「クリムゾンネイル!」 勇太と光がデジタルワールドに漂流し10数日が経過していた。 その間に数体の凶悪なデジモンに遭遇したが、光もデジモンでの戦闘にも慣れ、返り討ちにできる程になっていた。 だが、問題なのは勇太とヴォ―ボモンだった。 「あんた達本当に使えないわね!!!戦いも殆ど私とデビドラモン任せじゃない!!バカ!!!クズ!!!」 「面目ないです…」 「右に同じです…」 一向にヴォ―ボモンが進化できなかったのである。 「毎回、毎回女の子ふたり戦わせるなんて男として恥ずかしくないの」 「デビドラモンはべつにそこまできにしてない…」 「デビドラモンは黙ってなさい!大体あんた達はヤル気がないのよ!!!毎回毎回!!!」 光の元々の苛烈な性格に加えて、不安や勇太に対しての優越感からかかキツく叱責することが多くなった。 「デジヴァイスが光らないのはなにか理由があるのかな…」 「やる気が足りないのよ!根性なしなのよヘタレ!!」 「僕の鍛え方が足りないのかな…」 「おなかいっぱいたべればしんかできる。でびどらもんのごはんたべる?」 ヴォ―ボモンの口に木の実が押し込まれる。 「それよりいつまで歩けばいいのよ!もうずっと歩きっぱなしじゃない!」 「確かにそうだよな町ってそんなに遠いもんか?」 「あと数日も歩けばつくよ!」 「数日いい加減にしなさいよ!!感覚バグってるんじゃない!!?」 「えぇ…そんなことないよこんなもんだよ…ねえデビドラモン?」 「うん。でびどらもんがぎるもんのときいたまちもっととおい。」 「ふざけんじゃないわよ!!」 光がデビドラモン殴る。 「う゛う゛う゛う゛う゛…」 「鬼塚さんそれやめなって」 デビドラモンが勇太の後ろに隠れる。問題のふたつめに光の暴力癖であった。 光の不安定な性格から癇癪を起した時にデビドラモンに暴力を振るう事が多くなった。 最初の時みたいにデビドラモンに怯える事がなくなったし、デビドラモンは光の暴力などは身体的に蚊が刺す程度だろうが、やはり雰囲気は悪くなるし何か光のデビドラモンに対する暴力には悲しくなるようなものがあったし、それに怯えながらも光の近くにいるデビドラモンも見ていると悲しくなってしまう。 それに勇太としてもヴォ―ボモン達に雑談から聞きたい事もあるのにその都度遮られるのもしんどいものがある。 「役立たずのおんぶに抱っこの癖して口だけは一丁前じゃない!どうせみんな私が悪いのよ!!もうやだ!!もう歩きたくない!!」 そのまま光は座り込んでしまった。こう拗ねるとぐずって中々動かない。最初の数日間はこれで進行がだいぶ遅れてしまった。 「もうまたか。ほら鬼塚さんおんぶ。」 こういう時は決まって勇太がおんぶする事になっている。 ヴォ―ボモンだと背が低いから顔に草木が当たってしまうし、身体が熱いからと嫌がってしまう。 デビドラモンだと背中にいる時に暴力を振るわれてはデビドラモンが避けられないし、それでは可哀想なので必然的に勇太が背負う事となってしまった。 本来なら勇太も女子に興味がある年齢でドキドキするような事でもあるし、光は正直可愛いと思ってるがこの性格に何度もやってればもう作業感しかなくなってしまった。 「…でも確かに何日も歩いてるし野宿ばっかりも辛いしどこか休めるとこないかな…お風呂も入りたいし…」 「あんた今何でそれ言ったのよ…」 「あったたほっへはひっふぁらないれ」 「う~ん休めるとこって言っても…」 「デビドラモンしってる。ちかくにコロモンのむらある。おふろもある。」 「早く言いなさいよ!ほら行こ日野!ごーごー!!」 「うわ!?髪引っ張らないで!」 2、3時間歩いたところでトコモンの村に着いた。