・空上 嶺文(クウジョウ ミネフミ)(12・男) 「いつでもどこでもオレはオレ!それだけで十分なのさ」 ある日突然デジタルワールドに迷い込んだ、中学一年生の少年。 とある地方の遺跡内で目覚め、そこに訪れていたプテロモンと出会う。 現実世界に戻りたいが手がかりはなく、また暴走デジモンも放っておけない為、 なし崩し的にプテロモン旅に出ることに。 軽薄な楽観主義者で、人は好きでも協調が苦手。 軽口が過ぎる場合もあり、周囲から少し浮いてしまう事も珍しくない。 幼少期から両親の仕事の都合で各地を転々としており、物腰に反して交友関係に乏しい。 境遇に不満がないわけでもないが、両親の事は尊敬しており、 彼らに対しては負担になるような素振りを見せないよう心がけている。 それ故か、彼は繋がりではなく「空上嶺文」という個に支えを求めるようになり、 自身が自分らしくあることにかけては執着にも似た拘りを持っている。 馬鹿正直に自分の言動に付き合ってくれるプテロモンの事は多少煩わしいが、満更でもないと思っている。 父の影響でバイクへの関心が強く、いつか自分の単車で転校した各地を巡るのが夢。 ・プテロモン 「やるぞミネフミ!ギジメンタル・アップだ!」 嶺文と最初に出会ったデジモン。 過去の経験から強さに憧れ、鍛錬を続けていたが一向に進化の兆しがなく、 縋る思いで、進化にまつわる秘宝があると伝えられる遺跡に来ていた。 一本気な性格。 物事を真剣に捉える気がないような嶺文の軽口には食って掛かることも多いが、 あくまでマイペースを貫こうとする彼の姿勢を一種の強さとして認めてもいる。 成り行きで暴走デジモンを共に沈静化させたことがきっかけで、嶺文のパートナーとなった。 頭部の感覚器を活用する事で、 一定距離内で発生した暴走デジモンの発生を感知することが可能。 揚げ物が好き。 ・デジヴァイス(デジモンアクセル) デジタルワールドで目覚めた嶺文の手に握られていたデバイス。 グリップを握って人体やデジモンからDNA(Digimon Natural Ability)を採取し、 得た能力データでパートナーデジモンを強化する…というのが主な使用法だが、 デジタルワールド転移時に何らかの支障をきたしたのか、 嶺文自身からDNA採取する際、彼の肉体ごとデータ化してしまうバグが発生している。 ・リンクモン プテロモンがデータ化・変換された嶺文を身に纏い、アーマー進化を遂げた姿。 予めデジヴァイスに備わっていた古代種デジモンのDNAと嶺文の身体データが結合、 デジメンタル相当の形質転換(ギジメンタル化_プテロモン命名)現象を引き起こしたと推測されるが、詳細は謎に包まれている。 古代種でないプテロモンを強制進化させている影響か、実力としては成熟期レベルに収まっている。 人格は嶺文とプテロモンとで完全に分かれており、任意で肉体の主導権を切り替え可能。 ・暴走デジモン 遺跡から出た嶺文達を襲った狂暴なデジモン。 リンクモンとなった嶺文達に倒されるも、 その正体はアロモンへと進化したホークモンであった。 その様子から自身と同じく、テイマーによって進化・暴走させられたものだと推測し、 また各地でのこうした暴走デジモンの発生を耳にしていたプテロモンは、 行く当てのない嶺文を半ば強引に伴い、真相究明の旅に乗り出した。 ・1話(リンクモン初進化)のバトルみたいなの ◇ 「――うお、ぉ……?」 呻くような声が、嶺文の口を突いて出る。 青い手に、白いマフラー。 肩は何か出っ張っているし、頭も少し重量を感じる。 後頭部を確認しようと伸ばした手は、側面で止まった。 ――髪…って硬さじゃないな、これ。 俯いた流れのままに足元を見やると、いつもより地面が遠い。 これまた青いブーツのその靴底にはスケート靴のそれを大きくしたようなブレードが付いていて、それが接地していた。 ――器用に立つもんだなぁ。 どこか他人事のように感心していると、 「……やった……!」 発した覚えのない声に、嶺文の思考が止まる。 「やった!やったぞ!!進化したんだ!!」 両腕を振り上げ歓喜に叫ぶ、上擦った声。 他ならぬ自分の身体から飛び出すそれに、嶺文は引っ掛かるものを覚えた。 ――そういやさっき、進化がどうのと騒いでたのが―― 記憶をこじ開けて、寝ぼけていた頭が急速に醒めていく。 「――はぁ!?」 「うおっ!?」 まずは一声、次いで知らない声。 何だこの身体? そもそも、どうしてこうなった。 知り合ったばかりのプテロモン――喋る緑の鳥――が騒ぐから一緒に遺跡を出て。 そこに何か青い恐竜がいて、何かプテロモンが襲われたから助けて。 何か言い合いになってたら何か光って… 『……プテロモン、か?』 『ああ!』 気づけば、嶺文の視界は遠くなっていた。 いや、もっと正確に言えば、最初から"そう"だったのだ。 人間の頃だったように、"リンクモン"の視点でいることに慣れてしまっていた。 "リンクモン"から意識を離して、嶺文が横を向けば、そこにはプテロモンがいた。 『……どうなってんの?これ』 『さあな』 嶺文の問いをすげなく切り落としたプテロモンの内心は、裏腹に高揚していた。 『でもこれは……間違いなく進化だ!オレは強く生まれ変わった!』 『……本当は自力で辿り着きたかったけど』 程なくして落ち着いたが。 『はぁ……あ?つまり何?オレお前にくっついてんの?』 『そうなるな。だが文献には人間とデジモンが一体となる進化も存在したと聞くし、やはりお前が秘宝――』 ――地響きと共に、視界が揺れる。 慌てて意識を"リンクモン"に戻し、見上げると、震源は目の前にいた。 「おー……そうだね、いたね、君ね」 状況に振り回されっぱなしで、嶺文達はその存在をすっかり忘れていた。 しかして更に彼らを振り回すであろう眼前の巨大生物はいつからか、鼻息荒く獲物を見下ろしている。 『……あれもデジモン?』 『……アロモン、だな』 精神会話を挟みつつ、リンクモンもそれとなく構えを取り始める。 巨大な頭に長い尾、それらを有するに十分な巨躯と、不釣り合いな短い前肢。 青い鱗に覆われた表皮と、頭部の派手な羽飾りが目を引くアロモンの威容は、 いささか前時代的な直立姿勢タイプではあったが、嶺文の漠然とした恐竜のイメージ図とほぼ一致していた。 しかし、プテロモンの言を信じるならこれもまたデジモンである。 現に喋る鳥も身近にいるならと、嶺文は一考した。 「……こ、こんにち――」 「ガアアアアアアアアアア!!!」 膠着状態に痺れを切らしたアロモンの咆哮。 直に浴びせられたリンクモンは一瞬硬直するも、気を取り直して大きく後方に飛び退いた。 観察を終え、対象を脅威ではないと判断したか、アロモンが頭部を前方に倒した水平態勢へと移行する。 一歩、一歩と地響きを立て、逃げ腰の痩せっぽちに再び距離を詰めていく。 『しまった……そりゃこっちじゃ"こんにちは"とは限らんよなぁ』 『バカ!!来るぞ!』 とぼけた嶺文を一喝し、プテロモンが"リンクモン"の主導権を握る。 「せっかく進化できたんだ……!こんなところで!!」 腰を落とし、右構えの迎撃姿勢を取るリンクモン。 対するアロモンは既に初動を終え、巨体には似合わぬ速度で猛然と獲物に迫っていた。 