「よし、今日はここまで。明日は次のページからだ、自習しておくように」

起立、礼。これで今日の座学は全部終了
そういえば、今日はトレーニング休みなんだよな……せっかくのいい天気なんだけど
というのも、まあ最近少し自主トレを頑張りすぎてしまったせいでストップがかかったのだ
先輩方からも無茶はいけないと釘を刺されてしまったし、従うしかない。というか無茶しがちなのは最近自覚してたし

「………お腹空いたな」

ぺこぺこ、と言うほどじゃないけど小腹がすいてしまった
商店街かどこかに出て買い物ついでで買い食いでもしようか
この間のコロッケも美味しかったし……最近は減量とかしてるわけでもないし、少しくらいいいかな
すると、ふあぁ、と気の抜けた声……というか欠伸
見れば、トロンと蕩けた目をした友人の姿。………授業中に寝るまでいかなかったのを褒めるべきか、否か

「タイム。この後トレーニング入ってるか？」
「んー……休み」
「じゃあ商店街いかないか？ちょっと買い物ついでに買い食いしようと思うんだけど」

タイム……タイムトゥヘヴンは眠そうに目をこすって席を立つ

「行くぅ」
「………その前に顔洗っておけ」

んぅー、なんて言いながら歩き出すタイム
あいつ、本当に睡眠欲強いよなぁ………と、さてさて。そうと決まれば連絡しなければ
多分『あいつ』も休みだろうし。連れていかなくて拗ねられても困るし
と、携帯を取り出した時………それがきた

「……またか」

ドドドドドドド、と。地鳴りのような足音
廊下は静かに走れと言われているのに。あの委員長といい、なんでこうも耳で分かるレベルで
そして、教室の扉がスパーンと開かれて

「ソングラインちゃん！！！！！！！！！！！！！！！！！！！」
「静かにしろメイケイエール！！」
「んみ！！！！！！！！！！！！！！」

とりあえず、あいさつ代わりにべしっとチョップ
まったくこの爆弾娘は。普段からプレーンモードとまではいわないけど、もう少し静かに……いやそれはそれで不気味だけど
体調崩したのかと勘違いしそうだしやはりこういうのでいいのか？どうなんだろう

「一体何なんだ。いやまぁ、こっちも呼ぼうかと思ってたんだけど」
「あれ？なにかありましたか！！！！！！！！？？」
「いや、ちょっとな。今顔洗いに行ってるタイムと話したんだけど………」

事の経緯を説明すると、ふむふむと聞いていたメイケイエール
だが突然、その眼がキラキラと輝いた

「それは、丁度良かったです！！！！！！！！！！！！！！！！！」
「丁度いい？どういう………」
「ソダシちゃんにも話は通してあります！！！！！！！！早速出かけましょう！！！！！！！！！！！！！！目的地は違いますが！！！！！！！！！！！」
「え、いや……だから何が」

すっかりテンションが上がってしまったメイケイエールに押されながら、なんとか理由を問いただそうとする
しかしそのテンションは振り切ってしまっていて
ちょっと、自分一人の手に負えそうにないというか

「ただいまー……って、何やってるの二人とも」

戻ってきたタイム。その肩をガシッとメイケイエールが掴んで

「今からお出かけです！！！！！！！！！！！！！！」
「へ？いや、うん。商店街に………」
「目的地変更です！！！！！！！！！！！！！！！！」

駄目だ、タイムも圧されてる
なんだ、何があったんだ。メイケイエールは普段からテンションハイギアなのは重々承知だが、今日のそれはちょっと違う

「後悔はさせませんよ！！！！！！！！！！！さあ出発です！！！！！！！！！！！！！」
「せめて着替えさせろメイケイエール！！！」

ぐいぐい私達を引っ張るメイケイエールに抗議しながら教室を後にする
今日は一体、どんな騒ぎに巻き込まれてしまったというのか
それはわからないが……少なくとも、このテンションのメイケイエールを止める手立ては私達にはなかった

●

「全員集合だし」

あの後、自室にいったん戻って着替えと身支度を整えてからのこと
正門前で真っ白なフリフリの私服に身を包んだソダシちゃんがそこに立っていて

「いや、全員集合って言うけど………」

急いで私服に着替えてきた私とタイム
そして同様に私服に着替えてきたメイケイエール。これで総勢４人
いや、それはいいんだけど

「結局、何処に向かうんだメイケイエール。こっちは未だに何も知らされてないんだぞ」
「今日、何かあったっけ？」

その質問に、メイケイエールはえっへんと、その無駄に立派な胸を張って

「実はこの間、とても美味しくて雰囲気のいいお店を見つけたので！！！！！！！！！！！！せっかくのお休みですしみんなで行ってみようと思いました！！！！！！！！！！！！！！」
「いや、その店ってどこなんだ………」
「電車で二駅ほどのところにある公園です！！！！！！！！！！！！！！！！！！！」