トコモンの村は山の麓にありどうやら温泉があるみたいだった。 「うわ!温泉だ!というかやっぱ電気っぽいの組み込まれてんのね。」 「温泉!お風呂!お風呂!というかこいつら小っちゃくてかわい!あんたもこんくらい可愛ければよかったのに。」 「光そういうこと言うの駄目だよ!デビドラモン泣いちゃうよ!」 「ごめんなさい…」 「うわうわでびどらもんだ。こわい。たべちゃう?」 「大丈夫だよ。このデビドラモン僕と同じでいいデジモンだよ。」 「ほんと?ほんと?」 トコモンに村も森と同じでやはり奇妙な光景であった。木造の葺ぶき屋根に電光掲示板が無理矢理くっ付いて意味のない文字が流れてる。 地面には滅茶苦茶な標識がガラスケース状に入っている。 それぞれに別れて今日は休む事となった。 「デジモンの温泉も男女で別れてるのね。というかヴォ―ボモンとデビドラモンの性別って鬼塚さんが言ってる通りそう分かれてんだ…」 「気付かなかったの勇太は鈍いなぁ…」 「ヴォ―ボモンというかデジモンに言われるのなんか癪だな…」 「しゃくにさわる。しゃくにさわる。」 男湯には勇太とヴォ―ボモン、女湯には光とデビドラモンに分かれていた。 温泉にはトコモンがいっぱい浮かんでいる。 「ねぇヴォ―ボモン…俺このままでいいのかな」 「いいってなにが?」 「俺…鬼塚さんの言う通り、足引っ張てるし、進化できなきゃヴォ―ボモンだって危ない目に遭わせちゃうかもしれない…」 「勇太…」 「それならいいことしてっるよ?」 「いい事ってなに?トコモン?」 「ゆうきのでじめんたる!とこもんたちのむらのちかくのたきにあるよ!いくとこはあぶなくてぼくたちはいけないけど…」 「それ本当!本物のデジメンタルって初めて見る!」 「デジメンタルってなに?」 「うんとね。デジメンタルって卵みたいなので使うとデジメンタルの力で進化きるんだ!」 「ほんとか!?それなら絶対行かないと!すぐ鬼塚さんに相談して行かないと!!」 「…勇太勢いよく立って宣言するのはいいけど前隠した方がいいよ。」 「…私行かないから」 湯船から上がってから光に相談したが即決で断られてしまった。 「えっ?なんで?」 「え?なんでじゃないわよ?なんで私が!あんたみたいなグズのためにわざわざ疲れて、危険なとこに行かなきゃならないのよ!!」 「えぇいやそうすれば鬼塚さんやデビドラモンの負担だって減らせるし…「言い訳とかいらないから!!行かないったら行かないの!!」 取り付く島もないけどここまで露骨に断る必要もなるのだろうか… 「デビドラモンゆうたちヴォ―ボモンといくひかりは待ってて…「行かなくていいの!!えっと私がもし危ない目にあったらどうすんのよ!それにこんな奴ら甘やかす必要なんてないんだから!!」 「そこまで言う必要もないだろ!勇太だって光の事を思って…!」 「いいよヴォ―ボモンそれじゃあ鬼塚さんここで待っててすぐに戻るから」 「…」 光はそっぽを向き答えようともしなかった。デビドラモンは申し訳なさそうにオロオロしている。 「光はいつもわがままなんだよ!ちょっと進化できるからって調子乗っちゃってさぁ!これで勇気のデジメンタル手に入れたら置いてっちゃおうか!」 結局勇太とヴォ―ボモンのみで勇気のデジメンタルを探す事になった。勇気のデジメンタルは険しい山道の先にあるということであった。トコモンの話では半日くらいで着くということであった。 「あんまりそんな事言うもんじゃないよヴォ―ボモン。鬼塚さんだってこういった状況でおじいちゃんやおばあちゃんのとこ早く帰りだろうしさ。不安でイライラしてるんだよ。」 「…勇太も家に帰りたい?」 