イベント:「隔絶電脳異界セフィロ・サーチャー」 第8節 進行度1/2 ステージ:セフィロ・サーチャー 第十セフィラ:マルクト 満点の星空から逆さまにそびえる王城と、地面に広がり彼方まで続く一面の白。 周囲には遺跡にありそうな像の残骸や石柱が転がっており、ところどころから赤い光の柱が吹き出している。 最後の戦いの舞台へとやってきた一同は、周囲の光景に目を丸くする。 海風人手 「相変わらずすげえ景色だな…。」 佐辺優子 「ああ、禍々しくもあり、神秘的でもある。」 九根針尾 「よし、全員揃ってるな…。ってあれ、鏡見くんいつの間に進化してたんだ?」 メルキューレモン 「ん?それはまあ、最後のセフィラでござるからな。いきなり攻撃される可能性もあった故。」 九根針尾 「そうか、それもそうだな。では、私も今のうちに バイオ…エボリューション!」 全員がいることを確認した一行が周囲を見回していると、どこからともなく声が響く。 ??? 「へぇ、本当にここまでやってきたんだ。」 女性のような声が響き渡る。 一行が声のする方へ顔を向けると、そこには一人の人間が、玉座と思わしき場所に腰かけていた。 ??? 「すごいすごい。やっぱ選ばれし子供たちってのはすごいね。流石だよ。」 賛美の言葉をおちょくるように吐き出し、わざとらしく拍手をする謎の女性。 佐辺優子 「人間…?いや、ソウルリッパーのような再現体か?」 ??? 「あははは!あんな模造品といっしょにしないでよ。あたしは正真正銘、本物の人間だよ。 私の名前は赤目みえり。セフィロ・サーチャーの主の代理、みたいなのよ。 実際に施工管理してるのはシェイドモンだから。私はただ保守点検。」 クーレスガルルモン(黒) 「ほう。自ら黒幕と名乗るとは、潔いではないか。ならば単刀直入に言おう、今すぐ投降せよ。」 赤目みえり 「……はぁ。つまらないセリフ。ほんと、正義の味方ってつまらないわ。 もっとこう、有無を言わさず斬りかかるくらいの気勢は見せてくれないと。」 ブリッツグレイモン(黒) 「俺たちはお前と違って卑怯な手は使わないからな。 赤目みえり 「ほんとうにつまらないわ。 何が目的だとか、何でここにいるとか、他に聞くことあるんじゃない?」 海風人手 「うるせぇんだよクソアマ!世界がやべえってんで焦ってんだよ、 テメェみたいな三下の相手正面からするわけねえだろボケ!」 赤目みえり 「だめじゃない。女の子がそんな言葉遣い。 …まあいいわ。シェイドモン、皆殺し、よろしくね。」 シェイドモン 「は、は、は、は、は。 お前は。デジモン遣いが、荒いな? は、は、は、は、は、は、は、は、は、は、は、は。」 彼女の影から湧き出した影がシェイドモンを形作る。 悪態をつきながらも、彼は笑いながら8体の分身を作りだす。 それを見た一同に緊張が走る。 デジマスター 「おっと、そうはさせないぜ。」 デジマスターはすかさずキーボードを操作し何かを起動する準備に入る。 味方の周囲に青白い光が溢れ、シェイドモンの分身を掻き消していく。 デジマスター 「オマエの洗脳は効かんぜ。ついでにもう一つの幻惑攻撃もな。残念だが諦めな。」 シェイドモン 「は、は、は、は、は。 みえり。私の力は通じないようだ。」 赤目みえり 「あら残念。手も足も出ないわね。」 シェイドモン 「は、は、は、は、は、は。 私には、もともと手足はない。」 メルキューレモン (ふむ…あの余裕綽々な雰囲気。奥の手があると見たでござる。) 赤目みえり 「じゃ、次の手段ね。」 みえりはそう呟くと、スマートフォンと取り出し操作し始めた。 すると一同の周囲に、今まで倒してきたデジモンの影が生まれる。 赤目みえり 「数で攻められたらひとたまりもないよね。 ってことで。みんなー、がんばってねー。」 