電車で二駅………ああ、そんな場所もあったな
普段立ち寄ったりする用事がないからスルーしてたけど、でもあんなところにお店なんてあったっけ？

「時間的には大丈夫そう、かな」

自前の懐中時計を取り出して時間を確認するタイム
………毎度思うけど、あの時計かなりいい奴だよな、多分。お値段聞くのが怖いくらいには
ウマ娘ってこういう拘り持ってる子が多いから怖いものだ

「じゃ早速行きましょうか！！！！！！！！！！！！！！！！！！」
「丁度良く小腹もすいてるし。早く何か食べたいし」

というわけで、４人でまずは駅まで。最寄りのバス停でバスを待つ

「そういえばこの間のレース見たし？」
「ああ、後輩たちのレースか。うん、見たよ」
「結構レベル高かったよね。将来が怖い子も結構いたよ」
「化けそうな子がたくさんでした！！！！！！！！！！！！！個人的には………！！！！！！！！！！！」

話は自然とこの間のレースの事に。新入生の中でもかなり侮れない、いや無視してはいけない子たちが揃っていて、何回もレース映像を見返したものだ
個人的にはあの子とか……でも若干ゲートで難色示してたりしたんだよなぁ………

「あ、バスが来た」

とりあえずバスに乗り込んで、と
幸い空いていたので全員近くに座って

「しかしお腹空いてきたな。そこ、そんなに美味しいものがあるのか？」
「はい！！！！！！！！！！！！！！！！！！とてもおススメできますよ！！！！！！！！！！！！」

メイケイエールがここまで推してくるとは
しかし、肝心のそのもの一体何なのかすら私達は知らない訳で

「………あぅ」

くぅぅ、と。タイムのお腹からカワイイ音
話してたらお腹が減ったのか。恥ずかしそうに顔を赤らめる

「ちなみにお持ち帰りもできますので、チームの皆さんなどへのお土産にもできますよ！！！！！！！！！！！！！！」
「あ、それはありがたいし」

と、そんなことを言ったソダシちゃんの方からもくぅぅとお腹の音
こっちは恥ずかしがる様子も無くにししししと笑ってるが

「それじゃあ、その店………」

グウウウゥゥゥゥゥゥゥ

「………えっと」

鳴り響いた自分の腹の音が、他のみんなと違ってちょっと、そのかわいさに欠けたもので
ちょっと、うん。顔が熱い。みんなの視線が痛い

「みんな腹ペコですね！！！！！！！！！！！！」

グギュルゴゴゴゴゴゴゴ、と
………メイケイエールの方から聞こえた地鳴りのような音に、全員顔を見合わせる
ああ、うん。さっきまで恥ずかしがってた自分がバカみたいに思えてきた
………早く駅につかないかな

●

「………これって」

遅咲き気味の桜の咲く公園の中。それなりに花見客の人も入っている中で、それはあった

「茶屋？」
「はい！！！！！！！！！！！！！！！！！！和風の喫茶店ですね！！！！！！！！！！！！！！！！」

『茶房　蹄鉄』と書かれた看板、木造造りで一見古民家のようにも見えたが、どうも新しく作った物らしい
古めかしい雰囲気をしっかり出しながらも清潔感のある造り。そこにはたくさんの人が集まり、笑顔を咲かせていた
こんな場所があったなんて。いったい、いつできたんだ

「この間長距離ランニングの最中に発見したんですが、まだできて日も浅い新しいお店のようです！！！！！！！！！！！早速入りましょう！！！！！！！！！！！！！」
「すでにいい匂いがしてるし」

人は多くとも、幸い行列ができてるって程じゃないらしい。とりあえず店内に入って、メニューを確認する
どれもこれも美味しそうな和菓子にお茶のセット。品数も豊富でつい目移りしてしまう