「来い……返り討ちにしてやる……」 リンクモン、いやプテロモンは進化した事実で舞い上がり、現状の自身を知らぬまま"リンクモン"を盲信している。 精神的にはそのすぐ傍で、嶺文の頭は却って冷えていた。 考えなくても分かる――。 「吹っ飛ばして――」 「――無理だろ!!」 瞬間、十分な加速を乗せた、アロモンの頭突きが着弾した。 衝撃で地面は抉れ、セメント爆破の如く土煙が盛大に舞い上がる。 しかしながら、当のアロモンは不満げだった。 捉えたはずの獲物の手ごたえを、全く感じられなかったのである。 土煙の中、それよりも高く悠然と立ち上がったアロモンは辺りを見回し、失せ物の健在を認めた。 「よっ、さっきぶり」 対するリンクモン――嶺文もまた、余裕を取り戻した態度で相手の気づきを迎えた。 「……仕掛けたのはそっちだからな――」 言い終わるか終わらないかの内に、アロモンの視界からリンクモンが消える。 「――正当防衛といかせてもらう!」 声のした方を向けば、リンクモンは既に懐に飛び込んできたばかりか、跳躍してアロモンの頭部に狙いを定めていた。 リンクモンの特性である、最大速にして光速に限りなく近い速度での走行。 先ほど、アロモンの頭突きを回避するのに偶然能力を発現させた嶺文とプテロモンは一瞬で股抜きを敢行し、 アロモンが気づくまでの間、短距離走行を繰り返してある程度感覚を馴染ませた上で戻ってきていたのである。 「おりゃあーっ!!」 「グウッ……」 流石に回避も反撃もままならず、 リンクモンの繰り出した拳は吸い込まれるように、狙いどころへとクリーンヒットした。 着地するリンクモン。訪れる静寂。 「……あれ?」 しかしながら、音を立てたのは仕掛けたリンクモンの方であった。 「ガ……?」 無防備に直撃を受けたはずのアロモン側もまた、状況の理解が追いつかず両目を瞬かせている。 あまりにも威力がないのだ。 何も感じないほどではないが、それでも小突かれた程度のものでしかない。 「……えっと……もう一発いっとく?」 気の抜けた言動とは裏腹に、再度全力の拳を叩き込むリンクモン。 が、これを受けても相手は微動だにしない。 「おかしいな……このっ……えいっ……」 「グウウウッ……」 拳に飽き足らず、アロモンの足元で脚技まで繰り出すリンクモン。 アロモンとしても動じないとて、何も感じないわけではない。 たとえ小突かれた程度であろうと執拗に繰り返されれば、怒りの再充電も道理であった。 「ガアッ」 「あっ」 打撃に夢中になっているリンクモンへ頭部を近づけたアロモンは、器用にも鼻先で相手を掬い上げ、そのまま空中に打ち上げる。 「グアアアアアッ!!!」 「やべっ――」 無防備になったリンクモン目掛け、アロモンから咆哮と共に熱風が吐き出された。 リンクモンも咄嗟に防御姿勢を取るも、熱風で生じた衝撃波を直に受け、あえなく大きく吹っ飛ばされる。 「ぐ、あっ……!!」 そのまま放物線を描いて落下し、その衝撃を受けたリンクモンも、流石に苦悶の声を漏らす。 「~っつぅ……耐久はそれなり、か……」 『しかしまあパンチが弱い……手厳しいな』 『言ってる場合かよ……ん?』 嶺文の軽口に呆れつつ、代わって身体を起こそうとするプテロモンの目に、異物が映った。 『なあミネフミ』 『あん?』 『これ、使えるんじゃないか?』 ◆ 執念深く、アロモンは歩を進めていた。 先ほどの突撃を逆手にとって仕掛けられた目晦ましを踏まえ、あえてすぐには距離を詰めず、 また向かってこようものなら再び熱風で叩き潰してやろうという腹積もりだ。 射程距離にさえ入れば、 対してリンクモン側は致命傷というほどではないが、大きな負傷と疲労には違いなく、 よろめきつつもようやく立ち上がってくる有様だった。 