みえりは小ばかにしたようなセリフを吐き、気怠そうに手を振る。 海風人手 「けっ!予想してた通りだぜ。つまんねーのはどっちだってんだよ! 影ばっかり呼びやがって、芸がねーんだよ芸が!」 ダーくん 「へへっ!俺たちにかかりゃァこんな雑魚ども、軽く一ひねりってもんだッ! みんなァ!行くぜェッ!!!!」 戦闘:WAVE1/3 フェレスモン×1 メタリフェクワガーモン×1 シャペロモン×1    WAVE2/3 ベリアルヴァンデモン×1 ダンデビモン×1    WAVE3/3 メタルファントモン×1 ディージャンモン×1 ――戦闘終了後 デジマスターの支援を受けた一同は、今までの強敵すら軽くあしらうほどに強化されていた。 かつての強敵の影を次々と撃破していき、すべての敵が倒される。 九根針尾 「ふんっ!再生怪人、恐るるに足りん!」 赤目みえり 「はぁ……。結構大物揃えたんだけど、だめかぁ。 やっぱ人間とパートナーデジモンたち相手じゃ、こういうのは通じないか…。」 シマユニモン 「どうした?もう終わりか?」 武福川駆 「おっ、中々強気じゃないか、シマユニモン。」 シマユニモン 「あたりまえだ。我々はずいぶんと苦渋を飲まされたのだ。 ここでガツンと叩かなくては気が済まぬよ。」 赤目みえり 「ふぅん……。それじゃあ、とっておき、出しちゃおうかな。」 みえりはそう呟くと、スマートフォンと取り出し操作し始めた。 すると、鏡見たちとみえりの間に不気味な暗黒の球体が現れる。 暗黒の球体は激しい轟音を伴いながら蠢動し、周囲の空間が少しずつ歪んでいく。 佐辺優子 「なんだ…何が出てくるんだ…?」 ダーくん 「へっ、何が来たって俺たちの敵じゃねえぜッ!」 赤目みえり 「油断大敵よ、舐めてかかると貴方たちだけじゃなくて私たちも死ぬから。 頑張って倒してね?」 武福川駆 「私たちもって、お前それどういう――」 直後、暗黒の球体が破裂する。 激しい衝撃と共に球体の中から何かが現れる。 それは、全身にびっしりとゴーグルを身に着けた謎の人影だった。 ゴーグルだらけの人型 「6j5qaf5of@;dbs@mqat?」 佐辺優子 「あれは…人?」 ブリッツグレイモン(黒) 「ゴーグルだらけじゃねえか…なんだあれ。人間なのか?」 筑波梨李&トブキャットモン 「<へ、変態なんぬうううう!!>」 武福川駆 「たぶん、あいつもソウルリッパーと同じ影なんじゃ。」 シマユニモン 「それよりアイツ…!」 全身にびっしりとゴーグルを身に着けた謎の人影のそばに 巨大なデジモンの影が浮かび上がる。 ゴーグルだらけの人型 「b@ーh@.fz:weue94q@u。q@t@ty:eue。 6j5qafp@yeyb\r、vslsdwetdwt5xue。」 ゴーグルだらけの人型は何かを喋っているが、 一同には何を言っているかわからない。 何かを言い終わった後、彼の隣にいるデジモンの影が臨戦態勢を取る。 ??? 「33、0qdf、jqdwm、3dgmk、qai、l94x;.s、e4kt。」 デジマスター 「みんな気をつけろ…そいつはオメガモン。 いや…ただのオメガモンじゃない。オメガモンズワルトだ!」 武福川駆 「あれがオメガモン!?あんな禍々しい奴がか!?」 クーレスガルルモン(黒) 「来るぞ!みんな構えろ!」 オメガモンズワルトDEFEAT 「bs@m、qa9、s@4t、6\tu、0qd=、s/wh;、s@4t、s@4t。」 レイド:WAVE1/1 オメガモンズワルトDEFEAT×1 オメガモンズワルトDEFEATの総HPを0にすると撃退戦解禁 撃退戦 ――戦闘終了後 オメガモンズワルトDEFEAT 「3lt@s4、bs@mqa。s@4t、3h=、4aq6dw、h;…。」 