「あうぅ、どれにしようかな………」

タイムなんて何度もメニューを見返しては迷い続けてるし。まぁ気持ちはわかるけど

「じゃあ、私はみたらし団子と桜餅、それに緑茶をセットで」
「白あん団子と緑茶のセットにするし」
「あ、これにしよう。わらび餅とアイス緑茶のセットで」
「おはぎと抹茶のセットでお願いします！！！！！！！！！！！！！！！！！！」

はいなのー、と店員さんから返事が返ってきて、私達はひとまず一休み
桜がまだ咲いていることもあって窓からの風景はまさに絶景だ。日差しも丁度良くて、ともすれば眠くなってしまいそうな陽気
普段通り過ぎていたからいつこんな店ができたのかはわからないけど、メイケイエールのおかげでいい場所を知ることができた。まだ食べても飲んでも無いけど、少なくとも今の時点で期待値は爆上がりだ

「桜、綺麗だねー」
「そうだな。これだけでも来たかいがあるかも」

家族連れに、観光客に、外国人の団体。それぞれの人々がそれぞれに桜を楽しんでいる風景
中には家族連れのウマ娘が小さい子とかけっこしたりしてる。ああ、いいなこういうの

「最近忙しかったから、こういう時間が久々に感じるな」
「忙しかったというより、自主トレ詰め込み過ぎてて注意された感じですけどね！！！！！！！！！！！！！！！！！！」

ええい、言わんでいいことを

「時間が空いたなら、またそろそろ映画鑑賞会やるし」
「あ、あはは」

タイムの乾いた笑い。メイケイエールもちょっと目が濁っちゃった
多分私も今鏡見たら目が濁ってると思う。今度はどんな特級呪物を持ち出す気だこの真っ白娘は
これさえなければなぁ……と頭を抱えたところで、声がかかった

「お待たせしましたなの。こちら、セットメニューになりますなの」

届いた団子と桜餅、それに温かい緑茶。ああ、春先になんてありがたいセットメニューだ
みんなもそれぞれのメニューを前にして目が輝く。特に味を知っているメイケイエールはよりキラキラしている

「じゃ、みんな揃ったわけで………」

みんな手を合わせて、声を合わせて

『いただきます！！』

まずはみたらし団子。メイケイエールが前に食べさせてくれた名古屋式とは違うけど、とろりとした茶色の餡が絡んだ美味しそうな団子
ぱくりと一つ食べてみれば、団子の香ばしさに優しい甘味。これは……久々に大当たりを引いたかも
メイケイエールがあれほどおススメした理由がよくわかるというか。知らずに通り過ぎていたら損するレベルだ
桜餅も、葉の香りと上等なアンコ、それに餅の食感が絶妙なマッチだ
……そういえば、桜餅って地域によって作り方が違うんだっけ？これはどこの地域に属するんだろ。やはり関東かな

「あー……落ち着くぅ」

わらび餅とアイス緑茶を頼んだタイムも目を細めて堪能している
アイス緑茶も美味しそうだな……この後頼んでみようか
その横で、無言だけどいい笑顔で白あん団子を食べてるソダシちゃん。随分満足そうだけど……いけない、これ他人の見てるとどんどん欲しくなっちゃうやつだ

「はふぅ、美味しいですねぇ」

メイケイエールも、珍しくプレーンモードの音量で
ていうか、抹茶飲んでる姿が腹立つくらい絵になるな………忘れがちだけど、本当に忘れがちだけどお嬢様なんだよなぁこの爆弾娘

「それにしても、よくよく見てみたらメニューもリーズナブルだし。ほんと、いい店見つけたなメイケイエール」
「えっへんです！！！！！！！！！！！！！！！！！！」

またもや無駄に大きい胸を無駄に張って。ええい、嫌味か

「テイクアウトでチームの皆さんにお土産買っていこうか」
「そうしましょう！！！！！！！！！！どれにしましょうか！！！！！！！！！！！！！」
「私もお土産買っていくし。とりあえず白あん団子６本は決まりだし」
「僕はどうしようかなぁ。部屋用にみたらし団子と………」

それぞれ、もう一度メニューとにらめっこ。自分用とチーム用で、結構な量になるかもしれない
あ、もなかとかも美味しそう。でも自分で食べた奴をおススメしたいし………うーん、難しい
白玉ぜんざい……は、今度来た時に………

「………………………」

うん、駄目だ。鋼の意思は持てませんでした

「すみません、追加で白玉ぜんざい……」
「あ、私も白あんもなか追加だし」
「……その、みたらし団子３本お願いします」
「あんみつ大盛りでお願いします！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！」