「帰りたくない訳じゃないけど、ヴォ―ボモンやデビドラモンが困ってるなら俺は助けたいんだ。」 「勇太ぁ…」 「ちょ抱きつくなって…うん?」 勇太とヴォ―ボモンに影が出来た。何事かと思い顔を上げたらそこには、緑の色の肌に橙色のモヒカン。両手には丸鋸やメリケンサックなど危険な物を付け、足はなく換わりにのタイヤをひとつ付けたデジモンが丸鋸を振りかぶっていた。 「ギャハハハッハ!!!!!イー―――ハッ!!!!!!!!!!!!!!!」 「リベリモンだ!うわ!!」 攻撃を間一髪で躱した。だが、勢い余ってそのまま崖からふたりとも落ちてしまった。 「勇太掴まって!!」 勇太はヴォ―ボモンの掴み、ヴォ―ボモンはなんとか飛ぼうとする。 「根性おおおおおおおおおおかっ飛ぶんだ!僕うう!!!!!!!!!!!!!!」 「うわわ!落ちてる!!落ちてる!!」 「ギャハハハ!!!お前ストレジシティのヴォ―ボモンだろ!お前さん飛べないそうじゃねえか!!悪あがきしないで大人しく落ちな!!」 「馬鹿にしてええ!!うおおおおおお!!!…あっ…力みすぎた…ごめん勇太…」 「!!!!??????ヴォ―ボモンお前!!!??」 「ギャハハハ!!!!!!落ちやがれファッキンクソ野郎!!!勇気のデジメンタルは俺様がいただくぜ!!」 「「うわあああああああああああああああああ!!!」」 勇太とヴォ―ボモンはそのまま谷底へ落ちて行った。 「ええ!ゆうきのでじめんたるのとこいっちゃったの!?あそこはこないだからゆうきのでじめんたるをねらってりべりもんがうろちょろしてたのに!」 「そのリベリモンってそんなに厄介なの?」 「うん。かんぜんたいできょうぼうなデジモン。いろんなサイボーグデジモンのきかいのぶひんとってるわるいやつ。たぶんデジメンタルもからだにつけようとしてるとおもう。」 「うん。でじめんてるはてにいれるひとをえらぶからどうせてにいれられないとおもってほっておいたけど…ねえたすけにいってあげて!」 「…いやよ…いや!!なんで私があのバカコンビのために行かなきゃいけないのよ!!絶対行かないわよ!!」 「そんなひどい…いいよ!ぼくたちだけでいこう!」「「いこ!いこー!」」 そのままコロモン達は勇太達のところに向かって行った。 「ひかり…いかないの?」 「…行かないわよ!なに!?あんた私に口答えするの!!あんたは私の言う事聞いてればいいのよ!!! この際だから、言っておくけどね!!私は誰も信用してないの!!!利用してるだけ!!!日野も!!!ヴォ―ボモンも!!!役に立たないなら!!利用価値がないならあんなのいらないわよ!!!!!あんたみたいな…キモいのだって帰れるなら!!!!」 光がデビドラモンを叩く。 「デビドラモン…ひかりのパートナーだからわかる。勇太はヴォ―ボモンがしんかしても光のことみすてないよ…」 「っ゛っ゛!!あ゛あ゛っ゛あんたに何が分かるのよ!!!分かるわけないわよね!!!あんた私じゃないんだから!!!分かるはずないわよ!!!他人に分かるなら!!!なんで!!!なんで!!!!」 デビドラモンを叩く力が強くなる。自分の手が赤くなっていく。それは何かを訴えかけるようであった。 「このままじゃ…勇太あぶない…デビドラモンも勇太すき。しんでほしくない…ひかりもひとりぼっちしたくない…」 「…っっ!!ふっーふっー」 興奮のためかどんどん涙目になっていく。 「…っあああああああああああああああああああああああもう!!!!!!!!」 「ゆ…ゆう…勇太!起きて!」 「うぅ…リベリモンに落とされて…それで…」 気が付いたらそこは滝つぼの裏であった。 