城の中を歩き回っているのであった。 リース: … お父様…お母様… リースの表情は晴れない。どこかローラントを思わせるこの城も、 遥か昔に失った家族、仲間、故郷、それら全てへの郷愁を募らせる。 いっそ、自分も彼らの下へ――そんな想いも、日々強まっていくのだが、 仮に彼女が自害を選んだ場合、供のものは必死にそれを止めるだろう。 実験動物としてあらゆる種族と交わらされてきたこれまでと比較すれば、 城一つを与えられ、何一つ不足するもののない生活は幸福なはずだ。 それも当然、今の彼女は魔界を統べる黒の貴公子の生母であるのだから。 彼の威厳を守る意味でも、粗雑な扱いをされるわけもない―― *: 王母陛下、ご朝食の準備が整いました―― リース: ええ、お入りなさい… 憂いのある表情を、リースは身辺のものたちの誰にも見せない。 そんな顔をすれば、彼女を粗末に扱ったとして供と警備が罰を受ける。 そうでなくても、こんな、敵ばかりのところで弱みを見せたくもない。 希う己の死までは、せめて、気高さを失うわけにはいかぬのだ。 自分の肉体が通常の人間とは遥かに違った、不老不死――あるいは長寿、 死からずっと遠い存在に成り果てていることを、彼女は理解している。 このささやかな反抗を、いったいいつまで――何年、何十年、何世紀―― 死を願えば願うほど、それが遠いことを否応なく自覚するのである。 彼女の日課は、こうして供のものからの世話を受ける合間合間に、 失われた家族と仲間と、産めなかった混血児たちを、弔ってやること。 産まれてから、彼女より先に朽ちた子孫の分も合わせれば、もっと。 この城と寿命の二重の鳥籠に、彼女は永久に囚われ続けている―― ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 *【ED2:体開発済…家畜】 リースの心身を闇に染め、黒の貴公子の新たなる器を生み出す実験は、 受精、妊娠、臨月と段階を進め、いよいよ最終段階、出産へと到達。 美獣と邪眼の伯爵の見守る中、嬰児への憑依を滞りなく終えるため、 黒の貴公子は既に肉体を捨て、霊体で待機していた――しかし。 美獣: あぁ、ついに産まれた…! さぁ貴公子様、早く次のお体に… 邪眼の伯爵: これで貴公子様の御世は永久に続きます。 どうぞ、魔族の神として我らをお導きください…! 黒の貴公子: くくく…では始めるとしよう。 流石私のためだけの器、居心地が… …… 邪眼の伯爵: ど、どうされました…? 黒の貴公子: う…ぁ…いかん…魂、が…定着、しな、い…! きえる…わ、た、し…が… ……おぎゃあ。 美獣: え、えぇっ…? 貴公子様、貴公子様…! お返事を、どうか…あぁ、そんな… 黒の貴公子の乗り移った赤子はにこにこと無垢な笑顔を見せる。 その中に、闇の王の魂があるとは思えないほどに清らかに。 器として不十分であったのだろうか?愕然とする伯爵に対し、 美獣は赤子を抱き上げながら、転生の儀の失敗に得心のいった様子。 美獣: きっとこの子は…体は十分に、頑丈に産まれたんだろうさ。 でも心が…貴公子様の魂に馴染むほど闇に染まっていなかった。 肉体の主導権を握れず、中に取り込まれちまったんだよ… 邪眼の伯爵: では…貴公子様の人格はもはやどうにもならんということか? 我々は多大な時間と労力と指導者を失って、ただの人間の赤子一人を… 馬鹿な、あまりに…無為…! 床に崩れ落ちた伯爵のことを放っておいて、美獣は赤子をあやす。 彼女の表情は柔らかかった。呪われるべきその命を祝福するかのように。 そして内心に、しっかりとした決意を秘めた様子で。 赤子を抱いたまま、美獣は伯爵に向かって言い放った。 美獣: この子は――貴公子様は、私が育てる。 あの御方の感じていた孤独を、癒してあげたいんだ… どうせあんたは持て余すだろう、構わないよね? 邪眼の伯爵: ぐっ、ぅ…確かに、そう、だが…! では…急に頭目の消えた魔族はどうなる?この魔族の天下を誰が治める? この情報が知られれば、あらゆる魔族が新しい王の座を取りに来るぞ…! 美獣: 知らないよ…そんなこと。 私は黒の貴公子様の御為になるなら、なんでもいいんだ… ――じゃあね。 美獣が部屋を後にすると、一人残された邪眼の伯爵は長い溜息をついた。 これからの身の振り方、配下への説明、群雄割拠の魔界の未来の想像… 何をとっても、簡単に片付くようなものではない。 そして何より、失敗に終わったこの計画の後片付けも必要なのだ。 邪眼の伯爵: …寂しくなるな、ここも。 さて、リース王女の処遇も決めねばな…体だけは、十分仕上がったが… 捕らえてあった仲間共々、どう使ったものか…? 各々の財、膂力、魔力の全てを用いて魔界の覇権を争う数多の強者たち―― 彼らの戦いにおいて、魔界の――魔界だけではない、人間界もまた、 日々地図が書き換わり、国境の引かれ直す混乱の最中にあった。 そんな時代においては、人間は貴重な資源であり財となる… 黒の貴公子の支配下にあった人間たちもそれは例外ではなく、 檻に繋がれていたものたちは皆、それぞれの末路を辿り使い潰される。 リースもまた、そうして身柄を引き渡されたうちの一人であったが、 永い交配実験の果て、母体として申し分なくなった彼女の使い道は―― *: 今日も大忙しだな、まったく。 *: 人間ってのはぽこぽこ増えるから、管理が大変だぜ… 人間の雌を飼い、孕ませ、産ませ――ここはそんな牧場の一つ。 魔界には同様の施設が無数にあり、リースはそのうちの一家畜であった。 人間が牛や豚、馬にするのと同じような繁殖の支配と管理を行われ、 体から出る乳の一滴すら、無駄にしないよう厳重に取り扱われる。 もし、家畜としての価値がないと判断されればその日のうちに肉団子。 そんな過酷な環境にあって、リースと、かつての仲間たちは優秀であった。 無論それを、彼女らが望んだかどうかはまったく別の話だが―― 世界を救おうとした英雄たちの成れ果てが、そこに、いた。 彼女らの日常は極めて反復的なものだ――心はみるみる擦り減っていく。 狭い檻の中、胎が空いていれば種付けされ、乳が出るようになれば絞られ、 体が落ち着くとまた種付け、出産、種付け――終わりがない。 そしてそれらの僅かな起伏の他は、枷に繋がれているか寝ているかだ。 *: さて、今日の分の人乳を… …ん? おいおい、破水してんじゃねぇか、こいつ。 飼育員の魔族は、だらしない顔で母乳を吐き出しながらも、 己の股間に垂れる羊水には無頓着に呻き声を上げるリースに舌打ちした。 自身の変調を訴えるでもなく――そんな理性は最初の一年で奪われるが―― ただ肉体の反応として、孕み、産んでいるだけの愚劣な肉の塊に。 *: 誰か手ぇ空いてるやついるかー? もうじき産まれそうなやついるんだ、出すの手伝ってくれ。 彼らは一匹一匹の雌の美醜、生まれ、知性などに関心を持たない。 ただ自分たちの仕事の妨げにさえならなければ、それがどんな女だろうと。 孕みすぎ、産みすぎで抵抗力と思考力の欠片も有さない家畜どもよりも、 直接的に脅しを掛けてくる牧場主の方がよほど恐ろしいのだから。 *: よし…じゃあ連れてくか、後ろ頼むぞ。 *: こっちもよし。行くか、鎖引いてくれ。 乳首、臍、鼻、女性器…リースの全身に通された太く丸いピアスは、 下品な金の鎖によってそれぞれ連結され、ちゃらちゃらと揺れている。 さらに一歩踏み出すごとに、牛鈴がかろんかろんと間抜けな音を立てて、 これからこの家畜が、仔をひり出しにいくのだと強く主張していた。 *: しかし、なんでわざわざ、別のところに産ませにいくのかねぇ… *: 仕方ねぇだろ、お偉いさん方の目の前で産ませろってお達しだしよ。 出産という、女として最も尊重されねばならぬ瞬間――それすらも、 彼女ら家畜人間にとっては奪われている。支配者たる魔族によって。 リースを連れた飼育員たちの向かう先は、“お偉方”のいる食堂。 報せは既に届いている。食指を伸ばし、涎を垂らして待つ悪鬼の下へ。 *: 産まれたてが一番旨いからってよぉ… 運ぶ俺たちの立場にもなってほしいもんだぜ、たまにはよ。 自分の胎の中の仔がどうなるかを聞かされながらも、リースは呆けている。 この家畜生活が、彼女から一切の当事者意識を削いでしまったのだ。 不吉な予感に、胎児が必死になって身をよじり、母の腹を蹴るも―― リースの見るのは、失われた祖国の面影ただ一つであった。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 *【ED3:心開発済…娼婦】 リースの心身を闇に染め、黒の貴公子の新たなる器を生み出す実験は、 受精、妊娠、臨月と段階を進め、いよいよ最終段階、出産へと到達。 