scene1 エッチな女の子は好きですか? 「15だけど…あれか。シコれる歳じゃない?」「そこまで聞かれてないよミサ!!」 年齢を聞いただけなのに…と某映画をパロったタイトルを頭に思い浮かべながら俺はこう返した 「ええ…下ネタがド直球すぎる…」 俺、映塚黒白が目の前の小学生のような少女三倉美沙そのパートナーレディーデビモンと出会ったのは深い霧の中だった 話を聞いてみると、彼女も仲間からはぐれたらしい。お互いに敵意がないことを確認し、この霧から脱出するまでは 同行しようということで話はついた そうして霧をさまよいながら、無言というのもいたたまれないよなと雑談を兼ねて年齢を尋ねてみたら出てきたのがコレだ 小学生くらいだと思ってたの口に出さなくて良かった…と思いつつも15という年齢で気がついてしまう さっきからレディーデビモンの胸を頭でぽよんぽよんしている事にちゃんと生々しい文脈が乗っていることに いやまあそれはともかく、自分で振った話だ。ここで言いよどむのは良くない。すぐに返答をする 「えーっと、シコれる年齢かって言うとまぁそうかもしれないけど俺のゾーンじゃないかなぁ」 「そっかぁ、やっぱレディーデビモンみたいなムチムチな方がシコれる感じ?」 「ミサ!!」 レディーデビモンが顔を真っ赤にして遮る。テイマーと違ってこの子は恥じらいがあるらしい それでも一緒に居ると言うことは仲は良好なのだろう。どの下ネタレベルにあわせるべきだこれ? 「ええ…いやあんまりムチムチも趣味じゃなくて…こうスレンダーな感じがね?」 このくらいならレディーデビモンも大丈夫だろうか 「クロシロー、柔らかいぞ!」「あっあっあっあっ」 ソーラーモンがレディーデビモンの胸を何度もつつき震わせる。俺の思考時間を返して欲しい 「黒白?あれアタシのなんだけど?」 「言って聞かせるんで…ごめんねぇ…」 その後も色々と話したがすぐ会話が下の方に飛んでいく、楽しそうに 下ネタそのものは、正直に言えば多少どぎついのも平気ではあるがつい彼女がどんな人物なのか考えてしまう 15と言えば妹の1個上だが、ここまで下ネタに傾倒しているのは自分の体型のコンプレックスからだろうか? あるいは親が厳格な人間だった反動?元々の性格と言うにはちょっと非日常に浮かれている感じがするから違う気がする 「でさー、レディーデビモンは最高なわけよ。乳首吸うといいリアクションを…むぐ」 と、先ほどまで軽快にレディーデビモンの性感帯を話していた口が急に閉じる 「ん?どうかした?」と後ろを向くと、野生のルクスモンが横切っていった あっぶな…敵意あったらやられてたな。と冷や汗をかいたところでふっと気づく 「あ、もしかして霧で見えにくいから子供に見えた?それで下ネタ自重したとか?」 「うるさい」 機嫌を損ねてしまったのかそっぽを向いてしまった。耳が赤いから照れているだけかもしれない 根はまともな子なんだな、と分かればド下ネタも精一杯の反逆精神なんだなと微笑ましい理解が得られた その後、恥じた自分を取り返すかのように彼女の自分がいかにエロくてヤバいか演説を聞く羽目になったが 「どう、勃起した?」 「ミサ!!」 「ははは、無理」 「こんなにエロい女二人になんにも感じないなんてインポなんじゃない?」 「クロシロー、インポなのか?」 「下ネタはいいけど、相手の名誉に関わることは自重しようね美沙ちゃん…マジで…」 ソーラーモンにこの後下ネタの意味を教えなきゃいけない事に内心頭をかかえつつ 俺みたいな人間がこの子達相手に性欲抱いていいわけねぇなぁと自分の立場を自覚しなおす 美沙ちゃんが下ネタとセクハラを繰り返し、レディーデビモンが注意したと思ったらあっさり流されてセクハラを受け入れたり ソーラーモンがそれに乗って俺が謝ったり窘めたりする そんな、それなりに面白かった道中もどうやら終わりが来たらしい 「やっと出れたね黒白」 「あー、そうだね美沙ちゃん」 「お世話になりました」 とレディーデビモンが頭を下げてくる 「いやぁ…こちらこそ」 と俺も頭を下げる 「セクハラに悩んだら次あったときにでも話聞くんで痛った!」 美沙ちゃんのケリが俺の尻を蹴り上げる 「ええ…なんでぇ」 「余計な事言うからでしょ!」 