「ワ゛ーーーーーーー!?」 「うっさい!!」 「ぐえー!!…お、おお!?おお…夢か」 「朝っぱらからどんな夢見てたのさ…ほら朝飯準備するから手伝って」 「ウス」 冷や汗…だけではないが、まるで完全体デジモンと殴り合いに興じた末のように全身汗だくになったクロウはとてもじゃないが平常心を保てぬままフラフラと立ち上がる 「……うっそだろお前」 自分に問いかけ、いたたまれず両手で顔を覆う。その哀愁オーラは先の戦いで秋月影太郎に打ちのめされた時とほぼ同等か…あるいはそれ以上 なんていったって…度々世話を焼いている少女、青山司に…アレだ。アレする未遂の夢だ(※イモゲンチャーR-18ifは用法要領を守って正しくデジソウルチャージしよう!!) 小学生ぞ?やっべーよ秋月さんに顔向けできねーよケンカ以外で警察にしょっぴかれるとかサイテーだよハンザイじゃねーか ───鉄塚クロウは元不良である。売られたケンカは片っ端から買うが、恩師の献身により世間の常識は程よくわきまえているはずだった 鉄塚クロウは巨乳派である。だが夢のハナシとはいえ小学生のなにがしに動揺しまくっている生々しい己の邪さと心のか弱さに身震いがした …なんだか急激に自分自身が信頼できなくなってきた 「…ルドモン」 『な、なんだクロウ』 「もし俺が道を踏み外したそん時は…バーストモードで俺を速攻仕留めろいいな」 『!?!?』 あっダメだルドモンをバーストさせると俺もバーストしちまって簡単に仕留めてもらえねぇ …などとぐーるぐる考え込んでいると背後に気配 「ハッ!?」 「おはようございます…クロウ、さん」 「……オハヨウゴザイマス」 「?」 ぽやぽやと眠たげな眼をこすり、毛布を抱えてやってきた青山司は挙動不審なクロウに不思議そうである。そしてその儚げであどけない垂れ目の顔つきには、あの夢の中で見た艶っぽさとは無縁なものであり妙に安堵した 「……朝飯準備するかぁ。みんな起こしてきてくれねえか」 「うん」 素直な返事だ。司の背を見送ってからガックリと膝を折り深呼吸 …先日、ふとした事からジュレイモンの幻覚のせいで青山司の成長した(と思しき)姿を見たことはある 芸能人やアイドルのような派手さや煌びやかさは無いかもしれない…が、 「やっぱ美人だったよなぁ」 司がこの先旅を無事に終えて病を克服し、来たる明るい未来の先に『あの姿』があるのだとしたら…見守ってきた身としては心底嬉しいと思う 「…だからよォー!!」 その未来を汚すような真似など《保護者》である自分には死んでも出来るはずがなく、万が一億が一あろうもんなら… 「…未来かぁ」 ふと、そこで我に帰る 来たるべき未来、旅の終わり。それはつまり仲間や…青山司との半ば今生の別れというやつになる。そうなった時に…今度は彼女の側に誰が居て支えてやれるのだろうか 「…俺には、カンケーなくなるのか」 「「「なにたそがれてるの初恋泥棒さん」」」 「ギャーアシフトイモンズ…ギャー!!」 1.2.3HIT。乙女たちの強襲がクロウの尻を穿つ 「チッキショウ朝から踏んだり蹴ったりじゃねーか…つか、なんだその泥棒って」 念を押すが、元不良とはいえケンカ方面以外で警察の世話になるようなコトはやってないガラになくとも神様に誓えるハズだ。未成年◯行の次は泥棒呼ばわりなどと冤罪が加速しはじめたため噛み付くとひどく眉を顰められた 「俺ぁ司に変なコトした覚えはねぇぞ…いやマジで。マジでな!!」 「なんかえらい食い下がるじゃん…いやでもねぇ」 「…クロウさん、あの戦いの後司ちゃんの顔ちゃんと見ました?」 「いや見られていないだろう。瀕死の重症だったからな」 「それもそうか。…あのですねクロウさん」 正座。クロウも思わず正座 少年静聴中─── 「……なそにん」 「いやね…そんなコトだろうと思ったけど。