「僕の担当デジモンが異動になりました。」 「担当が異動って……」 昼下がり、デジ対オフィス。 久々に顔を見せた名張はそう言い、言われた宇佐美は困惑の表情を浮かべている。 レナモンに関する事情は上から極秘に連絡を受けたので知っている。 だからって言い方ってもんがあるだろうにこの男は。 「へー、で、お前が新担当か?」 「へぇ、お久しぶりですテリアモンのアニキ。」 「おう久しぶりだなホークモン、お前ちょっと痩せたか?」 (知り合いなんだ……)詩虎は遠巻きに見ている。 「今までお世話になりました、テリアモン殿」 『旧担当』のレナモンがお辞儀すると 「たいして世話してね―って。ま、ちょっと淋しくはなるな。」 テリアモンが右手ならぬ右耳を上から前後に振る。 「ちゅうわけで皆さん、ワイが今日から蔵之助はんの相方させていただきますホークモンいいます、よろしゅうな!」 デジ対一同の前でホークモンが一礼した。 「それでこちらの方が……」 「いつも主人がお世話になってまーす!妻の茜でーす!」 「むすこのわびすけでーす!」 「いちかれす、さんさいれす。」 振った宇佐美は茜だけが挨拶するかと思ったが、子どもたちまで乗ってきてしまった。 (前から時々見かけるあのジャーナリスト、やっぱり名張さんの奥さんだったか。でもあの人って多分……) 空気を読んで詩虎は口にしなかったが、彼のパートナーはそうではなかった。 「おうアンタ知ってるぜぇ!テイマにムギュ!」 そう言いかけたベルゼブモンの口を茜がベアークローで塞ぐ。 「はじめまして、ベルゼブモンさん?ウチの主人がご迷惑をおかけしてないかしら?」 若干怯えの入った表情でベルゼブモンは首を横に振った。 「ダメだぜベルゼブモンー、うちのママがテイマニンなのはヒミツなんだぞー。」 「ていまにん、ひみちゅ。」 両手を握って力説する侘助と、人差し指を口元に立てる一華。 「あのねアンタたち、それ言っちゃ秘密に……」 子どもたちの発言に思わず茜の手の力が抜ける。 「ぷはっ……お、おう、そうだな、秘密秘密。」 解放されたベルゼブモンはしゃがんで目線の高さを合わせて同じように人差し指を口元に立てる。 「ご迷惑なんてそんな……クラノスケの旦那にはいつも世話になってまして。」 「そうですよ名張さんは素晴らしい人ですよ!……まあ、問題がないとは、言えません、けど。」 立ち上がって言うベルゼブモンの言葉に詩虎が続く。 「今の動き、見えましたか芦原?」 「お前に見えないのに俺が見えると思うか?」 「なぜ私に見えてないと分かったのです?もしやこれが愛」 「そんな眉間にしわ寄せて不思議そうな顔してりゃ誰だってそう思うわい。」 そんな会話をしているドウモンと芦原にレナモンが近づいてきた。 「……レナモン。」 「……ドウモン、私は結局貴方のようにはなれないことがわかりました。」 「レナモンあなた……」 「貴方の行く末を、願いが叶うことを、陰ながら応援しております。」 そばで聞いている芦原が苦い顔をした。 「私はあなたのことを誤解していたようです、レナモン。」 「ドウモン……!」 レナモンの顔が少し紅潮する。傍目には分からないが。 「あなたがあんな……公衆の面前でパートナーと共に破廉恥な格好をさらけ出すようなデジモンだったとは!」 「……ッ!!」 レナモンの顔が羞恥で赤く燃え上がる。傍目には分からないが。 「はっ、破廉恥とは失敬な!テイマ忍の格好は歩き巫女の歴史が顕現した……」 「おや、私はテイマ忍の事だとは一言も言っていませんが?」 「なっ……ぬぐぐ、お子様たちの前でなければ貴方など即座に真空斬りの餌食にするものを……!」 「いや今のはレナモンのほうが迂闊じゃねえかな?」 そばで見ていた芦原がツッコんだ。 「どうでもいいけど名張さーん、これ取りに来たんじゃないんですかー?早く受け取ってくださいよー……あっ。」 本日蔵之助を呼び出した張本人、酒多がアピールしようとファイルを振ると中の書類が飛び出してしまい、 『行方不明児童一覧』『画像検索と名前による候補者一覧』『行方不明児童・赤瀬満咲姫の家庭環境調査報告書』 などといった書類が床に散乱した。 今日もデジ対は平常運行である。