美獣と邪眼の伯爵の見守る中、嬰児への憑依を滞りなく終えるため、 黒の貴公子は既に肉体を捨て、霊体で待機していた――しかし。 美獣: あぁ、ついに産まれた…! さぁ貴公子様、早く次のお体に… 邪眼の伯爵: これで貴公子様の御世は永久に続きます。 どうぞ、魔族の神として我らをお導きください…! 黒の貴公子: くくく…では始めるとしよう。 流石私のためだけの器、居心地が… …… 邪眼の伯爵: ど、どうされました…? 黒の貴公子: ま…まずい…この赤子では…闇を、納めきれぬ…! は、破裂する…!体、が、はじけ飛ぶ…! ぐぁ、ぁ、あ――っ! 美獣: 貴公子様――! …だめだ、お体が…ぐちゃぐちゃに… 嘘だろ、そんな…! 黒の貴公子の乗り移った赤子の身体は内側より弾け飛び、 器として不十分であったことを明らかとした。後には血痕と肉片だけ―― 呆然とする美獣、目を見開きながらも何かを思案する伯爵。 いったいなぜ、転生の儀が失敗に終わったのか――? 邪眼の伯爵: おそらくこの赤子は…肉体に貴公子様の魂を納めるだけの強度がなかった。 母親の体が、十分に闇に染まっていなかったのだ… 収まらなかった魂は魔界と地獄に分かれ、吹き飛ばされたであろうな… 美獣: 冷静に分析してる場合かね!私は探しに行くよ! 何年、何十年かかっても貴公子様を蘇らせてみせるからね…! 気を失っているリースを尻目に、二人は互いに言い争いを続けた。 激昂する美獣に対し、あくまで冷ややかにこの惨状を見ている伯爵。 今にも部屋を飛び出していきそうな美獣をなだめながら、 彼女の言葉の端を捕まえたようにして、さらに言い放った。 邪眼の伯爵: そう、蘇らせるには永い時間がかかるだろう… では…急に頭目の消えた魔族はどうなる?この魔族の天下を誰が治める? この情報が知られれば、あらゆる魔族が新しい王の座を取りに来るぞ…! 美獣: 知らないよ…そんなこと。 私は黒の貴公子様の御為にさえなれば、なんでもよかったんだ… ――じゃあね。 美獣が部屋を後にすると、一人残された邪眼の伯爵は長い溜息をついた。 これからの身の振り方、配下への説明、群雄割拠の魔界の未来の想像… 何をとっても、簡単に片付くようなものではない。 そして何より、失敗に終わったこの計画の後片付けも必要なのだ。 邪眼の伯爵: …寂しくなるな、ここも。 さて、リース王女の処遇も決めねばな…心だけは、十分仕上がったが… もはや役目を終えた今、この城に置いておく理由もない… ――魔族に圧迫され縮小した人間の生存圏、無数の避難民の暮らす街。 掃き溜めそのもののその街には、あらゆる過去を持った人間が集まる。 彼らをお互いに結び付けるのは利と欲――もはや国家は機能していない。 その中で若い女が生きる術といえば、一つしかなかった。 *: ねぇお兄さん…寄ってかない? *: そこのお髭が素敵な方、ちょっとこっちきてぇ… 体を売って日銭を稼ぐ女たちの溜まり場。安物の香水では隠しきれない、 退廃的で緩やかな死の臭い…娼婦の質も知れているというもの。 ぼろ布で区切られた個室は、常に饐えたような異臭に包まれている。 わざわざここで女を買うような物好きも、さほど多くはない。 ルイズ: あの…どうですか… そんな場末の端女郎の中に、一際目を引く女がいた。 呼び込みも小さく、どこか乗り気ではないような調子… それでもその声を聞いた男は必ず振り返り、そして目を見張るのだ。 こんな場所に、なぜこんな女がいるのだろうか―― *: うぉっ…すげぇ美人じゃん。 マジでこんな仕事してんの? …罠とか詐欺とかじゃ、ねぇよな? 興奮と困惑に視線をあちこちに走らせる男の手を女はそっと握り、 自身のふっくらとした胸元に当てさせ、曖昧に微笑んだ。 この状況から、やはりやめると欲を振り切って逃げられる雄はいない。 そのまま彼女の部屋の中へ、雄はするりと引きずり込まれていった―― *: あーあ…やっぱルイズちゃんに持ってかれちゃった。 *: 仕方ないよ姐さん、あの子凄い美人だもん…若いし。 *: でもさ…ルイズちゃんって、何歳なの? 誰か知ってる人、いる? 仲間たちのぼやきを知ってか知らずか、女は客に向き直った。 鼻息荒く、彼女の仕事着に指を掛けようとする男をそっと手で制し、 唇に縦一本、指を添えて細く緩やかに息を噴く。 そして一層昂る彼に向けて、質問を一つ。 ルイズ: ローラントという国のこと…ご存知ですか? *: ロ…?いや、聞いたこと――あー…そうだ、確か婆さんの昔話で… …ってもよ、もう軽く何百年か前に滅んだ国じゃなかったか? 嬢ちゃん、歴史にでも興味あんの? ルイズ: えぇまぁ… そんなようなものです。 では、どうぞ… 彼女が件の地の名を語る時、ほんのわずかに表情を曇らせる意味―― 客として取った男に必ず、その国のことを訊く理由、 それを知るものは、彼女の同僚たちの中に誰一人としていなかった。 その生まれ故郷も、生年も――詳しいことは、何一つ。 *: あたしがここ来て次の年ぐらいにルイズちゃん現れたような… *: 姐さんって確かここで十二年ぐらい食ってるって言ってませんでした? *: えっ…本当…? あの子、皺も白髪も全然ない…なんか、怖いね… リースは男に抱かれながら、仲間の言葉をひっそり聞いていた。 また場所を変えねばならない…また別の名を使わねばならない。 老いることなく、少女然とした姿で生きなければならないことが、 どれだけ彼女の孤独感を増すだろう。どれだけ心を擦り減らすだろう。 それでも彼女に残された生業は、その美貌と若さを活かしたものだけ。 人の社会に馴染むには、彼女の心身は既に異物の側―― いかに心に闇を注がれようが、彼女は人間の側でしか生きられない。 彼らから疎まれ、恐れられ、忌み嫌われる存在であったとしても… ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 *【ED4:両方未開発…苗床】 ぽっかりと開いた次元の穴、それを見下ろす魔界の奥深く… 陰気な城の雰囲気が、さわやかにさえ思える澱んだ大気の流れる空間。 魔族であっても、その中に立ち入ることは稀である。ましてや人間など。 耐性のないものは、たちまちに肉体を変質させてしまうことであろう。 美獣: いつ見ても気色悪い光景だこと… あんなとこ、見てるだけで気が滅入っちまうよ。 邪眼の伯爵: そう言うな。本来なら使う必要もなかった場所だ… しかし貴公子様の御体を用意するためなら、仕方あるまい? 二人はじっと穴の中心――肉塗れの空間に囚われたリースを見ている。 ぼこぼこと脈動する床、壁、天井――これらは全て、彼女自身だ。 否、この空間そのものと同化して人の身を奪われたと言う方が正しいか。 頭、胸、腹――一部こそ中空に露出しておれど、その他は見えない。 邪眼の伯爵: 結局、あの男は――役に立たなかったな。 初めからここに入れておけば、計画も早まったものを… 美獣: 何を他人事みたいに…あいつを推したのはあんたの方だろ? …まぁいいや、任せっきりだったのはこっちも一緒だ。 リースを魔王の器を孕むに相応しい母体に仕上げる計画は頓挫した。 一任されていた研究者が、求められる水準を超えられなかったからだ… 彼の処遇は語るべくもない。だが大事なのは、その先をどうするか? この空間――リースの今の肉体は、それを誤魔化すための苦し紛れだ。 ぼこり、ぼこりと不規則に胎内の“何か”が蠢いている。 その動きは、異様なまでに大きく、激しく、不快感を催すもの。 彼女の孕んでいるものは、母親の命ごと吸い上げて刻々と膨らんでいく。 胎動のたびに、リースは苦痛に何度も呻き声を上げているのだった。 リース: っ、ぃぎ、っ、い、ぁ――っ! ぅぐ、うう、うぅっ…! 同じ女として、思うところもあったのだろうか?美獣も顔をしかめる。 憐憫と言うには、いささか語弊もあろうが――苦々しい表情だ。 もっとも、彼女にとって大切なのは、黒の貴公子の転生先の調達だけ。 情に溺れて実験動物を救うような、愚かな真似をするわけもない。 苦痛に歯を食いしばって耐えるリースの身体の各所には、 肉壁から生えた何本もの触手が伸びてきて絡み付き、ぱっくり食いつく。 黒々と膨らみ、広がりきった乳輪ごと覆う大きな海星型の先端や、 負けず劣らず膨らんだ臍を、掌中に収めるごとく包むもの―― あるいは耳介を通して、彼女自身の脳をぐちゅぐちゅ掻き回すものや、 視界を奪って、己の醜い肉体を見せずに快楽に溺れさせるものまで。 