「クロシロー、一言多かったぞ」 「そうかなぁ…そうかも…」 そうだ、最後にこれだけは言っておかないと 「美沙ちゃん、自由にやるのはいいけど、自分で身を守れる範囲でやろうね」 「説教なんかいらないよバーカ!」 そういって彼女とレディーデビモンは俺達と違う方向に去っていった 去り際の彼女達の顔は笑っていたから、少しは聞いてくれているといいなあと思う 「クロシロー、楽しかったか?」 「んー楽しいというか…闇の少ない子で本当に良かった…!」 scene2 訪問!フェアリモン負けろch ボク、末堂有無は綺麗なものが好き 両親が離婚したとき、壊れた先にある綺麗な物を見たから 綺麗な物は何度だって見たいじゃん? ボクは勉強するのが好き 壊してはい終わり!な闇墜ちでは得られないものを見るためには研鑽しなきゃだから 目的のある勉強はすっごく楽しい ボクはネットサーフィンが好き 全部が本当じゃないなんて分かってるけどネットでしか見れないものが一杯あるから 本音も嘘も全世界に見せてくれるなんてありがたいよね〜 さぁて、今日はどんなものを見ようかな、と適当に検索をかけてると、一つの配信chが目についた 「フェアリモン負けろch〜?」 なんか名前からしてろくでもないchっぽいなぁ… そんなんすっごくみたいじゃん ボクは躊躇無くその配信を見始めた 「あのマスコットどっかで見た気がする…でも触れるのやめとこ。いやーそれにしても面白いなぁ」 どうやらこのchは慈善活動をしてるフェアリモンの中継をしてるみたい と、ここまでなら慈善活動を広報してるいいサイトみたいに聞こえるけど実際は… 「おーっと、今回はザッソーモン達の触手がフェアリモンに襲いかかる!」 『ハムみたいに縛り上げられた太ももいいねぇ…』 『お尻くいこんどる』 『いいぞ負けろ』 救助活動にいそしむフェアリモンを際どいアングルで観賞して盛り上がる、フェアリモンの人からしたらたまったもんじゃないだろう配信だ 「どうでもいいけど、このフェアリモンの人男の子かな…?それも女の子になって日が浅い感じ?」 アイスを食べながら感想をもらす。あ、この新作アイスうっま。あとで兄ちゃんにも教えたげよ 恥ずかしがり方がどーも女の子っぽくない感じなんだよね。それすらも慣れてない感じって言うか… 女の子だと、どこを見られるかとか自然に理解してくから、隠すポイントとか自然にできるようになるんだけど このフェアリモンは無防備でしかも見られることに慣れてないって感じ でも、それを指摘したりはしないよ。興ざめだもんね 「わぁ!フェアリモンの声が荒くなってきちゃった…これは負けちゃうかも!」 『そんな…いいぞ』 『フェアリモンが負けるなんてそんな…やったぜ』 『こんな時こそ応援だな』 このchの配信者、ハムお姉さんの実況が盛り上がっていく このお姉さん、不思議な人だなぁ 的確にこれから起きる動きを予見した実況してる、多分デジモンの知識量がすっごいあるんだと思う。しかもおっぱいめっちゃ大きい それなのにやってることがフェアリモンのちょいエロな配信、しかもすっごく楽しそうで 勉強したけど夢破れて…って感じじゃないし、闇墜ちする種はなさそう むしろフェアリモンの人の方が闇抱えてそう。これはどっちも要チェックだぁ 「さぁ皆、応援の力をフェアリモンに送ろう。せーの!」 ch登録を済ませたボクは、かけ声と同じタイミングでチャットに打ち込む 「フェアリモン負けろ!」 『フェアリモン負けろ!』 『フェアリモン負けろ!』 『フェアリモン負けろ!』 『フェアリモン負けろ!』 ふう…みんなで一緒になんかやるって楽しいよね さて、どうやらいつも通りらしいフェアリモンの勝利を見届けた後、ボクは少し考えた もし闇墜ちさせようするなら、ちゃんとボクも顔を出して言葉を届けなきゃいけない 名前もしられない安全地帯から闇墜ちさせようなんてずるい事だとボクは思うし 身内だからとか自分は例外とか、そんなのボクの主義に反しちゃう そこでいつも使ってるHNデジモンアドバイザーの名前と共に一言打ち込んだ 『これからどうなるか楽しみですね!』 scene3 But who will comfort the comforters? 「悩める少年よ…私の声が聞こえますか…?」 野営中、交代制の見張りで丁度俺の番になってから1時間と少し 俺の目の前に10歳前後の少女がガンマモンと共に立っていた 近づいていないのははっきりしている。