ゴーグルだらけの人型 「jxt…6/t@myr@0.s=…q6rsf………。 33…0qdfjq……6k;kd/e=…fqpr@i…fw.s…e4…kt………。」 オメガモンズワルトを撃破したと同時に、 ゴーグルの男の体は黒い粒子となって消えていく。 ブリッツグレイモン(黒) 「ハァハァ、結構、やるじゃねえか…!」 クーレスガルルモン(黒) 「ゼェ…ゼェ…ああ、こいつは…かなりの強敵、だったな。」 ダーくん 「へへッ、まあ、俺たちの敵じゃ…なかった…なッ!」 激戦を制した一行だったが、かなりの消耗を強いられていた。 赤目みえり 「あーあ。奥の手、つぶされちゃった。どうしようかしらね…。」 シェイドモン 「所詮は影、奥の手には少し弱かったな。 赤目みえり 「あら、影みたいな貴方がそれ言う?」 シェイドモン 「は、は、は、は 一本、取られたな。」 彼らは奥の手を潰されたのにも関わらず、余裕を見せるみえり。 殺気渦巻く戦場にいながら、気の抜けるようなやりとりを繰り広げる始末。 海風人手 「余裕ぶっこおいて漫才してんじゃねーぞクソアマ! さっさと降参しろ!そんで…ぁんだっけ…スピリット?だっけ?差し出しやがれ!」 赤目みえり 「はいはい、降参降参。勝手に持って行っちゃって もう私たちに打てる手ないし。」 みえりは両手を挙げて降参のポーズをする。 海風人手 「か、勝手に持っていけって…。」 佐辺優子 「油断するなよみんな。 こんなこと言ってるが、まだ奥の手を隠してるかもしれない。」 赤目みえり 「ないない。残ってないって。 鋼のスピリットがあるのはこの裏、椅子の奥に部屋があるの。そこに安置してるわ。 ほら、勝手に持っていきなさいな。」 椅子で肘をつき、無気力な表情で頬杖をつくみえり。 デジマスター 「メルキューレモン、回収を頼めるかい。」 メルキューレモン 「ええ、もちろん。デジマスP、ブリッツグレイモン殿をお借りしても?」 デジマスター 「もちろんだ。残りのみんなはみえりとシェイドモンの監視を頼む。」 一同 「了解!」 奥の小部屋へと向かうメルキューレモンとブリッツグレイモン。 3人を意にも返さず、無気力な態度のまま欠伸までしだすみえり。 そんな彼女を、居残り組は注意深く見張る一同。 海風人手 「くそっ、余裕こきやがって…。なんかむかつく。」 佐辺優子 「ナイトモン、分かっているだろうが、少しでも変な動きをしたら…。」 ナイトモン 「分かっておりますとも。即刻あの首を撥ね飛ばします。」 赤目みえり 「おお、こわいこわい。大丈夫よ。もう抵抗する気も起きないから。」 武福川駆 「…信用できるかよ。」 椅子の裏の小部屋、生物の内臓のようなピンクの肉壁に覆われた生々しい内装に、メルキューレモンたちは少しだけたじろぐ。 部屋の中央、糸を引いたような肉の塊に覆われながら中空に座す鋼のスピリットを発見する。 メルキューレモン 「これは…鋼のビーストスピリットでござるか。 なるほど、セフィロトを模した構造はコレの仕業でありましたか。」 どこからともなく取り出したデジヴァイスを翳し、鋼のスピリットを回収するメルキューレモン。 ブリッツグレイモン(黒) 「これで一件落着だな!」 メルキューレモン 「…そうですな、そうであればいいでござるが…。」 ブリッツグレイモン(黒) 「なにか気になることでもあんのか?」 メルキューレモン 「……いえ。さあ、皆様方と合流しましょうぞ。」 何かを思案するメルキューレモンの様子が気になるブリッツグレイモンだったが、 合流を優先し、全員が部屋を後にした。 武福川駆 「お、戻ってきたな」 部屋から出てきたメルキューレモンたちの無事を確認し、 みえりの罠で何かが起きるのではないかと身構えていた一同は安堵する。 