聞いてくださいシズカ。 私は先日の黒とゲソモンとの戦い(※1182486568)で痛感しました。私は未だに力不足だと このままではいずれ皆との差も広まりやがてシズカ自身を危険にさらしてしまうかもしれない…それは嫌なのです だから私もエンジェウーモンのままに甘んじることなく、より上の究極体に───。 「ヤダーーーーーーーッ!」 「シズカ!?」 「エンジェウーモンがいい…エンジェウーモンのままが良いいいいーーーーーー!!」 「シズカ!??」 ・デジモンイモゲンチャー第幕間「羽崎シズカの憂鬱」 「───ということがあったのです。きっとシズカは目先の力に溺れ私が変わってしまうかもしれないと怖くなってしまったのかもしれません…いつになく激しく取り乱して、心配をかけさせてしまいました」 「そうなのシンラ?」 「そうなのかな…」 エンジェウーモンの口から告げられた相談事に、若干含みを感じるシズカの応対に犬飼シンラは疑問を抱きつつも真摯に受け止めようとしている だがエンジェウーモンの傍らには、件の少女の姿は見当たらない 「そういえばそのシズカさんは?」 「ええ、なにやら人探しをしにったようです。心配ないから留守番をしていてほしいと」 「そうなのか…」 「やはりシズカは私が頼りないのでしょうか…」 「そんなことないさ!きっとエンジェウーモンの事を考えて何かしようとしてるんだよ。信じてあげなきゃ」 シンラの明るく芯のある呼びかけにエンジェウーモンは少しだけ肩の荷が下りた気がした 「…その通りですね」 「もし心配なら、ボクらが捜しにいくよ」 「ありがとうございます。少し…様子を見てきてもらえませんか」 「───なるほど。"進化以外の方法でエンジェウーモンを強くできないか"か…ですか!」 「いいのかいアタシたちなんかが相談相手で…」 座り込んだ羽崎シズカの手前、目を輝かせる小柄な白衣の少女・天野さやかと、けだるげな面持ちのシャツ姿の女性・日子守響子が唸る 片や天才発明少女、片やメタルエンパイヤを脱したメガドラモン率いるグレイトエンパイア参謀という頭脳役 いずれもデジモンの強化に精通したプロフェッショナルだ 「そもそもエンジェウーモンは完全体デジモンだよな?究極体相手に戦うにはやっぱり進化するのが安パイだと思うんだけど…」 「えーとですうね、エンジェウーモンの進化先だと(図鑑ポチポチ)…やっぱりメジャーなのはオファニモンかホーリードラモンですかね」 「ヤダーーーーッ!!」 「「!?」」 「…あ、ご、ごめんなさい」 急に大声を出したシズカは明らかに動揺していた 「でもその…やっぱり、今のままが。エンジェウーモンがよくて」 「ふーん…なるほどね。となるとやっぱり…」 響子がノートPCを素早く叩き、画面を突き出す 「ここはやはり強化外骨格!どんな一撃にも屈しない搭乗型のフルアーマー(完全装甲化)なエンジェウーモンなんてどうだ!」 「いいえここは火力を取るべき!エンジェウーモンのホーリーPOWERを応用したブレードや背部キャノンミサイルにドリルにドリルのフルアームド(完全武装化)ですよ!」 キッと身構えた双方に火花が散る 「バカをいうなぁ究極体と完全体の力量差を埋めるにはまずタッパとカラダの基礎的な強さが…」「それだと挙動が鈍重だし乗り込み型だとエンジェウーモンのコレコレがー…!」 激化する討論。巨大ロボか対艦巨砲主義ドリルかという意見の応酬にシズカの意見は容易く飲み込まれて割って入る隙を見失う …そこへ助け船がやってきた 「あれっこんなところにいたんだシズカさん」 「あっシンラ君…」 「おやこんにちはシンラ君」 「また会ったなボウズ。それでどうしたんだ」 「エンジェウーモンに頼まれてシズカの様子を見に来たのよー。ねっシンラ」 「そうそう。…聞いた感じ、やっぱりエンジェウーモンの進化が……その、嫌なの?」 おずおずと問うシンラに対し、シズカはたっぷりと迷った末に首を振る 「ううん。そうだけど、そうじゃなくて……」 「んー……あっ、そういえば!」 不意にシンラがひらめいた。そして皆を一堂に集め耳打ちする 「完全体の姿のまま究極体になる方法、アレだよ!