「落とされてここまで流れ着いたみたいなんだ…勇太大丈夫?」 「そこら中痛いけど…それくらい。ヴォ―ボモンのおかげだよありがとう。ヴォ―ボモンは?」 「えっと…ちょっと僕もちょっと体痛めたかも…」 「…ちょっと休んでいこうか」 「うん…」 「…」 沈黙が流れる。いつものふたりであればこういった沈黙は流れないがお互いが引き目と自分に対して思う部分があり口を開くことが出来なかった。 「ごめん…ヴォ―ボモン。俺のせいで…俺がもっと…ヴォ―ボモンにだってやるべき事があるのに足引張って」 勇太は体育座りで顔を伏せている。 「弱気になって勇太らしくないよ!もう!」 「でも…」 「それにさ…勇太だから言うけど僕はこうやって旅に出ようと思ったのは自分のためでもあるんだ。」 「自分の?」 「そう。僕その…ギルモンも言ってたけど翼があるのに上手く飛べないんだ…」 そういえば、先もリベリモンが言っていた。 「周りに馬鹿にされてさ…そのくらいとも思ってたけどそこから色んな小さな事…馬鹿にされて、なんだかそう言れるとほんとに出来なくなる気持ちになって…上手くいかないことばっかで…だから見返してやろうってっ!だから…ほんとは自分のためなんだ…すこしでもマイナスな自分をゼロにできないかなって…」 「なら…なおさら…」 「でもさ!だから!勇太で後悔なんてしない!僕勇太好きだもん!上手くいかなくって頑張って!光やデビドラモンにも優しいんだもん!進化できなくったって俺!勇太のパートナーで良かったよ!!」 「俺だって…」 勇太も何か言おうとしたがその先を紡ぐ勇気がなかった… 「身体も楽になったし、そろそろ行こうか勇太!勇気のデジメンタルを手に入れて光を驚かそう!」 「うん!」 「川に流されて滝まで落ちて、逆にショートカットできたみたいだね。」 「そうだな。これならリベリモンより早くデジメンタルを手に入りそうだ。」 洞窟を進んでいく。よくよく見ると通路のようになっている…というか電子看板に「この先デジメンタル」とご丁寧に出ている。 「あっ!あった!」 台座の上に刃が生えた赤い卵があった。 「これが勇気のデジメンタル…」 「さぁ勇太持ち上げてみて!」 「う…うん」 勇太は勇気のデジメンタルを手に取り、持ち上げ…られない。重い。ビクともしない。 「そ…そんな」 「やっぱり俺…ごめんヴォ―ボモン…」 「ううん。大丈夫だよ!僕がもっと強くなって、こんなのなくたって進化してやるよ!今に見てなって!」 「ヴォ―ボモン…やっぱり俺じゃ駄目なんだよ…ヴォ―ボモンはさっき俺の事優しいって言ってくれたけど…俺も…俺も自分のためなんだ…」 「勇太?」 「俺…特撮が好きで…ずっとヒーローになりたかったんだ…。誰かのためなんかじゃない…」 「でもヒーローになりたいってそれって立派なことでしょ…」 「違うんだ…そんなんじゃない恰好だけなんだ…自分でも他人に言い聞かせて…でもこのデジヴァイスやデジメンタルが反応しない事で思い知らされたんだ…きっと俺がやってる事だけ違う…ヒーローごっこなんだって…」 「勇太…」 「イー―――ハッ!!!!!!!!!!!!!!!生きてたか死にぞこない!!!そいつを寄こせえええええええええ!!!!!」 「リベリモン!!!!」 「まずい!!プチフレイム!!」 リベリモンに火球は当たってもびくりともしない。 「そんなへなちょこななのが効く訳ねえだろうが!!!マキシマムデリッシャア!!!」 火花を上げ右手の丸鋸が今までにない高速回転をする。それでヴォ―ボモンを切り刻もうとしようとした時、 「クリムゾンネイル!」 「デビドラモン!!?」 間一髪のところで、デビドラモンがマキシマムデリッシャアを防ぐ。 