……また運動しないとな、と
今後の、無理のない範囲での自主トレのメニューを脳裏で組み立てながら、私達は揃って追加の注文を待ったのだった

●

「結局、随分な量買っちゃったなぁ………」

結局あの後、追加したものを食べて、さらにお土産まで買って出ることに
なんというか、我がことながら誘惑に弱いものだ。少し自制しないと
両手に持った罪の重さにちょっとだけため息

「今から帰れば多分プレハブにみなさんいるだろうし、渡してきちゃおう」
「そうしましょう！！！！！！！！！！！！！！！！」
「う、うぅ……カロリーが………」

タイムの言葉に耳を塞ぐ。うん、わかってる。わかってるんだけど、もう私達は負けたんだ。仕方ないんだこれは

「ふふ、最近節制してたからちょっとくらい平気だし………」

言いながら歩き団子してる真っ白な子もいるし
……流石に食べ歩き用までは、と自制した自分はまだ強い方だったのかもしれない

「……少し歩いて帰ろうか」
「そ、そうしようかな。少し歩いて…ね」
「無駄な抵抗な気もしますがそうしましょう！！！！！！！！！！！！！！ちょっとしたお散歩だと思えば！！！！！！！！！！！！」

ええい、言うなメイケイエール
本当はランニングして帰りたいくらいだけど、お土産持ってる状態で走る勇気は流石にない
明日はしっかり運動しないと。流石に、これが原因で太りましたは間抜けが過ぎるし

「それにしても……この面子でゆっくりしたのも久しぶりかもな」

ふと、そんな事を思い出す
ここ最近それぞれ忙しくしてたり自主トレ詰め込んだりしてたせいもあって、４人でゆっくりする時間はなかなかなかった
そう言った意味でも今回のこのお茶会はいい機会だったのかもしれない

「そう思うならもっと映画鑑賞会に来るし」
「・そうですね」
「今の間はなんだし」

そっと目を逸らす私とタイム。思わずプレーンモードのメイケイエール
いやまぁ、確かにそうなんだけど……そっちはそっちで、別の意味での消費エネルギーがといいますか………

「さ、帰ろう。早くしないと先輩方も帰っちゃうし、すこし早歩きで行こうか」
「あ、それなら提案があります！！！！！！！！！！！！！！！！」

びしっと手を挙げたメイケイエール。なんだ、まだメイケイエールのツアーは続くのか

「近くにメンチカツの美味しいお店があります！！！！！！！！！！！！！道中寄るのはいかがでしょうか！！！！！！！！！！！！」

………メイケイエールを除いた全員が、その場でずっこけそうになる。まるでコントのように、そりゃもう見事に
三人、顔を見合わせて。うんうん、と頷いて。安心した、どうやらこの場の全員の総意らしい
「ほへ？」なんて頭にはてなマークを浮かべた爆弾娘の肩に、ぽんと手を置いて

「メイケイエール」
「はい！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！」

すぅぅぅぅ………と。大きく、息を吸い込んで

「この、おバカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！」
「みーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー！！！！！！！？？？？？？？？？？？」

留まるところを知らない暴食お嬢様に、全力全開で吼えたのだった

ついでに言うと、結局私達は体重計の前で呆然とするハメになったし、ランニングと称して和菓子を堪能しに行くこともまた、増えてしまったのだった

以上。お題『お団子』で酒飲んでメイソンした

エールちゃんはカービィか何か？

すごい美味しそう
和菓子をお店に食べに行くってやったことないな

>すごい美味しそう
>和菓子をお店に食べに行くってやったことないな
たまに行くけどおすすめ
和菓子って思ってるよりも意識しないと食べないこと多いし

トレセンは授業で何読ませてんだ

>トレセンは授業で何読ませてんだ
多分一般教養なんだろ

収容違反してるぞ

世界崩壊してんじゃねーか！

どんだけクソ映画鑑賞やりたいのこの白いのは…

どこにでもいるバイト娘…！

ｷﾀ━━━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━━━ !!!!!

>どんだけクソ映画鑑賞やりたいのこの白いのは…
クソ映画鑑賞会は楽しいので「」もやるといい
もちろん鑑賞会して楽しいタイプのクソ映画を事前にリサーチしとけよ

>クソ映画鑑賞会は楽しいので「」もやるといい
>もちろん鑑賞会して楽しいタイプのクソ映画を事前にリサーチしとけよ
はいメタルマン

>「あ、はい。『あかしけ　やなげ　緋色の鳥よ』………」
待てや