アンタの罪は重いわよ」 「病弱な女の子の男性観壊しちゃうのはギルティですよねー」 「これで不義理を貫くなら…穏やかではないな」 散々ないわれようにクロウは…怒るでもなく、ただ深く考えた後にひとりごちる 「…俺の背中は、少なくともアイツにはかっこよく見えたのか」 謙遜してくれる、と彼女らは思いつつも口には出さなかった 粗忽者で騒がしく三馬鹿で集えばネジが外れたデリカシーのない馬鹿騒ぎを繰り広げ しかし戦いの中では常に仲間のため我先に飛び出して体を張り、友を鼓舞し、逆境に屈せず、最後には敗北を意地と根性で共に覆させてくれる …クロウの性格と恩師から学んだことを実践してみせている姿に心救われる事は、この旅の中で誰かしらが一度はあったのだと思う その際たるが…クロウが目の前で何度も盾となり命懸けで守り抜いた少女。青山司だったのだ 「そうかァー……」 クロウが立ち上がる 「司には、俺が……アッ」 そこで良心の呵責が爆ぜた 一歩、二歩… 「ぬあああああああああああーーーー!!!!」 「あっ壊れた!?」 アシフトイモンズに指摘された矢先に脳裏をかけた今朝の煩悩を振り払うようにそのまま頭が空っぽになるまで走り続け、数時間後。睡眠不足と急激な運動に疲弊したクロウは懺悔を垂れ流しながらおぼつかない足取りで近くの水辺を目指す 「うおお…うおおお…すまねぇこんなスケベな男ですまねぇ………とりあえず汗を流すか…」 「あっ…」 茂みを超えたどり着いた岸辺の影に、上着のボタンに指をかけたまま停止する少女の白い肌が上気する ───鉄塚クロウに電流走る またまた先のアシフトイモンズの説教と今朝の微睡の中くらったカルチャーショックがぶり返し、相乗効果で全身を突き抜けた上で悲鳴となり 「Noooo「しーっ!」アッハイ」 寸出のところでその口を爪先立ちの司が手のひらでとどめた 「むこうにみんないるから…大声出しちゃだめ」 「…かたじけねぇ…かたじけねぇ」 デジタルワールドに来る前までは、女の子いいなーとか彼女ほしいなーとか人並みに思いを馳せつつも、その振る舞いと顔の怖さから一才の縁がなかった…が、今や己はその時から全く想像のつかないとんでもない恋愛模様の当事者なのでは?とクロウはついに実感した 「クロウさん汗すごい…大丈夫?」 「おう…だいじょばないけど、大丈夫。スマン水浴びしたかったんだが事故った…」 「司ちゃーん?どうしたの」 「あっ…ううん!ごめんなさい、忘れ物しちゃったから戻るね。…いこう、クロウさん」 それゆえに司の恥じらう顔と純朴な優しみがクロウの心に沁みた 司の小さな指に引かれながら身を屈めて静かにこの場を去る。その間司はクロウのほうを見ようとしなかったが…耳たぶが真っ赤だった それからどれほど歩いたのか、 「クロウさん、あれ…!」 司の指さす方に、朗らかな陽がさす川の下流に誰もいない静かな遺跡の跡を見つけた 「…」 うずうずと子供らしく好奇心をむき出しにする彼女に、クロウはふと悩みを忘れて吹き出した 「少し探検するか」 二人きりで話をするには絶好だったのかもしれないが 「こっちー!」「クロウさーん!」「これ何だろう…!」水面に残った飛び石や、まだ見知らぬデジタルワールドの遺物に目を輝かせる司に引き回されながら時間が過ぎた頃、 「司」 「は、はいっ」 「……やっぱ俺はぶっちゃけ小学生をオンナとは見れねぇ」 話の切り出しがコレでいいのかは自信が持てない。それでも整理した頭の中身をクロウは一個ずつ司にパスする 「へ…?」 「だからこうー…なんつーか………あの時の姿みてぇな、美人で立派な女の子になれよ。そんときゃ俺は…俺たちは今みたいにもう側にいてやれねぇかもしれねーが」 ぶっきらぼうな言い草だがきっとそれが当たり前だ。この旅の果てにある日常だ。だからこそ切に今願う 「…生きろ」 「うん」 「えっ?」 「わたしが決めた約束だから。ちゃんと病気を治して、いっぱい勉強していっぱい知って、知らないところや人に会って。