クロウさんがやってる───」 「デジタケデジタケ、フン・フン・フ……ん?なにやってんだオメーら」 噂をすればなんとやら。なるほど夕食のデジタケを鼻歌交じりに拾い集める鉄塚クロウが雑木林の中からスイと出た 「鉄塚さぁーーーん!」 「(ドゴォ)ぐえー!おいさやかメタルマメモンでどつくんじゃねーそんで離れろ!?」 「いいえ逃がしませんッこれは研究に必要なのでー!その『デジヴァイスバースト』を貸してください!!」 「何故ッ!?」 「シンラ君に聞いた限り、そのレアなデジヴァイス持ってる知り合いと"例のバースト"してるのアナタだけっぽいじゃないですかー!だから研究のため、シズカちゃんのためにも!ちょっとだけ!ちょっとだけ!」 「…本音はよ?」 「ネジ一本まで分解して調べつくしたいですうへへぇー」 「だーっ!二度もデジヴァイスぶっこわされてたまるかーっ!(※MATHUROで一回iCぶっ壊されてる)」 「そこをなんとか!なんとかぁ!うっうっうっ」 「オイ泣くなって!」 「ウエーン!ズビー」 「涙じゃなくて鼻水じゃねーかッ!」 「まったく、こんな小さい女の子泣かせるとかオトコの風上にもおけないね」 「響子さーんおねがいしまーす!」 「とばっちりもいい加減にしろよ!」 「アンタたち、そこのツンツン頭捕まえて!」 「「「「「「「「応!!我ら、グレイトエンパイア参上ッッ(デェエエエエエエエエン)!!!!」」」」」」」」 「うわデター!?」 「お縄を頂戴するぜ鉄塚クロォォオオオオウ!」 「ぎゃああああその数は反則d…オアーーーーー!!」 …数時間後 「でっきましたー!デジヴァイスバーストのコピーモデル!!」 「ふぅー…大変だったけどアタシとさやかで何とかなったね」 「うおお…おかえりデジヴァイスバースト。ダイジョブか?壊れてねーか?よかったアァァー」 強奪から無事帰還したデジヴァイスに頬ずりするクロウを他所に、さやかの手に真っ白なボディのデジヴァイスバーストが掲げられてシズカに譲渡された 「コレが…デジヴァイスバースト」 「盲点だったわ。本来究極体にのみ用いられるバースト進化…見た目がほとんど変わらないまま、デジモンの能力を限界まで引き上げる進化。完全体に使えるパターンもあったとは!」 「なんだか特級の例外な気もするけれど…今回はそのバースト機能だけを真似てね?一時的にシズカさんのデジヴァイスとリンクさせて、エンジェウーモンへのバースト進化を促せるはずで…」 「…つか、気になったんだが」 興奮冷めやらぬ科学者二人にクロウが挙手する 「シズカはデジソウル出せんのか?」 「「「あ…」」」 「何にも考えてねーのかよっ!?」 晩飯素材集めにデジヴァイス強盗に会い、暑苦しい筋骨隆々メタルデジモンどもにもみくちゃにされた挙句簀巻きで数時間放置されたクロウはしびれを切らしツッコんだ その先の癇癪を起こすよりもはやく、木々の向こうから悲鳴が聞こえ皆が身構える 「なんだ!?」 「シンラー!シズカー!大変だエンジェウーモンが!!」 「えっ!?」 「く…!」 「また会ったわねエンジェウーモン。今日はあの子は一緒じゃないようね」 「みんな…はやく逃げて!」 「ほらいくよ…今度はもっといい悲鳴を聞かせてね!」 デジモンイレイザーの配下、黒とゲソモンの高笑い そしてエンジェウーモンの悲鳴がこだます シズカたちが駆け付けたその時には、いつかのようにエンジェウーモンの身体が不気味な触手に絡めとられギリギリと締め上げられている最中だった 「え、エンジェウーモン!」 「シズカ…来てはだめッ」 「あははっ遅かったね選ばれし子供たち!下手に動くとエンジェウーモンがどうなっちゃうのかなぁ(ギリギリ)」 「あああああっ!!」 「ど、どうしよう…このままじゃ」 おびえるシズカに仲間たちは策を考える 「バステモン、なんとか助けられないか?」 「む、この距離だと下手に動いたらエンジェウーモンが危なそう…」 「くっそ、ルドモンがいりゃあバーストして雷速化で…!」 「バースト…そうだよシズカさん!デジソウルバースト!」 「へっ?で、でもデジソウルなんて出したこと…」 「おい鉄塚クロウ!