「日野!!」 「鬼塚さんにトコモン達!?どうして!?」 「こいつらが案内してくれたのあんたを助けるんだって!」 洞窟の道から光とトコモン達がやって来る。 「ふん。どうせこんな事だろうと思って来てやったのよ感謝しなさい…!」 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」 デビドラモンがリベリモンの両腕を抑え噛みつく。 「はっ!!!そんなカルシウム不足な歯じゃ俺の機械の肌が貫ける訳ねえだろ!!!!!!!」 リベリモンの機械の肌にデビドラモンの歯が弾かれる。 「美女のキスにお代を払わなきゃな!!お代はこいつだヴァンキッシュミサイル!!!」 リベリモンの胸部からミサイルが発射させる。至近距離でデビドラモンに直撃して爆発する。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」 そのままデビドラモンが倒れ込んでしまう。 「デビドラモン!!!」 「よくも!!プチフレイム!!」 やはり、リベリモンに火球は効果がなくそのまま弾かれてしまう。 「しゃらくせえんだよ!!!」 そのままリベリモンはヴォ―ボモンを押し倒し、タイヤを回転させる。 「ああああああああ!!!!!」 「ヴォ―ボモン!!」 なんで…なんで俺のせいで…進化できないんだよ…クソ…クソやっぱり俺じゃ駄目なのか…。やっぱり俺なんかじゃ駄目なんだ…。 勇太の力が抜け膝を着く。 「勇太…!!光が!!」 「日野!!」 「「あわわわわ…」」 リベリモンの目線が光やトコモン達に向いている。 「なるほど選ばれし子どもって奴かっ!厄介なガキから殺す!!!」 駄目だ…どうせ俺じゃどうにも…。もう…。 「「たすけて…!」」 「…!」 ちくしょうっ!なんでクソ!! 勇太は自分でも分からず反射的にリベリモンと光達の間に入っていた。 「クソ…!」 勇太はリベリモンに首を締めあげられる。 「恰好つけんじゃねえ!ガキのヒーローごっこに付き合う程こっちも大人じゃねえんだよ!!ギャハハハ!!!!」 そのとおりだ…そのとおりのヒーローごっこだけど、それでも! 気力を絞り、リベリモンを殴るが力が全く入らない。 「なんでもいい…ヒーローになれなくれも…それでも誰かが…泣いてるのに…助けを呼んでるのに何もしないなんて…!」 「そうかいじゃあヒーローごっこの末路がどうなるかしっかり分からせねえとなあぁ!!!!」 丸鋸を回転させ勇太に近づける。勇太は恐怖で涙が出てきた。圧倒的な死がそこにあった。 「泣いて土下座してそいつらを差し出せば、お前だけは許してやるけどどうするギャハハハ!!!!!!」 怖い…怖い…けど… 「絶対に…嫌だ!!」 勇太は思い切りリベリモンの顔面にケリを入れる。 「てめえ!!」 「鬼塚さん!トコモン達を連れて…!!」 「日野を離しなさい!!!このボケキショいんだよ!!!」 光が半泣きでリベリモンに石を投げる。 「このクソアマ!」 リベリモンが勇太を投げ捨て光に向かう。 「やめろおおおおおおおおお!!!」 勇太の叫びとともに勇太のデジヴァイスが光を放ちはじめた。 「な…なんだ!!!???」 デジヴァイスの光にリベリモンの動きが止まる。 「まさか…お前も選ばれし…!!!!」 「ヴォ―ボモン進化!!!!!!」 ヴォ―ボモンが光に包まれ巨大化する。 「ちっ!!!」 光の方向へリベリモンが向かう。 「グレイトフレイム!!!!」 プチフレイムより巨大な火球がリベリモンを直撃する。 「そんなことくれえで倒れるかよ!!!!!!!!」 ボロボロになりながらも辛うじてリベリモンが立っている。 