これらの介入――実際のところは彼女の肉体が求めた自慰に近い――で、 いくらかリースの呼吸は落ち着き、肌の汗も引いていくのであった。 背を向けて立ち去る美獣を、邪眼の伯爵は見咎めなかった。 彼自身、眼前の光景には思うところがある――人間への情はなくとも。 ここに幽閉するということは、外界との一切の途絶をそのまま意味し、 リースはその全生命を余すところなく、胎児に搾り取られていくのだ。 リース: うー… あ、ぁあ…あぅ、あ―― 邪眼の伯爵: …哀れな女だ。 ぽつり、そう呟くと伯爵もまたリースに背を向け、地底から去る。 予定日はまだ先、放っておいても支障はないとの判断からであろう。 やがて彼女の産んだものが、魔界の、地上の、聖域の―― あらゆる世界を統べる神の器となることはもはや疑いようがない。 けれど――産んだ後の彼女はどうなるか?その答えを知るがゆえに、 なおさら美獣も伯爵も、搾りかすとして朽ち果てる女を見たくないのだ。 一度の出産ののち、心身ともに完全に消耗しきっていく未来を。 ――地底にはまた、麻酔の切れた肉袋の呻き声が響き始めていた。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 *【ED0:娘多め…脱出】 魔界に建てられたある城の一角、暗雲貫く塔の一室に、リースはいた。 辺鄙な立地ながらも、人の出入りは激しく、物々しい警備が解かれない。 この城の主は彼女一人。とてもこれだけの人員を割く価値などあるまいに、 今日も多くの魔族たちが、城の中を歩き回っているのであった。 …しかし今宵ばかりは、随分と雰囲気が違う。警備もどこか上の空、 交代の人員がくればそそくさと持ち場を離れ、遊びに出るものも多い。 人の入れ替わりが一通り終わると――城の中はにわかに動き始めた。 今日の警備を申し出たものたちが、一斉にリースの部屋に押しかけたのだ。 リース: どなた?こんな夜更けに… 名も名乗らず要件も告げぬ失礼な来客に、リースは優しく問いかける。 やはり答えはなく、もう一度、こんこんこん、と戸を叩く音だけ。 彼女がそっとベッドを離れ、訪れたものの姿を確かめるべく近寄ると、 ばたんと開いた扉からは、何人もの警備兵が一気になだれ込む。 リース: え? きゃっ…! 残されたのは、誰もいない城だけ――一晩のうちに人の気配は失せた。 日の昇る前に、月の暗いうちに、疾風のように黒い一団は駆けていく。 二十から三十人ほどの影は、ひたすらに大地を行き山を登って、 ようやく一つの史跡の前で、安心したように汗を拭った。 ―――――――――――――――――――――――――――――― ★リースの呼称・口調リスト  以下の分岐はそれに従ったものとなります(一部略称)  どのキャラが喋るかは乱数で決まります 1:母上    馬    ヘルハウンド プチドラゴン ビービー  ダーク  サイクロプス 2:お母様   ダック  バジリスク  サハギン   メガゾーン ヒューポ グレート 3:ママ    ポロン  ミノタウロス バットム   グリーン  シェイプ ゾンビ 4:おかあさん 豚    ウェアウルフ クロウラー  マイコニド ローパー ナバール兵 5:お袋    キマイラ リザードマン アンクヘッグ チビデビル ゴブリン ゴースト ――――――――――――――――――――――――――――――  ―――――【分岐始】―――――  1:母上  【娘の名前】:  母上、ご無礼をお許しください。  ここに集まった我ら皆、同じ母を持つ姉妹…  母上をなんとしてもここにお連れしたかったのです。  ―――――【大分岐】―――――  2:お母様  【娘の名前】:  お母様、お体の方は大丈夫ですか…?  急に連れ出してごめんなさい、この日しかなかったの。  ほら、ここ…見覚え、ありませんか?  ―――――【大分岐】―――――  3:ママ  【娘の名前】:  ママ、疲れてない?ごめんね、  姉妹で相談して決めたんだ…ママを連れてくるって。  ――あぁ、気持ちいい風が吹いてる。  ―――――【大分岐】―――――  4:おかあさん  【娘の名前】:  おかあさん…説明もせずに連れ出してごめんなさい。  今日この瞬間を、どれだけ皆で待っていたことか…  ね、ここどこか、わかる?  ―――――【大分岐】―――――  5:お袋  【娘の名前】:  お袋、着いたよ…  あれ?そっか、どこ行くか言ってなかったっけ。  でもさ、見たらすぐわかるんじゃないかな…  ―――――【分岐終】――――― リースの耳にも聞き慣れた風の音が届く――澄み切った蒼を運ぶ風。 彼女が魔族に囚われ、辱めを受ける間もずっと希っていた風景。 水平線を遥かに見下ろす断崖絶壁の上に立つ、すっかり古びた城の跡―― 思わず顔を両手で覆った母親を、娘たちは場内に誘った。  ―――――【分岐始】―――――  1:母上  【娘の名前】:  皆、母上が来られたぞ…  大事な日だ、ああもう、ちゃんと並んで…!  ―――――【大分岐】―――――  2:お母様  【娘の名前】:  あっ、お母様来たよ…  すごくきれい…  ―――――【大分岐】―――――  3:ママ  【娘の名前】:  ふわぁ――っふぅ。  あ、ママだ。  ―――――【大分岐】―――――  4:おかあさん  【娘の名前】:  おかあさ…違った、今日は、そう呼んじゃだめだった。  …やっぱり、美人だなぁ。  ―――――【大分岐】―――――  5:お袋  【娘の名前】:  へへ、なんか照れくさいな…  お袋のあの顔、すごく嬉しそうだ。  ―――――【分岐終】――――― ローラント城の中央に位置する、立派な玉座を備えた謁見の間―― いくつもの段の上、リースの娘たちは綺麗に整列をして、 身なりを整えた母がやってくるのを、今か今かと待っていた。 まだ若い彼女らは、誰も彼もが辺りを見回し落ち着かない様子。  ―――――【分岐始】―――――  1:母上  【娘の名前】:  さぁ母上、どうぞ壇上にお上りください。  ―――――【大分岐】―――――  2:お母様  【娘の名前】:  お母様、おめでとうございます。  どうぞ進んで――  ―――――【大分岐】―――――  3:ママ  【娘の名前】:  ママ…今日は大切な日。  わたしたちも、心からお祝いしています。  ―――――【大分岐】―――――  4:おかあさん  【娘の名前】:  お城も私たちでしっかり掃除しました!  椅子もほら、あんなにぴっかぴかですよ。  ―――――【大分岐】―――――  5:お袋  【娘の名前】:  すごいな…  本物の王族って、あんなに気品あるんだ…  ―――――【分岐終】――――― リースの胸中には、在りし日のローラントの風景が蘇っていた。 幼くも元気な弟、優しい父、武勇に優れた大勢のアマゾネスたち… 今は人気の絶えたこの城も、かつては多くの人々と共にあった。 その城に、ようやく、帰ってこれたのだ――ふと、足が止まる。 もう、あの日々を知るのは自分一人――家族も、仲間も、いない。 子供の頃の記憶よりも、ずっと広く虚しく感じられてしまうのは、 決して美化だけではないのだろう――寂しさ、悲しさ、憤り… 無意識にため息をついてしまう。帰ってこれたというのに――  ―――――【分岐始】―――――  1:母上  【娘の名前】:  母上…  ―――――【大分岐】―――――  2:お母様  【娘の名前】:  お母様…?  ―――――【大分岐】―――――  3:ママ  【娘の名前】:  ママ、どうしたの?  ―――――【大分岐】―――――  4:おかあさん  【娘の名前】:  ねぇおかあさん、なんで止まってるの…  ―――――【大分岐】―――――  5:お袋  【娘の名前】:  お袋、体の具合でも悪いの…?  ―――――【分岐終】――――― 娘の呼びかけに、リースは追憶から帰って一帯を見渡した。 じっと、自分と同じ青の瞳、同じ金髪をした子供たちが見つめている。 きっかけこそ望まれずとも、こうして立派に育った何人もの娘たちが。 リースを今、ここに立たせるために奔走してくれたものたちが。 失ったものは大きい。しかし得たものもまた、決して小さくはないのだ。 皆一様にローラント伝統のアマゾネスの装束を付け、心を一つにしている。 肌の色も体の作りもそれぞれに違えど、リースの血を確かに引いた子らが。 彼女らのために、リースはまさにこの瞬間、宣言せねばならなかった。 リース: 私をこのローラントの地に再び連れてきてくれたこと、 心より感謝します…ありがとう、皆。 既にこの国から人がいなくなって久しいですが―― リース: いえ、だからこそ我らはここにローラントを再び築きましょう。 