長い、長い夢を見ているようだった。 ハックモンを死なせ、ハルを救えず混沌に貶めたあの日から。 どうしてか俺は生きていた。なのに最期に一緒にいたハックモンもハルもいなかった。 俺が倒せなかった悪は顔も知らない誰かに倒されたらしい。…ああ、妬ましい。 救うと誓ったのに…どうして俺にはそれが出来なかったんだ…? 俺の想いは本物じゃなかった?“神”は間違えた? 「そうだ、間違いだったのは俺だ…!弱く醜い…どうしようもない俺のせいなんだ…。」 ああ、だからこそお前たちを俺は認めたくなかった。 そんな俺の想いをデジモンイレイザーを名乗る男は肯定した。 そうして、彼から授かった邪神器デジモンアインの力は強大だった。 これがあればこの世界を穢す悪も、俺以外の選ばれし子供たちも全て打倒出来る! この力でもう誰にも負けないと、本当の勇者になると……そう思った。 だからこそ、俺は彼らに負けた。独りよがりの俺という悪は倒された。 やっと認めれた。世界を救うのは俺じゃなくても良いって。……もう勇者じゃなくてもいいんだって。 ああ、それでも、ハル…君を救うために俺はもう一度立ち上がろうと思う。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー …目覚めるときだと思った。 あの日の敗北から八千代は立ち直った。 在りし日の少年だった勇者としての心を取り戻した。 ならば、僕もその想いに答えなければならない。 八千代、僕の勇者。もう一度一つになって、ハルを…世界を救おう。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 長い、長い夢を見ているようだった。 八千代が命を燃やし、ハックモンとともに死したあの日から。 八千代が死してなお倒せなかった悪は他の選ばれし子供たちに倒された。 “神”は勇者が必要だとして私を創ったはずなのに、どうして八千代が死んで八千代じゃない子供が世界を救ってしまうの? 勇者は八千代ではなかった?“神”は間違えた? 「違う!八千代は間違いじゃない!世界を…私を救ってくれる勇者なの!」 ああ、だからこそ世界を正さなければならない。 そんな私の想いをデジモンイレイザーを名乗るデータは肯定した。 デジモンイレイザーの協力によって“神”が過ちを犯した兵器『粒子化ワーム』の封印は解かれた。 そのプログラムの具現体、世界を正す最終兵器『メカローグ』を私は生み出した。 “神”すら飲み込むその力で世界を正して、八千代を本当の勇者にする……そう思った。 だから…ああ、どうして、あなたは私の前に立って……また、死のうとしないで…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「死なないよ、ハル。…一緒に帰ろう」 八千代は変わり果てたハルにそう語りかける。 それと共にジエスモンNEOの刃がメカローグDEATH-Xに突き刺さる。 刃を中心にメカローグDEATH-Xのデータは分解され、本来あるべき姿に編み直されていく。 それは世界を破壊し創造する全能の業『クライスト・ジェネシス』。 ついに1人と1体と1柱の長い、長い夢の決着が着いたのだった。