「えっせんしゃるろーみん……何て?」引っ越しを控え、一時休業して実家に戻ってきた茜は聞き返した。 「Essential Roaming Obbligator、略してEROだ」夫の蔵之助が鼻息も荒く言い放った。 「いーあーるおー……」ローマ字読みは避けた。 「デジモンの完全体や究極体にはリアルワールドでの神話や伝承上の神や英雄、あるいは歴史上の偉人のデータを基にして生まれたものが少なくないだろう?だったらリアルワールド上にあるそういったデータとデジモンを構成するデータ要素を掛け合わせれば、完全体や究極体の要素や能力を持ったプラグインが作れるかもしれないって思ってね」何やらすごそうな話である。 「はあ……それで出来たのがこの……?」 「E.R.O.プラグイン、という訳さ」彼はいつもの青色ではなく今までに見たことのない桃色のカードを取り出した。 「それで何ができるの?」 「まずはこのメイヴミードプラグイン、こいつを使うと男はものすごくエッチな気分になる!」 「メイ……えっちなきぶん!?」 「こっちはディルムッドプラグイン、これは逆に女のほうがすごくエッチな気分になる。まあ要するに発情プラグインだね」さすがに茜も言葉に詰まる。 「発情だけじゃないぞ、こっちのドウキョウプラグインは巨根になる。生えてない場合は巨根が生える。実証したけどなかなか凄かったぞぉ」普段より声のトーンが高くなっている 「実証……ってまさか!!」茜が振り向いて背後に控えるレナモンを見ると、レナモンが目を逸らした。頬のあたりに赤みが刺している。「やったのか!?」 「……すまない、主殿。私は、これも主殿のためだとお館様に言われて……」絞り出すようなレナモンの言葉になんだか寝取られたような気分になる茜。 「レナモン・キュウビモン・タオモン・サクヤモン…全形態でそりゃもう見事な御立派様が…」 そこまで言ったところで胸ぐらを掴まれた。 「おまえ人のパートナーデジモンに何しよるん!わりゃの乳首にもその御立派様を生やしたろかい!!」 「はっはっはっ黙ってやったのは謝るよ。でも言ったら君は仕事をほっぽりだして帰ってきちゃうだろ?」里の壊滅で忍術修行を完遂できなかった茜……いや茜女は忍者としては未熟であり、陽根を生やす忍術を会得できておらずそれがコンプレックスの一つになっていた。 「まあ……それは、その」 「安心してよ、巨乳化プラグインもあるんだ。このアントワネットプラグインで性別種族を問わずに巨乳化できるし、場所も数も設定変更可能だ。複乳属性にも対応できるんだ!大丈夫、これもレナモンの協力で実証済みだよ。」何を安心しろと言うのだ。 「こっちはシミュレーションだけで実証がまだだけど性転換プラグイン。カイネウスプラグインは女性を男性化できる。で、こっちの……アーサー?プラグインは男性を女性化できるん……だけど、なんでアーサー王のデータで性転換になるんだろう?オートネーミングも文字化けしてなんか違う名称になってるし……アルト……??」 「もうわかった、もうわかったから」右掌を突き出して茜は蔵之助を制止した。「それで、完全体や究極体の再現ってのはどうなったのよ?」 「そっちはちょっと捗々しくない、かな……。」声のテンションがいつもの落ち着いたものに戻る。「多少戦力になりそうなものはあるけど、まだまだ未完成だね。先は長いよ。」 「……そっか。」蔵之助の胸ぐらから手を放し、茜はため息をついた。「それで、このしょうもな……くもないかな?この頭どピンクなプラグインはどうするの?」 「とりあえずヒトナー連合の面々に売ろうかなって思う。」 「……はい?」 「デジ対には彼らとのコネがあるからね、彼らなら喜んで大枚はたいて買うだろうよ!ちょうど連中が大喜びしそうなプラグインも開発できたしね!共存共栄に貢献できて一儲けもできる、実に素晴らしいじゃないか!」 「まず最初にわたしと共存共栄しろやあ!」茜はブチ切れた。「作ったプラグイン全部試してやるからな!覚悟せいや!」そのまま抱きついて押し倒す。忍者としての体術の差が明白なので、蔵之助は茜の行為に対して絶対に抵抗できないのだ。 「あの……避妊……」茜の影からホークモンが申し訳無さそうな声で話しかける。 「だいじょーぶー、避妊プラグインも開発したから!見てこのコマチプラグイン!」服を脱がされながらも元気に応じる蔵之助にホークモンは言葉を失う。 「……行こう、ホークモン」レナモンはそう言ってホークモンの肩をポンと叩き、二体は部屋の外へと出ていった。寝かしつけた子供たちの様子を見に行く二体は背後からの嬌声が聞こえないふりをした。