私の血を引く貴女たちには新たなアマゾネス部隊として、 種族の垣根を超えた国を作る役目を――授けます。 リース: ――なんてね…うふふ。、 こうは言いましたが、母親としては大切なあなたたちに… 自由に、生きてほしいのです。この国に拘らず、ね。 リースの言葉に、誰も首を横に振らなかった。しっかりと母を見据え、 父祖の眠るこの地を、いつか必ず蘇らせるという熱意に満ちていた。 あの城で酷い扱いを受けながらも、自分たちを産んでくれた母の想い―― それを果たすのが我らの天命である、そう信じてやまぬよう。 ――やがて城の各部屋に、娘たちは自分好みの装飾と家具を揃え始めた。 単なる実験体と、それの産んだ♀の個体という扱いではない、 一人の個人として、ローラントの明日を担う自負がそこに見える。 彼女らのそんな姿を、リースは玉座から嬉しげに見るのだった… … …… ……… ………… 邪眼の伯爵: 美獣、貴様リース王女の警備兵の不自然な入れ替わりを黙認したな? おかげであの城もすっかり寂びれてしまったぞ。 美獣: あんたこそ、追手の一つも差し向けなかったろ? あんな夜更け、吸血鬼のあんたが気付かないわけないだろうに。 邪眼の伯爵: …まぁな。どうせこの世は遍く我ら魔族のもの―― ならば、どこに逃げようが大して変わらんということだ。 それが既に滅んだ、山奥の古臭い城であろうとな。 美獣: ははっ!案外ロマンチストなところもあるもんだね! ――ま、あたしも同意しとくよ。 あの子に無理やり協力させた、見返りってことさね。 ………… ……… …… … リースがローラントに帰還して後――その娘たちはそれぞれに夫を取り、 国の再興と子孫繁栄に励んだ。城内には常に高低幅広い産声が響き渡る。 元気に走り回る子供の姿は、実に多彩で多岐にわたるもの―― 彼らは皆、国母たるリースの慈愛を受けて親兄弟と親しみあった。 かつてリースの求め――そして失った姿とはいささか違ってはいても、 この活気溢れる様子を見れば、故ジョスター前王も喜ぶことだろう。 アマゾネス部隊は様々な魔物の血と技術体系によって大いに発展し、 後世に魔族の時代とも言われた乱世にも、しっかりと残り続けた―― ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ★NPCのセリフなど ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 *【研究室】 ≪カーミラ(青服)≫  ―――――【分岐始】―――――  1:通常  *:  実験の際に使う薬剤や術式の発注は、  私にお任せください、@様。   11a:アイテム購入合計金額2000ルク以上    *:    @様…薬剤の仕入れ先の一つから、    ここで学びたいという若者がいるのですが、    受け入れて構わないでしょうか?  ―――――【大分岐】―――――  2:交配回数5回以上〜シェイプシフター解禁まで  *:  あれ…?@様が二人…?   21a:アイテム購入合計金額2000ルク以上    *:    本物の@様…?ですよね。薬剤の仕入れ先の一つから、    ここで学びたいという若者がいるのですが、    受け入れて構わないでしょうか?  ―――――【分岐終】――――― ≪カーミラクイーン(赤服)≫  ―――――【分岐始】―――――  1:初回のみ   11a:交配回数5回以上〜シェイプシフター解禁まで    *:    え…あ、あれ…?同じ人が…二人…?    ええと…貴方が本物の室長、です、よね…?    ごほん。失礼しました…では改めて。  *:  @様、私は被検体の体調管理を担当しております。  何か気付いたことがあればご報告いたしますので、  どうぞお声がけくださいね。  ―――――【大分岐】―――――  2:二回目以降   21a:交配回数5回以上〜シェイプシフター解禁まで    *:    あっちの室長は誰なのかしら…?    …いえ、失礼しました。   22a:通常    22a1a:通常     *:     被検体の体調は比較的安定しているようですね、@様。     薬剤の使用なども検討してよいかと思います。    22a1b:妊娠     *:     被検体の体調は比較的安定しているようですね、@様。     薬剤の使用なども検討してよいかと思います。     胎児の状態も悪くないと言えるでしょう。   22b:[体][心]の合計がやや低い    22b1a:通常     *:     @様、被検体の体調が悪化しているようです。     適度に休憩を取らせた方がいいかもしれませんね。    22b1b:妊娠     *:     @様、被検体の体調が悪化しているようです。     適度に休憩を取らせた方がいいかもしれませんね。     胎児への悪影響はまだ考えなくてよさそうですが…   22c:[体][心]の合計が低い    22c1a:通常     *:     @様、あのままだと被検体は最悪の場合…     そろそろ休ませてはいかがでしょう?    22c1b:妊娠     *:     @様、あのままだと被検体は最悪の場合…     そろそろ休ませてはいかがでしょう?     胎児が無事産まれるかどうかも怪しいかと…   23a:グリ−ンスライムの交配回数が3回以上〜ヒューポスライム解禁まで    23a1a:初回のみ     *:     @様、実験に使用しているスライムの件でご報告が。     格納容器の壁が一部破損し、複数体が混ざり合ってしまいまして…     大型化した個体が発生したのですが、いかがいたしましょう?    23a1b:二回目以降     *:     大型化したスライムの件、いかがいたしましょう?    選択肢:実験に使ったら?    選択肢:害がないなら放置     *:     承知しました…     ではそのように。   24a:二周目以降もしくは1体以上出産済    *:    室長、被検体の妊娠に伴う胸囲の増加…    これを恒常的なものとする技術ができました。    通常時含め、およそ三段階での調整が可能です。    *:    被検体のバストサイズを変更されますか?    選択肢:普乳    選択肢:巨乳    選択肢:爆乳    選択肢:今のまま  ―――――【分岐終】――――― ≪ダークプリースト≫  ―――――【分岐始】―――――  1:初回のみ   11a:交配回数5回以上〜シェイプシフター解禁まで    *:    んん…?あれ、ここの室長って二人…?    ああ、あんたが本物で…あれは何かわからん、と…    失礼しました、改めてご挨拶しますぎゃー。  *:  どうも@さん、よろしくお願いしますぎゃー。  色々勉強したくてブッカから参りましたぎゃー。  もちろん、実験に呼んでくれたらがんばりますぎゃー。   12a:通常    *:    そうそう、村からいくつかお土産持ってきましたぎゃー。    実験に使えるものもあると思いますんで、見とってくださいぎゃー。   12a:交配回数5回以上〜シェイプシフター解禁まで    *:    あんまり堂々と座ってるから、てっきり向こうも偉いのかと…    お土産のブッカせんべい、向こうに渡してしまったぎゃー。    ごめんね。    *:    それ以外に、村からいくつかお土産持ってきましたぎゃー。    実験に使えるものもあると思いますんで、見とってくださいぎゃー。  ―――――【大分岐】―――――  2:二回目以降   21a:ダークプリーストの交配回数が0回    *:    むむむ…改めて実験を手伝うとなると緊張してきましたぎゃー。    ウチのしきたりに従って荷物運ばせてもらいますぎゃー。    何に使うか?今は言えませんぎゃー。   22a:ダークプリーストの交配回数が1回以上    *:    @室長、先日の実験は無事終わりましたぎゃー。    …え?壺の中で何をしてるかって?    そればっかりは言えん!    22a1a:ダークプリーストの出産頭数が1匹以上     *:     ウチの長老からは、出かける前に、     産まれたやつは連れて帰って来いと言われてますぎゃー。     ここじゃ色々足りないものがあるんですぎゃー。     22a1a1a:ダークプリーストの♀出産頭数が1匹以上      *:      …ただ、あの女の子はちょっと扱いに困りますぎゃ…      人間に近すぎるから、多分ブッカでも馴染めないですぎゃー。      