メルキューレモン 「スピリットは無事回収完了でござるよ。」 ダーくん 「よしッ、これで一件落着だなッ!」 赤目みえり 「本当にそうかしら?」 世界の危機から脱したことに安心しきっていた一同に、みえりは不穏な言葉を投げかける。 まるで、お前たちはまだ危険のただ中にいるのだ、と言わんばかりに。 筑波梨李 「どういう意味なんぬ!」 赤目みえり 「考えてもみなさいよ、この空間は数多の世界から蒐集されたデータを 鋼のスピリットが空間として形成して、一つの世界として成立させていたのよ? その世界の核が無くなったりしたら…。」 周囲の景色に少しづつ亀裂が入り、ピシッピシッと音を立てて崩れ始める。 赤目みえり 「あーあ、やっぱり。壊れ始めちゃったわね。 そりゃそうよね、たくさん集めたんだもの、自分のデータ(おもさ)に耐えきれないわよね。」 武福川駆 「なんか…崩れ始めてるぞ!」 佐辺優子 「デ、デジマスター!これは一体!」 デジマスター 「このセフィラは最下層だ。データが積み上げられた、いわばダムの底にある気泡のような場所だ。 気泡を気泡たらしめるスピリット(くうき)がなければはじけてつぶされる、至極当たり前の話さ。」 海風人手 「んな冷静に解説してる暇あんのかよ!っていうかそういうことは最初に説明しとけよ! このままだとアタシたち全員つぶれて死ぬってことじゃん!」 デジマスター 「大丈夫さ、手はすでに打ってある。」 デジマスターは手元のキーボードを叩く。すると、一同の前に空間の歪みが発生した。 デジマスター 「デジタルワールドに通じるワープポイントだ!みんな早くその中――――」 セリフを言い終わる前にデジマスターとの交信が途切れる。 それとほぼ同時に、目の前に生じた空間の歪みが消滅する。 ブリッツグレイモン(黒) 「お、おい!ワープポイント消えちまったぞ!」 一同 「!!!」 ブリッツグレイモン(黒) 「まずいぞ、マスターの援護なしでこの状況は…!」 赤目みえり 「あはは!消えちゃったねぇ、大変だねぇ、このままじゃみんな死んじゃうね。 ま、あたしの仕業なんだけど!あはははははは!」 デジマスターによる空間への干渉・操作を、みえりは事前に分析していた。 そして、彼らが空間の要であるスピリットを回収したのち、デジマスターが出口を作り脱出することを予想。 そんな彼らに、脱出目前で出口を封じるという嫌がらせをするため、みえりは大人しく鋼のスピリットを回収させた。 空間の要は失ったが、管理者権限は依然として彼女たちにゆだねられていたのだ。 海風人手 「テメェ!」 シェイドモン 「は、は、は、は、は その絶望、実に、甘露。 甘露、甘露、甘露、甘露、甘露、甘露、甘露、甘露。」 佐辺優子 「なんて悪趣味な奴だ…!」 ダーくん 「オイオイオイ、どうすんだよこれッ!何か手立てはッ!」 トブキャットモン <流石のぬも、こればかりは焦りが出てくるんぬ…。やべーんぬ!> 一同に焦りと恐怖が生まれる。 デジマスターによる援助のみを命綱にしていた彼らには、もはや成す術がない。 そんな彼らを、みえりとシェイドモンは喜劇を見るかのように腹を抱えて嗤う。 筑波梨李 「か、鏡見くん…、ど、どうしよう…、このままじゃ…って、ぬあぁぁぁ――――。」 トブキャットモン <なんなんぬううぅぅぅ――――。> 筑波の隣には鏡が浮かんでいた。メルキューレモンが腕に装着している鏡であった。 メルキューレモンはおもむろに筑波とトブキャットモンたちを押し倒すと、彼女たちの姿は鏡の中へと消えていった。 海風人手 「お、お、おい!メルキューレモン!一体なんだ今の!」 メルキューレモン 「話はあとでござるよ。さっさと鏡の中に飛び込むでござる。」 海風人手 「か、鏡の中ァ!?オイオイオイ!