しかしながら、その目は闘志を失ってはいない。 そればかりか、自身を追い詰めた相手を見据え、笑みさえ浮かべていた。 「熱心だねえ……頭が下がるよほんと」 両者が対峙する距離まで来て、リンクモンが呆れ八割で肩を竦めてみせる。 言葉の意図が把握できないのか、それとも興味がないのか。 アロモン側は反応を返さず、相手の動向を観察する。 『真面目にやれって』 『……はいよ』 プテロモンに咎められ、口を尖らせる嶺文。 「まあ俺も今は行く当てないからさ、付き合ってやるよ」 そう言いながら、リンクモン右腕を水平に上げ、再度右構えを形作った。 先ほどの無謀な迎撃態勢ではなく、確かな自信を漲らせた勇姿として。 「この訳わかんねえ身体も…」 アロモンもリンクモンの闘志に応え、鋭く尖った歯の隙間から覗く口腔を赤く煌めかせる。 先ほど打ち上げられた際、リンクモンには視認できなかったが、これが熱風の予備動作という事だろう。 「どこから始まったのかよくわかんねえこの喧嘩もなぁ!!」 一瞬。 僅かに早くアロモンから熱風が吐き出され、その余波が周囲の地面を震撼させる。 だが、リンクモンの姿は既にその場にはなかった。 「……ガッ……グゥ……ッ」 今度こそ呻き声を上げ、アロモンが体勢を崩す。 背後のリンクモンによって与えられた、確かな斬傷を拵えて。 「……うっし、上手くいったな」 陽光を受け、リンクモンの肘周りから伸びる硬質カッターが白く輝く。 この武装こそがリンクモンほぼ唯一の攻撃手段であり、 衝突覚悟で現状の全速力を出しつつ熱風が届く前にアロモンを通過、 そのすれ違いざまに硬質カッターで斬りつけた。 『ふふん。これでさっきの借りは返したぜ』 『へっ……ありがとさん』 嶺文達もアロモンの熱風で吹き飛ばされた際、地面に突き刺さっていたそれ(と後頭部)を見てようやく用途に気づいたものである。 「……さて、まだやるかい」 会話もそこそこに、リンクモンが元いた方向を振り返る。 視線の先には、今なお敵対者を睨みつけるアロモンの姿があった。 「まあ一発じゃあ終わんねえわな……っ!?」 言いかけて、リンクモンの表情が驚愕に染まる。 対峙するアロモンの身体からは、青白い粒子のような光が立ち上っていた。 『何なんだ、あれ……』 『……限界だな。多分、オレ達と戦う前から暴れ回ってたんだろう』 困惑する嶺文に、プテロモンが淡々と問いを返す。 『限界って……すると何か?あいつ、死――』 プテロモンが主導権を切り替えることもなく、リンクモンはその場に立ち尽くす。 アロモンから立ち上る光――身体を構成するデータ粒子――は次第にその量を増し、 ついにはデジモンの原型すら崩れた光の渦と化した。 そして、渦が晴れたそこには―― 『何……!?』 鳥型の、恐らくデジモンが横たわっていた。 「ホークモン!!」 プテロモンが叫ぶや否や、"リンクモン"の身体もまた渦に包まれ、元の一人と一体に戻る。 「え……?あー……」 「お前、何で……!!」 呆然と立ち尽くしたままの嶺文は、構わず飛び出したプテロモンの背を見送っていた。 ――あれは……友達か?というか、身体……戻ったな…… 色々考えたい事はあるが、今はとにかく。 「……疲れた……」 せっかく巻き込んでくれたあいつに甘えようと、座り込んだ嶺文は…… そのまま大地を背にして、目を瞑った。 この後プテロモンの住んでる町に連れていかれたり 目覚めたホークモン(プテロモンの友達)から話を聞いて暴走デジモン事件(仮)の概要がうっすら分かったり 何やかんやして嶺文がプテロモンと旅に出る感じです