父親として、最低限の魔術と薬学ぐらいは教えますぎゃ…  ―――――【分岐終】――――― ≪シェイプシフター≫ @?: … @?: … …… @?: … …… ……… @?: …バレタ。 テツダウカラ ユルシテ。  ――――――――――【場所区分】―――――――――― *【図書館】 ≪チビデビル≫ *: キキキ…@室長、図書館にご用ですか? 蔵書の整理だけで一苦労ですよ。 ≪ポロン≫  ―――――【分岐始】―――――  1:初回のみ  *:  あ…どうも、@さん…ですよね。  よろしくお願いします。  …すみません、人見知りする方なので…  ―――――【大分岐】―――――  2:二回目以降   21a:ポロンの交配回数が0回    *:    僕にもできますかね…?なんか不安になってきました。    変なことしてたら、止めてくださいね…   22a:ポロンの交配回数が1回以上    *:    @さん…その、僕、ちゃんとやれてましたか?    どうにもその…自信、ないんですよね。    22a1a:ポロンの出産頭数が1匹以上     *:     …     ……あっ!すみません、あの光景が頭から離れなくて。     …面白かったなぁ。  ―――――【分岐終】――――― ≪ミノタウロス≫  ―――――【分岐始】―――――  1:初回のみ  *:  よう、俺を呼んだってのはあんたかい?  …へぇ、@さんね…覚えとくよ。  ま、お互い楽にいこうぜ、兄弟。  ―――――【大分岐】―――――  2:二回目以降   21a:ミノタウロスの交配回数が0回    *:    実験の相手は結構な美人だって話だろ?楽しみだぜ。    早く呼んでくれよ、暇潰しに本読むのにも飽きちまった。   22a:ミノタウロスの交配回数が1回以上    *:    …なるほど、ちょっとやりすぎだって?    そう言うなよ、俺ぁがさつなもんでな、    相手の体調に合わせるなんて器用なことできねぇさ。    22a1a:ミノタウロスの出産頭数が1匹以上     *:     ま、ちゃんと産めたんなら問題ねぇだろ?     俺たちミノタウロスってのは、あれが普通なんだよ。     22a1a1a:ミノタウロスの♀出産頭数が1匹以上      *:      しかしまぁ、驚いたねぇ…あんだけ人間に近いとは。      大体、俺たちの雄がそのまんま出てくるもんなんだがな。  ―――――【分岐終】――――― ≪グレートデーモン≫  ―――――【分岐始】―――――  1:初回のみ  *:  おやこれは@殿…聞きましたよ、  最近何やら面白い実験をなさっているとか?  是非ともお聞かせ願いたいですね。  *:  ……  …  ほう、貴公子様の器を産む母体作りを…ローラントの王女…  *:  いいですね、私もそこに一枚噛ませてくださいよ。  人間の心を闇に堕とすことほど楽しいことはありません…  御用とあらば、いつでも呼んでくださいね。  ―――――【大分岐】―――――  2:二回目以降   21a:グレートデーモンの交配回数が0回    *:    私なりのやり方で王女を汚してみせましょう。    これも貴公子様の御世のため…   22a:グレートデーモンの交配回数が1回以上    *:    @殿、私の働きはいかがです?    あの少女、なかなかいたぶり甲斐がありますね…ククク…    22a1a:グレートデーモンの♀出産頭数が1匹以上     *:     私の血を引いた娘?…いや、興味ありませんね。     貶める過程で生じた副産物に過ぎません。     @殿のお好きなように処理してください。  ―――――【分岐終】―――――  ――――――――――【場所区分】―――――――――― *【家畜房】 ≪サイクロプス≫  ―――――【分岐始】―――――  1:初回のみ  *:  んん…ああ、あんたが@さんかね?  ワシはここの厩舎を任せられとるもんだよ。  言ってくれりゃあ新しいのも仕入れてくるでな…  *:  もっとも、猟師さんらに払う報酬の分だけ、  いくらか出してもらうだが…まぁ、気軽に言ってくんろ。  ―――――【大分岐】―――――  2:二回目以降   21a:サイクロプス解禁前    選択肢:交配相手の調達     21a1a:ローパー解禁前      *:      ほんじゃ500ルクほどいただくが、ええかね?     21a1b:ローパー解禁後      *:      ワシのつてで集められそうなのはもうおらんのう…      @さん、悪いが後は自分でなんとかしとくれな。    選択肢:あの丸いのは何だ     *:     お恥ずかしながら、ワシもよう知らんのよ…     ガラスの砂漠で見つかったって話だけんども、     捕まえて世話してた若ぇのがいなくなっちまってな。     *:     …え、あれを実験に使いたいっちゅうんか?     貴公子様のお体を産ませる女じゃろ?ワシはよう頷かんのう…     なんかあっても、あんたの指示ってことでええかね?    選択肢:お前も手伝え(ローパー&メガゾーン解禁後)     21a2a:初回のみ      *:      うーむ…@さん、本気で言うとるだか?      べっぴんさんとは聞くし、ワシも悪い気はせんが…      どうも加減っちゅうのが苦手でのう。      *:      それでもやれ、って話ならちゃんとやるがの。      ワシに任せて大丈夫とお思いなさるか?     21a2b:二回目以降      *:      どうしても参加しろ、って話ならちゃんとやるがの。      ワシに任せて大丈夫とお思いなさるか?   21b:サイクロプス解禁後    21b1a:サイクロプスの交配回数が0回     *:     しっかし改めて言われると怖いもんじゃの…     人間の手足は細っこくてすぐちぎれるでな。     潰さんようにもせんといかんし…    21b1a:サイクロプスの交配回数が1回以上     *:     @さん…やっぱ力は加減せんとあかんね。     あの嬢ちゃん、ちょっと振っただけでぐでんぐでんよ。     ワシはもう怖ぁて怖ぁて…     22a1a1a:サイクロプスの出産頭数が1匹以上      *:      それでも流石に頑丈じゃね。ワシら巨人の子をよう産めたもんじゃ。      お袋に、お前はでかいから大変だったとしょっちゅう…      おっと…これは関係ない話じゃったのう!  ――――――――――【場所区分】―――――――――― *【廊下】 ≪チビデビルA(上側)≫ *: @室長殿…美獣様や伯爵閣下への経過報告はお済みですか? 実験が終わった後、一度訪れてみてはいかがでしょう…キキキ。 ≪チビデビルB(下側)≫ *: これだけ広いと掃除も一苦労です… そうそう、実験の交配相手をお探しなら、 色々周ってみるのもいいかもしれませんね、キキキ… ≪ダックソルジャー≫  ―――――【分岐始】―――――  1:初回のみ  *:  @殿、よろしくお願いいたしますッ!  自分はこの度、栄えある任務を仰せつかったものでありますッ!  誠心誠意、務める所存でありますッ!  ―――――【大分岐】―――――  2:二回目以降   21a:ダックソルジャーの交配回数が0回    *:    自分は軍属ゆえ、不調法なところもあるかと思いますッ!    声が大きいのは、どうぞご容赦くださいッ!    お呼びいただける日を、お待ちしておりますッ!   22a:ダックソルジャーの交配回数が1回以上    *:    自分の遂行した任務は、いかがだったでしょうかッ!    リース王女への心理的圧迫を中心に行いましたッ!    またお呼びくだされば、全身全霊で取り組んで参りますッ!    22a1a:ダックソルジャーの出産頭数が1匹以上     *:     自分は医学には疎いため、研究員の皆さまにお任せしましたがッ!     次にお呼びいただくまでに、救急医療を学びたいと思いますッ!     一兵卒で終わりたくはないのでありますッ!     22a1a1a:ダックソルジャーの♀出産頭数が1匹以上      *:      …しかし、例の赤子を見て驚きましたッ!      ほとんどリース王女にそっくりの姿でありながらッ、      自分と同じ翼を持っているとはッ!  ―――――【分岐終】――――― ≪リザードマン≫  ―――――【分岐始】―――――  1:初回のみ  *:  お初にお目にかかります、@さん。  