これ入って平気な……うおぁぁ――――」 メルキューレモン 「大丈夫だから、早く行くでござるよ!」 ブリッツグレイモン(黒) 「あ、あの。俺たち入れ…」 メルキューレモンが指を鳴らすと、鏡が巨大化する。 一同は鏡へと走り出し、鏡面に飛び込んでいく。 赤目みえり 「あら、これはまずいわね。逃げられちゃうわ。 シェイドモン。お願いね。」 鏡見淡世 「無駄でござるよ。」 メルキューレモンはデジヴァイスを取り出し、デジコードを身にまとう。 スピリットエボリューションではない、デジコードを用いたデジモンのデータとの融合。 かつて、デジタルワールドの存亡を掛けた戦いにおいて用いられた、三大天使のデータ。ケルビモン。 そのデータを纏い、二人の前に立ちはだかる。 赤目みえり 「おどろいた。あなた、そういうこともできるんだ」 みえりは目を丸くした。 スピリットを用いて進化する人間は知っていたが、 そこから更に別のデジモンに変化するものなど見たことがなかった。 ケルビモン 《三流未満の幻惑が、我に効くと思うたか。  愚かしい破滅願望者よ、貴様の児戯には飽いた。  大人しく、滅びを享受せよ。  ――末期とは潔くするものだ。》 ケルビモンの演技をする鏡見は巨大な黒い障壁を展開し、 シェイドモンの幻惑と憑依を軽々と打ち払う。 シェイドモン 「は、は、は、は これは、お手上げだな。」 赤目みえり 「あら、上げる手があったの?あなた。 …今日はギャグセンスが光ってるわね。何か良いことでもあった?」 シェイドモン 「は、は、は、は、は、は 今日は中々の、ご馳走三昧であった故、な。」 赤目みえり 「ほんと、二枚も三枚も上手だったわねあの子たち。 最後の最後に、あんな隠し玉を披露していくだなんて。 ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、悔しいわね…。」 みえりは、メルキューレモンの姿に戻り鏡をくぐって消えた彼の姿を眺めなら呟く。 空間は限界を迎え、重く激しい音を立てながら、自らのデータ(おもさ)に押しつぶされた。 イベント:「隔絶電脳異界セフィロ・サーチャー」 第8節 進行度2/2 ステージ:デジタルワールド 草原エリア 場所は変わりデジタルワールドの草原エリア。 武福川駆 「全員…揃ってるよね?」 九根針尾 「ああ、どうやら皆脱出できたようだ。」 海風人手 「はあぁぁぁぁぁぁぁ、ほんと焦ったー…。 メルキューレモンがいなかったら死んでたわ。」 デジマスター 「やあみんな、ご苦労様。 そして初めまして。オレがデジマスターこと、黒鉄堅治だ。よろしくな。」 声のする方向に、赤と金の鎧を身に着けた男性が立っている。 彼の足元にはサーバーらしき巨大な筐体が置かれていた。 海風人手 「うお、あんたそんな恰好してたのか…! なんというか…すげえな、いろいろな意味で。」 佐辺優子 「デジマスター、貴方の協力のおかげで色々と助かりました。 助力感謝いたします。」 武福川駆 「まあでも、最後のアレはちょっとヒヤッとしたけどな。 そういやメルキューレモン、一体あれはなんだったんだ?」 メルキューレモン 「ンフフ、実はですね。拙者、鏡面同士を繋げて移動する能力があるのでござるよ。 その能力を応用して、皆様方をデジタルワールドに送り出したのですぞ。」 筑波梨李 「だったら最初から教えてくれればよかったんぬ…!。めっちゃ焦ったんぬよ?」 メルキューレモン 「ナハハハハ、申し訳ございません。 デジマスPがいなければ実行不可能な手段でしたので、最初から選択肢に入れてなかったのでござるよ。 ただデジマスPの用意が良かったため、奥の手として隠していたのでござる。 あの黒幕のことですから、事前に皆様方に伝えていたら対策される恐れもありましたからなあ。」 