背も伸びて…それから……オシャレして綺麗になって………胸も、大きい方が…いい?」 「ウェッ!?あ、あーいやソコは……マジでゴメン」 三馬鹿と呼ばれる集いでいるとついつい楽しくて口が滑ってしまうが…今後司が聞いてそうな前で下世話な話はマジでやめよう気をつけよう。気を引き締めて司の話に再び戻る 「デジタルワールドに来て良かった。病院の中じゃわからなかったことがいっぱいで、素敵な人とたくさん友達になれて、お話して」 デジタルワールドでの出会いと、旅と、戦いはあまりに鮮烈に青山司の見聞を大きく広げた 「怖いこともあったけど…みんなを見て、わたしもそれ以上に立ち向かわなきゃって思えた」 それはやがて生きる意思を育んだ。青山司の人生に意味を見出すための時間をくれた。病に伏し消えゆくだけの幼い少女に…大切なものを数えきれないほど与えた 「だから…全部終わってもみんなを忘れたくない。また会いたい……」 その中心にいたのは、はじまりをくれたのはきっと「彼」らだった 「その時は……その時はクロウさんにも会いに行っても…いい、ですか?」 「…」 「また…また今日みたいにお話したいから。必ず探します…見つけます」 「……ッ」 司の口から告げられるハッキリとした未来への願い。想い。祈り。希望に溢れた言葉。それを聞いているとなんか不思議と涙が出てきた かつて恩師が託してくれたように…現実で燻り続けるばかりの非力だった自分のような存在でも、初めて誰かのためにようやく何かが残せたのだという大きすぎる実感をぶつけられたせいなのかもしれない 「…おう」 「だから、だから…クロウさん!」 「…ああ」 …それから待てども待てども言葉は来なかった 彼女の中に膨れ上がった感情は…クロウの献身と共に知らぬ間にずっと大きく育ってしまったその感情と、拭いきれないこれから先の不確かな未来への不安…まだずっと幼い心と頭でキチンと処理できるほど単純なものではなかったのだろう それを無理に吐き出してしまうことは、彼女自身の消せない深い傷となるのだ 「…考えてみりゃ、俺なんかのために歳下の司にあちこち走り回らせるのはどーにもな」 だからクロウは立ち上がり、泣きじゃくる司の頭をさすった 彼女のためだけに、確かな意思と献身と 「だからよ。…俺がお前をキッチリ迎えにいくから、楽しみにしてろよ」 約束を込めて すまねぇ皆えっちなロリおには好きだが!素朴なおにロリはもっと好きでな…公式司ちゃんの恋愛観わからないけど!もっとその辺時間かけて知りてぇけど! 燃料が来ちまったからもう穴だらけでも書くしかしないねぇ許してくれるねありがとうグッドトリップ…年相応から抜け出しきれないこんくらいの距離感で回ってる必死な女の子が好きなんでこの感じで行かせていただきました 苛烈な男が慎ましく愛を募らせるのが好きでェ…だからラキスケもあっても嬉しいがウチの子にには義理を貫いた末に青山司ちゃんには健康なお姉さんになってから存分に喰らわれるがいいかなとか そんでこの後に待ち受けるであろう司ちゃん帰還イベントに強大な敵が立ちはだかろうもんなら、司ちゃんやバケモンソウルモンの進化した姿と共闘して困難をぶっ飛ばしながら「俺は司と添い遂げる!!!!!」とか人目も憚らず愛を宣って惚気ちらしてほしくってェ…(ろくろ) オマケ ・クロウのバンダナ →秋月光太郎のプレゼント。クロウが不良少年だった頃に凶器的な《頭突き》を必殺技のひとつとしていた(そのため前髪は上げていた)が、「あんまり頭突きするとおバカになっちゃうぞ!」と頭突き封印のためによこした 副作用として眉間の皺が見えにくくなったので相対的にコワモテ度が減り初見の子供に泣かれることが少なくなった このバンダナのおかげか長らく封印されていたが、MATHUROにおいて暴走ライジルドモンに対しデジソウルと共に発動した渾身の頭突きは、完全体デジモンたるライジルドモンの兜にデカいヒビを入れ膝を折