この度は私に名誉ある役目をお与えくださり…  …くどいですか、やめましょう。  ―――――【大分岐】―――――  2:二回目以降   21a:リザードマンの交配回数が0回    *:    我が一族の誇りにかけて、役目を果たしましょう。    リザードマンは義を重んじる種族です…   22a:リザードマンの交配回数が1回以上    *:    我々リザードマンは、人間との交配を行ってきた種…    とはいっても、あんな乱暴で一方的なやり方ではありませんが。    22a1a:リザードマンの出産頭数が1匹以上     *:     …少々心が痛むところはありますがね、     あれ自体が実験の一環というなら受け止めましょう。     22a1a1a:リザードマンの♀出産頭数が1匹以上      *:      産まれた“あれ”…いえ、女の子はどうされるおつもりで?      その…私がどうしたい、というわけではありません。      あんな姿なのが、どこか哀れにも感じたものですから。  ―――――【分岐終】―――――  ――――――――――【場所区分】―――――――――― *【美獣の部屋】  ―――――【分岐始】―――――  1:初回のみ  美獣:  @、あんたに任せてる件は上手くいってんのかい?  …まぁ今はいいや、ちゃんと報告しに来るんだね。  もちろん私だけじゃなく、あいつの方にもだよ。  ―――――【大分岐】―――――  2:二回目以降  美獣:  …あぁ報告?まめだねあんたも。  ほれ、貸しな。どれどれ…   21a:総交配回数が0回    美獣:    …白紙じゃないか。    せめて一回はこなしてから持ってきな。   22a:前回の報告から交配回数が変化していない    美獣:    おいおい…前と全く変わってないじゃないのさ。    せめて一回は実験挟んでから報告に来なよ。   23a:[体][心]の調教度合計が極めて低い    美獣:    …なんだ全然進んでないじゃないか。    もうちょっと変化が出てきてからでいいよ、クソ真面目だねぇ…   24a:[体]の調教度≧[心]の調教度    24a1a:[体]の調教度が低い     美獣:     うーん…まだなんとも、だねぇ。     体の方を先に仕上げろってのはわかってるみたいだけどさ。     これじゃ全然、貴公子様の器を産むには足りないだろうね。    24a1b:[体]の調教度がやや低い     美獣:     おや、ちょっとは進んだようだね…     といっても足りないことには変わらないけどさ。     この調子で続けとくれ。    24a1c:[体]の調教度がそこそこ     美獣:     そうそう、こういう感じでいいんだよ。     あの貞淑なお姫様が、今はどうなったろうね…     ふふふ、後で私も見に行ってみるかねぇ。    24a1d:[体]の調教度がやや高い     美獣:     だいぶ終盤に近付いてきた、って感じかな?     もうすぐ…という雰囲気が読み取れるよ。     なかなかいいセンスしてるじゃない、@。    24a1e:[体]の調教度が十分に高い     24a1e1a:[心]の調教度がやや低い      美獣:      もう十分、リース王女の肉体は闇に染まったようだね…      いい仕事ぶりだ…けどね、心の方が…ちょっと追いついてないかな?      あいつの顔も立ててやりなよ、ちゃんとね。     24a1e1b:[心]の調教度がそこそこ      美獣:      もう十分、リース王女の肉体は闇に染まったようだね…      心の方は体に比べると、染まりきってないようだが…      ここから進めてくんだろ?もうちょい頑張りな。     24a1e1c:[心]の調教度がやや高い      美獣:      もう十分、リース王女の肉体は闇に染まったようだね…      心の方も仕上がってきてるようだが…あと少し、かな?      ま、あんたにわざわざ言うこっちゃなかったかね。     24a1e1d:[心]の調教度が十分に高い      美獣:      上出来上出来、これで王女は器を産む役目を果たせそうだよ。      @、後はきちんと書類にまとめて提出しとくれ。      あんたの研究室にあったろ?最後の一仕事だよ。      24a1e1d1a:通常       美獣:       そうそう、まだやりたいことがあるならやってもいいが…       ほどほどにね。せっかく母体が完成したんだからさ。      24a1e1d1b:お小言の回数が多い       美獣:       そうそう、まだやりたいことがあるならやってもいいが…       あんた結構無茶させるからね…王女を壊さないでおくれよ。       そこさえ気を付けてくれれば、私は何も言わんけどさ。   24b:[体]の調教度<[心]の調教度    24b1a:[心]の調教度がそこそこ     美獣:     どっちも今一つ…かな?やや心が先んじてるって風に読めるね。     こんなのいつでもひっくり返るだろうけど…     まだまだ、あんたに働いてもらう必要があるね。    24b1b:[心]の調教度がやや高い     美獣:     ううん…心の方がちょっと先行して闇に染まってる、って感じかな?     最終的にはどっちも大事なんだが…私は体を先に進めてほしいね。    24b1c:[心]の調教度が十分に高い     24b1c1a:[体]の調教度がそこそこ      美獣:      心の方は十分みたいだが…体は全然進んでないよ、まったく。      いいかい?母体としての完成度がまず大事なんだ、      きちんと孕んで産めなきゃ、お話にならないんだからね?     24b1c1b:[体]の調教度がやや高い      美獣:      心の方は十分みたいだが…体はもう一歩、ってところかね。      この際どっちが先でもいいや、ちゃんとやりきっとくれ。     24b1c1c:[体]の調教度が十分に高い      美獣:      上出来上出来、これで王女は器を産む役目を果たせそうだよ。      @、後はきちんと書類にまとめて提出しとくれ。      あんたの研究室にあったろ?最後の一仕事だよ。      24b1c1c1a:通常       美獣:       そうそう、まだやりたいことがあるならやってもいいが…       ほどほどにね。せっかく母体が完成したんだからさ。      24b1c1c1b:お小言の回数が多い       美獣:       そうそう、まだやりたいことがあるならやってもいいが…       あんた結構無茶させるからね…王女を壊さないでおくれよ。       そこさえ気を付けてくれれば、私は何も言わんけどさ。  ―――――【分岐終】――――― 美獣: じゃぁ報告に対してなんか与えられるものは…っと。 えぇと…  ―――――【分岐始】―――――  1:総交配回数が3回未満  美獣:  …研究資金でいいか。  ほら、手、出しな。  ―――――【大分岐】―――――  2:総交配回数が3回以上   21a:リザードマン解禁前    美獣:    あんたの実験に参加するよう、亜人共に声かけてやるよ。    好きに呼ぶといい。   21b:ウェアウルフ解禁前    美獣:    よし、捕虜にした獣人を使えるようにしとこう。    大丈夫、薬と魔法で思考飛ばすから危険はないよ。    私はそういうの、得意だから、ね。   21c:ナバール兵解禁前    美獣:    むむむ…そうだな、私が支配してるところの…人間、はどうだ。    同じ人間に、王女を汚させるってのも案外おつなもんだろ。    ちゃんと操り人形にしとくさ、いつも通り。   21d:ナバール兵解禁後    美獣:    …と、思ったけど私にはもう思いつかないね。    金なら出してやるからさ、後は自分で考えとくれ。  ――――――――――【場所区分】―――――――――― *【邪眼の伯爵の部屋】  ―――――【分岐始】―――――  1:初回のみ  邪眼の伯爵:  @…お前に任せたリース王女の件、定期的に報告に来い。  任せた以上、監督するのも我々の務めだからな…  もちろん、美獣の方にも、同じように報告をしろ。  ―――――【大分岐】―――――  2:二回目以降  邪眼の伯爵:  報告か、では預かろう。  