「こいつまだ…!」 「!…デビドラモン起きて!!!肩に亀裂がある!日野ももう一度!」 光はリベリモンの機械の装甲にヒビがあるのを見逃さなかった。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛マグマボム!!」 「グレイトフレイム!!!!」 デビドラモン達の攻撃がリベリモンの肩に直撃しそこから機械の装甲が剥がれ身体が燃え上がった。 「ち゛く゛し゛ょ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛゛!!!」 絶叫と共にリベリモンは吹き飛ばされ川の激流へ吞まれていった。 光が治まるとそこには、ヴォ―ボモンがいた。 「ヴォ―ボモン!」 勇太がヴォ―ボモンに駆け寄る。 「やったよ…勇太進化できた…」 「ああ!みんなを守ってくれてありがとうヴォ―ボモン」 「へへ…これで勇太がヒーローごっこじゃないって証明できた…」 「バカ野郎…」 「へぇヴォ―ボモンは元に戻っちゃうのね」 「ヴォ―ボモンかっこよかった」 「鬼塚さんもデビドラモンもありがとう!あと結局危ない目に遭わせてごめん…」 「ふん!まあこれからあんた達がいっぱい今までの分働けば許してあげる!」 「げる…!」 「ははは…」 その時、デジメンタルが光だし、勇太のデジヴァイスに吸い込まれていった。 「なによこの卵。肝心の時に役に立たないでいい御身分ね。」 「勇気のデジメンタルに認められたって事なのか…」 「そうだよ!きっと!」 「「そうだよ!そうだよ!」」 「ヴォ―ボモン…トコモンもありがとう怖い目遭わせちゃってごめんね…」 「「うんうん!かっこよかったよ!」」 結局この日はトコモン達の村に一泊する事となった。 もう一度温泉に入り、勇太は外のベンチに座り夜風に当たっていた。 「何やってるのよジジ臭いわね。」 「鬼塚さん。」 光は勇太の隣に座った。 「…」 そのまま黙り込んでしまった。沈黙が流れる。耐えられず勇太が話を切り出そうする。 「あ「ねえこれで私達と離れられてせいせいする?」 「へ?なんで?」 「なんでってあんただって進化できるようになったわけだし私なんかと一緒にいたくもないんでしょ…」 「そんなことないよ!鬼塚さんもデビドラモンもすっごい頼りにしてるし!それに俺達仲間だろ!ずっと一緒にいたいさ!一緒に帰ろうよ!…その鬼塚さんさへよければ…」 「…な…そう…そっか。ま…まぁあんたって私達がいないとダメダメだろうしね…!」 ごはんとかの準備も野宿だと俺が全部やってるけどね。光の機嫌も良さそうだしそれは勇太は心の中にしまっておいた。 「涼しいわね…」 「うん。満月かぁ月はこっちも変わらないんだね。」 「そういえばそうね…こっちも月は兎なのかしら…」 「やっぱりデジモンなのかな。そういえば俺、前からどううさぎに見えるかって分かんないんだよね。鬼塚さん分かる。」 「う~ん。おばあちゃんが前言ってたのは…」 他愛のない会話が続く。久方ぶりにどこか勇太も光も心が満たされていたおかげかもしれない。 光にとっては全てを忘れて誰かと静かな安らいだ時間を送るのはどのくらい振りだったのだろうか。 月の光だけがふたりを見ていた。 「ってほんとに進化できないで私達がいないと進化できないじゃない!!!」 トコモン達の村を出発して数日。襲い来るデジモンに対抗したがあれっきりヴォ―ボモンは進化できなかった。 「あれ?こんなはずじゃあ…」 「ごめん勇太、光…」 「デビドラモンのごはんだべる?」 「根性が足りないのよ!根性がああああ!!!!」 光の怒声が森に響く4人の旅は続く…