海風人手 「あの女めっちゃ性格悪そうだったもんな。 なんかこう、人が破滅するところ見てオナニーしてそうだったし。」 佐辺優子 「表現はともかく、あまり趣味の良い人間ではないことは確かだな。 だが…あの人はもう…。」 筑波梨李 「……でもあいつ管理者権限もってたんぬ。どうせ何食わぬ顔であそこから脱出してるんぬよ。」 トブキャットモン <その通りなんぬ。ああいう荒らし・嫌がらせ・混乱の元みたいなクソコテ気質はしぶといんぬ。> 武福川駆 「ま、あの空間は自壊したわけだし、これで一件落着だろ。」 デジマスター 「いや…残念ながら、そうでもないみたいだ。」 デジマスターは手元にあるモニターを深刻そうに見つめながら言う。 武福川駆 「そうでもないって、どういうことだ?」 空間の歪みはセフィロ・サーチャーが起こしていた。 だが、その核を抜き取って機能停止に追い込んだはずだった。 しかし、空間の歪みは消失することはなかった。それどこか――。 デジマスター 「次元の歪みが消失していないんだ。 それどころか、増えていってる…?」 けたたましいアラームと共に、各々が持つ通信機器が反応する。 ハムお姉さん 「――な―ん!―――き―――すか―――さん! ――みなさん!きこえますか!」 佐辺優子 「その声は、ハムお姉さんですか?」 ハムお姉さん 「よかった通じた!皆さん!大変です!一大事です!超やばいです!」 筑波梨李 「いいから落ち着くんぬ。何がやべーんぬ。」 ハムお姉さん 「みなさんのいるデジタルワールドの各地に高密度のエネルギー反応です! このシグナルはデリーパー…皆さんがいたセフィロ・サーチャーのデータの一部が 空間の歪みを通ってこの世界に表出し始めています! しかも他のデジタルワールドにも空間の歪みからデリーパーの末端が染み出てきてて このままだと、デジタルワールド中にデリーパーが溢れかえることになります! 率直にいって、デジタルワールドがヤバいです!」 一同 「な、なんだってー!?」 武福川駆 「デジマスター!あんた、スピリットを回収したらイグドラシルがいい感じに後始末してくれるって言ってたよな? こいつはどういう了見だ!?」 ハムお姉さん 「ご゛め゛ん゛な゛さ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛い!デジマスターさんは悪くないんです! どうやらイグドラシルたちが対応する前になぜかデリーパーとして再稼働しちゃったんです! あのデリーパーたち、デジタルワールド8百兆個分くらいの容量になってるんですよぉー! イグドラシルたちも対応はしてるんですけど、なにぶんデカすぎる上にジャミング性能がめっちゃ高くて!」 筑波梨李 「デジタルワールド8百兆個分って、めっちゃインフレしてるんぬ…。このままだとどうなるんぬ?」 ハムお姉さん 「このままだとデジタルワールド中がデリーパーで満たされてあぼーんしちゃいます!!」 海風人手 「オイオイオ、死ぬわアタシら!どうすんだ?なんか対策あんのか!?」 ハムお姉さん 「今湧き出してきてるデリーパーたちは各世界で撃破しているところです! 幸いなことに、普通のデリーパーと違ってデジタルワールドの法則に従う存在として成立してるため、 普通に攻撃を加えればデータ塊として消滅させることが可能です!」 武福川駆 「ハムお姉さん!俺たちは何をすればいいんだ!?」 ハムお姉さん 「いま皆さんがいる地点に向かって大きな反応が断続的に向かってます! それを撃破し続けてください!今はそれくらいしか対応できません!」 海風人手 「で、でもよ!その…デジタルワールドうん百兆個分なんだろ!? そのデカイやつがここに迫ってるって…、ちょっと顔出しただけでこの世界終わるんじゃ…!」 