ふぅむ…   21a:総交配回数が0回    邪眼の伯爵:    何も書いておらんではないか。    くだらん…   22a:前回の報告から交配回数が変化していない    邪眼の伯爵:    私の記憶によれば、内容が前回と同じなようだが…    何か動きがあってから持ってこい、いいな。   23a:[体][心]の調教度合計が極めて低い    邪眼の伯爵:    どうにも変化が乏しいな…今一つ影響がわかりにくい。    もう少し進んでから、改めて見るとしよう。   24a:[心]の調教度≧[体]の調教度    24a1a:[心]の調教度が低い     邪眼の伯爵:     心を先に調教しろ、とは言ったが…     どちらもまだまだ進んではおらんようだな。     これでは貴公子様の器を産むには、程遠い…    24a1b:[心]の調教度がやや低い     邪眼の伯爵:     少しは進展したか?しかしまだまだ、といったところか。     引き続き、王女の魂を闇に染めていくがいい…    24a1c:[心]の調教度がそこそこ     邪眼の伯爵:     ほう、どうやら効果が表れ始めているようだな。     これでいい…王女の精神も変容を始めただろう。     後で私も見に行くとしよう。    24a1d:[心]の調教度がやや高い     邪眼の伯爵:     @、王女の言動はどうだ?     …なるほど、抵抗力を失いつつある、か。     闇を受け入れる器、もうすぐ完成のようだな。    24a1e:[心]の調教度が十分に高い     24a1e1a:[体]の調教度がやや低い      邪眼の伯爵:      心は既に、貴公子様の闇をも呑み込むことができるだろう…      だが体は未完成なようだな、報告を見るに。      両方が揃わねば意味がない…引き続き励め。     24a1e1b:[体]の調教度がそこそこ      邪眼の伯爵:      心は既に、貴公子様の闇をも呑み込むことができるだろう…      しかし体が追いついておらんな。少し均衡を欠いている。      このままいけば、そのうち仕上がるだろうが…     24a1e1c:[体]の調教度がやや高い      邪眼の伯爵:      心は既に、貴公子様の闇をも呑み込むことができるだろう…      体の方も残りわずか、どうやら終わりが見えてきたようだ。      あともう少しだ、任せたぞ。     24a1e1d:[体]の調教度が十分に高い      邪眼の伯爵:      @、これでリース王女は器として心身ともに完成した。      後はこれまでの流れを正式な書類にまとめておけ。      お前の研究室にあっただろう。大切な仕事だぞ。      24a1e1d1a:通常       邪眼の伯爵:       まだやりたいことがあるなら報告書をまとめる前にやっておけ。       母体を損なわん限り、お前の好きにしろ…      24a1e1d1b:お小言の回数が多い       邪眼の伯爵:       まだやりたいことがあるなら報告書をまとめる前にやっても構わんが、       王女が次の器の母体となる、大切な存在だということは忘れるな。       お前はどうにも彼女を雑に扱うところがある…   24b:[心]の調教度<[体]の調教度    24b1a:[体]の調教度がそこそこ     邪眼の伯爵:     むう…あまりどちらも進んではおらんようだな。     この段階でどちらが先行しているかを考えても仕方がない。     どう進めるか、見せてもらおう。    24b1b:[体]の調教度がやや高い     邪眼の伯爵:     体は闇の器として完成度が上がってきたようだが…     心がまだまだ、十分であるとは言えんな。     貴公子様の魂を預かる器だぞ?しっかりやれ。    24b1c:[体]の調教度が十分に高い     24b1c1a:[心]の調教度がそこそこ      邪眼の伯爵:      体は母体として十分な基準にあるのはわかった。      しかし心が随分と後れを取っている…      これでは産まれた赤子が器足りえん。対処しろ。     24b1c1b:[心]の調教度がやや高い      邪眼の伯爵:      体は母体として十分な基準にあるのはわかった。      心は…まだしばらくかかりそうだな、これでは。      どちらを先にしようが構わんが、あと少しだ。ぬかるなよ。     24b1c1c:[心]の調教度が十分に高い      邪眼の伯爵:      @、これでリース王女は器として心身ともに完成した。      後はこれまでの流れを正式な書類にまとめておけ。      お前の研究室にあっただろう。大切な仕事だぞ。      24b1c1c1a:通常       邪眼の伯爵:       まだやりたいことがあるなら報告書をまとめる前にやっておけ。       母体を損なわん限り、お前の好きにしろ…      24b1c1c1b:お小言の回数が多い       邪眼の伯爵:       まだやりたいことがあるなら報告書をまとめる前にやっても構わんが、       王女が次の器の母体となる、大切な存在だということは忘れるな。       お前はどうにも彼女を雑に扱うところがある…  ―――――【分岐終】――――― 邪眼の伯爵: お前の労をねぎらってやりたいところだが… さて、何にしたものか…  ―――――【分岐始】―――――  1:総交配回数が3回未満  邪眼の伯爵:  …まだ初期段階、資金に勝るものはあるまい。  取っておけ。  ―――――【大分岐】―――――  2:総交配回数が3回以上   21a:リザードマン解禁前    邪眼の伯爵:    この城の亜人共を、お前の実験に参加させよう。    必要とあらば、呼んでやれ。   21b:ゴースト解禁前    邪眼の伯爵:    冥界から霊体でも呼び寄せてみるか…    半人半霊の存在が産まれうるか…気になるしな。   21c:ゾンビ解禁前    邪眼の伯爵:    今度は死体に霊を乗り移らせてみるとしよう。    霊体と受肉状態で違いがあるか、知りたくはないか?   21d:ゾンビ解禁後    邪眼の伯爵:    …参った、どうにもいい案が思いつかん。    となるとやはり資金しかあるまいな。使い道は任せる。  ――――――――――【場所区分】―――――――――― *【居住区】 大浴場 ―居住者以外の立ち入りを禁ず― 食堂 ―居住者以外の立ち入りを禁ず― 購買部 ―居住者以外の立ち入りを禁ず― 運動場 ―居住者以外の立ち入りを禁ず―  ――――――――――【内容区分】―――――――――― *【♀解放時】 邪眼の伯爵: ほう…♀の個体が産まれたのか、珍しいこともあるものだな。 扱いについては@に一任する、好きにするがいい。 お前の責任と判断の下でどうするか考えろ。 美獣: 飼う場所は…そういや城の地下に空いてる居住区があったね。 @、あそこを使いたいなら使っても構わないよ。 まぁ、面倒は全部あんたの方で片付けてね、ってことさ。 美獣: 場所かい? あんたの研究所からまっすぐ下に降りてきゃあるじゃないか。 邪眼の伯爵: 移動しやすいように転送術式に書き加えておいてやる。 行くか行かぬかは…お前次第だがな。  ――――――――――【内容区分】―――――――――― *【お小言】 ≪死亡・発狂時の警告メッセージ≫  ―――――【分岐始】―――――  1:死亡   11a:初回のみ    美獣:    @…あんたねぇ、ちょっとやりすぎじゃないかい?    いくらリース王女が死んでも蘇るたってね、限度があるよ。    あくまであんたの仕事は貴公子様の器作りの下準備…   11b:二回目以降    美獣:    いやはや恐れ入るよ@、私よりよっぽど残忍だね。    あんたに任せたのは私らだから言うのもなんだが…    身体を仕上げろってのは何も殺せってことじゃないんだよ?   美獣:   身体がボロボロになって使えなくでもなったら…   そのあたりをもう少し考えてやっとくれよ?  ―――――【大分岐】―――――  2:発狂   21a:初回のみ    邪眼の伯爵:    @、どうやらリース王女が精神の均衡を欠いたようだな…    少々手厳しいのではないか?きちんと休ませねばな。    心の再生は魂に負荷を掛ける…できる限り避けることだ。   21b:二回目以降    邪眼の伯爵:    @…お前、自分の役目をわかっているだろうな?    