突然目の前に出現した、としか言えない ガンマモンの能力か、それともこの少女が尋常の存在ではないのだろうか? 「えぇ…普通にあやしすぎない…?」 「あやしくない!あやしくないから!」 「まったく、バカなユメだなぁ」 どうやら、ユメという名前らしい。コレが素の喋り方なのかな? 「えっと、とりあえず自己紹介しよっか?俺は映塚黒白。君は?」 「ユメって呼んでください。えーっと何て言うか悩める人たちの話を聞く存在です」 「普通に宗教勧誘っぽいけどデジタルワールドだしそういう存在もいるかな…?」 「そうですそうです。映塚さんのお悩み、聞かせて下さい」 どうやら彼女が尋常な存在ではないっぽい 年齢も見た目と同じと思わない方が良いかな?精神年齢はわからないけど… 「悩み…悩みか。うーん…」 悩みがない、と言えば嘘になるけどわざわざ話すような悩みなんてあったっけ… いや、一つ大きなやつがあったな。と思いついた悩みを口にする 「そうだ。なんで…ここ(デジタルワールド)で会う子供も大人も闇の深いやつが多いの…?」 「そうだよねぇ!そんな人たち多すぎるよねぇ!」 そこからは悩み相談というよりは、お互いに出会った闇の深い人の言い合いが正しいだろう 親子兄弟関係をこじらせた人 取返しのつかない物を失った人 過去の傷で人間やあるいはデジモンを憎んでいる人 トラウマで恋愛観がめちゃくちゃになった人 他にも色々いたけど…どう考えても人数比多すぎないかなあ と、そのような事をお互いに話した 「どうして皆幸せになれないのかなぁ」 「それでも俺が見つけてしまった人には手を伸ばせる範囲は手を伸ばしたい、とは思うけどねぇ」 と、ユメと名乗る女の子と兄ちゃんの話をボクは盗み聞きしていた 「ウムー。ウチ、ガンマモンと戦っちゃダメ?」 「ごめんねツーくん、今はちょっと我慢して」 ボクのパートナー、ツカイモンのツーくんにお願いした 二人の会話によると、ユメちゃんは人の悩みを聞く存在みたいだ 「でもユメちゃん…なにか抱えてる闇があるんじゃないかなぁ」 「ウム?どうしてそんな事わかるの?」 バレないようにボクたちは小声で話す 「ガンマモン居るでしょ?からかってるけどユメちゃんを見る目が慈しんでたり、急に哀しそうになったりしてるからね」 「ふーん?ウチにはよくわかんないや」 「テイマーから読み取れなくても、パートナーの態度から垣間見える闇ってのもあるのだよ、ツーくん」 ボクはちょっとエラそ気に語ってみた 「あ、もうこんな時間か。そろそろ見張り交代の時間だからさ」 「えっ、ごめんね結局お悩みちゃんと聞けなくって!」 「まったくユメはダメダメなんだからさぁ」 「うう…」 彼女が涙目になってすねた目をガンマモンに向ける 「クロシロー、女の子を泣かせちゃダメだぞ」 「ええ…俺のせいかなぁこれ…」 「ごめんなさい!それじゃ次の機会に」 「ああ、そうだちょっといいかな?」 消えられる前に、と慌てて声をかける 「はい?」 もしかしたらただのシステムで人間と違う精神構造だから問題ないかもしれない もしかしたら自分より遙かに成熟した年上の存在かもしれない もしかしたら見た目が妹より幼く見えるからその印象に引っ張られてるだけかもしれない でも、思ってしまった。それじゃあこの子の悩みは誰が聞くんだ?と たぶん俺は怒ったんだと思う。同情とか優しさじゃなくて、納得がいかないことに 「今度は君の話を聞かせてくれない?いや、イヤなら良いんだけどね?」 「え?えーっと…考えておきます!」 そうして彼女は現れたときと同じように唐突に消えた 「兄ちゃん、あの女の子絶対なんか抱えてるよ」 「うわぁビックリしたぁ!お前…盗み聞きしてたな?」 「へへぇ…あの子すっごい闇墜ちしそうじゃない?」 「えぇ…お前がそう言うならマジでなんか闇はあるのかぁ…」 「兄ちゃんこそ、あの子助けようとしてるん?」 正直に言えば、助けられるなんて思うほど自惚れてはいない ただ少しでも壊れるまでの時間を先延ばしできればいいな、くらいだ 救える誰かが現るまで 俺がそんなにたいしたことないやつなのは良くわかってる 目の前の困ってる人に手を出すくらいしかできない いつか目測見誤って自分の手に負えない相手に手を伸ばすまで だから俺妹に俺はこう答える 「さぁどうだろう」 「兄ちゃんはさぁ…まあいいや今は」