なんかコツとかないのかい」 「コツだぁ!?あ゛ー……なんつーかこう、気合だ!」 「聞いたアタシが馬鹿だった!」 「待てって!俺は実際は殴ってデジソウル出すけどよ、やっぱ気合は大事だぜアレ。アイツを倒してえとか…アイツを"助けてぇ"とか!」 助けたい。エンジェウーモンを助けたい クロウの一言にシズカは一抹の雑念を振り払い集中する 左手に一緒に握りしめたデジヴァイスバーストコピーと、エンジェウーモンとのつながりたるデジヴァイス… その双方に光が宿る そして、 「まっててエンジェウーモン…いま、"助ける"から!」 その想いが、昂ぶりが、シズカの右手に小さな熱を帯びて灯る! 「あっ!」 「デジソウル…デジソウルだ!」 「マジか!」 「本当だ!」 「これが…デジソウル」 暖かく澄んだ光を見つめ、綺麗だとシズカは感嘆する 「すごい…こんな、私の温かい……あれっ?」 ───あれ…"私の温かいの"が………"エンジェウーモン"に…注がれ…? プチン カッ ズゴォオオオオオオオオオオオ 「「「「なんじゃそりゃーーーーー!?」」」」 瞬間、シズカの全身から爆ぜ天まで駆けのぼる閃光 その正体は…並々ならぬ量のデジソウル 「フ、フフ、うふふ…(キュンキュン)」 「シ、シズカ?…シズカさーん?」 「待て待て待て俺が影太郎と戦った時でもこんな出なかったぞデジソウル!?」 「うおっまぶしー!」 「なー、なななななんなのアレー!?」 「し、シズカ…?」 もはや敵味方関係なくその場に居合わせた者たちが須らく狼狽する中、ただひとりシズカは握りしめた煌めきへ手をかざす 「チャージ…デジソウル・バーストッ!!」 放たれた光の矢…そういうには眩すぎる光の柱がゲソモンごとエンジェウーモンを飲み込んだ 「ぎゃああああーーー!?」 「げ、ゲソモーーン!?」 感じる シズカの鼓動を シズカの熱を シズカの魂を ───《エンジェウーモン・バーストモード》!! 降臨する光の女神。その躯体を修道服のようにしなやかな黒衣が悩ましく包み込み、淡い光の羽衣とたおやかな翼を翻し、白い仮面の下に微笑みを称えながら…彼女はパートナーの元へと 「や、やりやがった…バーストモード!」 「…そういえばクロウさん、完全体をバーストした時にあまったデジソウルって跳ね返ってくるんですよね?」 「あの量の余波が!?」 「あ、あれ…これって」 戸惑いをあげるシズカの声にバッと振り返る一同。その向こうに先ほどまでの少女の姿はなく ただ天を揺蕩うあのデジモンと同じような衣を身にまとい、凛と佇まうもう一人の女神が 「「「「変身してるーーーー!?」」」」」 「これって…私、エンジェウーモン?」 「シズカ」 「あっ、エンジェウーモン…!」 「シズカ、あなたの心の光…私にしっかりと届きました。一緒に戦ってくれるのですね……綺麗ですよシズカ」 「エンジェウーモン……うん、あなたも、すっごくきれい…」 掌を重ね、握りしめ二人は愛おしく頷き合う 「な、なぁぁ…どうなってんのよこれ!?」 「邪悪なる魂もつ者よ。私たちが浄化する…!」 「くぅ、色が変わって二人に増えたくらいで何よ!」 黒の威嚇に女神たちが掌を重ねたまま、天に、地に叫ぶ 「ブラック・サンダー!」「ホワイト・サンダー!」「まてまてまてその詠唱はマズ…!?」 誰かが叫んだが、それより早く絆を愛を束ねたモノクロの光が駆け抜けた 「―――《エンジェル…マーブル・スクリュー》!!!!」 「…はっ!?」 ソファーの上で毛布にくるまりながら、不意にまどろみが爆ぜた シズカがあわてて周囲を見渡すと夕暮れ時であり、静まり返った部屋の中…彼女の声がした 「お目覚めですかシズカ。なにやら微笑ましい顔で夢を見ていたようですが…」 「夢?……ゆめぇ?」 「し、シズカ?どうしたのですか今度は急に泣き出しそうな…」 「エンジェウーモン…うぅぅ…」 「大丈夫ですよ。私はいつでも変わらずここにいますから」 「ありがとう…すきすき大好き」 ・後のイベントで運よく天野さやか、日子守響子、秋月影太郎などに出会えるとバースト用のデジヴァイスを作ってもらえる…かもしれない