貴公子様の御身体を宿す母体は闇に心を包まれていなければならん…    しかしそれは正気を失った狂人にしろということではないのだぞ。   邪眼の伯爵:   闇の力を受け入れる魂の器が欠ければ…言うまでもあるまい。   あくまで正気を保ったまま、苦痛を与えるのに留めるのだ。  ―――――【大分岐】―――――  3:両方   31a:初回のみ    美獣:    @…人間はあたしら魔族ほど頑丈じゃないんだ。    無茶すれば死ぬ、わかるだろ?    蘇らせるのだってタダじゃないんだからね…   31b:二回目以降    美獣:    まったくあんたは本当にもう…    @、リース王女の調教を任せてんだよ?    殺しちゃ駄目って言ったじゃないのさ。   32a:初回のみ    邪眼の伯爵:    確かに彼女の心を闇に染めろと言ったのは私だ…    だが@、壊せと言ったのではない、わかるな?    人間の精神は脆い、気を付けて扱うことだ。   32b:二回目以降    邪眼の伯爵:    精神についても同じだ…@。    砕けた心を繕ってもそこにはわずかな隙間が残ってしまう。    貴公子様の器を宿す母体…念には念を入れねばならんのだ。  ―――――【分岐終】――――― ≪聖杯使用累積時の警告メッセージ(ランダムでいずれか)≫ 美獣: 結構無茶させてんじゃないかい?@… 一々死なせて蘇らせて…あんまり感心しないね。 どうしたって無理が出てくるからね…気を付けな。 邪眼の伯爵: @…あまり聖杯に頼りすぎるな。 あれはあくまで無理やり心身を再生しているに過ぎん。 死にさえしなければよいというものではない… ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ★その他テキスト ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 ≪アイテム説明≫  ポトの油   肉体を癒す効果のある油。   次の交配での肉体ダメージを軽減する。  マーマポトの油   精神を癒す効果のある油。   次の交配での精神ダメージを軽減する。  安産の首飾り   妊婦や産婦に送られる装身具。   単独では意味を持たないが…?  淫蕩の秘薬   肉体に蓄積される快楽をより深くする秘薬。   ただし代償として負担もまた大きくなる。  堕落の秘薬   精神に蓄積される快楽をより深くする秘薬。   ただし代償として負担もまた大きくなる。  安産の首飾り   妊婦や産婦に送られる装身具。   単独では意味を持たないが…?  天使の聖杯   死者の魂を呼び戻す効果のある杯。   次の交配でリースが死亡・発狂した場合復活させる。  呪印:♂   産み分けの呪い。次の交配で必ず♂が産まれる。   他の呪印とは相反する。  呪印:♀   産み分けの呪い。次の交配で必ず♀が産まれる。   他の呪印とは相反する。  呪印:多産   限界まで多くの子を産ませるが、負担も大きくなる呪い。   他の呪印とは相反し、確率で全て未熟児となる。  禁呪:唯物主義   肉体を魔王の母たる器に相応しきものへと作り変える。   抗うことはできない。  禁呪:唯心主義   精神を魔王の母たる魂に相応しきものへと作り変える。   抗うことはできない。  禁呪:純潔再生   心身を汚れなき頃の状態に限りなく近づける。   だが偽りの処女に、いったい何の意味があろう?  ――――――――――【内容区分】―――――――――― ≪画面の見方について ―檻の前―≫ ここではリースのいる檻の前の説明をします。 リースの交配相手を選択している場合、 ここにリースと相手のグラフィックが表示されます。 胸のサイズで3パターン、通常/妊娠で2パターン、 計6パターンが表示されます。 右上ウィンドウの説明をします。 [体]アイコンは現在のリースの体力を示すものです。 満タンから減るにつれて色が濃くなっていきます。 [心]アイコンは現在のリースの精神を示すものです。 満タンから減るにつれて色が濃くなっていくのは[体]と同じ。 いずれかが0になってしまうとリースは死亡・発狂します。 緑と赤の宝珠のアイコンは、[体]と[心]の調教進行度を示します。 交配相手ごとに決まった数値が加算されていき、 最終的に一定のラインまで上げるのが目標です。 ラインに達しているかによってエンディングが分岐します。 ウィンドウ下部のアイコンは現在効果を発動している道具です。 [体]や[心]へのダメージを軽減したり、進行度を上げたりします。 これらのアイテムは消費するものとしないものがあり、 研究室で該当キャラから購入することができます。 左上のポップアップの説明をします。 交配によって解禁された図鑑の記述内容を表示したり、 出産した子を自動で売却して得た総額などが表示されます。 ポップアップに関しては他のマップでも出る場合があります。 左下の本は、交配相手によって順次解放されるイベントの回想用、 および交配相手や出産した仔の図鑑などの閲覧用です。 ただし一部の内容については、条件が設定されています。 同じ色のものが研究室にもあり、役割も同じです。 右下の本は、交配相手、アイテム使用、休憩などを選択するものです。 研究室に同じものがあるのは回想用の赤い本と同様。 以上で画面上に配置されているものの説明は終わりです。  ――――――――――【内容区分】―――――――――― ≪画面の見方について ―研究室―≫ ここでは拠点となる研究室の説明をします。 この書類は美獣・邪眼の伯爵への報告書です。 ここを調べれば現段階での調教度に応じたエンディングを迎えます。 日数指定などはありませんのでいつでも報告可能です。 ただし強制的にエンディングとなる条件も一部あります。 左の本は、交配相手によって順次解放されるイベントの回想用、 および交配相手や出産した仔の図鑑などの閲覧用です。 ただし一部の内容については、条件が設定されています。 同じ色のものが檻の前にもあり、役割も同じです。 右の本は、交配相手、アイテム使用、休憩などを選択するものです。 檻の前に同じものがあるのは回想用の赤い本と同様。 使用するアイテムなどはこの研究室で入手することになります。 真ん中の黒い本はゲームが進行していくと選択できるようになります。 どちらかといえばおまけ用ですので、エンディングには関係しません。 解放された時に、別途メッセージが表示されます。 これらのキャラクターは交配前に選択するアイテムの入手や、 リースの胸のサイズ変更などのおまけ要素を担当します。 なお、一部キャラは条件を満たして初めて出現します。 以上で画面上に配置されているものの説明は終わりです。  ――――――――――【内容区分】―――――――――― ≪全体的な流れについて≫ ここではゲーム全体の流れを説明します。 基本的にはリースの交配相手と補助アイテムを選択し、 その交配(種付け〜出産)を1サイクルとして進行します。 1サイクル終わると、出産した仔の内容によって図鑑が解放されます。 そのため、1サイクルだけではその種全てを解放することはできません。 回想に関しては交配の進行段階に応じて自動的に解放されます。 時間経過および部屋の切り替えのいずれかで進行していき、 Rキー(デフォルトのキーボードではWキー)を押すことで、 待機時間を無視して強制的に1サイクル終えることもできます。 交配相手として選択した相手に応じて、 既定の数値が、[体][心]と表示される体力と精神力から引かれます。 これらから引いた分はそれぞれの調教度に加算されていき、 この調教度を貯めていくのがゲームの目的となります。 調教度が一定値を超えたかどうかでエンディングが分岐します。 (なお一部のみ、それとは違った条件を有します) 数値の上昇・軽減や産む仔の内容への干渉などにはアイテムを使います。 基本的に産まれた仔は自動で売却(ルク換算)されます。 順次解放されていく交配相手を選びながら、 それによって調教度とルクを稼ぎ、また別のものを選び… といったことを繰り返していくゲームだと思ってください。 なお[体][心]のいずれかが0になるとリースは死亡・発狂します。 休ませれば最大値まで回復するので、適宜休ませましょう。 ただし休ませず連続で交配を行うと、調教度にブーストが乗ります。 早く進めたい場合は連続させるのもありかも…? 以上で全体的な流れの説明は終わりです。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34