ハムお姉さん 「いえ!安心してください。 現在、例外処理を行ってこのデジタルワールドにのみ重異層次元帯を設置し、 デリーパーの出現地点の周りを限定的な超減速地帯でミルフィーユ状に囲んでいます。」 海風人手 「難しくてわからん!」 ハムお姉さん 「デリーパーだけ時間停止AVみたいになっています!!! そして皆さんはお構いなしで動く犬状態です!!!!」 九根針尾&デジマスター 「未成年たちにそういう説明をするんじゃあない!でも分かりやすいよありがとう!」 海風人手 「おいコラすけべ野郎ども!勝手に納得すんな!いまいちよくわかんねえんだよ!」 メルキューレモン 「難しいことは考えず、出現するデリーパーを いつものように叩き潰せば良いということでござるよ!」 筑波梨李 「鏡見くん?未成年の男の子でしょ?どうしてわかっちゃうの?鏡見くん?」 メルキューレモン 「あの、筑波さん、標準語で問い詰めるのやめてください…。」 ブリッツグレイモン(黒) 「お前も標準語になってるじゃねーか。」 ナイトモン 「……あの、主よ。時間停止AVとは。」 佐辺優子 「ナイトモン、無理に乗らなくていい。」 トブキャットモン <ギャグやってる場合じゃねーんぬ!!!!!!!!!!!!> ハムお姉さん 「皆さん!デリーパーの反応がすぐそこまで迫ってます! とにかく、全力で撃破よろしくお願いします!!!!!」 ハムお姉さんが叫ぶと同時に、一同より少しはなれた地点から赤い液体状の何かが吹き出す。 それらが集まり、巨大な人型へと形状を整えていく。 高層ビルに匹敵するほどの巨大な姿へと変貌し、顔らしきものが一同を睥睨する。 海風人手 「めっちゃでけぇ!」 ダーくん 「だが、やるしかねえッ!このまま世界を破壊されるわけにはいかねえんだッ!」 バイオスティングモン 「よし、みんな!やるぞ!」 戦闘:WAVE1/1 デリーパー×1 3ターン経過で強制終了 ――戦闘終了後 全員が攻撃を加えていくが、巨人はものともしていない。 攻撃によって破損した部位は、たちまち修復され元通りになってしまう。 武福川駆 「くそっ、攻撃は通ってるはずなんだが…修復が早すぎる!!」 海風人手 「ハム公!これじゃキリがねえぞ!」 ハムお姉さん 「でもこれが今できる精一杯なんです! 他の世界でも少しずつ撃破して総容量は確実に減っていってるんです! というかぁ!イグドラシルたちも転送と分散で手一杯で碌に演算もできてないんですよぉ!」 ナイトモン 「くっ、この状況では大技を使っても効果が薄そうですね…。」 佐辺優子 「ああ、先行きが不透明な現状、出し損にしかならないだろう。 なにか、なにか手立てはないのか…? ―――なんだ、なにか様子が」 巨人は動きをとめ、しばし硬直する。 すると、巨人の体を構成するデリーパーの色が少しずつ黒く、濃ゆく変色していく。 ハムお姉さん 「や、やばいです。あいつ、デリーパーを糧にして自己進化し始めてます! この進化速度、半端じゃない…!潤沢なリソースをふんだんに消費するとか、なんて羨ましい!」 シマユニモン 「自己進化って、じゃあアイツもっと強くなっていってるってことか!?」 ハムお姉さん 「それだけじゃありません!何か、何かやってきそうな予感が…。 皆さん、用心してください!!」 武福川駆 「用心しろっつったって、何に用心すれば――」 次の瞬間、巨人はおぞましい雄たけびを上げる。 爆音による衝撃に一同は身動きを取れなくなる。 数秒の後、雄たけびをやめた巨人は全身が仄かに光りだす。 そして、光が周囲一帯にドーム状に広がり、一同を包み込む。 その場にいたデジモンたちは、メルキューレモンとバイオスティングモンを除き 全員が幼年期へと退化していた。